42 硝子の少女
- 1 名前:42 硝子の少女 投稿日:2004/06/27(日) 23:45
- 42 硝子の少女
- 2 名前:42 硝子の少女 投稿日:2004/06/27(日) 23:47
- 私は彼女と一緒に消えた。
目の前に広がる光景に、ただ立ち竦んでいた。
キラキラと奇麗に輝く宝石の欠片の上に、イチゴのシロップをかけた様な鮮やかさ。
それであって、今までに見たことのない哀しい世界だった。
それでも何故か私はとても冷静に目の前の状況を見つめていた。
- 3 名前:42 硝子の少女 投稿日:2004/06/27(日) 23:47
- 私には幼稚園よりも前からの、無二の親友が居た。
世間的に見れば大人しそうな私に比べ、彼女はまるで男の子であるかのようなやんちゃさを持っていた。
そういう二人だったからこそ、上手くやっていたのかもしれない。
私が大人しそうだというのは、飽く迄周りから見た時の印象であり、実際そうではないことは自分でしか分からないものだと思っていた。
それを唯一理解してくれたのが彼女であり、私も心底彼女のことを理解していた。
どこへ行くときも彼女と一緒。
家族ぐるみでの付き合いもあったので、旅行等に行く時にも必ず2人は一緒だった。
周りもそれを分かっていて、いつも二人で1セットの扱いであった。
- 4 名前:42 硝子の少女 投稿日:2004/06/27(日) 23:48
- やんちゃな彼女は、始め思っていたよりもずっと優しかった。
いつも私の言うことを聞いてくれて、多少の我が儘も許してくれていた。
そんな彼女だったから、自己中心的な面を持つ私にはこれ以上無い相手である。
そんな関係上、喧嘩をするときは必ずと言って良いほど私の我が儘からだった。
相手がどんなことでも聞いてくれると分かると、段々と欲望は大きくなっていく。
その内に彼女のし得るレベルを超え、彼女もさすがに少し機嫌を損なう。
しかし、それ以上に私の機嫌は悪いことが多く、仕方も無いのに彼女へと怒りをぶつける。
こうなったら私は決して譲ることが無く、最終的には何の非もない彼女が引くこととなっていた。
私自身悪いとは思っていても、この性格を変えようとは思ったことが無かった。
あの日の前も、些細なことが切欠で起こった喧嘩が原因だった。
- 5 名前:42 硝子の少女 投稿日:2004/06/27(日) 23:48
- 学校の昼休み、いつもの様に彼女誘いに行くと、一人の小さい女の子、さゆみちゃんに捕まっているようだった。
さゆみちゃんは以前から彼女に対して好意を抱いているような感じで、私の居ない間を狙っては話しかけているようだった。
「ねぇ〜、なんでさゆみちゃんと二人っきりで話してたの?」
率直に彼女に疑問をぶつける。
彼女はちょっと背中を震わせたが、別に何も無いよって感じで返してきた。
けれど、だてに今までずっと一緒に居たわけではなく、彼女が嘘を付いている事くらいすぐに分かった。
「れいな、私に嘘付いてるでしょ?」
さっきよりも大きめに体を震わせ、申し訳なさそうに下を向いて、私の方にゆっくりと顔を向けた。
その動きは見るからに動揺していた。
「正直に、本当のこと言ってくれるよね?」
少し声色をいつもよりも強め、彼女をキッと睨み付けた。
れいなもそれに気付いたようで、下を向いたままで話し始めた。
- 6 名前:42 硝子の少女 投稿日:2004/06/27(日) 23:49
- その話によると、さゆみちゃんはれいなとずっと一緒にいたい、と直接お願いしていたらしい。
れいなはそのさゆみちゃんの勢いに負けて断れず、後日返事をすると言ってしまったみたいだった。
私達は以前喧嘩をした後に、1つの約束をしていた。
それは、これから先どんなことがあっても絶対に二人だけで一緒に過ごそう、と言った事。
この約束をした時、私は喧嘩していたことを忘れた程嬉しかった。
それほど私にとって大きなものであった。
- 7 名前:42 硝子の少女 投稿日:2004/06/27(日) 23:50
- その約束からまだ二ヶ月余り、あっさりと約束は破られようとしていた。
「れいな、何ですぐに断ってくれなかったの!?」
彼女はずっと下を向いたまま、絵里との約束は覚えてたんだけど、さゆみちゃんがすごい勢いだったから、と唯そう一言だけ答えた。
勿論私の怒りは治まるところを知らない。
「そんな事で私たちの関係は崩れる物だったの!?今までずっと一緒に居たのは一体何だったの!?」
れいなは少しも頭を上げようとしなかった。
「もう!いい加減にしてよ!!」
そう言ってれいなを力の限り突き飛ばした。
その力は思っていたより遥かに強く、れいなは後ろに飛んで行き、窓硝子にぶつかった。
- 8 名前:42 硝子の少女 投稿日:2004/06/27(日) 23:50
- 幸か不幸かここは屋上へと通じる廊下の手前であり、人通りは滅多に無い。
その為この瞬間を目撃した人は誰一人居なかった。
美しいその宝石は、前から見ても首の横や腕に大量に飾り付けられていた。
彼女はその場にずるずると壁を伝って崩れ落ち、光の弱くなりつつなっていた目で私に何かを訴えかけていた。
気力を振り絞って私の耳に聞こえた言葉は、ごめんね、という言葉だっただろうか
- 9 名前:42 硝子の少女 投稿日:2004/06/27(日) 23:51
- この瞬間も、そして今も、彼女は私にとって幻であった。
彼女は私と一緒に消えたのだ。
- 10 名前:42 硝子の少女 投稿日:2004/06/27(日) 23:52
- 破片が
- 11 名前:42 硝子の少女 投稿日:2004/06/27(日) 23:52
- 胸へと
- 12 名前:42 硝子の少女 投稿日:2004/06/27(日) 23:52
- 突き刺さる
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