27 Five jurors
- 1 名前:27 Five jurors 投稿日:2006/03/11(土) 08:23
- 27 Five jurors
- 2 名前:27 Five jurors 投稿日:2006/03/11(土) 08:23
- 加護ちゃんの件で私達五人は、どういったわけか陪審員に選ばれた。
勿論、本当の裁判のように冒頭陳述や口頭弁論、論告求刑などは無い。
私達はUFAの三役とつんく♂さん、加護ちゃんと両親の話を傍聴した。
「話は聞いたやろ? 加護が有罪か無罪か議論せえ。条件は全員一致や」
といった事で、私達は別の部屋に移されて、そこで話し合う事になった。
メンバーはアヤカさん、里田さん、唯、小春と私の五人。
一応、陪審員長という事で、最年長のアヤカさんが任命されてる。
私達は廊下の自販機で飲み物を買い、倉庫のような部屋で車座になった。
「それじゃ始めちゃっていい? どうやって決めようか」
いかにもアヤカさんは、アメリカンティックでカッコイイ。
アヤカさんはバイリンギャルだからな。
って、私も福井弁と標準語のバイリンギャル。
なんちゃって、標準語の方は勉強中なんだなこれが。
「多数決でどうですか?」
「さすが小春だね。いい意見じゃない?」
里田さんが誉めると小春は笑顔で「村のキャプテンですから」と言った。
この際、村のキャプテンかどうかなんて、果たして問題なのかな。
私の実家も田舎だけど、小春の田舎は物凄いとこだから。
村の人口の四割以上が専業農家っていうんだから凄い!
私の実家の近辺は・・・・・・あれっ? 確か七割が専業農家?
っていう事は、私の実家の方が田舎って事に?
何て事だ・・・・・・○| ̄|_
- 3 名前:27 Five jurors 投稿日:2006/03/11(土) 08:24
- 「そうだね。丁度奇数だし、やってみようか。それじゃ加護ちゃんが無罪と思う人」
アヤカさんがそう言うと、私以外の全員が手を挙げた。
ここは流れに任せて、私も手を挙げちゃった方がいいのかな?
でも、未成年でタバコを吸うのはいけない事だし。
困ったな。・・・・・・どうしよう。
「それじゃ、加護ちゃんが有罪だと思う人」
アヤカさん早いよ! 考えてたのに。
こうなったら後には引けないから手を挙げちゃえ!
私は白い眼で見られるのを覚悟して手を挙げちゃった。
そーっと眼を開けると・・・・・・げっ! 里田さんの冷たい視線。
「多数決で無罪に決まり。さあ、終わりにしようよ」
里田さんは機嫌が悪そうに立ち上がった。
そりゃ、私と加護ちゃんはモー娘。で一緒だったよ。
でも、それとこれとは別問題じゃないのかな。
ここは民主的に、少数意見の尊重ってやつを。
「まい。つんく♂さんは全員一致が条件だってさ」
「だったら意見を訊こうじゃない。愛ちゃんの有罪だっていう意見をさ」
里田さん、私を薄情者だって思ってるんだろうな。
唯と小春も、どこか私を非難するような眼をしてる。
これじゃ、怖くて話も出来ないよ。
こうなったら、得意の福井弁で誤魔化しちゃおうかな。
- 4 名前:27 Five jurors 投稿日:2006/03/11(土) 08:25
- 「いいのよ。自分が思ってる事を言って」
アヤカさんだけが笑顔で言ってくれた。
それじゃ、福井弁で「テッテケテー」連発はやめよう。
思った事を素直に言えばいいんだもんね。
まずは、深呼吸してから・・・・・・と。
「未成年がタバコを吸うのはよくありません。だからです」
言えた! 何とかびびらずに言えた。
この中で怖くないのは小春くらいなもの。
さっきから無表情の唯は、何か凄く怖いんだけど。
アヤカさんは頷いてくれたけど、里田さんは睨み付けて来た。
「そりゃよくないよ。そんなもん、みーんな知ってるよ。
でもさ、十八にもなれば誰だってタバコの一本くらいは吸ってんだろうがよ!」
里田さんは美人だけど、こうしたとこがあるから怖い。
そりゃ、カン娘。にいれば自然にそうなっちゃうよね。
ハスキー犬と格闘してたあさみさんが現リーダーだし、
りんねさんは牛にスピニングトゥホールドしてたくらいだから。
「それじゃ、高橋さんはタバコを吸った事ないんですか?」
こ、小春! そういった問題じゃないってのが判らないのかな。
私は十九なんだから、そりゃタバコくらい吸ったことあるっての!
小春は・・・・・・うーん、微妙なところだなあ。
中学三年くらいになると、大半が喫煙経験者なんだけど。
- 5 名前:27 Five jurors 投稿日:2006/03/11(土) 08:26
- 「そ、そりゃ、吸った事あるやよ」
「これだ! 自分はよくて加護ちゃんは悪いの? ふーん、随分と都合のいい解釈ね」
言われると思った・・・・・・。小春の奴、余計な事言いくさって!
確かに里田さんの言う事は正論。でも、今回は別問題じゃないのかな。
だって、高校でも喫煙は停学っていうのが普通なわけだし。
「まい、今回は加護ちゃんの件であって、喫煙歴があるかが問題じゃないよ」
アヤカさんは大人だな。私もアヤカさんみたいな大人になりたい。
誰か味方がいれば心強いんだけど、この調子じゃ私が言い包められて終わりかな。
四対一っていうのは、どうしても不利だもんね。ここらで降参しちゃおうかな。
その前に、何でみんな無罪なのかが訊いてみたい。
「いいですか? 無罪に挙手した人に質問です。何で無罪なんですか?」
「そりゃ、加護ちゃんは仲間だからだよ。そんな事も判らないの?」
「まい! いい加減、突っ掛かるのはやめなよ。それじゃ小春から」
小春は加護ちゃんと一緒になった事がないよね。
変なしがらみが無いから、もっと自由になれると思うんだけど。
「だって、あたしは加護さんに憧れてモー娘。のオーディションを受けたんですから」
「そういった事を訊いてるんやないやよー」
これにはアヤカさんも里田さんも呆れ顔。
小春は問題の趣旨自体を理解してないんじゃないかな。
吉澤さんや藤本さんと接して、少しは天然が治ったかと思ったけど。
藤本さんやれいなの機嫌が悪い時に天然ボケすると、
それこそ口に出すのも恐ろしい事になるから。
- 6 名前:27 Five jurors 投稿日:2006/03/11(土) 08:27
- 「それじゃ、唯は?」
「矢口さんだってモー娘。脱退だけで終わったんですから。加護ちゃんなんて問題外ですわ」
・・・・・・・違う。それは違う。違うよ唯。
「そうだよねえ! 矢口さんだって軽い処分だったんだもんね」
「まい! ちょっとは黙っててよ!」
アヤカさんに言われて項垂れる里田さん。
それはそうと、唯は大きな勘違いをしてる。
これは指摘してあげないと、唯と矢口さんが可哀想。
「唯ちゃん、矢口さんは一人の大人の女性として間違っていないやよ。
それに、矢口さんは歌手になりたかったのにアイドルにされたんやよ」
矢口さんは本気で芸能界を辞めようとまで思ったんだ。
結果的に仕事に穴を開けるかたちになっちゃったけど、
矢口さんは女性としての幸せを追い駆けたかったんだと思う。
それに対して、私達がつべこべ言う事なんて出来ない。
「そうだよね。矢口さんの件は芸能人って事だけがネックだった」
芸能人である前に、私達は生身の人間なんだよ。
だけど、世間じゃ人格なんか無視して商品化されてる。
私達は人間の女の子だから、好きな男の子くらい出来るよ。
矢口さんは女性として、何も恥ずべき事はしてない。
モー娘。OGだって、みんな叩けば誇りの出る身体。
矢口さんは明日の私かもしれない。
- 7 名前:27 Five jurors 投稿日:2006/03/11(土) 08:27
- 「そういえば、安倍さんもパクリで謹慎処分でしたよね」
四人の視線が一斉に小春へ注がれる。
小春は本当に怖いもの知らずなんだね。
安倍さんは以前にも某俳優とスキャンダルを起こしてる。
いわゆるプレステ事件と呼ばれるものだったっけ。
以来、安倍さんの前では『プレステ』が禁句になってた。
「ああ、例の盗作問題ね?」
アヤカさんが雰囲気を和ませてるけど、これ以上、小春に何か言わせるとまずい。
それこそ「何でアヤカさん一人でココナッツ娘。なんですか?」なんて言ったら、
今のところ陪審員長で穏やかなアヤカさんも、いつ爆発するか判ったものじゃない。
偶然に当たったふりでもして、顔面に肘でも入れておこうかな。
「正式に言うと著作権法違反容疑やね」
唯がこんなに頭がいいとは思わなかった。
夏先生に怒鳴られてるだけの巨乳娘じゃなかったの?
小顔・巨乳・パッパラパーはアイドルの三種の神器だって教わったけど。
そういえば小春にアイドルの裏三種の神器を教えていなかったっけ。
泣き真似・狸寝入り・数字詐称(年齢や身長、体重、スリーサイズなど)。
「あれは犯罪に近いものがあったじゃない。加護ちゃんの件とは違うよ!」
里田さんが声を荒げる。確かに盗作は犯罪だね。
しかも営業目的で使用したとなると大問題。
だから安倍さんは紅白歌合戦にも出られなかったんだ。
- 8 名前:27 Five jurors 投稿日:2006/03/11(土) 08:28
- 「あの、アヤカさんは何で無罪?」
里田さんを興奮させないように、私はアヤカさんに話を振った。
アヤカさんは少し首を傾げながら、自分の話を整理してるみたい。
ミカさんまでいなくなったんだから、アヤカさんも寂しいだろうな。
つんく♂さんはタンポポとプッチモニ、そしてミニモニを潰した。
「確かに加護ちゃんがタバコを吸った事は悪い事だと思うわよ。
でも、ペナルティを与えたところで、逆効果になる要素の方が多いと思うの」
逆効果。確かに事務所が受ける金銭的な影響は大きいと思う。
それに、加護ちゃん自身にも決していい印象は与えない。
加護ちゃんにペナルティを科す事で得をするのは誰?
事務所は加護ちゃんにペナルティを科して美徳とするの?
フライデーやブブカは、誰かが自殺するまで追い駆けるよ。
「これで判った? 有罪なんて不義理を言うのは、あんた一人だけ!」
「まい! もう愛ちゃんを責めるのはやめなよ」
えっ? 私、里田さんに責められてたんだ。
そういえば、里田さんは私を睨んでたし。
私って思いっきり鈍い? パッパラパー?
ま、まあ、小春の先輩だから。
「高橋さん、ここは無罪って事にしちゃいましょうよ」
小春・・・・・・。鋭角度のブレンバスターでも決めてやらないと判らない?
とりあえず、スリーパーホールドで落としておこうかなあ。
あさ美ちゃんに落とし方、習っておくんだった。ってあさ美ちゃんは空手だっけ。
- 9 名前:27 Five jurors 投稿日:2006/03/11(土) 08:29
- 「・・・・・・何で気付かへんかったんやろ! 未成年の喫煙は法律で禁止されてるんや!」
いきなり唯が大声を上げたから、私達は驚いて彼女の方を向いた。
『未成年者の喫煙は法律で禁止されています』
そういえばこれって、タバコの自販機に書いてなかったっけ?
誰にでも買える自販機に、そんな事を表示したところで無意味だけど。
「当たり前の話じゃん。もっと先に気付きなよ」
「法律違反は有罪や。だから加護ちゃんは有罪」
おっと! いきなり唯が有罪に変更したぞ!
これで無罪三人に対して有罪が二人になった。
四対一から三対二は物凄く大きな違いがあるよ。
たった一人の意見が違うっていった点では、
五対一だって百対一だって、そう変わらないから。
「確かに法律違反だけど、未成年の喫煙って、そんなに重罪なのかな」
アヤカさんは困ったように手にしたボールペンを回した。
未成年の喫煙って、確か罰則の規程が無かったような気がする。
未成年者は保護される立場にあるから、そうなんじゃないかな。
刑法が改正されても、未成年者に死刑判決が出た事はない。
裁判官は未成年者なら更生出来るって判断らしいけど、
実際は法務大臣が死刑執行命令書に押印するのが嫌だかららしい。
「法律で決まってる以上、違反は違反やないですか」
いつから唯はモラリストになったんだろ。
でもまあ、有罪の理由ではあるけどね。
- 10 名前:27 Five jurors 投稿日:2006/03/11(土) 08:30
- 「どうしちゃったのよ! 愛ちゃんも唯も!」
何で里田さんは、ここまで加護ちゃんに入れ込むんだろう。
ハロコンで里田さんと加護ちゃんは一緒になるけど、
二人はこれまで同じシャッフルユニットに在籍してない。
それに加護ちゃんは人見知りする方だから、
いきなり里田さんと仲良くなったとも思えないし。
「あたしは有罪・無罪より、ペナルティの必然性に疑問を感じるの」
アヤカさんの考えは、さすがに大人といった感じ。
ただ、唯が言ったように、悪い事は悪いと思うんだけどな。
私達が加護ちゃんに『有罪』って言ってあげないと、
『運が悪かった』なんて勘違いしちゃうかもしれないし。
「アヤカさん、ペナルティと有罪・無罪は別問題じゃろ?」
有罪だからって、必ずペナルティがあるとは限らない。
本当の裁判でも、情状酌量とか執行猶予とかあるし。
騙されて強いお酒を飲まされて酩酊状態だったら、
確か心神喪失で無罪になるんじゃなかったっけ。
加護ちゃんも『騙されて飲まされた』って言えばよかったのに。
・・・・・・私、何を考えてるんだろう。そういった問題じゃない。
「そうだね。有罪・無罪とペナルティは別問題だったわ」
アメリカの裁判なんかじゃ、陪審員が有罪か無罪かを決定して、
裁判官が量刑を言い渡すような方式が採られてるみたい。
ある意味、被告が死刑になろうと、陪審員に罪の意識は薄いよね。
- 11 名前:27 Five jurors 投稿日:2006/03/11(土) 08:30
- 「ペナルティは別問題として、加護ちゃんの件については?」
「そりゃ有罪かな」
アヤカさんまでが有罪に転じたら、さすがの里田さんも眼を剥いた。
最初は私だけが有罪だったのに、今じゃ無罪を主張するのは二人だけ。
さて、二人はどういった反論をするんだろう。
加護ちゃんは悪い事をした。だから有罪。それが私の考え。
「アヤカさん、ちょっと休憩にしまへんか?」
「そうだね。それじゃ五分間・・・・・・十分間の休憩にしよう」
アヤカさんは里田さんをチラッと見て休憩時間を変更した。
きっと、頭を冷やすのに五分間じゃ短いって思ったんだろうね。
それにしても、里田さんは何で意固地になってるんだろう。
どういった理由を里田さんが持ってるかは知らないけど、
加護ちゃんを絶対に無罪にしないと気が済まないみたい。
「小春、何か飲み物を・・・・・・」
「小春を懐柔しないでよ!」
そんなつもりじゃない。私は後輩の小春と・・・・・・。
里田さんには、そうは見えないのか。何だか悲しいな。
私は廊下の自販機でカフェオレを買って一口だけ飲んだ。
「悪い子じゃないんだけどね。まいはきついとこがあるから」
私の背後で自販機に小銭を入れながらアヤカさんが言った。
牛を押さえ込む人やハスキー犬とバトルする人と一緒だったからなあ。
みうなの苦労が判るような気がする。みうな、元気かな。
- 12 名前:27 Five jurors 投稿日:2006/03/11(土) 08:31
- 「でも、加護ちゃん。ハロプロ追放なんてならんやろね」
「タバコで追放されてたら、なっちの妹なんか大変よ」
アヤカさんもズバッと言うなあ。
そういえば、安倍さんもタバコ吸ってたっけ?
あの時は、まだ未成年だったような気がするけど。
ホテルで後藤さんの部屋が煙かった記憶もあるし。
「つんく♂さん、石黒さんが辞めた時、泣いてたの知ってる?」
アヤカさんは事情通だな。何でそんな事、知ってるんだろう。
それに、何で石黒さんが辞めた時に泣いてたんだろう。
石黒さんとは面識がないけど、ちょっと怖そうな人。
怖そうな人っていえば、中澤さんと藤本さんは元ヤン。
「何で泣いてたんやよ?」
「Secrecy(内緒)」
つんく♂さんと石黒さんって、別に噂になるような関係じゃなかったし、
そんなにタンポポ。への思い入れが強かったのかな。
石黒さん曰く「モー娘。はアイドル、タンポポ。はアーティスト」だって。
確かに三人時代のタンポポ。は、実にアダルトでカッコイイ。
それが四人になった途端「モー娘。はアイドル、タンポポ。もアイドル」になった。
「で、どうやって二人を説得するん?」
唯が頑なな里田さん攻略について話し始めた。
とにかく、何で里田さんが意固地になるのか。
それが判らないと、説得の仕様もないのが現実。
- 13 名前:27 Five jurors 投稿日:2006/03/11(土) 08:32
- 「さあ、そろそろ再開しようか」
アヤカさんの一声で、私達はそれぞれの席に着いた。
私としては、どうしても里田さんの話を聞きたい。
それには、まず、このいい加減な小春を何とかしないと。
でも、相手が小春で良かった。もし藤本さんだったら・・・・・・。
「小春、『加護ちゃんに憧れて』っていうのは理由にならないやよ」
「そうね。もっと具体的な理由がないと。無罪だっていう理由」
有罪だという理由は、だいたい出尽くしたと思う。
アヤカさんもペナルティと有罪・無罪は無関係だって判ってくれたし。
問題は無罪に固執する里田さんだけど、何かわけがありそうだな。
とりあえず小春を攻略しないと話にならない。
「理由なんてありません。あたしは加護さんが好きだから」
「それじゃ話にならへんやろ!」
珍しく唯が声を荒げた。泣いてばかりいたのに成長したもんだなあ。
ところで、私は心理分析っていうのは苦手なんだけど、
里田さんと小春とでは、どうやら理由が違うみたいだね。
アヤカさんが小春に詳しく趣旨を説明した。
「だから、加護ちゃんじゃなかったら、小春はどう思うの?」
「それは有罪ですよ」
ついに無罪を訴えるのは里田さんだけになった。
何で里田さんが無罪を主張するのか、その深い理由を聞かないと。
四人は里田さんに注目するけど、決して悪意のある顔じゃなかった。
- 14 名前:27 Five jurors 投稿日:2006/03/11(土) 08:33
- 「まい、無罪を主張する本当の理由。話してくれるよね」
コックリと頷いた里田さんの眼には、薄っすらと涙が滲んでた。
私だって本音を言えば加護ちゃんを無罪にしたいよ。
だけど、庇い合うだけが仲間じゃないっていうのは事実。
時には突き放したりして判らせるのも仲間なんだよね。
「アヤカさんは判ってると思うけど・・・・・・」
ついに里田さんの眼から涙が零れた。
アヤカさんが判ってる? 私は判ってないの?
小春が何も知らないって事は判るけどね。
教育係がさゆだから、二人とも天然に輪が掛かる。
「加護ちゃんや矢口さん、安倍さん、あややは嵌められたの」
それは噂で聞いた事がある。特に矢口さんの件は売られたとか。
中澤さんが酔った勢いでポロリと零した言葉。今でも鮮明に憶えてる。
「最初に嵌められたんは市井やったしな」市井さんは抵抗したらしい。
だから、どうしてもモー娘。を辞めざるを得なかった。
「UFAはタレントの弱味を握って・・・・・・移籍出来ないようにしてるのよ」
確か矢口さんも「辞めるなら違約金を払え」って脅されたらしい。
里田さんの話によると、こうして所属タレントを飼い殺しにする。
それがUFAのやり方なんだそうだ。大人って汚いな。
それで里田さんは、UFAへの抵抗の一環として無罪を通したかった。
確かに誰かが立ち上がらないと、この問題は解決しないと思う。
でも、ここで協議するのは別問題なんじゃないかな。
- 15 名前:27 Five jurors 投稿日:2006/03/11(土) 08:34
- 「まいの気持ちは判る。でも、それは別の場所で話し合おうよ」
アヤカさんが手を握ると里田さんは号泣し始めた。
・・・・・・もしかすると、りんねさんも抵抗して辞めさせられた?
たった一人でカン娘。を存続させて来たりんねさんだから、
そう簡単に辞めるとは考えられなかったけどね。
「まいさん、みんな薄情やあらへんよ」
「テッテケテー!」
とりあえず、早口で「そうだよ!」って言ってみた。
みんな加護ちゃんが好き。だけど、ここで協議するのは別の話。
事務所への突破口は、きっとその内いい機会が訪れるよ。
だから私達は油断しないで頑張って行くしかない。
「まい、ここで協議するのは、加護ちゃんの喫煙問題なの。判るよね」
アヤカさんが言うと里田さんは涙を拭いながら小さく頷いた。
でも、里田さんの話が聞けてよかった。私や小春は鈍いから。
「もう一回決を採ります。加護ちゃんが無罪だと思う人」
もう、誰も挙手しようとしない。
これでいい。加護ちゃんには酷かもしれないけど、
私達は決して間違っていない。・・・・・・と思う。
「有罪だと思う人」
数えるまでもない。挙がった手は五本だった。
- 16 名前:27 Five jurors 投稿日:2006/03/11(土) 08:35
- 重苦しい空気が支配する中、私達は部屋を出てつんく♂さんのところへ向かった。
アヤカさんのサンダル、里田さんのパンプス、唯のハイヒールの音が廊下に響く。
会議室をノックして開けると、そこにはつんく♂さんが一人だけ。
歌詞のネタ帳に、何やらニヤニヤしながら書き込んでいる。・・・・・・キモイ。
「五人で協議した結果、全員が加護ちゃんを有罪としました」
アヤカさんは少し声を震わせ、笑みの消えたつんく♂さんと眼を合わす。
つんく♂さんは怒るのか? それとも納得するのか? 更に笑うのか?
五人全員が固唾を飲みながら、つんく♂さんのリアクションに注目した。
「まだおったんか? もう加護達は帰ったで」
「はァ?」
「そういえば陪審員ごっこさせてたんやな。どや? 誰がヘンリー=フォンダやったん?」
つんく♂さん、遊びで陪審員なんてさせたわけ?
私達は泣いたり怒ったりしながら協議したんだ。
それを『十一人の怒れる男』とか『十二人の優しい日本人』の真似かい!
「初めから加護は謹慎処分って決まってたんや。でも面白かったや・・・・・・」
つんく♂さんが言い終わらない内に、アヤカさんのストレートが顔面にヒット!
鼻血を出して床に倒れたつんく♂さんの横っ面を里田さんが蹴り上げる。
そして、唯がハイヒールの踵で背中を踏むと、つんく♂さんは恍惚の表情になった。
「冗談じゃないよ! まい、唯、帰ろう」
ヨロヨロと立ち上がったつんく♂さんの急所を、私と小春は思い切り蹴り上げた。
嬉しそうな悲鳴を上げるつんく♂さん。そうか、それで中澤さんや石黒さんを・・・・・・。
- 17 名前:27 Five jurors 投稿日:2006/03/11(土) 08:35
- お
- 18 名前:27 Five jurors 投稿日:2006/03/11(土) 08:36
- わ
- 19 名前:27 Five jurors 投稿日:2006/03/11(土) 08:36
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