23 想像もつかない僕らの日々
- 1 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/22(月) 18:39
 
-  「すずめよりは高く飛べるよね?」  
 そう言って彼女は、大空へ高くジャンプした。 
   
- 2 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/22(月) 18:40
 
-  どぽんっ。 
 
- 3 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/22(月) 18:40
 
-   
  「ねー」  
  「なにぃ?」 
  「なんで雀なの」 
  「知らない」 
  「え゛」 
  「知るのではない、感じるのだ!」 
  「あっそ」 
  「あーひどーいー」 
  「ひどくないから」 
  
   
- 4 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/22(月) 18:41
 
-   
   
  なんていうか、冷めてる。亜弥ちゃんと一緒にいることに。 
  
  昔なら絶対言わなかったような冷めた言葉も平気で吐けるようになったし、 
  どっちか一方の仕事で遊べない日があったって別に気にならなくなった。 
  ああ、きっとあれだ。美人は3日で飽きるってやつ。3日以上もったけど。 
  
  こういうのを、恋人同士だったら倦怠期っていうかな?よく分からない。 
  
   
- 5 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/22(月) 18:41
 
-   
  久々にもらった長期オフ。そんでもって、亜弥ちゃんも同じ日にオフを貰った。 
  そのときの亜弥ちゃんの表情ったらなかった。 
  眼をキラキラ輝かせて、今すぐフレームインさせてやりたいくらいのアイドルスマイル。 
  やっぱこの娘は天性の素質を持ってるのかもな、なんて少しだけ呆れながらそれを見ていた。 
  
  「どっか一緒に旅行行こうよ!」 
  
  ひたすら寝る、と心に誓っていたあたしには痛い一言だった。 
  しかも亜弥ちゃんが提案した行き先が、 
  
  「ハワイとかさぁ」 
  
  遂この間行ったばかりの場所だっただけに。 
  なに?なんであたしはUターンしてんの?そりゃ、遊ぶ時間はほとんどなかったけどさ。 
  結局、断るという選択肢を与えない亜弥ちゃんの強い目に、 
  あたしはNOとは言えなかった。 
  
   
- 6 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/22(月) 18:42
 
-   
  平日のせいか、海にはあたし達以外だれもいない。 
  まるでプライベートビーチ。 
  あたしは水着の上にTシャツを着た格好で砂に埋まった大きな石に腰を下ろしていた。 
  亜弥ちゃんはそこから海へと飛び込むと、気持ち良さそうに泳ぎ回っている。 
  まさか飛び降りるとは思わなかったから、内心かなりドキドキした。 
  それでも口から出る言葉は冷めてるのはなんでだろう。 
  
  どこまでも透き通る青い空に浮かぶ太陽の光が水と乱反射してキラキラ光った。 
  波が揺れればその回数だけ海は輝き、美しい。 
  そしてそれは亜弥ちゃんの可愛さを引き立てるオプションとなる、 
  なんて昔なら思ったんだろう、きっと。 
  でもなんていうか、そういう気持ちはどこかに忘れてしまった。 
  
   
- 7 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/22(月) 18:43
 
-   
  
  上京して間もない頃、まだ右も左も分からないあたしを導いてくれたのは亜弥ちゃんだった。 
  美味しい料理屋さんも、服を買いに行くお店も、みんな教えてくれた。 
  だからいつも一緒だった。「いつも悪いね」なんていうあたしの言葉にも、 
  亜弥ちゃんは笑顔だった。にゃはは、と笑うと言う言葉はいつも決まってこれだった。 
  
  「あたしはみきたんの親友だから、当たり前だよ」 
  
  当たり前、今じゃそれが当たり前かどうか、分からない。 
  
   
- 8 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/22(月) 18:44
 
-   
  突然の高波が亜弥ちゃんを攫う。 
  波は覆いかぶさるように亜弥ちゃんに降りかかった。 
  亜弥ちゃんの笑顔が見える。亜弥ちゃんは「うぉー」なんて声を出すと、 
  次の瞬間には姿を消してしまった。 
  
  ――なにやってんだか。 
  
  頬が緩んでいるのが自分でも分かる。飛び込みに続いては高波ですか。 
  ホント行動が読めないな、この娘は。前はそれが癖になったんだけど。 
  驚きの連続でも慣れると飽きちゃう、ってことなのかな。 
  それとも、甘えられるよりも甘える方が、よくなったのかもしれない。 
  よっちゃさんさんといる方が楽しいと思えるときもあるし。 
  
   
- 9 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/22(月) 18:44
 
-   
  ――あれ? 
  
  おかしい。 
  波に飲まれてもう10秒は経ったはずなのに、亜弥ちゃんは水の中から出てこなかった。 
  変だ、絶対。 
  考えている間に、あたしは立ち上がって海の中へと飛び込んでいた。 
  こんな感覚は初めてだった。胸の鼓動が激しくて苦しい。 
  どぼんっと凄い水飛沫を起こして海の中に入ると、あたしは一気に潜った。 
  
  「ぷはーーー!!」 
  
  とそれを遮る声。 
  あたしはポカンとして立ち泳ぎを忘れ、一回顔まで沈んで海水を飲んでしまった。 
  這い上がって咳き込む。亜弥ちゃんは「大丈夫―?」と言ってくれたけど 
  顔は笑っていた。 
  
   
- 10 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/22(月) 18:45
 
-   
  「すっごい心配したんですけどー」 
  
  あたしは亜弥ちゃんを睨んだ。 
  でも亜弥ちゃんはそんなこと気づきもせずに「ジャーン」と海の中から手を出した。 
  亜弥ちゃんが持っていたのは、大きな貝殻だった。 
  片側だけで、半分取れちゃってるけど。 
   
  「両方あれば割ってあたし達の愛の印にしたのにー」 
  「いやしないから。ないから」 
  
  そんなありがちなバカップル、と吐き捨てると、亜弥ちゃんはニャハハ、とまた笑った。 
  でもそんなに悪い気はしなかった。さっきまでなら絶対に心の底から嫌だったのに、 
  またも突飛な行動を起こした亜弥ちゃんにやられた。 
  亜弥ちゃんは笑った顔そのままに、はいっ、とあたしに貝殻を差し出した。 
  
   
- 11 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/22(月) 18:46
 
-   
  「美貴にくれるの?」 
  「そうです!あたしだと思って一生大事にするように!」 
  
  えー、と文句を言っていると波に飲まれて砂浜まで一気に流された。 
  危うく再び塩水の味を味わう所だった。 
  砂浜まで這い出ると、自分の手の中に貝殻がしっかりと握られていることに気づく。 
  意識しなくても、こうやって今あたしはなくさないように大切に掴んでいたんだ。 
  
  ――怖ぇ。 
  
  亜弥ちゃんマジックが、 
  いつの間にかあたしの冷めた気持ちを元に戻してしまった亜弥ちゃんの力が。 
  亜弥ちゃんは一歩遅れて水から上がると、あたしの手を見て満足そうだった。 
  
   
- 12 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/22(月) 18:47
 
-   
  あたしの傍まで寄ると、亜弥ちゃんは濡れてない砂を指差した。 
  
  「一生大事にしますって書いて」 
  「えーー」 
  「たんさっきから文句ばっかり!」 
  
  これ以上は危険らしい。あたしはおとなしく従うことにした。 
  両膝を地面について、前かがみで砂の上に一文字一文字、大事に書いた。 
  
  「一生大事にします、藤本美貴。これでいい?」 
  「だめ。たん全然分かってない」 
  
  亜弥ちゃんはあたしから貝殻を取り上げると、文字の左に書き加えた。 
  
   
- 13 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/22(月) 18:47
 
-   
 あたしだと思って一生大事にします、藤本美貴 
   
- 14 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/22(月) 18:47
 
-   
  よし、と満足そうに笑う亜弥ちゃん。 
  でもあたしはそれを見た瞬間に笑ってしまった。 
  
  「なにー?」 
  
  不満そうに眉をしかめて分かりやすく仏頂面。 
  それを見ているとますますおかしくて笑ってしまった。 
  ホント、何しだすか分からない。それが本人の計算なのか、天然なのかは別として。 
  
  「だって美貴が“あたし”を大事にするってなにそれって感じ。 
   これじゃなにがなんだか分かんないし」 
  
  最後の方は声にならなかった。耐え切れずに笑う。 
  でも亜弥ちゃんは誇らしげな顔をして、やっぱりみきたんは分かってない、 
  とあたしの言葉を一蹴した。 
  
  「あたしと、みきたんと。二人だけ分かれば、それでいいんだよ!」 
  
  なんだかこっ恥ずかしくって、首の裏が熱くなった。 
  
   
- 15 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/22(月) 18:48
 
-   
  砂に書いた文字はいつか消えてしまうけど、二人の想いはそのままに。 
  
  今まで何人もの歌い手がその詩に込めて歌ってきた、ありふれた言葉。 
  そうとは言わなかったけど、亜弥ちゃんがなにを考えていたのか、なんとなく分かった。 
  
  ――いつまでも大事にするよ。 
  
  貝をクルクル回して表裏を見てみる。 
  砂で汚れた先っぽも、全部ひっくるめてきれいだった。 
  透き通るような不思議な色をした貝。これは亜弥ちゃんにこそふさわしい。 
  でもその亜弥ちゃんにもらったんだから、あたしも少しは誇ってもいいのかな。 
  
  「亜弥ちゃん」 
  「おー、藤本隊員!この誓いの文字を守るために城を建てるぞぉ」 
  「・・・勝手にやって」 
  
  夢中になって砂をかき集める亜弥ちゃんを見ているとなんだか笑ってしまった。 
  
   
- 16 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/22(月) 18:49
 
-   
  さっきから、亜弥ちゃんは次々とあたしの予想外の行動を繰り返している。 
  それに再び魅せられて、さっきまでの冷めた気持ちが嘘みたいに消えてしまった。 
  
  ――今度はなにをする気なんだろう。 
  
  色々と前言撤回。 
  驚きの連続は慣れないし、美人だって、意外性をもたせれば、いつまでだって飽きない。 
  たとえ飽きても決して離してはくれない。掴んで離さない。 
  そしてそっぽを向いても、振り向かせてしまう。 
  
  「僕らの日々このまま 想像もつかないほど♪」 
  
  なんかの番組で流れていた曲をふと、思い出す。 
  
  「誰の歌?」 
  「知らない」 
  
  知らないけど、なんだか心地よかった。 
  
  「いたずらに風吹いて♪」 
  「たまに起きるトラブル 君と乗り越える幸せ♪」 
  「知ってんじゃん」 
  「ニャハハ」 
  
   
- 17 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/22(月) 18:49
 
-   
  
     永遠に続いてゆけ 
  
  
  
   
- 18 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/22(月) 18:50
 
-  never 
 
- 19 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/22(月) 18:50
 
-  ending 
 
- 20 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/22(月) 18:50
 
-  friendship 
 
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