17 プリンセスガーデン

1 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/19(土) 10:03
17 プリンセスガーデン
2 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/19(土) 10:19
広い広い庭の真ん中ら辺に、小さなお城がある。
私はそこの眠り姫。
白馬に乗った王子様が、素敵なKISSで起こしてくれる。

いつかそうなることを夢見て――。
3 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/19(土) 10:28
やばい、やばい、やばい!

「はーひほふひはゃふほぉ」
トーストをくわえながら、コートに手を通しながら
学校へ向かって走り出す。

藤本美貴。あだなはミキティ。17歳の高校2年生。
自分じゃ割と可愛いほうだと思うんだけど、
恋愛には恵まれなくて。
彼氏が居る友達の話を聞くたび羨ましいな、って思う。

坂を駆け降り、そのスピードのまま角を曲がろうとして。
「きゃっ!」
「うわっ!」
4 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/19(土) 10:36
男の子とぶつかった。
ちょっと美貴の好みの顔で、どきっとするぞ。

「気をつけろよ、いちごパンツ」

へっ?
男の視線の先を追って…あわててスカートを抑えた。

「ちょっと、どこ見てんのよっ!」
「青木さやかか、お前は」
「なっ…」

ムカ。それがぶつかって転んだ女の子にかける言葉!?
最低、サイテー。なんなのコイツ!

「あんたみたいな奴にかまってる暇ないの。あー遅刻しちゃう」
「あ、お前もしかして…」

何か言ってたけど、無視して走り去った。
5 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/19(土) 10:41
チャイムと同時に教室に滑り込みギリギリセーフ。

「おはよ、美貴」
「おはよ、亜弥」

亜弥がさっき話した彼氏の居る友達。
亜弥に彼氏が出来るまでは、いつも一緒だったのに。
最近は美貴より彼氏を優先させてるんだ。

「ちょっと聞いてよ、朝さ、ヤな奴にあってさ…」

今朝の出来事を亜弥に話そうと思ってたら、先生が来た。

「おはよう。今日は転校生を紹介する。…入りなさい」
6 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/19(土) 10:48
「小田切竜です。よろしくお願いし…」

思わず立ち上がる私。叫んでしまう。

「今朝のヤな奴!」
「あ、いちごパンツ!」

にらみ合う私とアイツ。
しかし先生は非情な言葉をかけてくれるのでした。

「なんだお前ら、知り合いか?」
「知り合いって言う程、知らないです」
「まあいい。小田切、お前藤本の隣に座りなさい」
「げっ!」
「そして藤本、HRの後で小田切に校舎を案内してあげなさい」
「げっ!」
7 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/19(土) 10:53
「ここが理科室…ってアンタ聞いてんの?」
「聞いてるよ。うっせーなぁ」

本当は案内なんてしたくなかったけど。
クラスメイトに冷やかされて教室に居られなかったから。

「こっちだってしたくてしてる訳じゃないんだから」
「あーあ、お前の友達の松浦だっけ? あっちに案内されたかったな」
「へぇ。亜弥みたいのが好みな訳?」
「お前じゃ男同士みたいだもんな」

ニヤッと笑う視線の先は…私の胸。
カッとなって、ひっぱたいて、置いて逃げた。
あいつ本当に大嫌い!
8 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/19(土) 10:58
それからしばらくはずっと無視し続けてた。

でも見ちゃった。
雨の日、傘を差してる私の前を、鞄を傘代わりに走ってく学生服。
小田切だ。私には気付かなかったみたい。

…と思ったら急に止まった。
気付かれたくないから私も電柱の影に隠れる。

小田切はやおらかがんだと思うと、ダンボールの箱から何か拾い上げた。
子猫?

「お前も俺と同じで、誰にも愛されてないんだな…」

学生服の胸を開けると、ひょいとそこに子猫を入れ、小田切はまた走っていった。

…へぇ。割といいとこあんじゃん。
9 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/19(土) 11:04
「ズバリ!それは、恋でしょう」

亜弥はかけてもないメガネを指で戻しながら言った。
今さら丸尾君の物真似って。

「ねぇ美貴。最近のアンタ、小田切君のことばかり話してるって自分で気付いてる?」
「そ、そうかな?」
「そうだよ。もっと自分に素直になんなさい!」

亜弥はそう言って私の背中を叩いた。ちょっと痛かった。
私が、アイツを?
そんなハズない!

アイツが私の王子様だなんて、そんな…。

10 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/19(土) 12:40
「明日の日曜さ、遊園地行かない?」

亜弥からの突然のメール。
暇だし、良っか。と言ってみればそこには亜弥と亜弥の彼の橘君と、そして…小田切。

「な、なんでアンタが居んのよ」
「それはこっちのセリフ。おい橘、どういう事だよ」

橘君と亜弥はニヤニヤしてる。

「じゃ、私たちは楽しんでくるから」
「小田切、藤本と仲良くしたいって言ってたろ?」
「な…!」

そう言い残してふたりは行ってしまった。
それより橘君の言葉はどういう事?
小田切は顔を真っ赤にしてる。

「もしかしてアンタ…」
「そうだよ。お前の気を引きたくて意地悪してたんだ!」

中学生かよ。

「…おい美貴。お前、何顔赤くしてんだよ?」
「えっ?」
11 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/19(土) 12:43
「と、とりあえずさ。せっかく来たんだし、お金ももったいなから何か乗る?」
「そ、そうだな。お前とってのが気に入らないけど」
「どれにする?」
「美貴はどれに乗りたいんだ?」
「小田切の好きなヤツで良いよ…って呼び捨てにするな!」

12 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/19(土) 12:49
ジェットコースター、コーヒーカップ、フライングカーペット、タワーハッカー。
ひととおり乗ってもう夕方。
美貴達は最後に観覧者に乗った。

「きれいだね」
「ああ」

どきどきする。
会話もなんだか途切れがちで、目が合わせられない。


13 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/19(土) 12:52
城を覆う茨を、剣で切り裂きながら王子様が向かって来る。

美貴達のゴンドラが真上を通り過ぎようとする。

王子様はその真ん中ら辺で眠り続ける姫を見つける。

小田切の指先が美貴の指先に触れる。

王子は姫の側にかしづく。

小田切が美貴の肩を抱き寄せる。

やわらかい触感と、はげしい鼓動。

私は瞳を閉じて、姫は瞳を開けた。
14 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/19(土) 12:53
15 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/19(土) 12:53
16 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/19(土) 12:53
17 名前:番外編 投稿日:2005/03/19(土) 23:26
「父さん、再婚しようと思うんだ」

そう聞いたのが昨日なのに、今日これから相手の人が来るそうだ。
そりゃあ美貴ももう17歳の大人だから別に反対もしないけどさ。
もっと早く言ってくれれば良いのに。

「相手の竜子さんにもお前と同い年の息子が居るそうだ」
「だから嫌がるとでも思った訳? 美貴はそこまで子供じゃないよ」

って言うか、実は頼り甲斐あるアニキって存在に憧れてたりする。
一度脱いだセーラー服にまた着替え、父さんと待ち合わせ場所へ。

「美貴、こちらが父さんの相手の小田切竜子さんだ」
「はじめまして、美貴さんね。噂通り可愛いわ」

ちょっと待って。そんなのない。向こうもほら呆然としてる。
どうして竜クンがいるわけ?

「もしかしてあなた達、知り合いなの?」

美貴も竜クンも、うなづくのがせいいっぱい。
18 名前:番外編 投稿日:2005/03/19(土) 23:29
「ただいま、お母さん…あれ?」

家に帰ると、テーブルの上に1枚のメモ

”お父さんとお母さんは新婚旅行に行ってきます。”
”美貴ちゃん、一週間竜のことお願いね。”

うそ。
竜クンとこの家に1週間もふたりっきりなわけ…?
19 名前:番外編 投稿日:2005/03/19(土) 23:40
ふたりきりの夜、外は大雨。
お父さんとお母さんだけ出かけたから罰が下ったのよ、きっと。
向かいあってふたりきりの食事は、テレビだけが喋ってて。

「はは、何か緊張するね」
「い、いつも通りにしてれば良いんだよ。あ、醤油取って」
「うん」

指先が触れた。
ふたりしてぱっと手を離し、醤油がテーブルにどばっと広がる。

「あ、ごめん。拭かなきゃ」
「いいよ、俺がやるよ」

あーダメ。なんか美貴ってば、意識しすぎてるかも。
お風呂に入る時なんか、鍵かけた事を何回も確認しちゃったし。

「じゃあ」
「うん、おやすみ」

部屋の前で竜クンと別れようとした時、巨大な雷が鳴った。

「きゃっ!」
「大丈夫か?」

気が付けば竜クンに肩を抱かれていた。顔がすごく近くにある。

「な、なあ美貴。雷が怖いなら、一緒に寝ないか?」
「えっ?」
「あ! べ、別に変な意味じゃないからな!」

美貴の心臓、破裂しそうにドキドキしてる――。
20 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/19(土) 23:42
21 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/19(土) 23:57
鏡に映るウェディングドレス。
まるで美貴じゃないみたい。
横に立つ王子様は、竜クンじゃないけれど、しょうがない。
だって美貴達は兄妹なんだから。

そうよ、この人だって良い人だわ。
こんな美貴に「幸せにします」って言ってくれたんだから。
お父さんとお母さんに心配かける訳にもいかないし。

「汝はこの者を夫とし、健やかなる時も病める時も、彼と共に過ごす事を誓いますか?」
「誓い――」

バン!
ドアがものすごい勢いで開いた。皆がそちらを振り返る。
そこに居たのは、オイルで汚れたツナギを着た…。

「竜クン…」
「美貴! お前は自分を騙したまま生きていくのか!」
「…だって私たち、戸籍上は…」

係員が竜クンを抑えつける。竜クンは少しずつ押し出されてく。

「関係ない! 美貴、俺はお前が好きだ! 世界中を敵に回しても、俺がお前を守る!」

叫びが私の心に響く。私が幼い頃から夢見てたこと。
気が付いたら、走り出してた。
22 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 00:00
23 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 00:00
24 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 00:00
25 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 02:05
「美貴! お前は自分を騙したまま生きていくのか!」

              ↓

「美貴! 俺達はこのまま自分を騙して生きていくのか!」
26 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 02:05
27 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 02:05
28 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/20(日) 02:05
29 名前:Max 投稿日:Over Max Thread
このスレッドは最大記事数を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。

Converted by dat2html.pl v0.2