22 それ行け 改造人間ベーグル・タイガー

1 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/17(金) 17:09
22 それ行け 改造人間ベーグル・タイガー
2 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/17(金) 17:10
とある昼下がりの休日。気持ちの良い陽気の中、
ショッピングモールの一角にあるベンチに二人の少女が
ガイドブックを広げて座っている。

「この後、どこ行く? あさ美ちゃん」
「う〜ん……このクレープ屋さんと、こっちのたこ焼き屋さんと……」
「あ! このアメリカンドッグもよくない?」
「あ〜、それもいいな〜」
紺野あさ美と小川麻琴が、
ショッピングモール内の飲食店のページを見ながら悩んでいると、
離れた場所から叫び声が聞こえてきた。
3 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/17(金) 17:11
「ん? 何だ?」
「何だ?」
二人がそちらを見ると、二人の方に逃げる様に走ってくる群衆の姿があった。
何が起きたか分からず群集を見ていた二人は、目を丸くした。
黒の仮面と全身タイツを着たような一団の姿が群衆の隙間から見えたからだ。

麻琴があさ美をかばう様に立ち上がった。
「あさ美ちゃん! ここは私に任せて逃げて!」
4 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/17(金) 17:12
そう叫んで振り向くと、そこにはあさ美の姿はなかった。
不思議に思った麻琴がさらに後ろを見ると、
一目散に逃げるあさ美の後姿が見えた。
「あさ美ちゃーん!」

ショックを受けた麻琴は思わず叫んだ。
その直後、後ろから力強く掴まれた感触を感じた麻琴が恐る恐る振り向いた。
そこには麻琴の両肩をしっかりと捕まえている全身タイツの姿があった。
5 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/17(金) 17:13
第二次大戦中のドイツ軍の親衛隊を思わせる仰々しい黒一色の軍服に、
やはり黒のマントを羽織って鮭とばを食べている女性が、
全身タイツの一団の様子を満足げに見ていた。後ろには怪人と呼ぶべきであろう存在が控えている。

「そうだ。その調子で、愚民どもを混乱に導くがいい!」
高らかにそう宣言すると、全身タイツの戦闘員の一人が麻琴を連れてやって来た。
逃げようと抵抗していた麻琴は、黒ずくめの女性に突き刺すような視線でにらまれ恐怖を感じ、
ピタリと動きを止めた。麻琴を見た女性は、何かを思いついたのか笑みを浮かべた。

「こいつを餌に、あの裏切り者をケチョンケチョンにしてやる」
6 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/17(金) 17:15
その頃、飯田総合科学研究所では吉澤ひとみがパソコンの画面を凝視していた。
部屋に入ってきた飯田圭織は、真剣なひとみの様子に首をかしげて声を掛けた。

「何見てるの?」
ひとみは画面から目をそらさずに、

「アンパンマンのキャラクターに、肉じゃががいるって言ってんのに、
ののとあいぼんが信用しないからさー」
「ふーん。そういえば、今日って、石川とデートじゃなかったっけ?」
「ん? まだ時間あるから」
ひとみはパソコンの時計を見て答えた。
7 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/17(金) 17:16
圭織は、近くの椅子に座って、
「ところでさあ、あっちの調子はどう?」
「……あっちって、あっち?」
振り向いて、ひとみは訊き返した。

「うん。あっち」
「ばっちり」
サムズアップをして答えたひとみを見て、圭織は満足そうに頷いた。
8 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/17(金) 17:17
「石川も、自分だけが気持ちいいってのも寂しいだろうからね」
「も〜、ホント、カオリンのおかげであたしと梨華ちゃんの愛は、より一層深まったからね」
すっかりにやけ面のひとみを見て圭織は肩をすくめると、テレビの電源を入れた。

『――のショッピングモールで、謎の集団が暴れています。
なお、ショッピングモールに来ていた少女が人質になっている模様です――』
「行ってくる!」
臨時ニュースを見たひとみは大急ぎで部屋から飛び出した。
9 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/17(金) 17:17
「そこまでだ、UFAの怪人ども!」
UFAの幹部のジェネラル・ミキと戦闘員達と麻琴は、
力強い声のした方向――ショッピングモールの一角の屋根の上を見た。
そこには、黄色と白を基調にしたボディに虎をモチーフにしたような頭の変身ヒーローと思われる存在がいた。

「来たな、ベーグル・タイガー!」
ジェネラル・ミキはベーグル・タイガーに向かってそう叫んだ。
10 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/17(金) 17:18
「またあんたか。バイト幹部!」
「それを言うな! 大体、前から気になってたけど、何なの、そのベーグル・タイガーって名前は!」
「あたしの好きな物だ!」
ベーグル・タイガーは力強く言い放った。
ちなみに、この名前を名乗って初めての戦闘で出会った恋人の名前も入れようかと考えたが、
さすがに名前が長くなるので泣く泣く不採用にしたことがあった。

「それから、その身体は組織に改造してもらったんでしょうが! この裏切り者!」
「最初っから組織に入るつもりはなかったんだから、裏切り者じゃありません! 
それに、最終的にこの身体に改造したのは組織の人間じゃないしね!」
「くっ……」
悔しげなジェネラル・ミキの横で麻琴は子供の口喧嘩レベルの舌戦を口を半開きにして見ていた。
11 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/17(金) 17:18
「とうっ!」
ベーグル・タイガーは屋根の上から飛び降りた。
それを見たジェネラル・ミキは麻琴を自分の前に持ってきて、

「この下膨れを無事返して欲しかったら、おとなしくしてな!」
「ひどーい!」
麻琴は抗議したが、ジェネラル・ミキに睨まれおとなしく黙った。
12 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/17(金) 17:19
「行け! 戦闘員ども!」
ジェネラル・ミキの命令に従って、戦闘員達はベーグル・タイガーに襲い掛かった。
しかし、ベーグル・タイガーがボコボコにされる様子を想像していたジェネラル・ミキは目を丸くした。
ベーグル・タイガーがあっさりと反撃したからだ。

パンチやキック、チョップだけでなく、
近くにあったゴミ箱を逆さにして戦闘員に被せたり、ベンチを使って戦闘員達を薙ぎ倒していく。

およそ正義の味方らしくない戦い方に呆気にとられていたジェネラル・ミキだが、
気を取り直して控えていた怪人に命令した。
13 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/17(金) 17:19
「行け! 怪人プリプリケメコ!」
「キリキリイクワヨー」
戦闘員達を倒し終えたベーグル・タイガーは、
自分に向かってくるプリプリケメコを見て駆け出した。

「スーパー・タイガー・キィーークッ!」
渾身の力が込められた右脚をくらうと、
プリプリケメコはジェネラル・ミキと麻琴の頭上を大きく飛び越え、
地面に激突して大爆発を起こした。
14 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/17(金) 17:20
「ちょっと待って!」
「なに」
「怪人と戦って、最後の止めに必殺技を出すのが普通でしょ! 何でいきなり使うの!?」
「時間がないから」
「時間!?」
「この後、デートなんだよね」
「デ、デート……」
私用最優先のベーグル・タイガーの発言に、ジェネラル・ミキだけでなく麻琴も呆然としている。

「改造人間のくせに、生意気な!」
「確かにあたしの身体はだいたい機械で出来てるけど、心は人間のままだからね!」
「こうなったら、このジェネラル・ミキが直々にお前を」
怒りに震えるジェネラル・ミキがそこまで言ったところで携帯の着メロが聞こえた。
15 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/17(金) 17:21
「ちょっと待って」
ジェネラル・ミキはそう言うと、内ポケットから携帯電話を取り出した。

「もしもし?」
『美貴たん、今どこにいるの?』
「今、バイト中なんだけど」
『私が奢るから、焼肉食べに行かない?』
「行く、すぐ行く!」
ジェネラル・ミキは携帯をしまうと、

「ものども、撤収!」
その掛け声と共に、倒されていた戦闘員達もジェネラル・ミキに続いてその場から立ち去っていった。
16 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/17(金) 17:22
解放された麻琴は、ベーグル・タイガーに駆け寄る。
「ありがとうござ」
「怪我はない? 下膨れ」
ベーグル・タイガーの言葉に足を止めた麻琴は、

「……バカー!!」
目に涙を浮かべて走り去った。

「まったく、照れちゃって」
その後姿を見ながらベーグル・タイガーは、
自分の発言にまったく気付かないまま、恋人との待ち合わせ場所に向かった。
17 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/17(金) 17:23
「ごめん、梨華ちゃん! 待った?」
「ううん。私も今来たところだから」
そう言うと、石川梨華はひとみの手と自分の手を繋いだ。

「UFAの連中が出てきちゃってさー」
「カオタンから連絡来たから、知ってるよ」
「よかった〜」
その言葉に、梨華が怒ってないか心配していたひとみは、ほっと胸を撫で下ろした。

「映画の後、どこ行こうか?」
「うーん、ご飯食べて……」
「うん」
「その後は〜」
上目遣いにひとみを見る梨華の眼差しに、ひとみは顔を赤くしながら頷いた。
18 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/17(金) 17:23

ベーグル・タイガーの一日はまだ終わらない。
19 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/17(金) 17:24
 
20 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/17(金) 17:24
 
21 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/17(金) 17:24
 

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