22 越後なディスコ

1 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 01:46
22 越後なディスコ


2 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 01:47

今日の公演も大盛況だった。
久しぶりの新潟公演に集まったいつもより
ほんの少しだけ多いマコファンに小川は感激した。
相対的には他のメンバーよりも当然少なかったが
それでも小川は嬉しそうだった。

「まこっちゃんなんだか元気だね」
紺野は終演後もハイテンションな小川を見ながら
所狭しと並べられた海産物に舌鼓を打った。
3 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 01:49

小川はまるで酔っ払ったようにその場に居る人間に絡んで行く。
疲れている矢口、吉澤にスルーされても凹まない。

紺野はそんな小川の後ろ姿を眺めながら
赤子の手をひねるようにカニの足をへし折ってゆく。
まわりにはもう誰も居ない。
紺野はこの全ての食べ物が自分のものだと思うと
世界を征服したかもような気分になった。

「あさ美ちゃん・・・・・ちょっと」
そこに新垣がきょろきょろと挙動不審に歩いてきた。
「マコっちゃんが・・・・・これから遊びに行こうって」
「どこに行くって?」

マコっちゃんが夜遊び?
驚きのあまり紺野の声はいつも以上に上ずった。
4 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 01:50

別に夜ホテルを抜け出したって後藤の弟のようには怒られない。
でもそれはコンビニとかその程度までだ。

もう時計は10時を過ぎている。どこに行くつもりだろう?
「驚かないでね・・・・・ディスコだって。どうしょう?」

紺野は思わずポロリとカニの足を床に落としてしまった。
幸い既に中身は食べていたので問題は無かった。
5 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 01:52

「なんでディスコなん?わからんわ」
長い間待たされて苛立っている高橋の問いかけに新垣が答えた。
「なんか昔から行ってみたかったんだって」
「で、マコっちゃんは?」
「なんか準備に手間取ってるみたい」

マコっちゃんとディスコ。豚に真珠。猫に小判。
梨華ちゃんにセンター。れいなに毛。とにかくありえない組み合わせだ。
紺野はそう思いながらもディスコに行ってみたいとは思ってた。
歌詞の中でしか知らないディスコを体験してみたかった。
高橋も新垣も不安そうだったが興味はあるようだった。

「お待たせ!」
小川の声に3人は振り返った。
「・・・・マコっ・・・・・ちゃん」

スパンコールがきらめいた。フリルのスカート揺らめいた。
そこにはステージ以上に着飾った小川が居た。
「似合う?」
「・・・・・水着よりは似合うよ」
紺野がそう言うと小川は嬉しそうに笑った。
6 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 01:56

タクシーは迷い無くそのディスコに突き進んだ。
この辺りにはディスコなんて気の利いた店は一件しかないから
迷いようがないのだ。

東京と比べれば真っ暗な街が急に眩しくなった。
突然、朝が来たみたいだ。
その前でタクシーは停車してドアが開いた。
そこが目的のディスコ「ゴールドラッシュ」だった。

まるで防空壕のような外観、薄汚れた人体模型。黄金に輝く電飾。
恐らく金山を模した外観は前衛的ですらあった。
「さあ、、みんな入ろう」

小川の目は電飾に照らされギラギラと輝いていた。


中に入ると凄まじいほどの爆音で音楽が流れていた。
会話するのも困難だ。
薄暗い店内ではミラーボールが満月のように輝き
その下で沢山の男女が踊り狂っている。

酒池肉林。
紺野はそう呟いた。博学な所を見せたかったのかも知れない。
7 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 01:57

「で、どうするん?踊る?」
高橋は足の先を頭の上まで上げて回り出した。
「ち、違うよ愛ちゃん。多分そういう踊りは踊らないから」
慌てて新垣が止めると高橋は驚いた。

「踊りってバレエやないの?」
「愛ちゃん違う違う。見本を見せてあげる。こういうの」
小川は呆れながらも軽くステップを踏んだ。

娘。の踊りとはまた違う。クールでなんだか外人みたいだ。
3人は小川の真似をしようとしたがなかなか上手く踊れない。
紺野はリズムにすら乗れない。終いにはリズムに関係なく飛び跳ね始めた。
飛び跳ねながら紺野は小川のダンスの上手さを改めて凄いと思った。

「そろそろ本題に入るよ」
本題。まさか踊りたいだけでは無いと思ったがやっぱり。
3人が不安げな面持ちで集まると小川はにやりと笑った。

「逆ナンしてみようよ」
8 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 01:58

ジャンケンをしてみた。紺野が負けた。
逆ナンなんて・・・なんだか恥かしいなあ。
紺野は考えただけで顔が真っ赤だった。
「ほら!負けたんだから早く行って!」
小川に背中を押されて泣く泣く紺野は柳沢慎吾のような頭の
ロカビリー男に声をかけてみた。

「あ、あのー。一緒に踊りませんか!」
「あん?姉ちゃん何言ってるんだ?もっとでかい声で言ってくれよ!聞こえねえ」
紺野は必死で声を出したが所詮は紺野。
相手の耳に届かなかった。

経過を聞かなくても肩を落としてとぼとぼ歩く紺野を見れば
誰もが失敗だとわかった。

「じゃあ次はあっしやね」
高橋は自信満万で紺野が逆ナンに失敗した男に声をかけた。
9 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 01:59

「あのーあっしとたからづかみたいにおどってほしいやよー」
「あ?何語だ姉ちゃん外人か?何言ってるんだかわかんねえよ!」

高橋もあっさりと撃沈した。

次は新垣の番だ。新垣はテンパった。
ここは新潟ですけど私、新垣と言います。似てませんか?
新垣はそう口の中で何度も練習しながら相手を探して辺りを見回してた。
え?驚いた事にいつの間にか小川は男と楽しそうに踊っていた。

地元、新潟での闘いとはいえ、まさかマコっちゃんに負けるなんて・・・・・。
3人はその様子を呆然と眺めるだけだった。

「いこっか?」
「・・・・・うん」
3人は敗北感に打ちのめされながら小川に黙ってディスコを後にした。
10 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 02:00

薄暗い店内で小川は水を得た魚のように踊った。
ディスコの客も小川の踊りを驚きを持って眺めていた。

薄暗い為に顔の判別をしにくい事を差し引いても
小川のダンスには人の目をひきつける何かがあったのだ。

「小川?小川じゃん」
「え?・・・・・・佐渡島君・・・・・」

小川が顔を上げるとそこには中学の同級生の男、佐渡島堀夫が居た。

11 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 02:03

「お前がアイドルになるなんて考えもしなかったよ。
ほら、あの時お別れもちゃんと言えなかったし」

小川は佐渡島の隣の席に座って同じ飲物を注文した。
出てきたのは酒だったが小川は喉が渇いていたので勢いで飲んだ。

頬が熱い。動いていたせいかすぐに酔いがまわった。

佐渡島とはずっと仲良しだった。
顔はほどほどだったが運動神経が良くてクラスでも人気者の男だった。
久しぶりに顔を合わせたがあまり変わっていないみたいだ。

それにしてもまさかこんな所で会うなんて。
偶然とは恐ろしいもんだ。
12 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 02:05

「佐渡島君、随分大きくなったね。前は私と大差なかったのに」
「お前は横に大きくなったな」
憎まれ口も悪戯っぽい笑顔も変わらない。

「なあ、ちょっと踊ろうぜ」
佐渡島はいきなり立ち上がると小川の手を引いた。
「もう!まだ飲んでるのに」
小川はそう言いながらも嫌じゃなかった。


佐渡島の踊りは想像していたより遥かに上手かった。
かなりディスコに通っているのかも知れない。

新潟に居た頃の事をぼんやり考えながら
踊っていると音が急に静かになった。
「・・・・・故障したの?」
「バーカ。知らないのか?チークタイムだよ」

音楽は流れているけどさっきまでの爆音と比べれば
まるで静寂のように思えた。
13 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 02:06

「なあ小川・・・・・・・」
佐渡島は小川の背中に手を回すして小川の耳に囁きかけた。
「俺ずっとお前の事が・・・・・・」

小川は思わず目をそらしてしまった。恥かしくて顔が見れない。
酔いとあいまって顔が真っ赤になっている。
「聞いてくれずっとお前の事が・・・・」

また爆音になった。これだけ近いのに何も聞こえない。

小川は緊張のあまり溜めていた息を一気に吐き出した。
お前の事が・・・・・。その先を考えただけで胸がドキドキする。
「ちょ、ちょっとトイレ・・・・」
逃げるように佐渡島から離れようとした時だった。

佐渡島は小川の背中に指を這わせた。
14 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 02:09

どうやら背中に文字を書いているようだ。
「女」
「子」
ちゃんと女子トイレに行くよ。そう言おうとしたが
佐渡島はまだ小川の背中に文字を書きつづけている。

小川は目を閉じて佐渡島が何を書いているのかに集中した。
「き」・・・・・好き?
佐渡島の顔を見た。照れくさそうに笑っていた。


佐渡島は背中に続きを書いた。
背中が、全身が敏感になる。心臓が爆発しそうだ。

「だ」

「真」

「琴」

好きだ真琴。


小川は戸惑いながら強く佐渡島を抱きしめた。
15 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 02:09





16 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 02:11

「で、どうなったの」
日付が変わる頃に帰ってきた小川に3人は興味深々だ。

「えーとね。サバ折りしたら苦しかったのか吐いちゃった」
「へえ、凄いね。・・・・・え?なんで」
「好きならせめて名前くらいちゃんと覚えて欲しいよお」

小川は悲しそうに笑った。
17 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 02:11


おわ

18 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 02:12


った

19 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 02:13


よ。


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