17 魔針

1 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/16(木) 02:17
17 魔針
2 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/16(木) 02:19


住む人もとうに無く、朽ち果てるを待つばかりの古びた洋館。
その、誰もいないはずの洋館から、少女の悲鳴が聞こえてくる。
3 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/16(木) 02:22


「何を怖がっているのだ。私の開発した『これ』によってお前ら
は救われるのだぞ?」

闇のような色をした外套を身に纏った、顔色の悪い男は言う。
しかし、目の前にいる少女の顔が緩むことは無い。

「れいなを、おうちに帰すたい!」
「だめだね」

年端もゆかぬ少女の願いを、男は無碍に断る。
4 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/16(木) 02:28
男は懐から、何かを取り出した。

「さあ、おとなしくその白い肌を私の前に晒すのだ。暴れると、こ
れが狙いを外れて、肉を割き血を吸ってしまうからね」

窓から挿す月光が、男の取り出した先端に針のついたそれを照らす。
鋭い切っ先が、光を怪しく跳ね返していた。

「き、来たら大声で叫ぶっちゃよ!」
「ここは人里離れた洋館だ。いくら叫んでも誰も助けに来てはくれま
いよ。さあ、おとなしく私の針を受けるのだ」

男が、じり、じりとれいなに近づく。
それに合わせて、れいなも、一歩ずつ、後ずさる。
まるで掛け合いのように続く前進と、後退。
それが終わるのと、れいなが背中にひんやりとした感触を得たのは、
ほぼ同時のことだった。
5 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/16(木) 02:30
「行き止まりだねえ。無駄な抵抗は、よすんだ」

男はゆっくりとれいなに近づき、そして布を捲りあげる。
眩しい白い肌が、露になった。

「きゃああああああ!!!!!」
「ふふ、そうら、行くぞ」

男の取り出した針が、れいなの柔肌を貫こうとした、その時だった。
6 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/16(木) 02:38
「そこまでにしておきな、ロリコンおやじ」

どん!と荒々しく扉を開ける音とともに聞こえるのは、勇ましい女
の声だった。

「おやじ?僕はまだ20代だが。まあいい。ようこそ、お嬢さん」

男は女の顔を見る。鋭い目つきが印象的であった。
その女は背中から、鞭を取り出しそして床に振るった。古くなった
床の板が千切れ飛び、木屑が撒き散らされた。

「ここんとこ村の少女たちが次々に攫われて、赤い点を肌につけて
帰ってくるって話を聞いてね。職業柄、気になってここまで来たん
だよ」
「ふむ」

男は動じることも無く、二、三歩歩いてから、

「となると、君もこの針を受けたほうがいい」
「お断りだね!」

女が手首を撓らせ、鞭を飛ばす。
男の手がしたたかに打たれ、針のついたそれは床に落ちそして砕け
た。
7 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/16(木) 02:43
「ふん、針なら何本も用意してあるんだ」

男が再び懐から針を取り出そうとする。
しかし。
それより先に、女の鞭が男の体を打った。

ばしっ!
ばしっ!
ばしっ!

「も、もっと、いや、もうやめて!」
「このヴァンパイヤハンター美貴様を舐めるんじゃないよ!」

男は美貴の鞭の前に完全に屈服してしまった。

「このロリコン野郎、これに懲りたらもう幼い女の子に手なんか
出すんじゃないよ」

尻を蹴られもんどり打って倒れた男は、情けない声を上げると脱兎
のごとく逃げ出してしまった。
8 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/16(木) 02:46


「みきねえ!」

れいなは美貴に飛びついた。
余程怖かったのだろう、体がぶるぶると震えている。

「みきねえ、とか言ってあたしたち初対面じゃん」
「うるさいっちゃ!みきねえはみきねえたい!」

そう言いつつも泣いているれいな。
美貴はれいなの頭をくしゃくしゃと撫でると、吸血鬼が去ったあと
の村の平和を何となく思った。
9 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/16(木) 02:46
10 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/16(木) 02:47
11 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/16(木) 02:47
らない。
何故なら、この1ヶ月後に村は壊滅したからだ。
12 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/16(木) 02:52
男は、遺伝子学や病理学を学んだ科学者だった。
そして偶然立ち寄った村が伝染病蔓延の一歩手前まで来ていること
に気づき、対策を打つことにした。

予防接種。

しかし、文明の遅れた村に予防接種などという知識はなく、男は村
を追い出された。
仕方なく、村はずれで遊んでいる幼い少女を攫い、空き家である洋
館で予防接種をしていたのだが。
13 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/16(木) 02:53
結局美貴によってその洋館すら追われてしまい、伝染病は瞬く間に
村を覆いつくしてしまったのだった。
14 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/16(木) 02:53
今度こそ
15 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/16(木) 02:53
16 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/16(木) 02:54
17 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/16(木) 02:54

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