14 『愛ちゃん』とれいな

1 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/06(月) 18:29


14 『愛ちゃん』とれいな
2 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/06(月) 18:29
ずっと思ってた。
愛ちゃんに近付きたいと、そして、愛ちゃんを追い越したいと。

だからいつも愛ちゃんのことを見ていた。
愛ちゃんの言うことを実践すれば、真似すれば、近付ける。
そう思ってた。
3 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/06(月) 18:30
愛ちゃんは言った。

「頂点はないと思う」
「歌好きでしょ?」

それは某深夜番組の56期座談会。
先に収録を終えたあたしは後でテレビを見て愕然とした。

娘。に入りたての頃に「モーニング娘。で一番になる」と宣言した自分を恥じた。
愛ちゃんはそんなものをとっくの昔に超越してる。

「歌が好き」

あたしは次の日から一番を目指すことをやめた。
歌が好き。
ただそれだけでいいと思った。

愛ちゃんは優しく見守ってくれている。
そんな気がした。
4 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/06(月) 18:30
愛ちゃんは言った。

「なすびを食べると舌がダコダコになるやよー」

楽屋で新垣さん相手に話してるその言葉を聞いて、あたしは必死でなすびを食べ続けた。
誰も理解することの出来ないその感覚。
あたしがわかってあげたいと思った。

1日に50個のハイペース、それを2週間続けた。
それだけ食べているとさすがに見るだけでも吐き気がするようになった。
それでも食べることを止めなかった。

2週間後、舌はヒリヒリと痛いけれど、ダコダコの感覚はどうしてもわからなかった。
だから嘘をついた。

「分かる、分かるぅ!」

愛ちゃんはそのことを歌詞にして、ラジオで披露してくれた。
あたしはラジオの前で泣きながら一緒に歌った。

「ダコダコYeah! ダコダコYo!」

愛ちゃんに一歩近付いた。
そんな気がした。
5 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/06(月) 18:31
愛ちゃんは言った。

「じゃあ、あーしが飼ってたんだ」

某ローカル番組の前世占いで愛ちゃんが羊飼いの娘、あたしが羊飼いの犬と言われた時だった。
それまで「猫だ、猫だ」と言われてきたあたしにとって、それは衝撃の事実だった。
しかし、愛ちゃんが認めたことならば、もうあたしは犬以外の何者でもないのだ。

その日からあたしは自分を猫だと言う全ての人のことを否定した。
さゆが「れいな、やっぱり猫なんだよー」なんて言った時、「マジでどっか行けー」と叫んだ。
某ローカル番組のドッキリで小学生にモノマネを強要された時、思わず猫をやろうとしてしまった
自分を必死で抑えた。
某ローカル番組の新コーナーで猫のコスプレをさせられた時、最後まで「犬にして下さい」と
抵抗した(その願いは聞き入れられなかったが)。
春のコンサートツアーで「レインボー子猫」なんてやらされそうになった時、本番ではアドリブで
「レインボー子犬」と変えてしまった(スタッフさんに怒られたけど)。

愛ちゃんが「それでいいんやよ」って言ってくれてる。
ような気がした。
6 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/06(月) 18:31
あたしはそれからもひたすら愛ちゃんを見続けた。
愛ちゃんの出演したテレビ・ラジオ・雑誌は隅から隅までチェックして、その言動を全てA4の
ノートに書き込んだ。
学校の勉強ですらこんなに熱心に取り組んだことはない。

あたしは愛情と敬意を込めて、ノートに名前をつけた。
『愛ちゃん』と。
そのノートは、今日現在、7冊目に突入している。
そこに書かれてあることは、一日限りではなく、しっかりと継続している。

愛ちゃんは自分の姿を通して、あたし達に娘。の魂を伝えてくれている。
どんなにくだらない言葉でも、どんなにくだらない動きでも、その一つ一つに愛ちゃんの思いが
詰まっているのだ。
その気持ちに応えたい、心からそう思う。
7 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/06(月) 18:32
やがて、愛ちゃんの卒業が決まった。
あたしは愛ちゃんに近付けたのだろうか?
越すことが出来たのだろうか?

そのことを確かめるために、卒業コンサートの数時間前、愛ちゃんを呼び出した。
これまでの努力を全て打ち明け、7冊分のノートを見せながら、「これからのモーニング娘。は
自分が引っ張っていく」と告げた。
そんなあたしの言葉を聞いた愛ちゃんは一言こう言った。

「ありゃあ、あーし、そんなこと言ったっけー?」
「…はあ!?」
「ぜーんぜん覚えてないやよー。れーな、記憶力いいねー、あはっ」
「…あ、愛ちゃ…」
「あー!ガキさーん!!」

愛ちゃんは新垣さんの元へと行ってしまった。
8 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/06(月) 18:32
「ぜーんぜん覚えてないやよー、やよー、やよー…」

一番を目指すことをやめ、猫というキャラクターを否定し続けたあたしに残されたのは、もはや
ただの落書きと化した7冊のノート、なすびの食べ過ぎで感覚が麻痺した舌、そして愛ちゃんが
歌うあの歌だけだった。

あたしは今までのことを振り返り泣きながら歌った。

「ダコダコYeah! ダコダコYo!」
9 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/06(月) 18:33
『愛ちゃん』と07(冊目)   おしまい
10 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/06(月) 18:33
 
11 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/06(月) 18:33
 
12 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/06(月) 18:33
 

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