32 A
- 1 名前:_ 投稿日:2004/06/27(日) 18:22
-
『あれ、吉澤さん? 吉澤さんだよね、ガッタスSCの』
『ん? あーあーあー、後藤さんじゃん。 へー、この学校来てたんだ』
『それはこっちの台詞。 あ、じゃあ、やっぱクラブでサッカー続けんの? この学校サッカー部ないじゃん』
『へっへー、いやね、実はサッカー部、作っちまいましょうかと思って』
『マジで?』
『マジっす』
『…実はあたしもそう思ってたんだよねー』
『マジで?』
『マジっす』
- 2 名前:_ 投稿日:2004/06/27(日) 18:24
- 後半開始早々、ネットが揺れた。
小柄なGKはちょっとふてくされたようにボールを放り投げる。
キャプテンマークを巻いた茶髪の彼女は懸命に手を叩いて諦めムードのチームメイトを鼓舞していた。
しかしながらこれで0−3。
決まった、かな。
屋上からその様子を俯瞰しているあたしは、落胆するでも失望するでもなくただぼんやりとそう思った。
つーかなんでよりによってこの試合ウチの高校でやるかね。
他に高校なんて山ほどあるだろうし、市とか県とかのグラウンドだってあるっつーのに。
そしたら絶対こんな試合なんか見てないのに。
にしても暑い。いや、むしろ熱っちい。
6月の日差しにしては、それはそれは強烈なものだった。
梅雨入りして分厚い雲に隠されてしまう前にもてる光すべてを地上に注いでしまおうという、太陽のある意味、意地のようなものすら感じられた。
深く濃い青には雲ひとつない。
そういや、あの日もこんな空だった。
- 3 名前:_ 投稿日:2004/06/27(日) 18:26
-
ぶちっ。
嫌な音がした。
『よしこ?』
崩れ落ちる視界にすべてを悟った。
『ちょっと、よしこってば!』
『吉澤先輩!』
遠くで鳴るホイッスル。
土のグラウンドに倒れこんだあたしを沢山の人が囲んでいたのだけど、表情はちょうど逆光になっていてよく見えなかった。
『どしたの!』
『大丈夫ですか!』
覚えているのはその向こうの青すぎる空だけ―――
―
―――
―――――隣、ええか?」
「…どうぞ、別にあたしのものではないですので」
- 4 名前:_ 投稿日:2004/06/27(日) 18:27
- 過去のくだらない回想にトリップしかけていたあたしを、流暢な関西弁が現実に引き戻した。
「それもそーやな」
そう言うと、声の主はあたしの隣の鉄柵にどっかりと肘をかけた。
「煙草、吸ってもええか?」
「一応、校内全面禁煙となっておりますので」
「水臭いこというなや」
「じゃあ、そんなこといちいち訊かないで下さいよ」
「まぁ、礼儀みたいなもんや」
屋上の緩るんだ空気に煙がたゆたう。
ニコチンの匂いが鬱陶しくてあたしは眉をしかめた。
- 5 名前:_ 投稿日:2004/06/27(日) 18:28
- 「…中澤先生、試合はいいんですか?」
「ウチがおらんでも誰も困らんやろ。しょせん、名ばかりの顧問や。監督は実質ごっちんがやってるようなもんやし」
うん、確かにそうだ。
この人サッカーのことほとんど知らないし。
練習にだって、ほんとたまにしか顔出さなかったし。
そんな人に顧問押し付けたウチらもウチらだけどね。
「なぁ、なんで下でみぃへんのや? みんなと一緒に応援したらええやん」
「…あたしはもうとっくの昔に辞めた人間ですよ? そんな人がベンチの後ろウロチョロしてたら気持ち悪いじゃないですか」
「…そんなもんかいな」
先生はあまり納得していないような風だったが、あたしはそれを無視してボールの動きを追った。
- 6 名前:_ 投稿日:2004/06/27(日) 18:29
- 3点のリードにもかかわらず敵は攻め手を緩めようとしない。
スルーパスがゴール前に抜ける。
DFがラインを押し上げていたけど、右のCBが遅れてオフサイドがとれなかった。
危ない、やられる。
と、思った瞬間、GKが判断よく飛び出していて、間一髪ボールを先に掴んだ。
辻、飛び出し上手くなってんじゃん。
辻だけじゃない。
紺野、小川、まいちゃん、みうな。
みんな個人差はあるが大なり小なり上達している。
ま、当たり前か。
あれから一年が経とうとしている。
上手くなってなきゃ嘘だ。
一緒にこの部を立ち上げた相棒も今ではキャプテンマークが似合うようになっていた。
背中の背番号10もいつの間にかすっかり板についている。
- 7 名前:_ 投稿日:2004/06/27(日) 18:30
- 「…膝の調子はどうや?」
「いや、別にどうも。日常生活には問題ない程度です」
「何回目やったんやっけ?」
「三回目です。中二の時に軽くやって、高一で中傷。で、去年の大会中にぶっつりと。綺麗にステップアップしましたね、あはは。
さすがにおんなじ怪我を三回もやってると、なんかもうバカらしくなってきますよ」
「で、リハビリもせずにヤケになって部活も辞めた、と」
「別にヤケになってたわけじゃないですよ。時間の無駄遣いをしたくなかっただけです。別にサッカーやらなくたって死ぬわけじゃないし」
「死んどるやん、自分」
紫のカラーコンタクトの視線があたしを突き刺した。
それを逸らすようにわざと明るい声を作っておどけてみせる。
「…何、言ってるんですか。 生きてますよ、ほらっ。 心臓がドクドク血を運んでますし、太陽に透かしてみれば血潮だって」
「目が、や、目が。 自分が生きれるのはあそこだけや、ラインに囲まれたフィールド、しかもボールが足元にある時だけ。
自分、わざわざ敵の多いほうにボール持ってってたやろ。囲まれれば囲まれるほど嬉しそうな顔しよってからに」
- 8 名前:_ 投稿日:2004/06/27(日) 18:31
-
『なんでわざわざマークのキツイ方に飛び込んでくの? あんなに右にスペースあったのに、バカじゃない?』
『だってその方が面白れーじゃん』
『それでボール取られてちゃダメじゃん』
『いや、まぁ、それは時の運ってやつ?』
試合が終わったあとはいつもこんな言い合いばかりしてたけど、それなりにうまくはいっていた。
あたしはちょっとやそっとじゃボール取られなかったし、ごっちんもぶつぶつ文句言いながらちゃんとカバーに入っていてくれたから。
で、付け足しとくと、あたしのほうがごっちんよりちょっとだけ上手かった。
特に一対一でボールを奪われることはほとんどなかった。
おかげであたしは背番号10を背負って試合に出てたわけだけど、まぁ、それも昔の話。
「県選抜にも呼ばれてたのになぁ、もったいなかったなぁ」
「…まぁ、正直、あの頃は天狗になってましたからね。 サッカーの神様の天罰ってやつじゃないですか、あはは」
で、あたしの代わりに選抜に呼ばれたごっちんは、今やここいらの女子サッカー界ではちょっと知られた存在。
かたやあたしは屋上でセンチメンタル観戦。
ほんとに人生ってのはどこでどうなるか分からんもんだね。
「…あたしはガラスのエースだったのです。輝きを放つ時間は僅かなのです。脆くて壊れやすいのです。壊れたものはもう二度と戻らないのです」
「自分で言ってたら世話ないわ」
「ついでに言うとあたしは心臓病なのです」
「それは初耳やな。 …漫画の読みすぎやっちゅーねん」
- 9 名前:_ 投稿日:2004/06/27(日) 18:34
- みうなが抜かれた後ろをごっちんが上手くカバーしてコースを塞いだ。
苦し紛れに出たパスをいいポジションをとっていた紺野がカット。
そのボールを受けたごっちんはそのまま右サイドのスペースに出してまいちゃんを走らせる。
サイドを深くえぐって中に折り返したが、FWとの呼吸が合わずゴールには至らなかった。
「どう思う、このチーム?」
「…いいチームじゃないですか。 ごっちん中心に守備を固めて、カウンターで足の速いまいちゃんを走らせて。
紺野は相変わらずクレバーな守備やってますし、みうなだってがむしゃらなだけじゃなくちゃんと考えて走るようになりましたね。
辻もちょっとは大人なプレイになってますし、小川……小川は…、うん、まぁ、チームを盛り上げてますよ。
チーム全体がうまくまとまって、各々がちゃんとやるべきことを分かってるって感じですかね。
ただ今回はちょっとばかし相手が悪かったですけどね。どうせ今回も全国行くんじゃないですか、向こう」
あたしの言うことにひとしきり相づちを打ってから、先生は唐突に語り出した。
「サッカーってのは面ろいなぁ。だって考えてみ、足っちゅう不正確すぎるほどのパーツであの丸っこいボールを扱うんやで。
でもってDFはそれこそ必死になってボール取りにくる。GKは手、使ってゴールマウスを守ってる。普通にやってたらまず点入らん。
そこで無茶するヤツがおらなあかん。いちかばちかで飛び込んでいけるヤツ。五分五分の厳しいパスを出せるヤツ。
かといってそういうヤツばかりでもあかんねんけどな。うまいヤツ11人揃えたかて勝てるとは限らへん。
いろんな個性が集まってはじめて一つのチームっちゅーことやね……お、なんかウチ、顧問っぽいこと言ってへん?」
先生はウンウンと頷いて自分の言葉に悦に入っていた。
素人が、何、サッカー語ってんだか。
あたしはそれを半分聞き流しながら試合の展開を見守っていた。
みうなが中盤でボールを受ける。
ルックアップしてぐるっとフィールドを見渡してから、出し所がなかったのかボールをまた後ろに戻した。
その判断は悪くない。
悪くないのだけど。
あたしには違う絵が見えていた。
- 10 名前:_ 投稿日:2004/06/27(日) 18:35
-
『今度こそ10番、もらうからね』
『へっへっー、やれるもんならやってごらんなさい』
『ぜったい勝つ』
『つーかDFが10番とか似合わないから』
『いや、カッコイイじゃん、そういうの』
『じゃあ、まず、あたしからボール取ってからにしてね』
『おうよ。 で、いつやる? 明日?』
『いいよ、明日で』
- 11 名前:_ 投稿日:2004/06/27(日) 18:36
- 「で、自分、今どれくらいボール蹴れるん?」
燃え尽きた煙草をポケットから取り出した携帯灰皿に押し込めながら、先生はそんなことを訊いてきた。
「…そういうのは無理ですよ。走ったりするとか、ましてボール蹴るなんて」
「…嘘つくなや。 ウチ、知ってんねんで」
二本目に火がつくと再び煙が空気に溶け込んでいった。
あたしはまた眉をしかめたのだけれど、先生は少しも気づいてない風だった。
「自分、ほんまはリハビリしてるんやろ? こないだなぁ、友達の子供の子守頼まれて公園に行ったんや。
ウチそんな柄やないし、自分の子供じゃないのがちょっと悲しいとこやけど…ってまぁこれはどーでもええわ。
そん時な、見てもうたんや、自分がボール蹴ってるとこ、それもえらい楽しそうに」
「…人違いじゃないですか。 もしくは幻か」
「とぼけんなや。あそこまで動けるようになるのには相当リハビリ頑張らなアカンはずや。
自分、結局サッカーやりたいんやろ? やりたくてやりたくてしゃーないんやろ?」
その問いに対し、あたしはだんまりを決め込んだ。
というか、ただ遠くで行ったり来たりを繰り返す白と黒のボールを吸い寄せられるように見つめていた。
なんだって、あのボールはこんなにもあたしを魅了する?
- 12 名前:_ 投稿日:2004/06/27(日) 18:38
- 「けどなぁ、そのことごっちんに言ってみたんやけどな、『はぁ、そうなんですか。けど本人が何にも言ってこないのでなんとも』やって。
ほんとにあんたら素直やないなー。
戻りたいなら戻りたいって、戻ってきてほしいなら戻ってきてほしいって言えばええやん」
「…だから、さっき言ったじゃないですか、いいチームだって」
そう、あたしの入る隙間なんかないくらい、いいチーム。
膝にある程度の目途がついて、ひょっとしたらと思って、グラウンドを久々に覗いてみた時にそう感じた。感じてしまった。
一度辞めた人間が今さらどんな顔して戻ればいい?
それもよりによってこんな大会直前に。
フェンスの向こうのフィールドがとても遠かった。
「今さらのこのこと戻ったって邪魔なだけですよ、きっと」
「…ほんまにそやろか。
あんたが辞めるいうた時な、ごっちん、表面上は冷静を装ってたけど、あの日からやで、夜遅くまで残って練習するようになったんは。
あんまり根つめすぎたらアカンよー、いうたんやけどな、ごっちん曰く、『くだらない約束しちゃったんで』やと。
その約束がなにかはようわからんけどな、なんや大事なことなんやないの?」
- 13 名前:_ 投稿日:2004/06/27(日) 18:40
-
『あー、くそっ、くやしー』
ごっちんがグラウンドに大の字になって空を見上げながら叫んだ。
『ふっふーん、じゃ、10番はまたあたしってことで』
あたしはコーナーフラッグにかけておいた10番のユニフォームをさっと取り上げた。
『ま、ごっちんにはもれなくキャプテンマークのほう差し上げますので』
『なんか損な役回りばっかりあたしに回ってきてない? …次こそ10番もらうかんね』
『はいはい、次回の挑戦、心よりお待ちしてまーす』
その日は綺麗な夕焼けだった。
ごっちんはさっきから大の字になったまま暮れる空を見つめていて、あたしは一人でリフティングを続けていた。
『…ねぇ、よしこ』
『ん、なに?』
『大会、どこまで行けるかな?』
『なにいってんの、優勝に決まってんじゃん、優勝』
『…本気で言ってる?』
『本気も本気。絶対いけるって。あたしとごっちんがいれば絶対大丈夫だって』
『…その自信、どっからでてくんの?』
『いやマジで大丈夫だから。 この10番に誓ってもいい。ぜってぇー大丈夫』
『…なんか、そこまで言われるとちょっとその気になってくるから不思議だよ。
うん、次はちょっと無理でも、来年、あたしたちが3年になる時には……全国行きたいね』
『だーかーらー、大丈夫だってば。 じゃ約束しよう。もし全国行けなかったら、鼻からきし麺啜ろう、二人で』
『はぁ、なんであたしまで入ってんの? つーかきし麺太いし』
『いやいや、やっぱね、ごっちんのお力添えなくして勝利はありえませんので。 責任は連帯でっつーことで』
- 14 名前:_ 投稿日:2004/06/27(日) 18:41
- なんでもない一日の、幼い、淡い約束。
あの日、あたしの膝と一緒に砕け散ったと思ってたけど。
ほんとのところは自分で叩き壊したんだ。
膝はある程度治ったけど、こればっかりはどうにもならないみたい。
ほんとに淡いね。
あはは、笑えるぜ。
…ごめん、ごっちん。
「どこ行くん?」
「…帰ります。 あたしにはこの試合見る資格がないことに気づきましたんで」
熱を帯びた鉄柵から手を放し、グラウンドに背を向け歩き始めた―――その時。
- 15 名前:_ 投稿日:2004/06/27(日) 18:42
-
「―――あぁー、いたぁーっ!」
素っ頓狂な声が屋上から真っ青なお空に響いた。
今日はお客さんの多い日だこと。
つーか小川、あんたいつの間に代えられてた?
「って、え、あれ、中澤先生なんでここに? ちゃんと試合観ててくださいよぉー」
「ああ、スマンスマン―――で、どうしたんや、そんなに慌てて」
「あー、そうだっ、ほらっ、吉澤さん、行きますよ!」
小川があたしの腕をぐいっと引っ張った。
「…は、あたし?」
「そうですよぉ、ハーフタイムの時、探しに行けって、後藤さんが。絶対どっかから見てるからって」
グラウンド上の彼女は鮮やかなスライディングでボールをラインの外にかきだしていた。
ふーん、お見通しってわけですか。
相変わらずいい読みしてんね。
「もうっ、膝治ってるならなんでこんなとこにいるんですかー!
ハーフタイムの時、後藤さんに聞いてみんな驚いてましたよっ!ほらっ、早く行きますよっ!」
「…だってあたし部活とっくに辞めた人間なわけだし」
「はぁっ、何言ってるんですか? ちゃんとメンバー登録してありますよ」
「え、な、なんで?」
- 16 名前:_ 投稿日:2004/06/27(日) 18:43
- 「あぁ、吉澤」
わざとらしいにもほどがあるくらいに作りきった声が聞こえた。
「あの時もらった退部届なぁ、ゴミ箱に直行しとるから」
したり顔でそういいのけた。
…ほんとにあんたって教師は。
「部費はあとでまとめて貰うで」
煙草を咥えた口元がにやりと歪んだ。
- 17 名前:_ 投稿日:2004/06/27(日) 18:45
- 「ささっ、ユニフォーム持ってきてますから早く着替えてください」
「いや、でも、あたし……」
そう言って小川は意味ありげな笑みを浮かべてユニフォームをあたしの手にねじりこんだ。
その笑顔を不思議に思ったのだけど、ユニフォームを広げてみてその理由がすぐに分かった。
背番号19……の、1と9の間にガムテープでちっちゃく貼られた「+」。
…自分はちゃっかり10番奪いやがって、あたしはこんなまがい物かよ。
くだらないこと考えやがって。
じろりと見下ろすように睨みつけた本物の10番は鋭い出足で敵のパスをカット。
そのまま右のスペースに出してまいちゃんを走らせる―――と思ったら違った。
何を思ったかドリブルを始めてフィールドを駆け上がっていった。
無茶なオーバーラップなんて、らしくないプレイ。
飛び跳ねるような独特のステップで相手陣地に切り込んでいく。
ゴール前まで来て敵に囲まれた。
でも、パスは出さない。
巧みに体を使ってボールをキープする。
そして最後は敵DFに足をかけられて倒された。
ホイッスルが吹かれる。
直接FK。
- 18 名前:_ 投稿日:2004/06/27(日) 18:46
- なんだい、そりゃ。
あたしの真似かい。
下手くそ。
やるならもうちょい華麗にやれ、華麗に。
でも、正直。
「あのー、中澤先生」
「んー?」
「部費、12回払いでもいいですかね?」
「ええよ」
いってらっさーい、という中澤先生の声がもうずっと遠くに聞こえた。
うらやましかった。
あの広いフィールドで思いっきりサッカーやってんのが。
勝手にぶっ壊れやがったくせに、今度は勝手に走り出しやがって。
本当に、もう、しょーがないやつだ、まったく。
階段を一段飛ばしで駆け下りていると、グラウンドから歓声がこだまして、それは校内にも響き渡った。
何が起こったかなんて容易に想像できた。
ごっちんの右足は恐ろしいほど正確だ。
これで2点差か。
なんとかなるな。
- 19 名前:_ 投稿日:2004/06/27(日) 18:47
-
スパイクの紐を結ぶ手が少し震えていた。
うずく膝をがしっと両手で押さえつける。
どこまでやれるかな。
ま、この試合だけでもいいや。
頑張って耐えてちょーだい。
顔をぐいっと引き起こしてフィールドを見渡す。
どこまでも広がるような素晴らしい景色。
…でも、まぁ、できることならもうちょい先まで。
せめてこの大会ぐらいは。
せっかく部費も払うことだし。
ライン沿いで屈伸をしているあたしと目が合って、ごっちんが少しだけ笑った、気がした。
けれどすぐに真剣な表情に戻って、チームメイトに大声で指示を出し始める。
でもって欲張らせてもらうなら、もっとずっと先まで。
どこまでいけるかなんて分からないけど、あたしたちならきっとどこまでもいける。
こちら側に転々と転がってきたボールを足でひょいっとすくい上げた。
よっ、久しぶり。
ピッチ上に吹く風は前と変わらず。
- 20 名前:_ 投稿日:2004/06/27(日) 18:49
- ガッタス
- 21 名前:_ 投稿日:2004/06/27(日) 18:49
- プリジャンチス
- 22 名前:_ 投稿日:2004/06/27(日) 18:50
- なにがし
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