36 MAGIC TIME
- 1 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/27(日) 22:08
- 36 MAGIC TIME
- 2 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/27(日) 22:08
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『…そろそろ帰らなきゃ』
『じゃあね、チビ』
『チビって言わないでよぉ!これでも去年より1.2センチ伸びたんだべ!
それにキミより一応年上なんだけど!』
『…チビ』
『……今度会った時は絶対キミより大きくなってるから!』
- 3 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/27(日) 22:09
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- 4 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/27(日) 22:10
- 目を擦りながら上半身を起こし、ベットの上の方で五月蝿く鳴る時計を押した。
両腕を上げて大きく伸びをして、大きな欠伸をする。
何かとても懐かしいような夢を見てひとみはぼぅっとしながら少し微笑んだ。
いつだったっけな。
まだ小学生の頃、親戚の家に遊びに行った時にたまたま出会って一日だけ遊んだ子。
まぁ親戚の家と言っても自転車で行けるような距離にある訳だけど。
笑顔が可愛くてなんとなく好きで、つい憎まれ口を叩いてた気がする。
思えばあれは初恋だったのか。
最近疲れていて家に帰ったらすぐ眠るだけの生活だったから、
夢なんて見なかったのに今更どうしてあの頃の夢を見たんだろう。
「まぁ、どうでもいいか」
もう名前もよく思い出せない女の子。
家も遠くに離れてるわけじゃないのに学区が違ったから会う事もなかった。
でも何故かあの笑顔だけは鮮明に覚えてる。
ひとみはベットから静かに下りてもう一度全身を使って伸びをした。
今日はほぼ一日中コンビニのバイト。あたしはいわゆるフリーターってやつで。
相変わらず色恋沙汰もないしけたスケジュールには飽き飽きするけれど、
一応鞄の中からスケジュール帳を取り出し、今日の欄を開く。
特に何も書いてないスケジュール帳。
今日もつまらない一日になりそうだ。
そう思ってた。
- 5 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/27(日) 22:10
- 「おはようございまーす」
従業員入り口から入ると店長が何か慌てながらソワソワと落ち着かない様子だった。
ロッカーを開けてとりあえず鞄を中に放り込んだ。
「どうしたんですか?店長」
「う、産まれそうなんだよ…」
「何がですか?うんこですか?早くトイレ行ってくださいよ」
「違うよ馬鹿!子供だよ子供…さっき電話があったんだ…もうすぐだって…あぁ…」
時計を何度も見ながらうろうろと行ったり来たりしている。
あたしはそれに軽い返事をして制服を着る。
「行ってくればいいじゃないですか」
「で、でも、今日は夕方まで二人だけだし…吉澤さん一人になっちゃうだろう…」
「大丈夫っすよ〜!これでも結構キャリアあるんすから!
4時になればもう1人くるし余裕っすよ。任せてください!」
偉そうに右手でグーを作り胸板を叩いた。
それを見た店長はそう?大丈夫?と何度も言いながらも足は出口に向かっていた。
「は、早めに帰れたら早く戻ってくるから…!それまで頼むよ!じゃあ!」
「はいはい」
ひとみの返事を聞かずに店長は凄い速さで姿を消した。
- 6 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/27(日) 22:11
- 店内にはいると客が2人ほどいただけだった。
平日だし、お昼を乗り切れば何とかなるだろう、そんな感じだった。
数時間が経ち、お昼のラッシュも過ぎて客の数も少なくなった。
ひとみは有線を聞き鼻歌を歌いながら掃除をしていた。
ちょうど今客もいなくて店内には自分だけ。
暇だしちょっと立ち読みでもするか、と思っていた時に1人客が入ってきた。
内心ちぇっ、と思いながらも笑顔で挨拶をする。
「いらっしゃいませ、こんにちは」
その客は真っ直ぐお弁当コーナーまで行っておにぎりなんかを見ていた。
白っぽいワンピースを着たショートカットの女の子。
帽子を深く被ってるからよく顔が見えない。
ひとみはレジに戻り、袋なんかを取り出してその客が来るまで時間を潰した。
少し経ってレジ台におにぎり2個とウーロン茶が置かれた。
「ありがとうございます。おにぎりは温めますか?」
「いえ、いいです」
いつものような流れ作業で進めていく。
いつもと違ったのはこの後だった。
- 7 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/27(日) 22:11
- おにぎりのバーコードを読み取ってるとまた1人ガタイのいい男性客が入ってきた。
ふとそちらに目を向けたが接客中だったので特に気にも留めなかった。
すると突然男が大きな声を上げポケットからサバイバルナイフを取り出した。
「…金を出せぇえええぇへぇ」
一瞬ビビッタが男の声が裏返ってたので少し笑えた。
くすりと少し笑ってしまったら男は怒りだした。
「な、何笑ってんだ!お前!」
「いや…別に…」
「は、早く金出せって、い、言ってんだよ!」
随分弱弱しい強盗だ。
なんつーか、自分より華奢じゃないか。ムカつくぞ。
レジの中でとりあえず手をあげて立っていると向こう側にいた客の女の子が走ってこちらに入ってきた。
弱そうなんだから逃げればいいのに、と思ったが一人取り残されるのも嫌なので少しホッとした。
小声であたしに話しかけてくる。
「…あのさぁ、なんかこう警察に危険を知らせるブザーみたいなのはない訳…?」
「…さぁ、縁はないだろうなぁと思ってたから何がどこにあるかとか聞いてなくてさ」
「……信じらんない」
男は金も出さずにこそこそひそひそ話してるあたし達を見てますます怒りだした。
- 8 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/27(日) 22:11
- 「…くそぉ!!どいつもこいつも人を馬鹿にしやがって!!殺してやるぞ!!!」
サバイバルナイフを振り回し始めた。
さすがにこうなっちゃ手が付けられない。
いくら弱弱しくたって怖いもんは怖い。
チラリと後ろを見ると女の子はおびえた表情を浮かべていた。
なんとなく、守ってやんなきゃななんて思って盾になるように立った。
あーあ、ついてないよ、全く。
早く戻ってきてよ店長、まじでさ。
「…ここに隠れてて」
「え…?うん…、でもキミは…?」
「あたしは平気。これでも簿記3級持ってるから」
「…関係ないんじゃ……」
「キミ」と呼ばれた事にふと懐かしさを感じた。
が、浸ってる間もなくナイフがあたしのすぐ横に振り落とされる。
- 9 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/27(日) 22:12
- 「殺してやる!殺してやる!」
「ちょ、ちょっとまってよ、おじさん」
「…俺はまだ22だぁあぁ!!!!」
「えぇ!?まじで!?てっきり老けてるからおっさんかと…」
「うるせぇぇぇ」
ますます怒らせたようでどんどん激しく攻撃してくる。
ヤバイな、さすがに刃物はヤバイ。こんな時に限って他の客も来ないもんだ。
そこらへんの棚のパンなんかをとりあえず投げてみるが全然意味がないようだ。
するといきなり視界にから揚げが見えた。
「えいっ!えいっ!」
女の子が必死にレジ横のから揚げを男に投げている。
ごめん、全然意味ないわ。
男は完全に手が付けられない。
まともに話し合いも無理だろう。
刃物を持ってる男の人にはっきり言って勝てる自信もない。
このままだと自分もヤバイしあの子もヤバイ。
こういう時はどうすればいい?
まともにやりあってもダメか…。
- 10 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/27(日) 22:12
- まともにやりあってもダメ?
そうか、わかった。
ひとみは従業員の部屋に走っていった。
それを男も追いかけてくる。
女の子はその様子をカウンターに隠れながら覗き込んだ。
程なくその声は聞こえた。
「きえぇぇぇえええぇぇぇぇぇぇぇぇええ!!」
奇声とともに男が血相を変えて出てきた。
しかし奇声を上げているのは男じゃない。
ひとみだ。
ひとみは両手で消火器を持ち上げて男を追い掛け回している。
それに青い顔をしながら男は逃げている。
まともじゃないやつとやりあうなら自分もまともじゃないやつになろう。
ひとみは少し脳が足りなかったようだ。
この世の言葉ではない言葉を発しながら男を追い掛け回す光景に女の子は怯えた。
- 11 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/27(日) 22:13
- 「きぃえぇえええええ!出てけ!ゴルァァァァァァ!!!」
消火器を大きく振りかざし男に向かって投げた。
男は避けて、消火器は思い切り店の硝子にぶち当たった。
大きな音とともに硝子は割れて、それに驚いた男は即座に退散してしまった。
「はぁ…はぁ…」
静かになった店内とひとみと女の子。
ひとみが呼吸を整えていると女の子はカウンターから出てきた。
「…ありがとう、よっちゃん」
「!?なんであたしのあだ名を?」
「昔、遊んだ事あるベ?チビ。覚えてない?」
「あぁ!!」
初恋の人との感動の再会。
硝子も破片がキラキラと反射してまさにドラマのよう。
まぁ強盗が入る事自体ドラマチックだったが。
- 12 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/27(日) 22:13
- 「…よっちゃん……助けてくれてありがとう」
「いやぁ、そんな事ないですよ」
後ろ頭をかいて照れながらでも偉そうに笑う。
まさか、これをきっかけに恋が始まっちゃうんじゃないの?
なんて淡い期待をした。
しかし。
「助けてくれてありがとう…でもちょっと気持ち悪かったべさ」
天使の笑顔が急に凍りつき冷たい視線で言葉を吐き捨てられ彼女は出て行った。
1人取り残された店内。
そこへ店長が帰ってきた。
「……吉澤さん」
「…ハイ」
「首」
- 13 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/27(日) 22:13
-
…時間よ、戻れ。
- 14 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/27(日) 22:14
- ご
- 15 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/27(日) 22:14
- め
- 16 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/27(日) 22:14
- ん
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