9 別れのチャオ

1 名前:9 別れのチャオ 投稿日:2005/03/14(月) 00:32
9 別れのチャオ
2 名前:9 別れのチャオ 投稿日:2005/03/14(月) 00:35
「血がドバー。」君が嬉しそうに言うのでぼくは少し驚いた。「……って誰かが言ってた。」
硝子窓の向こうの人波は、いつもの慌ただしく行き交うそれに戻っていた。
周りの人たちと同じ様に交差点で立ち止まっていたぼくを呼び止めた君。偶然に起きたその事故にぼくは少し感謝した。
狭いカフェに流れているのは古いチャールストン。「お昼ごはん、何食べた?」なんて、フレーズが少し調子外れでおかしいね。
レモンシュガーを紅茶に。スプーンを持つ君の小指を見て空白の時間を埋める事が出来る気がした。
人間って簡単に変われないね。いつまでも想いに寄りかかるなんて。ぼくは危ういY字バランスでなんて歩けない。



いつの間にか降り出した季節はずれのみぞれ雨が硝子窓に白い玉を残していく。
ようやく来た救急車のサイレンがとけて街はピンク色に霞んでいく様だった。
ぼくは君が置いていった写真ネガをただぼんやりと見ていた。




終わり

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