1 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/11(金) 23:16
2 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/11(金) 23:17
毎回、ハローのコンサートの後には、メンバー全員がそれぞれインスタントカメラで撮った
写真を使って、手作りアルバムみたいなのを作っている。
唯ちゃんは、家に帰るとちょくちょくその事を忘れてしまうので、仕事の合間の空き時間に、
自分のページに貼る写真だけでも切って用意しておこうと思って持ってきた、と、鞄から
クリアファイルに入れた写真の束と、柄の部分が白い手の平くらいの大きさの鋏を取り出し、
テーブルの上に置いた。

楽屋で、あたしは相槌を打ちながらその様子を何となく眺めていた。
我らがリーダー石川さんは、先に他の仕事が入っていて、まだそっちが終わっていないらしく、
楽屋には今あたしたち二人だけだ。
唯ちゃんは写真の一枚を右手で、そして同時に左手で鋏を持って、そのまま写真を切る作業を
始めた。
3 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/11(金) 23:17
「唯ちゃん、それも左なんだ」

あたしがそう言うと、唯ちゃんは一度作業を止めてこっちを見た。
彼女が左利きなのは、箸やペンを持っているところを見ていたから知っていたけど、鋏は
初めて見たので、ついそう言ってしまったのだった。
言ってから、しまった、と思った。
いちいちそう聞かれるのが差別されているみたいで嫌だ、と、テレビ番組の街頭インタビューで
答えていた左利きの人が居た事を思い出したのだ。
でも唯ちゃんは、

「何でも左なんよぉ」

と、いつものゆっくりとした関西訛りで返事をした。
良かった、気にならなかったみたいだ。

今まで左利きの人が鋏を使うところをじっくり見たことのなかったあたしには、唯ちゃんの左手が
全く別の生き物のように勝手に動きながら、写真に写っている何かの形に沿って器用に切り込みを
入れているように見えた。
勿論、もし彼女が右手で同じ事をしていたら、そんなことはちっとも思わなかっただろう。
4 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/11(金) 23:18
「あーあかんなあ、うまく切れん」

感心していたあたしの耳に不満げな声が届いて、同時に彼女は首を傾げた。
簡単に切っているように見えていたが、実はそうではなかったらしい。

「使い慣れてるやつやないもんなぁ」
「そういえばその鋏、新品っぽいね」
「来る途中コンビニで買うてきてん」
「じゃあそれ普通の右利き用?
 使い慣れてるやつって左利き用なの?」
「右やねんけど、ちっちゃい頃からずーっと使てるから。
 左利き用てめっちゃ高いねんて。見たことないけど」

そう言いながら、大きな溜息をついて鋏をテーブルに置いたので、あたしは興味本位で
それに手を伸ばし、左手で持ってみた。
5 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/11(金) 23:18
「絵梨香ちゃん切ってみる?」

するとすかさず唯ちゃんが、一枚の写真をあたしに差し出す。
何となく、素直に受け取ってしまった。

さて左手で持ってみた鋏、感覚を確かめるようにニ、三度チョキチョキと空気を切ってみて、
それだけでもう違和感があった。
まるで、初めて使う道具を持ったようだ。

「うわー絵梨香これ絶対無理だよ」
「別に失敗してもええよ」
「……いいの?」
「うん」
「いいんだ。唯ちゃん、今の忘れないでね」
「絵梨香ちゃんは気にしぃやなぁ」
「えーだってさぁ、嫌な予感が……まあとりあえずやってみるけど」
6 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/11(金) 23:18
とりあえずとは言ったものの、あたしは慎重に狙いを定めて、写真に最初の切り込みを入れた。
ところが、確認のために刃を少し浮かせて覗き込んでみると、思っていたところより一ミリ
くらいズレたところが切れてしまっている。

「うわ、何でこんなとこ切れてんの」
「面白いやろぉ」
「いやいや、超スリリング」

でも幸い、そのズレは修正のきく部分だったので、気を取り直してまた鋏を入れた。
慎重にやって駄目だったからと更に慎重になったせいで、左手全体に力が入って、特に親指と
中指と人差し指は柄の部分に強く押し当たってだんだん痛みが出てきた。

「指痛い」
「絵梨香ちゃん、眉間に皺入ってる」
「だって難しくって…………あっ!」
7 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/11(金) 23:19
……悪い予感が当たってしまった。
微妙な力加減を間違って、鋏は予想外のところをスパッと切ってしまったのだ。
一瞬の出来事だった。
あまりのことに呆然としていると、手元を覗き込んだ唯ちゃんが、

「あ〜あ〜、やってもうた〜、あ〜あ〜」

と大袈裟なリアクションで煽ってきたけど、あたしはそれどころではない。
どうしようどうしよう。とんでもないことをしてしまったというショックで、しばらく言葉が
出なかった。

「絵梨香ちゃん絵梨香ちゃん」
「これ、どうしよう……」
「絵梨香ちゃん、大丈夫やって」
「だ、だって、こんなざっくり」
「だたの写真やろ。見せきゃわからんやん」
「そうなんだけど……」
8 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/11(金) 23:19
「にしてもよりによって……絵梨香ちゃん、わざと?」
「わざとじゃないよ!渡したのは唯ちゃんじゃん」
「どうだかねえ」
「違うって、ほんっとに」



一度目を閉じて深呼吸したあたしは、改めて恐る恐る手元を見た。
手の平に嫌な汗をかきはじめた右手に持ったままの写真には、首を真っ二つにされてなお
とびきりのチャーミースマイルを見せている、石川さんの姿が写っていた。
9 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/11(金) 23:20
ちょっきん
10 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/11(金) 23:20
ちょっきん
11 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/11(金) 23:20
ちょっきんなー

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