15 マイク大損

1 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/21(日) 00:46


15 マイク大損

2 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/21(日) 00:47

「ふわぁ〜〜」
カーテンから漏れた朝の光が私を現実へと戻した。
朝の目覚め特有の気だるさが私を包み込む。
伸びをしようと思ったがなんだか首が痛い。
寝違えたのかと思ったが、どうもその痛み方とは違うような気がした。

3 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/21(日) 00:49

また喉を傷めてしまったのかな?私は「あー」と声を出してみた。
やっぱり声が変だ。あれだけケアしてたのに・・・・・。私って歌手失格だ。
責任取らなきゃ。本当にとらなきゃいけないのは音程だけど。

「石川おはよう」
「おはよ・・・・え?」
お母さんかと思って部屋を見渡すが誰も居ない。
お母さんなら梨華って呼ぶし一体誰だろう。聞き覚えのある声だけど。
ってさっき自分が出した声と同じだ。
「おはよ。やすすだよ」
「?・・・・保田さん?何処?」

保田さんは発言は少ないけど存在感は無駄にある。
部屋の中に居ればすぐにでも発見出来るはずなのに見つけられない。

4 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/21(日) 00:50

「灯台下暗し。喉だよ!今、石川の喉に寄生してるの!」
「え?なんで?」
「だって事務所クビになっちゃったんだもん」

そうかクビになったから首に寄生したのか。
そうか保田さんは本当に化け物だったのか。

なんとなく納得した。

5 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/21(日) 00:51

保田さんはさておき、私は朝御飯を食べる事にした。

保田さんは暇かも知れないけど私は忙しい。
残念ながら保田さんにかまってる暇は無い。
今日は美勇伝の新曲の歌入れだ。

「ちょっと石川!白子はないの?」
口は動いてないのに勝手に喉が震えて声が出る。腹話術みたいだ。
「ないです」
「肉は?あんたも嫌いじゃないでしょ?」
「好きだけど朝から食べないです」
朝から焼肉とか白子とか保田さんはどんな生活してたんだか。
6 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/21(日) 00:54

食パンを焼いて紅茶を入れる。紅茶の匂いを嗅ぐとなんだか朝って気がする。
夕方って気もするけど。湯気を胸いっぱいに吸い込む。良い匂いだ。
天気も良さそうだし今日も頑張ろう。
保田さんみたいにならないように。

トースターが止まる。どうやらパンが焼けたようだ。
さっそく食パンをかじる。・・・・・まずい。
おかしいな?賞味期限は大丈夫だし。いつものジャムだし。
でもなんだか物足りない感じがする。

「ね。石川やっぱり焼肉食べようよ」
保田さんが甘えた声を出す。気持ち悪い。
「・・・・・嫌です」

口ではどう言うが私の身体は焼肉を求めていた。
パンに焼肉のタレを塗りたい衝動を必死で抑える。

「無駄だよ。あんたの喉は今あたしなんだから味覚もあたしと同じ。
さあおとなしくキムチでも出して」
「はい・・・・・」
7 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/21(日) 00:54


私はすでに保田さんの操り人形だった。


8 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/21(日) 00:56

家を出た私の足は千鳥足。普段は黒い私が赤く染まっていた。
完全に遅刻だ。

とりあえず私はタクシーに乗ってスタジオへ向かった。
保田さんのせいだ。なんで私に寄生したのよ!
タクシーの中でわめき散らすが保田さんは答えない。
スタジオに着いた。心がなんだか重い。

9 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/21(日) 00:58

「石川!おまえはあほか?」
温厚なつんく♂さんがキレた。
「すいません。出来心です。すいません」
私はペコペコと頭を下げる。ますます酔いがまわる。
「声質変わってもうてるがな。しっかりせえよ」
つんく♂さんが呆れ顔で私を見ている。

歌入れが終わった美勇伝のAさんもBさんも白い目だ。
「さっさと歌え。どうせ後で編集するからどうでもええわ」


半泣きでマイクの前に立つ。
どうしてこんな目にあっちゃたんだろう?
保田さんだ。保田さんが私の喉に寄生したのが悪い。
保田さんなんか大嫌いだ。

「テイク1!3、2、1」
カウントが聞こえる。私は慌ててに身構えた。
10 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/21(日) 01:00

イントロが流れる。私は無我夢中で歌う。
酔っていてもう何がなんだかわからない。

気が付くと歌入れは終わっていた。
11 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/21(日) 01:01

録音ブースから出るとつんく♂さんが仁王立ちしていた。
終わりだ。保田さんみたいにクビになるんだ。
その前にヌード写真集でも出さされるかも知れない。
金になる事ならなんでもする事務所だから。

「お前上手いやないか」
下手したらAV女優にされたりするんだ。
「最高やで」
はあはあ梨華ちゃん最高だよ。とか言いながら無理やり・・・・。


「え?つんくさんなんて?」
「聞いてなかったんか。めちゃめちゃ歌上手くなったがな。声もなんかロックやで!」

後ろでさっき録音した歌が流れている。上手い。私じゃない。
「これやったらソロでも売れるで。凄いな石川」
12 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/21(日) 01:02

私ははっと気付いた。保田さんだ。
保田さんの喉だから歌が上手いんだ。
「保田くらい上手かったで。乗り移ったみたいに」

もしかしたら保田さんは私をあやや並みのスターにしたくて・・・。
志半ばで終わってしまった歌手の道を歩ませたくて。
悔し涙じゃない涙が私の頬を伝う。
「ありがとう保田さん!」
「おいおい俺以外誰もおらへんがな」
つんく♂さんが苦笑いしている。

「つんく♂さん。これからも頑張ります!」
13 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/21(日) 01:03

もう完璧だ。唯一の弱点を克服した私に敵は居ない。
「つんく♂さんのマイク食べたいな」
???無意識に声が出た。私ったら何を言っているんだ。
意味わかんない。

「おおう。石川やっとわかってくれたんか。よっしゃよっしゃ」
つんく♂さんが隠し持っていたマイクをさらけ出す。
え?つんく♂さん?どうしたんだろう?
14 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/21(日) 01:04

「梨華はつんく♂さんのがずっと欲しかったの」
保田さんが喋っている。私は声を出そうとするが出ない。
「かわいいし歌も上手いし最高でしょ?」
「せやな最高や。さあその自慢の喉で・・・・・」

つんく♂さんが私の頭をおさえつける。逃げられない。
私はつんく♂さんのマイクを。
15 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/21(日) 01:05

16 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/21(日) 01:05


ぐっ
17 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/21(日) 01:05


た。
18 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/21(日) 01:06


      おわり

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