12 偽装機械
- 1 名前:12 偽装機械 投稿日:2005/06/14(火) 23:35
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12 偽装機械
- 2 名前:12 偽装機械 投稿日:2005/06/14(火) 23:36
- 「いいかなよっすぃ? なんか用事あった?」
「あっ、いや何にもないよ……何その箱、デッカイ」
「廊下に出ない? ここ少しうるさいし」
なかなか騒めいている楽屋から石川と吉澤は廊下に出た。
「早く早く……あそこで話しよっか」
腕ばかりを引っ張られても嫌な顔一つしない間柄。
蛍光灯で影のできた階段の下に赴く。
「人間の深層心理って興味ある? 深層心理」
「場合によってはあるっちゃーあるけどね。で?」
「他の人には言わないでね。では」
夏道を小走りしてきたかのように上気する石川の声は自称カナリア。
「変な店になぜだか行っちゃったんだよね、原宿の裏通り。
とんでもないもの見つけちゃった。日本海側のなんちゃらじま――」
「ちょっと梨華ちゃん早く本題に入ってよ。何? 嫌がらせ?」
「違うよぉ〜ん」
かわいいダイヤのイミテーションリングをした右手を振って否定するが
数多返り見てきたうちで最もキモイ語尾に吉澤は言葉通りひいてしまった。
- 3 名前:12 偽装機械 投稿日:2005/06/14(火) 23:37
- 「梨華の話をきちんと聞いてほしいの」
「だったらそのキモイ話し方やめてくんない? マジキモイし」
「抜けないなぁこの話し方。イヤ〜ン」
「笑顔で聞いてるうちにやめないとホントに怒るよ。……で?」
紺のボックスティッシュ大の箱を石川の手から優しく奪い、
さっさとダイヤルを回してみるも開けられなかった。
「ルールを守らないと開きません。……そうだ!」
「不安定な持ち方してるからかなぁ。で、何か思いついたわけ?」
「ヲタク呼ばわりしないって約束してくれる? ……やった!」
箱ごとウンウン頷く吉澤に石川は言葉とともに一発拍手。
「私に返して。……フッ! 簡単に開けられるでしょ」
「頑張ったつもりなんだけどなぁ……じゃあ話を聞こう」
「頑丈だからしょうがないっか」
少しバタバタしてきたので沈黙一過。
- 4 名前:12 偽装機械 投稿日:2005/06/14(火) 23:37
- 「よっすぃの現在の性格は表? 裏?」
「は? 現在の性格?」
「確かにこんな説明じゃわかんないよね。つまり、
例を挙げれば大勢の人たちといる時を
俗に言う表として一人でいる時を……なんか付いてるよ、右の眉」
束の間遮る石川の愛想。
「……いいよ、話し続けて。付いてたの多分汗」
「続けるよ。どっちだと思う今の性格。簡単に考えて簡単――」
「じゃあ裏にするさ」
「根が意外と暗いからねよっすぃは。私も暗いけどさ、どーせ……」
「暗い! 暗いよ梨華ちゃん! ……ふざけてないで話する!」
「なによぉ、そんなに怒んなくても。……で、話に戻ると
乱暴に扱ってたこの箱。見たことない? 何か思い浮かぶ?」
小さな鉛筆に見立てた人差し指で空中に記される英文。
「ラッキーファンタスティック映画」
「……無理してボケなくてもいいのに。なんていうか、そうとう荒業」
「無理してボケたのにそんなこと言わなくてもいいじゃんか。すこしだけ憂鬱」
- 5 名前:12 偽装機械 投稿日:2005/06/14(火) 23:38
- 「う〜ん、そんなこと言われても……ごめんね。でね、箱の話に
行くけどもこれ実は自動性格診断箱なんだな」
朝日と見合うだけの笑顔を放つ石川の目はまるで偃月。
「残り一つって言われて買っちゃったんだ。でも使うのが怖くて
押入れにしまってたんだけど使わないともったいないし……」
「ん〜……で、アタシに使えと言うんだね、しかも今」
「悔しいじゃん買ったのに使わないって、そう思うでしょう。
ヤでしょよっすぃも。実際使うの」
「面白そうじゃん。こんなもん参考にもならないよ。ついでだよついで」
「まぁそうだけどさぁ。こういうのって軽率には扱えないよ、けいそ――」
羊のように油断していた石川から箱を奪う吉澤はまさに駄々っ子。
赤子よろしく無邪気に箱を眺める吉澤、評価はさていかが。
「ポコッてなってる所あるけどこれに何かするの? ここだよここ」
「ケータイのアンテナみたいになってる……そうそれ。それがピン。
普段は塞いで使う時に取るらしいんだけど怖くて……。これってエゴ?」
「クイズなら不正解だけどまぁ今回はエゴで正解じゃないの?」
「ここのピンを抜いて息を穴に吹きかけると箱の中に結果
絵と文字でその人の性格が浮かび上がってくるんだ、
て店のおじさんが言ってた。わからないことない?」
「楽勝楽勝。むしろこっちが聞きたいよ。いいのこんな簡単で?」
- 6 名前:12 偽装機械 投稿日:2005/06/14(火) 23:38
- 「あんまりわからないけどそれしか言ってなかったからいいんだと思います、です」
「相当緊張してるでしょ? 語尾が変だよ」
知ったかは知らないよりも悪。
顔がワサビの大盛りを見た時のような不安色に染まる石川。
「先に謝る、ごめんねよっすぃ。よくわからないのになまじっか
気にしないで買っちゃったから……」
「つまんないこと言わないでよ。結構楽しそうだからな」
「夕食おごるから許して。いい?」
「嬉しいってアタシが言ってるんだから心配しないでいいってな」
モノフォニーが聞こえる階段の暗い。
「面倒見がいいとか多分出るよ」
「バレーやってて体育会系だから? どうなんだろう」
「見えない努力を怠らないとか意外な
柔軟性を持った性格だったりして。どうなの?」
「わかんない、だからこれやってるわけで」
- 7 名前:12 偽装機械 投稿日:2005/06/14(火) 23:39
- 年齢なんて関係ない全世代の女性共通のドキドキ。
結果の出る前だからと油断しているとこんなことに。
「エックシ!!!」
「え〜何そのくしゃみありえないな。
評価はまだ出ないのかなぁ……あっ、これそうじゃない?」
目下明記されていた文字に二人とも鬱気。
「もしかして、この『普通』っていうのがよっすぃの真の性格に――」
「ヤダヤダ! 嘘だぁ! アタシ普通じゃないし。
絶対間違ってるよ、これは間違ってるな」
「せっかくやってもらったのにへこむようなことになってごめんなさい。
ずっと今月はジュース奢るから。お願い怒らないで」
不満や愚痴を吉澤が漏らしたことはいうまでもない。そりゃそーだよね。
- 8 名前:12 偽装機械 投稿日:2005/06/14(火) 23:39
- 機械と
- 9 名前:12 偽装機械 投稿日:2005/06/14(火) 23:39
- 書いて
- 10 名前:12 偽装機械 投稿日:2005/06/14(火) 23:40
- なんと読む?
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