14 フリーフォールプール
- 1 名前:14 フリーフォールプール 投稿日:2004/11/20(土) 21:08
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14 フリーフォールプール
- 2 名前:14 フリーフォールプール 投稿日:2004/11/20(土) 21:09
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「すずめよりは高く飛べるよね?」
そう言って彼女は、大空へ高くジャンプした。
- 3 名前:14 フリーフォールプール 投稿日:2004/11/20(土) 21:10
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――― 幕 ―――
- 4 名前:14 フリーフォールプール 投稿日:2004/11/20(土) 21:10
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「じゃあ配役決めよっか」
視聴覚室に藤本さんの声が響いた。
台本を読んでいたれいなとさゆが顔を上げ、同時に叫ぶ。
「れーなが主役やると!」
「あたしが主役やるの」
「さゆには似合わんって。軽やかな役やろ、これ」
「あたし軽やかだもん。れーなは軽やかってゆーかペラペラ」
二人が鋭い眼光で睨み合う。
「ちょっと待って! あたしも主役やりたい!」
慌ててあたしも割り込んだ。
れいなやさゆに、この役は無理だ。透明感満点のあたしにこそ相応しい。
- 5 名前:14 フリーフォールプール 投稿日:2004/11/20(土) 21:11
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文化祭まであと一ヶ月。
あたし達の所属する演劇部は、そこでオリジナルの舞台を上演することになっている。
それに向けて藤本さんが脚本を書いてきてくれたんだけど。
まぁ当然のように、こうなった。
- 6 名前:14 フリーフォールプール 投稿日:2004/11/20(土) 21:11
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「三人とも主役やりたいの?」
あたし達は大きく頷いた。
藤本さんが面倒くさそうに言う。
「すずめの役とかもあるからさぁ、ジャンケンでもすれば?」
「いやです」
三人の声が重なった。
「じゃあどうしよっかな……」
しばらく考え込んだ藤本さんは、何かを思いついたのか悪戯っぽく笑って顔を上げた。
「仕方ないから、やってもらおうか」
「何をですか?」
「すずめより高く、飛んでみて?」
藤本さんはニヤっと笑って立ちあがった。
- 7 名前:14 フリーフォールプール 投稿日:2004/11/20(土) 21:12
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藤本さんに続いて、校舎裏へ出る扉を抜ける。
外へ出るとまぶしい秋空が広がっていた。
遠い空に小さな雲が申し訳なさそうに浮かんでいる。
「じゃあ、あそこから飛んで」
藤本さんが指差したのは、屋外プール脇の白い飛び込み台。
それは真っ青な空を背景に、威風堂々とそびえ立っていた。
「はぁ?」
「主役やりたいんでしょ? だったら飛んでもらわないと」
藤本さんは口の端を歪めて笑う。
この人は絶対、おもしろがってる。
- 8 名前:14 フリーフォールプール 投稿日:2004/11/20(土) 21:12
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「めっちゃ高……」
飛び込み台のてっぺんでれいながつぶやいた。
あたしも恐る恐る下を覗く。
遥か下に小さく見える水面が、秋の陽射しをキラキラと照り返していた。
まぶしく光る水面。プールがあんなに小さく見える。
背中や腰にさわさわと違和感を感じて、くらくらと眩暈がした。
あたしには無理だ。飛べない。確信した。
「藤本さんが何か言ってるよ」
さゆがつぶやく。
プールサイドでは、藤本さんが「早く飛べ!」と叫んでいる。
その顔に浮かぶ憎たらしいほど無邪気な笑顔。
「……楽しそうだね、あの人」
「自分で飛んでみろっつーの」
「そもそもすずめより高く飛ぶ人間って何者?」
「あの野郎、いいかげんな脚本書きやがって……」
れいなが憎々しげにつぶやいた。
- 9 名前:14 フリーフォールプール 投稿日:2004/11/20(土) 21:13
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「最初は誰が行く?」
れいながあたしとさゆの顔を交互に見つめた。
「……あたしは後でいい」
「なんで? びびったと?」
「そんなんじゃないけど」
「ふーん」
れいなの半笑いもむかつく。
「じゃあれいな、飛んでみせてよ」
「……わかった」
意を決したように立ちあがったれいなは、ゆっくり飛び込み台を進んで行く。
おっかなびっくりといった仕草で、きょろきょろと視線も落ちつかない。
先端に着く頃にはほとんど座っている状態だった。
ゆっくりと下を覗き込んだれいな。でも一瞬で頭を引っ込めた。
「……無理」
れいなはがっくりと肩を落した。
- 10 名前:14 フリーフォールプール 投稿日:2004/11/20(土) 21:14
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「れーな、ちょっとどいて」
さゆはそう言うと躊躇いなく歩き出した。
背筋を伸ばして、確かな足取りで飛び込み台を進む。
「あたしはここにいるのー!」
ご丁寧にセリフまで吐いて、さゆは大空へ踏み出した。
空中で大きく腕を広げたさゆは、そのまま大の字で落下していく。
制服がばさばさと翻って、スカイダイバーみたいだった。
もちろんパラシュートは付いてない。
- 11 名前:14 フリーフォールプール 投稿日:2004/11/20(土) 21:14
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一瞬後、大地を揺るがすような音をたてて、さゆは消えた。
派手に上がった水飛沫が、ざばっとプールサイドを濡らす。
「うわー派手っちゃねー、さゆ」
「死んでないよね……?」
見下ろすあたし達の視界に、さゆがゆっくりと浮かびあがる。
さゆを大爆笑で迎えた藤本さんが、あたし達を見上げる。
「つぎー! 早く落ちてこーい」
あんな楽しそうな顔は初めて見た。
「なんかむかつく」
「れーなも今思った」
「でもさ、飛べる?」
「……飛べん」
れいなが悔しそうに唇を噛んだ。
- 12 名前:14 フリーフォールプール 投稿日:2004/11/20(土) 21:15
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その時だった。
青空の中、あたし達の前を一匹のすずめが横切った。
れいなの表情が変わる。黒目がすっと細くなった。
れいなは小さな体を精一杯躍動させて、すずめに飛びかかった。
「にゃあ」
「にゃあって」
空を駆けるれいな。その指先がすずめに迫る。
逆光の中のその姿は、まるで影絵のようだった。
そのまま重力に引かれて落下していく。
着水寸前に、れいなの体は小さくニ回転して飛沫をほとんど上げずに水中へ消えた。
「ありえねーよ、田中」
遥か下から、とてもとても楽しそうなツッコミが聞こえる。
- 13 名前:14 フリーフォールプール 投稿日:2004/11/20(土) 21:15
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確かにあり得ないけど、れいなも飛んだ。
情けない自分にちょっと嫌気がさした。でもやっぱりあたしには無理。
しょうがない、あたしはすずめの役で十分だ。
ため息をついて立ちあがった。
戻ろう。
- 14 名前:14 フリーフォールプール 投稿日:2004/11/20(土) 21:15
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「あ、亀井。飛ばないとすずめの役もあげないことにしたからー」
「はぁ?」
見下ろすと、藤本さんがあいかわらずニヤニヤ笑っていた。
あたしの中で黒い何かがむくむくと湧きあがる。
「飛べないのー? 根性ないねー」
いつか殺したい。
「飛べよ亀ー。使えないなー」
やっぱり今、殺したい。
「もっと笑わせろよー」
奴の馬鹿にしたような声が耳に響く。
- 15 名前:14 フリーフォールプール 投稿日:2004/11/20(土) 21:16
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あたしは走り出した。狙いは一つ。
目の前に広がるのはどこまでも青い空。
あたしは飛び込み台を強く蹴った。
超光速で超鋭角な落下式のを、脳天にぶち込んでやる。
- 16 名前:14 フリーフォールプール 投稿日:2004/11/20(土) 21:17
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从*・ 。.・)
- 17 名前:14 フリーフォールプール 投稿日:2004/11/20(土) 21:17
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从 ´ ヮ`)
- 18 名前:14 フリーフォールプール 投稿日:2004/11/20(土) 21:18
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ノノ*^ー^)
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