5 いいわけ
- 1 名前:5 いいわけ 投稿日:2005/03/13(日) 01:53
- 5 いいわけ
- 2 名前:5 いいわけ 投稿日:2005/03/13(日) 01:54
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ある日僕が歩いているとカゴちゃんが居た
カゴちゃんは言った
「うわあカッコイイつきあってくれませんか」
僕は答えた
「ムリだよだって僕もう愛人だけでも10人いるから」
カゴちゃんはしょんぼりした
僕は「じゃあ月に一回だけ会ってあげるよ」と言った
カゴちゃんは「うわあやったー」と言って両手をあげた
- 3 名前:5 いいわけ 投稿日:2005/03/13(日) 01:54
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やがて月日がながれて彼女はモーニング娘。になった
でもどんなに忙しくても月に一回は僕の部屋にきた
僕はある日「別れよう」と言った
カゴちゃんは「やだ」と言った
僕は「事務所のやつが来て別れろって一千万円置いてった」と言った
そして事務所のやつが置いてった一千万円を見せた
カゴちゃんは泣きながら「一千万円のほうがあたしより大事なの」と言った
僕は「ああ」と言った
カゴちゃんは帰った
- 4 名前:5 いいわけ 投稿日:2005/03/13(日) 01:55
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でも彼女が居なくなって空いた穴は一千万円ごときじゃ埋まらなかった
愛人が僕を五人がかりでウチワで扇ぎながら言った
「最近上の空ですね」
僕は答えた
「そんなことないよ」
しかしある朝起きると愛人は全員居なくなっていた
愛想をつかしたのか
- 5 名前:5 いいわけ 投稿日:2005/03/13(日) 01:55
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テレビで見る彼女はいつも いつもどおり元気をふりまいていた
僕はそれを見ながらひたすらに僕には見せなかった顔を探した
この番組が終わったら手紙を書こうと思って書かなかった
明日起きたら彼女に会いに行こうと思って行かなかった
そんな日々だった
- 6 名前:5 いいわけ 投稿日:2005/03/13(日) 01:56
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ある日歩いているとカゴちゃんが居た
カゴちゃんは手を振った
「ひさしぶり」
僕は「誰だっけ」と言った
カゴちゃんは「覚えてるくせに」と言って僕をくすぐった
そして「あたしをふったこと後悔してるでしょう」と言った
僕は「うん」と答えた
カゴちゃんは「好き」と言った
- 7 名前:5 いいわけ 投稿日:2005/03/13(日) 01:56
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それから僕たちは暮らしだした
でもある日あややがフライデーされた
カゴちゃんは「もしかしてそろそろあたし達もフライデーされちゃうかな」と言った
僕は「それで芸能界クビになっても責任とるよ」と言った
カゴちゃんは大喜びで「わかった」と言った
ようにみせかけてその表情はすこし曇っていた
曇りはほんのわずかだったけど気づいた
- 8 名前:5 いいわけ 投稿日:2005/03/13(日) 01:57
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ある日マンションに帰ると記者がいた
それはひどい雨の日だった
でかいカメラで無遠慮に写真を撮りながら記者は
「カゴちゃんと付き合ってますよねえ」と言った
僕は「知らないよ」と答えた
記者は「もう調べはついてるんですよ」と言って迫った
ドアに手をかけながら僕は振り返った
「じゃあ一千万円あげるから見なかったことにしてください」
僕は記者にずっと持ち歩いていた一千万円を渡した
- 9 名前:5 いいわけ 投稿日:2005/03/13(日) 01:57
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すると記者は金を受け取っておきながらギラついた目で
「これって買収ですよね」と言った
僕はため息をついて時計を見た
9時だった
確か10時にカゴちゃんが帰ってくるはずだった
「あと一千万円でどうですか」と僕は言った
記者は聞こえないフリをした
しかしその目は泳いでいるのだ
僕はにっこり笑ってドアを開けた
「入ってください」
- 10 名前:5 いいわけ 投稿日:2005/03/13(日) 01:57
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やったことはふたつだけ
カメラを取り上げたことと
記者の後頭部をぶち壊したこと
全ては呆れるくらいあっさりと終わった
あとは死体を片付けるだけ
しかし計算外のことがふたつあった
死体がやたら重いのと
血がどくどく出てそこらの 絨毯とかに
- 11 名前:5 いいわけ 投稿日:2005/03/13(日) 01:57
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「どうしてこんなことしたの」
玄関先で立ち尽くすカゴちゃん
僕は何も言えなかった
死体を見下ろして呆然と突っ立っていた
1時間ってなんて短いんだろうって考えながら
そしてカゴちゃんは泣き出した
頭をぶんぶんと振りながら言う
「全部お芝居だったのに」
- 12 名前:5 いいわけ 投稿日:2005/03/13(日) 01:58
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カゴちゃんは泣きながら告白した
友達に頼んでカメラマンのフリをさせたこと
もしカゴちゃんがフライデーされて
ごたごた面倒に巻き込まれて
もしかしたら芸能人じゃなくなったとしても
僕が本当にカゴちゃんと一緒にいてくれるか
どうしても知りたかったということ
- 13 名前:5 いいわけ 投稿日:2005/03/13(日) 01:58
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「バカだなあ」と僕は言った
僕らが知り合ったのはカゴちゃんが芸能界に入るよりも
とっくの前の話だってこと
だから僕が君を好きになったのも
そんなこと
ちょっと考えればわかったはずなのに
- 14 名前:5 いいわけ 投稿日:2005/03/13(日) 01:59
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「どっちにしろ君の友達を殺しちゃった」
僕の言葉ひとつひとつをカゴちゃんは
目をまるくして真剣に聞いていた
「だからもう一緒には居られない」
カゴちゃんの顔はくしゃっと歪んだ
そして僕は死体を担ぎ上げた
幸いにも外は雨
移動するだけならきっと たいした痕跡も残さずに
- 15 名前:5 いいわけ 投稿日:2005/03/13(日) 01:59
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背中からカゴちゃんの声が聞こえる
「どうして殺したりなんかしたの」
僕は笑って首を振った
何も答えなかった
僕は僕でひどく勘違いをしてたんだ
カゴちゃんが僕よりずっと芸能界を大事に思ってるって
あの時曇らせた表情から勝手に思い込んで
- 16 名前:5 いいわけ 投稿日:2005/03/13(日) 01:59
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運良く見つからずに死体を運べた
死体は近所の公園に埋めた
降りしきる雨が僕の姿と足跡を隠してくれた
土を被せるのも適当でいいんだ
どうせ死体が見つかったら自首するんだから
カゴちゃんと関係ないってそれだけ示せれば
スコップで埋め終わった穴を固めながら気づいた
一千万円も一緒に埋めちゃった
でもそんなことはたいした問題じゃないんだ
- 17 名前:5 いいわけ 投稿日:2005/03/13(日) 02:00
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立ち去ろうとして足元に転がってるものに気づいた
カメラだった
どうやら死体と一緒に埋め忘れたらしい
埋めなおそうかどうか ちょっと迷ってやめた
かわりに僕はそのカメラを手にカゴちゃんの家に向かった
もう二度と会えないんならせめて
一枚の写真を胸に抱いておこうと思って
それはほんの気まぐれだった
その思いつきに夢中になって僕は
ますます本降りになってきた雨にもかまわず歩いた
カゴちゃんの部屋の下へ
- 18 名前:5 いいわけ 投稿日:2005/03/13(日) 02:00
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けれどカゴちゃんはなかなか顔を出さない
だから僕はこうして
カメラ片手にカゴちゃんの部屋の窓を見上げながら
降りしきる雨のなかぼうって突っ立ってるんだよ
その狂おしい情熱が
その揺るぎ無い純粋な愛情が
貴様のような低級な公僕にわかるもんか
- 19 名前:5 いいわけ 投稿日:2005/03/13(日) 02:00
- おわり
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