26 つじかご定食人情物語
- 1 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/22(月) 22:57
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「すずめよりは高く飛べるよね?」
そう言って彼女は、大空へ高くジャンプした。
- 2 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/22(月) 23:01
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遡ること十五分。
「ねえ、バカじょー」
「ん?」
「結婚したいんだけど、いい?」
「なに、のんとすんの?」
「いや違う」
「じゃあ、誰と?」
「それはまだ言えない」
「あ、わかった。結婚したいんだけど、いい? ……って言ったらどうする? ってやつでしょ」
「そーゆーわけでもない」
ののちゃんの顔がくもりました。
大きなお鼻がひくひくひくひく震えます。
「あいぼんのばかぁーー!」
なにか言いかけていたあいぼん、悔しそうに口を噤みます。
- 3 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/22(月) 23:11
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「かおりーん」
ののちゃんが泣きつく先は、圭織さんのところ。
なちみはきゃーきゃー騒がしいし、梨華ちゃんではちょっと鬱陶しい。
その点、圭織さんはののちゃんが膝の上に座ってくれるだけで満足なので、それ以上は望んできません。
だから、ののちゃんの泣きつく先は、いつだって圭織さんなのです。
「あらあら、どうしたの? のんちゃん」
圭織さんは、ののちゃんの頭を優しく撫でます。
「あのね、あのね、あいぼんが──」
「ちょっと待ってよのの。今はあたしが圭織と話してるんだからねっ」
怖いおねーさんがいます。
保田さんです。
ちょっとテンションが高いです。
危険です。
「だからね、圭織。こっちはさ、交通費別で2万払うっつってんのにさ、あの髭、いや困ります、しか言わないの」
ののちゃんはわけがわからず、泣き濡れた顔で圭織さんを見あげます。
圭織さんは眉を八の字に下げ、静かに首を振ります。
困ったもんね、圭ちゃんも。
そんな圭織さんの表情に、ののちゃんは安心します。
「ねえ、圭織、聞いてる? その牛丼屋の店員、時給いくらだと思う? 850円だって、850
円だよ? 圭織。やってらんないわよね。こっちは芝居のチケットが余って、一人で行く
の淋しいから一緒に行ってくれ、って頼んだだけなのよ、お金も払うから、って」
保田さんはここで大きく息を吐き、窓の向こうの鉛色の空を見上げます。
「……それなのに、あの牛丼屋の店員、時給を選んだのよ」
「ここからはののの時間なんで、ケメちゃんは帰ってください」
話の隙間を狙い、恐る恐る口にしたののちゃん。
「そうよ、圭織ののんちゃんが泣いているのよ!」
圭織さんも後押しします。
保田さんは諦めたように首を振り、がっくり肩を落として部屋を出て行きました。
- 4 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/22(月) 23:19
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さあ、ここからはののちゃんの時間です。
「のんちゃん、なにがあったの? 圭織になんでも話してごらんなさい」
「うん、じつはね、あいぼんがね──」
「まあ! あいぼんが!!」
なにも話していないのに、圭織さんは驚きます。
お約束です。
つまらないけど、お約束です。
ののちゃんが睨んでも、圭織さんは、えへへ、と舌を出すばかり。
「もうさ、ちゃんと聞いてよ」
「ごめんごめん、わかった。さ、いいよ、のんちゃん」
そのときです。
「失礼しまーす、かおたん姉たん、番組で着たんです、見てください!」
トナカイの着ぐるみ姿の梨沙子ちゃんが、ぴょこんと顔を覗かせます。
「早くそのかわいらしい姿を見せてちょうだい、トナカイちゃん」
圭織さん、即答でした。
「ちょっとかおりん!」
圭織さんの膝の上のののちゃんが、咎めます。
「かおたん姉たん、見てくれますか?」
申し訳なさそうに、梨沙子ちゃんが部屋に入ってきました。
圭織さん、ののちゃんと梨沙子ちゃんに見つめられて困ってしまいました。
「かおりん!」
「かおたん姉たん……」
これはののちゃんか梨沙子ちゃん、どちらかを選ばなければならないようです。
なんでかって?
うーん…………どっちもアイドルだから?
- 5 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/22(月) 23:28
- 「さあ、かおりん。ののを失望させないでくれたまえよ」
そっくりかえり、扇子でも広げそうな勢いのののちゃん。
すっごい自信!
自分が選ばれないなんて、考えもしません。
一方、梨沙子ちゃんはというと……
「お願い、かおたん姉たん。梨沙子は二番でもいいから、側にいさせて」
おめめをうるうるさせて、棒立ちで懇願します。
したたかな小学生ですね!
確信しています、自分の勝利を。
「梨沙子ちゃん、おいで」
圭織さんの躊躇いない一言は、ののちゃんの薄い胸を無慈悲に引き裂きました。
「こっちは何年かわいいのんちゃんやってると思ってんだよ!」
「いつまでもかわいいままでいられると思ったら大間違いよ」
圭織さんの冷たい一言。
ののちゃんにとっては盲点でした。
かわいさとは、歳を重ねるほどいい、というものではないようです。
「ばっっきゃろぉぉぉぉ!!!」
ののちゃん、圭織さんに張り手を喰らわせ、飛び出していきました。
「すずめよりは高く飛べるよね?」
そう言って彼女は、大空へ高くジャンプした。
泣き喚きながら、ののちゃんはそんなことを考えていました。
そりゃないよ、って意味です。
- 6 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/22(月) 23:34
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「さあ、圭織のかわいいトナカイちゃん、もっと近くに来ておくれ」
圭織さんは両手を広げます。
梨沙子ちゃん、いけないことをしてしまったようなざいあくに苛まれています。
「かおたん姉たん……」
ちょっとずるをしたけど、こんなことにはなると思っていなかった梨沙子ちゃん。
いつも元気なののちゃんが泣いてしまうなんて想像もしなかった梨沙子ちゃん。
「大丈夫よ、梨沙子ちゃん。のんちゃんは強い子。自分でどうにかすることができるわ」
圭織さんはそう言って歩み寄り、梨沙子ちゃんを抱きしめます。
「でも、梨沙子ちゃんはまだ小さいから……圭織が守ってあげる。いつでも頼ってね」
そう、梨沙子ちゃんはまだ10歳。
この世界で生きていくには、寄る辺がいくつも必要なのです。
- 7 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/22(月) 23:47
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物語は終局へ向かいます。
きっかけは特にありませんが、ののちゃんがこんこんちゃんにプロポーズしています。
恐らく、部屋を出てから一番最初に見つけたとかなんとか、そんなくだらない理由でしょう。
あいぼんが結婚するならのんも結婚する。
そんな思いもあるのでしょう。
それに傷ついたののちゃんのハートを癒すことができるのは、
こんこんちゃんのかわいらしいほっぺしかありません。
「ねえ、こんちゃん」
「ん〜? なに〜?」
「なにも聞かずに、のんと結婚してくれ」
「はぁ!?」
こんこんちゃん、かほそい声で大袈裟に驚きました。
おめめもほっぺもまんまるです。
「絶対幸せにする。金も毎月きちんと入れる。付き合い酒も控える。おまえの笑顔のために生きていく」
「ちょっと……。もう、のんちゃーん」
あれれ? 唐突に甘い声だぞぉ?
こんこんちゃん、顔をまっかにさせて恥ずかしがってしまいました。
そこに愛はありません。
ですが、ののちゃんの情熱が、こんこんちゃんのハートに火をつけてしまったのです。
こんこんちゃんは、恋に恋するお年頃を過ぎ、結婚に恋するお年頃になっていたのです。
- 8 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/22(月) 23:55
- 「こんちゃん、黙ってのんについてこい」
「うん!」
偽りだっていい。
二人の契りが永久にありますように……
ののちゃんとこんこんちゃんの唇が数センチの──
「ちょいと待ちやがれ、ばかじょとこんこーん!」
あぁ、惜しい!
二人の間を駆け抜けた鈍足あいぼんにより、キッスはおあずけ。
「なにすんだよ、あいぼん」
心の底からうざったそうに、ののちゃんがあいぼんを睨みます。
「待ってって言ってるんだよ、そのくちづけを」
ののちゃんの敵意に満ちた視線に怯み、泣きそうになったあいぼん、それでも踏ん張りました。
そして、続けます。
「違うんだよ、のん。わけがあるんだよ、ちょっとでいいから聞いてよ!」
「嫌だね。のんはこんちゃんと永遠の愛を誓うところなのだから」
ののちゃん、不安そうなこんこんちゃんの髪を撫で、力強く頷きます。
「さ、こんちゃん、目を閉じて」
嬉しそうに目を閉じたこんこんちゃんの頬に、幾筋もの涙が伝います。
- 9 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/22(月) 23:56
- 「愛ならここにおるで」
救世主です!
救世主が現れました!!
愛ちゃんです、高橋愛ちゃんです!!!
- 10 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/23(火) 00:02
- ありゃ、時間切れという名の終わりです。
いまを生きる彼女達に、話の終わりなどないのですから。
うるさいです、放棄じゃありませんよ、ルールです。
えりりんもガキさんもまこっちゃんも出てきませんよ、
おしまいですから。
- 11 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/23(火) 00:02
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- 12 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/23(火) 00:02
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- 13 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/23(火) 00:02
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