28 メイクミラクル
- 1 名前:28 メイクミラクル 投稿日:2005/06/19(日) 01:41
- 28 メイクミラクル
- 2 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/19(日) 01:42
- 小春ちゃんはいつもどこか困ったような顔で笑う。
スタジオの隅、やたら嬉しそうなれいなの横でずっと笑顔を見せている彼女を目で追いながら、私はそんなことを思った。
レッスン開始までまだ時間があるのに、先輩風をふかすれいなに促されて小春ちゃんは早々とステップの練習をしている。
すぐにできるような簡単なステップなんだけど、れいなに一挙一動をまじまじと見られて緊張しているのだろう。彼女の足はヨタヨタもつれ合う。
なんとも微笑ましい。
「おはよ。なに笑ってんの、さゆ」
ふらふらと現れた絵里が、頬の緩んだ私の隣に腰を下ろした。
私は彼女の視線を前方へ促す。
「いや、ほら。小春ちゃん、すごい緊張してる」
私の指差す先、例の二人のやり取りをしばらく眺めていた絵里はいきなりぶはっと吹き出した。
「あはは。小春ちゃん、なんかロボットみたい」
「え?」
「ほらほら、ウィーンガシャッ、ウィーンガシャッ」
小春ちゃんがギクシャクと手足を動かすたびに、絵里はにやついた顔で大げさな物まねをして見せる。
相変わらずひどい。
- 3 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/19(日) 01:43
- しばらく二人の練習風景をぼんやりと眺めていると、黙り込んでいた絵里が唐突に口を開いた。
「つんくさんがさ、ロボット研究所みたいなところに発注したんだよ。きっと」
「はあ?」
絵里の妄想は進行中だった。
突拍子もない言葉に思わず彼女の方を窺うと、絵里は薄ら笑いを浮かべて小春ちゃんに視線を投げている。
「…でも、ロボットの2足歩行って結構難しいって聞いたことあるけど」
「じゃあ、あれだ。中に人がいるんだ。で、赤いボタン押したら笑う、とか」
「なにそれー」
私はくすくす笑いながら絵里の肩を小突いた。
スタジオにはメンバーが徐々に集まってきていて、次々投げかけられる挨拶を返しつつ私はゆっくりと腰を上げた。
ジャージをパタパタとはたいてから、急かすつもりで絵里の背中を軽く叩くが彼女は立ち上がろうとしない。
れいなと小春ちゃんはまだ練習を続けている。
- 4 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/19(日) 01:43
- 「後藤さんとか入ってたりして。なんたってゴマキの再来だし」
絵里は私を見上げて、小声でそう告げる。声を潜める意味がわからない。
「無理だよー。後藤さん背高いもん」
「じゃあ、あの子は? あの、キッズの小さい子」
「はいはい。もうレッスン始まっちゃうよ。ほら、早く」
なかなか腰を上げようとしない絵里の両腕を掴んで引っ張り上げると、ようやくぐねぐねと立ち上がった。
「ああ、でもダメかー。ミラクルなんだから、娘。の曲すでにマスターぐらいじゃなくちゃ…」
それでも絵里はまだ、ぶつぶつと呟いている。
「今までの娘。の曲が全部踊れて、あの中に入れるくらい小さい人かあ。さゆ、そんな人いない?」
「…いるわけないでしょ」
笑いながら流した目線の先には、なんだか気の毒になるくらい全力ではしゃぐれいなとぎこちなく踊る小春ちゃんの姿。
その小さな背中に既視感を覚えたのは、たぶん私の気のせいだと思う。
- 5 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/19(日) 01:43
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- 6 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/19(日) 01:44
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- 7 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/19(日) 01:44
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