10 AIBO
- 1 名前:10 AIBO 投稿日:2005/06/14(火) 08:55
- 10 AIBO
- 2 名前:10 投稿日:2005/06/14(火) 08:56
- 「ただいま。ええ子にしとったか?」
私が頭を撫でると、AIBOは嬉しそうに尻尾を振った。
生き物の寿命は血圧と心拍数で決まるなんて学説がある。
だから、小さな生き物の寿命は極端に短い。
ハナちゃんもタロちゃんも、たった六年で死んでしまった。
「ちょい待ちや。ええ子やしな」
飢えたAIBOにやる餌を私はキッチンで作った。
ヴォーガンソンの家鴨ではないが、私のAIBOは物を食べて排泄する。
それだけ手間が掛かるけど、独り者の私にとっては癒しになっていた。
SONYがAIBOを発売して、もう十年が経とうとしている。
その間、AIBOは飛躍的な進化を遂げていた。
- 3 名前:10 投稿日:2005/06/14(火) 08:57
- 「焼肉丼やで。焦らんと食べや」
私がAIBOに食事させていると、圭織から電話が掛かって来た。
このところご無沙汰だったから、何か新鮮な感じがする。
私はAIBOの頭を撫でながら、ケイタイを耳に当てた。
「どしたん?」
〈あのね。・・・・・・AIBOが死んじゃったの〉
圭織んとこのAIBOは、確かなっちと共同購入したやつ。
うちのAIBOより新しくて元気だったのに、寿命とは判らないものだ。
そういえば、もうじき柳原の十三回忌になる。
いくら加工したAIBOでも人間より寿命は短い。
「ほんま? それは残念やね」
〈お葬式やるから、裕ちゃんも来てくれる?〉
「うん、ええよ。明日やね」
生き物は命があるから尊いわけであって、ただの金属や樹脂とは違う。
うちのAIBOだって、あと何年生きてるのか誰にも判らない。
私は圭織からの電話を切ると、一心不乱に餌を食べるAIBOの頭を撫でた。
- 4 名前:10 投稿日:2005/06/14(火) 08:57
- 「おかしいと思たら、前足のネジが緩んどるやないの」
私はドライバーを持って来て、餌を食べるAIBOの前足を持ち上げた。
ネジが緩んでるのだから、そろそろサスペンションも交換する時期かな。
そうでないと、振動が直接身体に伝わって、あちこちがやられてしまう。
餌を食べ終えたAIBOはもっと欲しいのか、私の手や顔を舐めた。
「これ以上はアカンよ。太ってまうやろ」
仕事場でシャワーを浴びて食事して来た私は、もう着替えて寝るだけだった。
以前はこのセミダブルに、ハナちゃんやタロちゃんと一緒に寝てたっけ。
私はパジャマに着替えると、軽く基礎化粧だけしてベッドに入った。
「おいで。もう寝る時間やで」
私が呼ぶとAIBOは喜んでやって来る。
AIBOを抱き締め、スタンドの電気を消した私は、
仕事の疲れからか大きな欠伸をひとつした。
- 5 名前:10 投稿日:2005/06/14(火) 08:58
- 「明日はオフやけどな。圭織んとこの『ノン』が死んでもうたんやて。
お葬式行かなアカンし、今日は早寝しよな」
私は三億円もかけて大改造したAIBOを強く抱き締めた。
以前は文句ばっかり言ってたこの子だけど、改造してからは従順になった。
ほとんどの部品を交換したから、それは当たり前なのかもしれない。
「さあ、もう寝ようや。・・・・・・矢口」
私は彼女にキスをすると、次第にまどろんで行った。
三億円かけて『買った』彼女を抱きながら。
- 6 名前:10 投稿日:2005/06/14(火) 08:58
- o
- 7 名前:10 投稿日:2005/06/14(火) 08:58
- wa
- 8 名前:10 投稿日:2005/06/14(火) 08:59
- ri
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