3 さよなら、僕の
- 1 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/11(金) 09:38
- 3 さよなら、僕の
- 2 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/11(金) 09:39
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恋人の美貴はとても胸が小さかった。
どれぐらい小さいかっていうと簡単には説明できない小ささだ。
そうだな。例えば真っ暗な部屋に二人きりでいるとしよう。
少し調子にのった僕が美貴の胸を触ろうとする。優しく優しく。
そうしたら、美貴は不満げに言うんだ。なんで背中ばっかり触るの、って。
これは想像じゃなく実際に起こりえることで、つまりそれくらい彼女は類稀なる小さな胸の持ち主なんだ。
だけど、僕はそんな彼女の小さな胸が心底愛しかったし、
僕の手の平の厚み分ほどしかない美貴の小さな胸に
チョコンと突起したそれも僕を夢中にさせる要素の一つだった。
- 3 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/11(金) 09:39
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こいつの彼女可愛いけど貧乳なんだよな。お前、あんな乳無しで満足できんの?
巨乳好きな男たちからかけられるそんな嘲笑の声も僕は全く気にならなかった。
僕の世界のすべては貧乳で回っていた。いや、美貴の胸で回っていた。
けれど、美貴は自分の胸がどれだけ魅力的なのかも知らず巨乳に憧れ
いつからか僕もそうなのだろうと決め付けるようなことを口にするようになった。
だから、僕は彼女がそう言うたびに美貴の胸が一番だと繰り返すしかない。
そのやり取りの最後はいつも決まっている。
美貴は少し切なげに睫毛を震わせて、でも巨乳になりたいなと呟くのだ。
そのたびに僕は自分の思いが真っ直ぐ美貴に伝わらないことを歯痒く感じた。
- 4 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/11(金) 09:40
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「ねぇ、あんたもさ、本当は美貴みたいな貧乳じゃなくて巨乳の子と付き合いたいでしょ?」
ある日、僕の部屋に遊びに来た美貴はまたそんなことを言いだした。
「そんなことないっていつも言ってるだろ。どうして疑うんだ?」
「だって…」
いい加減うんざりした僕の返事はきつかったのかもしれない。
美貴は一度言い淀み、そして目を伏せてぼそぼそと言った。
「あんた、お隣の唯ちゃんと仲いいじゃん。あの子、胸おっきいでしょ」
僕はその言葉に驚きを隠せなかった。
確かに僕の家の隣に住んでいる幼馴染の唯は胸が大きいが
はっきりいってそんな胸少しも魅力的に思ったことはない。
僕には美貴の小さな胸しかないのだ。
- 5 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/11(金) 09:40
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「あの子みたいなおっぱいだったら色んなこと出来るもんね」
「なに言ってんだ!僕はあんな牛みたいな胸好きじゃないよ」
「…美貴も牛みたいになりたいな」
美貴が大きく嘆息する。僕は焦った。
美貴の胸が牛みたいになるなんて、想像しただけでも恐ろしい。
僕はミーアキャットみたいな美貴の小さな胸が愛しくてたまらないのに。
「な、なぁ、美貴。僕はその胸が本当に好きなんだ。だから、そんなこと言わないで
どうか今のままでいてくれよ。美貴の胸が大きくなっちゃったら僕はどうしたらいいんだ」
縋るように僕は言った。
僕の言葉に彼女はいつものように切なげに睫毛を震わせ、
けれどいつもの言葉を口にはせず、ただ小さな自分の胸を淋しそうに弄んでいた。
- 6 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/11(金) 09:42
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その日から急に美貴と連絡が取れなくなった。
携帯にもでなければ、部屋にいっても留守。
僕は彼女が行きそうな場所をあたって何日も街を彷徨った。
けれど、彼女は結局見つからず、僕はまた自分の無力を痛感するだけだった。
それから数日、美貴からなにごともなかったようにメールが届いた。
『もう会わないほうがいいと思うんだ、ごめんね。バイバイ』
それはなんとも美貴らしい素っ気無い、別れのメールだった。
- 7 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/11(金) 09:42
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僕は急いで彼女の部屋に向かった。
バイクを飛ばし、階段を駆け上がり、呼び鈴を押す。返事はない。
だが、思いきってドアノブに手をかけるとそれはすんなり回った。
僕はゴクリと息を飲みドアを開く。
不意に牧草の匂いがしたような気がした。そして変わり果てた彼女の姿がそこにあった。
僕は言葉を失って馬鹿みたいにその場に棒立ちになった。
美貴が困った顔で僕を見ている。
どうしたって目立つそれは僕の頭を真っ白にさせる。
美貴は僕を捨てたのだ。
正確に言えば、彼女は僕を捨てて牛になってしまったのだ。
あろうことか牛に――
- 8 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/11(金) 09:43
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愕然とする僕の前で美貴の胸は大きく誇らしげに揺れていた。
林檎以上西瓜未満。それでも十分に大きい。いや、大きすぎる。
牛の姿で、困った顔で、それでもどこか幸せそうな彼女を見る僕の胸の奥はキリキリと軋んだ。
息苦しい。真空のような沈黙。もうどうすることもできなかった。
美貴の選択は、もしかしたら僕への罰なのかもしれない。
きっと美貴は知っていたのだ。
僕が愛しているのが美貴の胸だけだということを。
「…お、おめでとう、美貴。やっと巨乳になれたんだね」
泣きそうになりながら僕は笑った。
牛になった美貴がホッとしたようにまるで聖女のような微笑みを返す。
それはまるで別人のように見えた。
- 9 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/11(金) 09:43
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もう、美貴を貧乳と呼ぶ人はどこにもいない。
彼女は喉から手が出るほど欲した巨乳を手にいれたのだから。
行きは駆け上がった階段をふらふらと降りながら僕は在りし日の美貴のことを考えた。
美しいミーアキャットの胸。美貴の胸。
他の誰でもない彼女の小さな胸は、僕の記憶の中にだけ永遠に存在し続けるだろう。
ヘルメットを被って誰にも見られないように僕はほんの一筋だけ涙を流した。
さよなら、僕の貧乳の君――
- 10 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/11(金) 09:44
- 終
- 11 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/11(金) 09:44
- 从VvV)<美貴π美貴π
- 12 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/11(金) 09:45
- 川 ´^`)<岡π岡π
- 13 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/11(金) 09:46
- 川 ´^`)人(VvV从
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