25 喧嘩上等
- 1 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/10(金) 02:25
- 25 喧嘩上等
- 2 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/10(金) 02:26
- 愛ちゃんとケンカした。
いつもの事と言えばいつもの事だけど
今日という今日はどうしても我慢が出来なかった。
私は怒鳴るようにして愛ちゃんを問い詰めたけど
愛ちゃんはのらりくらり的を得ない返答をするだけだった。
その態度に完全に堪忍袋の緒が切れてしまった私は
「愛ちゃんとは金輪際、話はしない」と宣言した。
金輪際なんて単語を使ったのは生まれて初めてかも知れない。
とにかくそこまで私は怒っていたのだ。
愛ちゃんは「なんで?ガキさんなんで怒ってるん?」と
いつものアホっぽい口調で呟いて呆然としていた。
どうして私が怒っているのか理解していないのだ。
- 3 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/10(金) 02:27
- 「ねえ、ガキさんどうしたの?」
ケンカの様子を遠巻きに見ていたみんなが心配して
私の元に集まってきた。
話すのもバカらしいけど私は事の成り行きを説明した。
説明すると全員が声を揃えて「それは愛ちゃんが悪い」と言った。
ミキティだけは「愛ちゃんなんかと遊ぶガキさんが悪い」と
言ったけれど、とにかく誰が見ても愛ちゃんが悪いのだ。
とにかく今度ばかりは許せない。
なんとか愛ちゃんにギャフンと言わせたい。
私が鼻息を荒くして怒っているとこんこんが
何か持ってきて私に差し出した。
丸い形のアイスだ。楽屋の冷蔵庫から持ってきたのだろう。
「食べて。冷たいのを食べると気分が落ち着くんだって」
こんこんはそう言ってその中のひとつを摘んで頬張った。
こんこんそれ以上落ち着いてどうすんの?
と普段なら突っ込むけど、とりあえず黙って受け取って食べた。
うひょーと声が出るほど冷たかった。
そして食べたら本当に不思議と少し落ち着いた。
- 4 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/10(金) 02:28
- 落ち着いたので辺りを見渡すと楽屋の隅っこで愛ちゃんは
ひとりで座って申し訳無さそうにうつむいていた。
愛ちゃんだって反省しているんだと思うと少し胸が痛んだ。
「あ、2位の記録出たわあ」
よく見ると脳の年齢を測るゲームをしていた。
もう怒った。
私はみんなに「愛ちゃんが反省して謝るまで喋らないで」
とお願いした。
みんなは少し困った顔をしたけど「わかった」と言ってくれた。
みんな愛ちゃんと付き合って理不尽な思いをした経験があるのだ。
本当はイジメみたいで私もそんな事をするのは嫌だったけど仕方ない。
愛ちゃんももう19歳だ。いい加減大人になって貰わないと困る。
反省させてその幼い頭を改善させなければならないのだ。
- 5 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/10(金) 02:29
- 「あー誰か私とぷよぷよしよやー」
愛ちゃんが立ち上がってこっちを見ている。
下を向いたまま誰も返事しなかった。
みんな私の言ったお願いを守ってくれているのだ。
愛ちゃんは「ありゃ?」と間の抜けた声を出して頭を掻いた。
そして気が抜けたように椅子に座ると
ソフトを入れ替えて再び脳の年齢を測るゲームをやり始めた。
さゆと絵里が「面白いね。なんかれいなみたい」と囁きあって
愛ちゃんの様子を笑っていた。
それを聞いたのかどうなのかれいなは黙って遠くを見ていた。
その視線は悲しげに宙を彷徨っていた。
おっと。今はれいなの事なんかどうでもいい。
愛ちゃんにギャフンと言わせるんだ。
いくら鈍感な愛ちゃんでもずっとこうしていれば
自分の置かれている状況に気付くだろう。
- 6 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/10(金) 02:30
- 「あっそうやー。忘れてた。宝塚の新しいDVD買ったから見よ」
愛ちゃんは明らかに不自然な大声で呟いた。
「吹雪さんの宙吊りが凄いんやってー」
その独り言を聞いて私は思わず苦笑いをした。
普段でも宝塚の話題なんかスルーされてるのに
この状況で相手をする人が居る訳がないのだ。
しばらく愛ちゃんは携帯DVDプレーヤーで
宝塚を見ながらひとりで大騒ぎしていたけど
誰も見に来てくれないので見るのを止めた。
横顔しか見えなかったがその表情からは
戸惑いや憤りや寂しさが感じられた。
それを見て他人事じゃ無さそうな顔をするれいなを見て
さゆと絵里がまた嬉しそうに笑った。
- 7 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/10(金) 02:31
- 「ガキさん良かったら私が愛ちゃんに言おっか?」
さすがリーダー。吉澤さんが私に提案してくれた。
でも私は「それだと愛ちゃんは本当に反省しないから」
と言って断った。
楽屋はなんとも息苦しい空気でいっぱいだったけど
こうなったら意地でも愛ちゃんを謝らせたい。
「・・・・・・なあ。ちょっと聞いて」
愛ちゃんが急に立ち上がって言った。
「あんな、今まで言われへんかった事あるんやわ」
愛ちゃんは妙にスッキリした顔をしていた。
私はその表情に戸惑った。
- 8 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/10(金) 02:32
- 「なに?みんな聞いてるから言ったら?」
と吉澤さんは突き放すように冷たく言った。
愛ちゃんは軽く深呼吸して言った。
「あっし・・・・・・宇宙人やってん」
愛ちゃんは「うげげげ」と小さなうめき声を出した。
そして突然、身体が腰から真っ二つに折れた。
驚きで楽屋がシーンと静まり返った。
「すごーい。宇宙人って柔らかいですね」
小春ちゃんが素直に驚いた。
私は「前屈しただけだから」と突っ込んだ。
小春ちゃんは「そう言えばそうですね」とはにかんだ。
- 9 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/10(金) 02:33
- 「リッスンツゥミー」
愛ちゃんが何を言ったのか聞き取れなかった。
少なくとも福井弁じゃない。まさか宇宙人語?
ざわざわと楽屋に緊張が走る。
あ。それが英語だとわかるまでしばらくかかってしまった。
英語だと気付いた瞬間、私の背筋に寒いものが走った。
愛ちゃんがやけに英語の勉強に熱心だったのは
地球の言葉を習得しようとしていたのか?
いやまさか。私の頭が混乱している。
「あっし・・・・・本当はソースカツ丼なんか嫌いやってんわ」
今度はこんこんが驚きの声をあげた。
ずっと愛ちゃんはソースカツ丼好き。だと思っていたので
ショックだったようだ。
- 10 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/10(金) 02:34
- 「で、何が好きなの?」
マコっちゃんも同期なので気になるらしかった。
実は私も微妙に気になっていた。
「実はオムライスが好きなんやよ。
オムライスのお米の色が故郷を思い出させるがし」
愛ちゃんはなんとなく誇らしげな顔で言った。
「え?もしかして愛ちゃんって火星から来たの?」
愛ちゃんはコクンと首を縦に振った。
「あのライスの赤い色を見れば募る寂しさも少し和らぐんやよ」
そう言いながら愛ちゃんは滴り落ちる涙を拭った。
「わかる。私も雪を見たら札幌を思い出すもん」
こんこんは泣いていた。マコっちゃんも小春ちゃんも。
私は突っ込みたくてしかたなかったけど
ミキティまで涙ぐんでいたので突っ込めなかった。
- 11 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/10(金) 02:35
- 「これがあっしと故郷を繋ぐ唯一のものなんやよ」
そう言って愛ちゃんは懐から赤い手ぬぐいを出した。
ってゆうか手ぬぐいじゃんそれ。と言いたかったが出来ない。
愛ちゃんと金輪際喋らないと宣言してしまったし。
「あ。もう行かなきゃ」
愛ちゃんはそう呟いて一歩一歩確かめるように歩き出した。
「みんな。今までありがとうな」
愛ちゃんは微笑んでいた。
私の脳裏に愛ちゃんと過ごした日々が甦る。
- 12 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/10(金) 02:37
- 出逢った頃は愛ちゃんが何を言っているのかわからなかった。
次第に何を言っているのかわかってきたけど
私が言いたいことを愛ちゃんはさっぱり理解してくれなかった。
それでも私たちは分かり合えるようになってきた。
これからは今よりもっと分かり合える。それなのに・・・・・。
「待って愛ちゃん。いかないで!」
私は愛ちゃんの背中に向かって泣いていた。
涙で目の前が見えないほどだった。
「え?でもそろそろ本番やよー」
私はギャフンと言った。
- 13 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/10(金) 02:37
- e
- 14 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/10(金) 02:38
- n
- 15 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/10(金) 02:38
- d
Converted by dat2html.pl v0.2