28 カフカの「変身」ぽい出だしの話
- 1 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 21:11
- 28 カフカの「変身」ぽい出だしの話
- 2 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 21:13
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ある朝、吉澤ひとみがなにか気がかりな夢から目を覚ますと、自分が寝床
の中で一匹の巨大な虫に…ではなく自分の股間に一匹の巨大な虫がいるこ
とに気づいた。
「な、なんじゃこりゃああああ?!!!」
思わずジャージの中に手を突っ込みそれを確認するひとみ。それは適度に
硬く、そして適度に生温かかった。
もしかしてこれは?
はっとして寝床を飛び起き、ルパンダイブのようにあっという間に全裸に
なって鏡の前に立つ。
昨日までなかったモノが、自分の股間にぶら下がっていた。
ひとみは最初自分のオッサンキャラが高じて本当に男になってしまったの
かと思った。しかしどう考えてもそれはおかしいし、納得できることでは
なかった。
- 3 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 21:14
- それにしても、だ。
朝っぱらから全裸になってナニをぶらぶらさせているひとみ。何と言う光
景だろう。かつて加護亜依はひとみの全裸を目撃して「よっちゃんきたな
ーい」という心無い一言を浴びせかけたが、今のひとみの姿は汚いどころ
の話ではない。生えちゃってるのだから。
途方も無い絶望感に襲われながら、蹴脱いだジャージをもう一度着なおす。
どうせ生えるならもう少し大きいやつが、と思ったがそれは心のうちにし
まうことにした。
- 4 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 21:16
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数時間後。
ひとみは生えてきちゃったものは仕方が無い、と開き直りテレ東のスタジ
オへと向かう。幸い今回のハロモニの内容はスタジオトーク。「オカパイ
に挟まれろ!ちちびんたゲーム」や「梨華ちゃんの太ももに隠された秘密
の文字を探せゲーム」をやることになってタケノコタケノコニョッキッキ
する心配が無いのは、ひとみにとって何よりの救いであった。
「みんなおはよっす」
何気ない振りを装い楽屋に集まるメンバーに挨拶するひとみ。だが、皆の
様子は一様に暗かった。
「あれ? 暗いぞお前らー。これからお仕事なんだから元気出して行こうぜ?」
サブリーダーらしくそんなことを口にするひとみだったが、さすがにいつ
もと雰囲気が違うことに気がついた。そこへ、同期の石川梨華が近づいてきた。
「よっすぃーおはよ」
「おはよー梨華ちゃん…って、え!?」
ひとみが驚くのも無理はない。梨華の髪が、あり得ないほどの金髪になっ
ていたからだ。
- 5 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 21:17
- 「どうしたのさ梨華ちゃん、卒業が近いからってイメチェン?」
しかし梨華は首を振る。
「実はね、朝起きたら急に髪の色が変わってたの」
「まっさかー、どうせまた梨華ちゃん、『実はね、ぷっ…寝てる間に染髪
料のびんに頭突っ込んじゃったみたいでえ…ぷぷっ…頭金髪になっちゃっ
たんですよー、おもしろくないですか?』、ってネタなんじゃないの?」
そう言いつつひとみは自分もまた朝起きたら股間にマジュニアが生えてい
たことを思い出した。
「よっちゃんさん…」
さらに背後にはいつの間にか藤本美貴がいた。
- 6 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 21:18
- 「あっ、おはようミキティ…ってどうしたの? 花粉症にでもなった?」
美貴はキティちゃんの絵の描かれたマスクをしていた。
「ううん、ちょっとね…」
何かを言い出しそうなのに、なかなか言い出さない美貴。それに業を煮やし
たのが、それまで遠くでひとみたちの様子を窺っていた田中れいなだった。
「ミキねえ、あれを見せないと吉澤さんにわかってもらえないよ!」
「でも、よっちゃんさんに嫌われちゃう…」
「女同士で何言うとっと!」
そう言ってれいなはマスクを無理やり剥ぎ取る。驚いたことに、美貴は出っ
歯になっていたのだった。恥ずかしさのあまり、その場にへたり込む美貴。
- 7 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 21:19
- 「原口…あきまさ?」
ひとみは、あまりの衝撃でそんなことしか口走れない。
「朝起きたら…歯が…」
「みんなどこか、おかしくなってるばい」
そう言うれいなの頬の辺りは、えらが出てますよーと声を掛けたいくら
いに変形していた。
- 8 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 21:21
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結論から言うと、まだここには来ていないリーダーの矢口を除いて全員が
何らかの変化に見舞われていた。
高橋の右目と新垣の左目が気持ちの悪いほどの二重に、そして紺野の右眉
と小川の左眉が急角度のカーブを描いていた。しかも、昨日の晩から今朝
にかけてだ。
道重はさっきから黙ったままだったが、亀井は狂ったように下品な踊りを
見せていた。エリック亀造では見たこともない、体を軽く逸らせて股間に
手をやる変な踊りだった。
「とにかく、何でみんながこんなことになっちゃったのか、考えないと…」
狂ったように踊り続けている亀井を除くメンバーで、輪になって考え込む。
だが、どうにもこうにもこうなってしまった理由など思いつけるはずがなか
った。
- 9 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 21:22
- 「それよりさ、みんなが変化した特徴を挙げてってさ、共通点がないか
探してみようよ」
話を逸らそうと思いついたひとみの妙案。
「金髪」
「エラ」
「気持ちの悪い二重まぶた」
「釣り上がった眉」
「出っ歯」
そこへタイミングよく現れた、リーダー矢口真里。
「おうお前ら、何してんねん」
声が、明らかにあいつの声になっていた。
数人の声が、重なる。
「つんくさん!」
するとそれまで押し黙っていたさゆみが、急に喋りだした。
「エースはいると思うの。さゆは天才的にかわいいの。モーニング娘。
また、増えるの。おめでとう、イェイ!なの」
- 10 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 21:23
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「つまりや。つんくさんが失踪したっちゅうことと、おいらたちがこない
な目に遭ったっちゅうことには関係がある。そうやな、よっすぃー?」
朝起きたら何故か関西弁になってしまったという真里が、ひとみに同意を
求めた。
「うん。だから、みんなで何らかのアクションを起こせばうちらは元通り
になれるんじゃないかな」
「なるほど」
「で、どうやって?」
そこで全員、沈黙。シャ乱Qの『いいわけ』の踊りをずっとやっている絵
里が立てる物音と、夢物語のような内容のさゆみの独り言が空しく響く。
「ほや!」
そこへ愛が突然声を上げた。
「みんなでぐるぐるって、回ったらええわ。ほやったらみんなバターにな
って元通りになるて」
一見また空気の読めない発言を、と思いかけた一同だったが、
「愛ちゃんの言うことも一理あると思います。遠心力によって、私たちの
つんくさん成分が分離するかもしれません」
というあさ美の一言で手のひらを返したように頷いた。
- 11 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 21:25
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「じゃあ準備はええか?」
真里を先頭に、小さな円を作るメンバーたち。踊り狂う絵里は、ひとみが
さゆみに括りつけておいた。その時後ろから田中が恨めしそうな目で見て
いたがひとみは敢えてそれを無視した。
最初の一歩が歩みになり、走りへと変わってゆく。小さな楽屋を目いっぱ
い大きく駆けずり回る姿は滑稽ですらあったが、娘。たちの表情は皆真剣
そのものだった。
そんな状態が、小一時間は続いた。
先頭の真里が崩れ落ちると、後続のメンバーも次々に倒れていった。
「ぜえ、ぜえ、こんなんで解決する…わけ…ないやろアホンダラ…」
床に伏せつつ恨み言を言う真里。だが、変化は確実に起こる。
「おええええええ」
そう。あまりにも小さなスペースで目が回ってしまい、ついにはお好み焼
きを製造してしまったのだった。ええいいああ君からもらいゲロ、と言っ
た感じで次々に嘔吐するメンバーたち。
何とも言えない酸っぱいニオイが立ち込める部屋に、奇跡が起こった。
娘。たちの生産したそれがひとつの場所に集まり、形になってゆく。そし
て、豊穣の海から姿を現したのは…何とつんくその人であった。
- 12 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 21:26
- 「つ、つんくさん!?」
「おう、お前ら。世話かけたな」
言葉も出ない娘。たち。
「何や、オレのあまりにもカッコええ登場に言葉も出えへんか?」
しかし真里はキャハハハハと大笑い美貴は「ケッ」と唾を吐き梨華は目を
覆った手の指の間からチラ見してれいなは「意外とちっちゃかった…」と
呟いた。そして、
「つんくさん、どうでもいいけど服くらい着てください」
というひとみのトドメの一言で、つんくは自分が全裸だということにはじ
めて気づいたのだった。
数分後。
「まあ何はともあれ、またみんなに会うことが出来たわ」
この後のコントでれいなが着るはずだったパンダのぬいぐるみを着て、つ
んくは笑いながらそう言った。れいなは何となく、嫌そうな顔をしていた。
「それにしてもつんくさん、どうしてあんなことに?」
- 13 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 21:28
- 「いやあ、実はな…」
つんくの話はこうだ。
久しぶりに娘。メンバーだけで一緒に食事をすることになった昨晩。つん
くはその会合がどうしても気になって、店の酒樽の中に隠れて様子を見て
いたのだと言う。しかしその中に何も知らない店員が酒を注ぎいれ、それ
ばかりかつんくは何故か酒に溶けてしまったのだ。挙句の果てには娘。た
ちに飲まれてしまい…というのが真実だった。
「まあ、エエ経験させてもらったわ」
「でもつんくさん、どうしておいらたちの会合なんか…」
訝しげに聞く真里に、つんくはこう答えた。
「あんなあ、最近自分ら頑張ってるやん。娘。ドキュメント見さしてもら
ったでえ? で、オレも頑張ったろう思ってな。エエ曲書くには娘。の実
態ってもんを知らんとなあ」
「そうだったんですか。だったら言ってくれれば」
「でも自分らの中に入って、オレに今何を求めてるのかっちゅうのがわか
ったわ。エースエースて言う前に、オレも変わらんとな」
「つんくさん…」
パンダの着ぐるみを着たままではどうにも締まらないが、しかしつんくの
表情はとても輝いていた。
「ほなオレもぼちぼち帰るわ。頑張るんやで」
その場を立ち去ろうとしたつんくだが思い直したように、
「吉澤」
と言った。
「え、何ですか?」
「男はこれくらいが標準サイズなんや」
言葉の意味はひとみにしかわからなかった。そしてひとみは「下の弟のよ
り小さい」という言葉をぐっと飲み込むのであった。
- 14 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 21:29
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♂♂♂
- 15 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 21:30
- 数週間後。
「作詞もダメ。作曲もダメ。ファンの大半はそっぽを向いている。そんな
つんくちゃんが自分の欠点を伸ばすために新たなスタートを切る。つんく
ちゃん、再発進!」
画面にでかでかと踊る「つんく♂ドキュメント」のタイトルロゴ。
金髪の出っ歯が、「あー、あー」と声を出したり踊ったりしている。
ひとみは「ばっかじゃねえの」と呟きテレビを消した。
そしてベッドに潜り込み、眠りについた。今度はもっとかっけーのが生え
てきますように、そう祈りつつ。
- 16 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 21:31
- きのこ
- 17 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 21:31
- のこのこ
- 18 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 21:31
- げんきのこ
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