12 初夏の夕暮れぼんそわーる

1 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/21(月) 00:17

美貴、窓辺に一人。
ハーモニカを始めようか迷っている。
そして、形から入る美貴の手元には、純銀のハーモニカ。
100万もしたけど、それがなんかいい感じ。
このハーモニカ、メンバー内で孤立がちな美貴のアイデンティティに近い。

2 名前:: 投稿日:2004/06/21(月) 00:19

美貴の背後から射した陽光が、辻ちゃんの胸元で虹色に跳ねた。
それは瞬きよりも短く、永遠よりも長く美貴の心に焼きついた。
嘘だけど。

美貴は目を凝らす。
雲が太陽を覆ったのか、楽屋内に薄く影が降りる。
辻ちゃんは八重歯を覗かせてれいなとあやや比べをしている。

雲が流れたのだろう、美貴の背後から再び明るくなった。
もう一度、辻ちゃんの胸元でキラリと光った。
3 名前:: 投稿日:2004/06/21(月) 00:21

「ちょっと、辻ちゃ〜ん!!」
「なにー?」
辻ちゃんがとてとてやってくる。

「ねぇ、それ」
美貴が指差すと、辻ちゃんは得意気にチョーカーを振って見せる。
生成りの紐の中心で、大粒の涙がそのまま固まったようなガラスみたいのが煌く。
光の加減なのか、淡く浅黄色に輝いている。

美貴はその輝きに、心の奥底から全体にかけて鷲掴みにされた気分になった。
それを手にした自分を想像して、胸が震えた。

「いいでしょ、これ。クリスタルのいってんもの。17歳の記念に買ったの」

手に入れなければならない。
そう強く思った。
美貴はあれもこれも欲しい。
4 名前:: 投稿日:2004/06/21(月) 00:24

しかし……だ。
美貴は今、謂れのない迫害を受けているのだ。
娘。用語で言うなら、いじられている。
今の美貴が何を言っても、きっと便器にこびりついたうんこ程度の扱いしかされないだろう。
うっさい、の一言で片付けられるかもしれない。

シダは酸素出すだのスゴイだの、研究会にしては頭の悪い歌を歌わされ、しかもおまけに辱めでしかないアドリブ、物語におけるシダの存在意義のなさ。バカにされても仕方がない。今ならそう言える。が、二週間ばかり前の私は青かった。
5 名前:: 投稿日:2004/06/21(月) 00:25

本気でシダを素晴らしさをメンバーに伝えようと、近所の花屋にシダを買いに行ってしまうのだ。店のおばちゃんの笑いをこらえた苦悶の表情、思い出すと恥ずかしくて仕方がない。たぶん初めての注文だったのだろう、店の奥から分厚い冊子を持ってきて「シダね、シダ。シダ、シダ……」指を舐めつつありえない速度で紙を捲るのだ。その間、一切こっちを見ない。5分ほど経った頃だろうか、おばちゃんはやはり美貴を見ずに言う。「どんなシダがお好みですか?」シダの素晴らしさを伝えられればいいから、好みも何もなかったのだが、とりあえず言う。「じゃあ、こごみでお願いします」「こごみですか。それなら、八百屋とかの方があるんじゃ……あ、でも、今は時期じゃないかなぁ」美貴はこごみというものをわかっていなかった。花屋でシダ植物を買おうとしているのに、出てきたのが八百屋。美貴は少しばかり、というよりもかなり動揺してしまい、思わず口走ってしまった「光合成」はい?って感じのおばちゃんの戸惑いが、さらに美貴の動揺を助長、「あの、酸素を出すんです、シダ。…シダはおよそ三万年前、地球の酸素をゲンザイ二倍近くにしたと……」なにやらスイッチが入ってしまったらしく、ミュージカルの長台詞がつらつら、シダ知識を披露。おばちゃん、すごいね、なんてベロニカ(別名オオイヌノフグリ)という、薄紫色のかわいい花をくれた。花言葉は神聖、清らか。でも、フグリ。大犬のふぐり。この花の名や花言葉の作成にまつわった人々の全てを疑う。

そんな紆余曲折を経て、私はアスプレなんだかという、毒々しくすらある濃い緑のシダを手に入れた。よーく話を聞くと、シダ植物は普通に観葉植物としてあるらしい。美貴がシダとか言うから、おばちゃんは慌ててしまったとかなんとか。途中で鬱陶しくなって聞いてなかった。美貴は自信を持ってシダを中野サンプラザの楽屋に持っていった。緑は目の保養にもなるし、何より酸素が増える。けど、それを楽屋に置いた途端、田中ちゃんが悲鳴をあげた。あわあわと田中ちゃんの指差した先、葉の裏には茶色。粒子状の胞子がびっしりと。なんとおぞましい。
6 名前:: 投稿日:2004/06/21(月) 00:27

悲鳴を聞きつけた加護ちゃんが真っ先に駆けつけ、そのすぐ後によっちゃんさん。
「え?なにこれ」「あ、胞子じゃねぇ?」「ほんとにぃ?きったにゃ〜い」「こんなのから出てくる酸素ならいらないよね」「この酸素も嫌だけど、それを復古させようとする人たちも相当くっさいよね」
くっさいくっさいと訳もわからずに責め立てられた。
シダ仲間であるはずの辻ちゃんも、くっさいくっさいと。
娘。に入るにあたり、どんな時も泣かないと決めていた私でも、正直これはきつかった。
なのに、よっちゃんさんはさらっと言うのだ。
「シダっつーより、陰金田虫。いや、いんきんたみきの方がお似合いじゃねぇ?」
いんきんたみき、4期以上のメンバーにその場で浸透。
あっち向きゃ陰金、そっち向きゃ田虫、どっちを向いても陰金田虫、もとい、いんきんたみき。

この悲劇の極めつけとしては、年少メンバーの市民権も獲得してしまったこと。
亀井ちゃんが遠慮がちに「陰金の美貴ちゃん?」なんて言うもんだから、もう笑うしかなかった。
よっちゃんさんはそんな美貴の心の緩みを確実に突いてくる。
「あ〜!ミキティ、笑ったぁ。やっぱ陰金なんだー!!」
胞子から陰金田虫を持ってくるよっちゃんさんのセンスにも脱帽だが、かなり頭にくる。

「そのミュール、全然似合ってないんだよぉ!」
美貴がよっちゃんさんのミュールにツっこむと、思いの外ダメージを与えたらしい。
「これ、私のじゃなくて、弟のなんだよ!!」
よっちゃんさんはミュールを脱いで床に叩きつけると、楽屋から出て行こうとした。
でも、閉じたドアを開けるのを忘れて勢いよく激突、鼻血を出した。
ざまーみろだ。

7 名前:: 投稿日:2004/06/21(月) 00:29

美貴は少し考えた。
辻ちゃんの17歳記念、一点物であるクリスタルのチョーカーを奪っていいものか。
でも結論はすぐ出た。
欲しいものは欲しい、仕方のないことだ。

早速辻ちゃんにお願いしてみることに。
「ねぇ、辻ちゃん。そのチョーカー、美貴にちょうだい?」
笑顔で重くならないように軽い感じで、尚且つ軽くなり過ぎないように言ってみたつもりだ。
自分で言うのもなんだが、それはこれまでの美貴の中でも上位に食い込む可愛さだったと思う。
美貴レベルで言うと、浮かれモードや紅白に匹敵するくらいに。

けど、辻ちゃんはにべもなく言うのだ。
「やだよ」
「え?なんで?」
「のんのだから。それに、たみきには必要ねーだろ」
そうおっぱいのあたりを殴られた。
すごく痛かった。

これは梨華ちゃんよりも酷い扱いだ。
梨華ちゃんは本当にキショイけど、美貴は陰金田虫じゃない。
シダを楽屋に置くのなんて、ちょっとしたお茶目で終わるはずなのに。
8 名前:: 投稿日:2004/06/21(月) 00:32

仕方ないから、最後の手を使うことに。
美貴は小さな賭けにこぎつけた。

表参道駅から原宿駅まで、直線距離でおそよ1km。
美貴は走る。
辻ちゃんは表参道で銀座線に乗り換え渋谷へ、渋谷からは山手線で原宿駅へ。
その所要時間はおよそ14分。

どっちが先に着くか、その勝負。
でも勝負は美貴が勝つことになっている。
だって美貴、ズルするから。

唐突な話ではあったが、辻ちゃんを言いくるめるなんて造作のないこと。
だって、辻ちゃんだもん。
例えば美貴がよっちゃんさんの子を身篭ったって言って、カンパを募るのだってイージーだ。
だって、辻ちゃんだもん。
騙すなんてお手のもの。
9 名前:: 投稿日:2004/06/21(月) 00:34

辻ちゃんの17歳記念のクリスタルのチョーカー。
もうすぐ美貴の物になる。
辻ちゃんは泣きをみるのだ。
泣かすのは美貴。
あー、なんて非情な陰金の美貴ちゃん。
美貴は冷酷、氷のように冷たい女なのだ。

そんな美貴の思惑など知らない辻ちゃんは、単純に喜び、はしゃいでる。
「マジで?あややの作ったカレー?CMみたいに?」
「うん。午後の紅茶もついてるよ」
「やるやる。だって、のんの勝率、85%くらいなんでしょ?」
「そう、辻ちゃんの勝率は90%くらい」

辻ちゃんの表情がふっと翳る。
優しい子だ。
美貴のことを心配してくれたのだろう。
「でも、たみきはどうすんの?」
「じゃあ、お願いなんか一個聞いてよ」
「なに?」
「考えとくわ」

10 名前:: 投稿日:2004/06/21(月) 00:37

そんなこんなで、美貴と辻ちゃんは地下鉄千代田線に乗っていた。
シダを通して芽生えた奇妙な友情、その確認。
そんな建前の美貴のワガママ、謀略、奸計。

辻ちゃんははやる気持ちを抑えられないようで、アップしている美貴に聞いた。
「ねぇねぇ、たむしぃ。ホントにホント?」
「ホントにホントにホントにホント」
美貴は車両内で数度小さく飛び跳ね、体の感触を確かめた。
辻ちゃんは「まあ、のんがあややカレー食べれるだけだからいいんだけど」とエロイ顔をした。
ふんっ、おばかな奴め。

乗客の大半は美貴の存在に気付いている。
その中の一人、そわそわ美貴と雑誌と視線を行ったり来たりさせていた学生風の男が声を掛けてきた。
「あの……藤本美貴さんですよね?」
「はい、そうです!で?」
邪魔臭い、この愚図が。
「え?いえ、なんでもないです。ごめんなさい」
この根性ナシが。
11 名前:: 投稿日:2004/06/21(月) 00:39

地下鉄がゆっくりと止まり、慣性が働く。
軋む音がして、車両内が微かに揺れる。
ドアにわずかな隙間ができると同時に美貴は飛び出した。
ちらと見た感じ、辻ちゃんは降車する列の最後尾。
こういうちょっとしたロスが命取りになるとも知らずに。

美貴は飛び出した勢いのまま、改札へ上がる階段を目指す。
少し遠い。
プラットホームは人で溢れ、思うように前に進めない。
「ちょっとどいてください、すいませーん。みんなどきやがれー」

どうにか階段を駆け上がったものの、精算機には五人ほど並んでいる。
「あぁ、なんで美貴、あとで精算すりゃいいや、とか思ったんだろ」

美貴がそわそわと足踏みしてると、後ろから声がした。
「陰金の美貴ちゃん、なにやってんの?」
振り返ると、辻ちゃんが……
美貴は慌てた。
そして叫んだ。
「えぇ、うそぉ!?…だめぇ!今のナシ、仕切り直し!!」



  ぎゅるん

12 名前:: 投稿日:2004/06/21(月) 00:40

地下鉄がゆっくりと止まり、慣性が働く。
軋む音がして、車両内が微かに揺れる。
ドアにわずかな隙間ができると同時に美貴は飛び出した。
美貴は飛び出した勢いのまま、階段を駆け上がり、改札を抜け、地上に出た。

美貴は走る。
背を丸めた前傾姿勢。

美貴は走る。
まぁるいおでこをキラキラさせて。

それは完璧に限りなく近い美貴の容姿において、神様の遊び心なのだ。
そしてナニフリ構ってられない美貴は、神の遊び心を冒涜している。
たぶんそういうことだろう。

美貴は走る。
息が少し上がってきたが、まだ余裕がある。
スピードを上げた。
13 名前:: 投稿日:2004/06/21(月) 00:42

ケヤキの並木道を一気に駆け下り、明治通りとの交差点に差しかかろうとした時だった。
見慣れたメンバーの、おかしな組み合わせが視界の端を過ぎった。
紺ちゃんの顔は見えた。
その隣がまこっちゃんあたりだったなら、美貴はそのまま走り抜けただろう。
でも、紺ちゃんの隣にいたのは、はっきりは見えなかったけど、長身で髪の長いスラリとした女。
ありえない。

「まじ!?」
美貴は足を止め、振り返った。
その二人も、同じように振り返る。
美貴の予想通り、紺ちゃんと飯田さんだった。
14 名前:: 投稿日:2004/06/21(月) 00:43

美貴は息を弾ませ、滴る汗を振り払いながら二人に歩み寄る。
紺ちゃんと飯田さんの表情は決まりが悪そうに硬く、どことなく身構えている。
美貴が二人の声が届くくらいに近づいた時、飯田さんが気まずそうに切り出した。
「……ど、どーも」
「どーもこーもないっすよ、飯田さ〜ん。なにしてんすか?紺ちゃんも」
ありえないと思っていた組み合わせなだけに、美貴の口調も自然と強くなる。

美貴の様子に怯んだ紺ちゃん、甘えるように飯田さんを見上げた。
飯田さんはぐっと頬を引き上げて笑みを作ると、紺ちゃんの頭に手を乗せる。
頭に手が乗る瞬間、紺ちゃんは小さく目を閉じたが、それはすぐに柔らかい微笑みに変わった。
「別になにって……普通に買い物だけど」
「飯田さんが?紺ちゃんと?それ、普通ですか?」
「うん、何か問題でもある?」
「え、っと……いや、だって二人、仲わる──」
飯田さんの目がぎょろりと見開かれ、美貴を射抜いた。
その隣では、膨らませているのかどうかわからない頬で、腕を組んだ紺ちゃんが美貴を睨んでいる。

「そういえばさ、藤本はなにしてるの?圭織にはそっちの方が疑問だよ。ね?紺野」
そう紺ちゃんに向ける、飯田さんの口調、表情、仕草、何もかもが優しい。
「そうだよ。美貴ちゃん、なんでそんな汗だくになって走ってるの?」

「あ……」



  ぎゅるん


15 名前:: 投稿日:2004/06/21(月) 00:44

美貴は飛び出した勢いのまま、階段を駆け上がり、改札を抜け、地上に出た。
ギラギラ太陽が、燃えるように激しく火を吹いて、容赦なく美貴を焦がす。

美貴は走りだした。
背を丸めた前傾姿勢で。

が、五歩ほど走ったところで思い直す。

「別に誰が見てるわけじゃないんだし、いいよね」
美貴はそう一人ごちると、都合よく来たタクシーを止めた。
元々、ズルするつもりだったし。
車内に体を突っ込むなり、美貴はドライバーに告げる。
「原宿まで。できる限り、かなり無理して早く着くようにしてください」
「でもですね──」
「なんでもいいから早く行ってください!急いでるんです!!はやくっ、はやくっ、はやくっ」
16 名前:: 投稿日:2004/06/21(月) 00:45

タクシーは究極のだろう運転で後方確認もせずに発進し、強引に右車線に入った。
そして、50メートルほど進んだところでゆっくりとスピードを落とし、停車した。
「え?どしたんですか?」
「いやー、お客さん。この辺はいっつも混んでるからねぇ。歩いた方が早いくらいじゃないんですかねぇ」

「え?うそ。なんで言ってくれなかったのよぉ!」
「お客さんが、なんでもいいから行けって言ったんじゃないですか」
「じゃあ、ここまででいいです。降ろしてください」
「ここじゃドア、開きませんよ。ほら、道路、車で埋まってそんな幅ないでしょ?」

二車線の道路には、駐車車両を含め車が三列に犇めいている。
その隙間をバイクがひっきりなしにすりぬけていく。

「あー、もう無理。マジでありえないんだけど」



   ぎゅるん


17 名前:: 投稿日:2004/06/21(月) 00:46

美貴は走る。
息が少し上がってきたが、まだ余裕がある。
スピードを上げた。

美貴、疾走。
美貴、今は風。
それもただの風ではなくハリケーンだ。
ぐるんぐるん人を撒き散らしてひたすら邁進。
美貴を遮るものは何もない。

そして、あっという間に原宿の駅。
辻ちゃんはまだ来ていないようだ。
ズルをするまでもなく美貴は勝利。
そんな女の中の女、本物、リアル、いんきんたみき。
18 名前:: 投稿日:2004/06/21(月) 00:48

勝利宣言をしよう、辻ちゃんに電話。
辻ちゃんはすぐに出たけど、なにやら御立腹の様子。
『渋谷から原宿、全然すぐじゃないじゃん!』
一駅なのに。
『もう何駅も過ぎてるのに、原宿でてこない!!』
「ちょっと待って。今どこ?」
『……もうすぐ品川』
あー逆の電車に乗っちゃったんだ。
『あとどれくらい乗ったら原宿?』
辻ちゃん、一人で電車に乗れないの?
「今からそっち行くから、品川で降りて。……じゃあ、港南口。スタジオある方。動いちゃだめだよ」

まさかこんなオチになるとは思わなかった。
美貴、別に走る必要なかった。
釈然としない思いを抱きつつ、券売機に向かう。
リュックを背負った人に「藤本美貴さんですよね」と聞かれたが、違いますと答えた。
今の美貴は藤本美貴ではなく、サイクロン美貴なのだ。
もしくは陰金の美貴ちゃん。

19 名前:: 投稿日:2004/06/21(月) 01:00

品川に着くと、面倒なことに辻ちゃんは交番にいた。
辻ちゃん曰く「困ったことがあったら交番に行きなさいってお母さんが……」

驚愕の事実だった。
辻ちゃん、17歳にしてはばかだばかだとは思っていたが、ここまでだとは。
でも、それで逆に納得、いろいろと。
20 名前:: 投稿日:2004/06/21(月) 01:02

何にしても、美貴の勝利、チョーカーは美貴の物。
辻ちゃんの目にはうっすら涙。
電車の乗換えという、複雑かつ困難な挑戦をさせてしまい、なんだか後味が悪い。
「これをさ、辻ちゃんとの友情の印にしたかったんだよ。だってほら──」
「ウソだ!てきとー言うな!!」
「なんでわかんの?」
「……わかるよ、そんなの」

でもやっぱりチョーカーは美貴の物。
早速つけてみる。
思った以上にビッとくる。
辻ちゃん、濡れたジト目で膨れ面。
うーん、罪悪。

それでも当然チョーカーは美貴の物。
ひんやりしたクリスタル、しっとり美貴に馴染む。
辻ちゃん、目を伏せ美貴に背を向け小さく溜息。
ええい!
21 名前:: 投稿日:2004/06/21(月) 01:14

「辻ちゃん、これあげるよ。ハーモニカ」
「え?でも……駄目だよ、そんな──」
「いいんだって!辻ちゃんに持っててほしいの!!」
美貴はハーモニカを辻ちゃんに握らせた。

辻ちゃん、笑顔が戻ってちっちゃい指でハーモニカを撫でる。
大きく息を吸ってハーモニカ。
綺麗な音がまっすぐ伸びてビル群に反響、絡まりあってはほどけてく。
「ありがとう、たみき。ずっとずぅ〜っと、大事にするねっ!」

空を見上げる。
熱っちぃ地球の空は赤。
悶えそうになるくらい、ただただ赤。
辻ちゃん、もう一度ハーモニカをぷー。
初夏の夕暮れぼんそわーる。

















22 名前:: 投稿日:2004/06/21(月) 01:14










23 名前:: 投稿日:2004/06/21(月) 01:14










24 名前:: 投稿日:2004/06/21(月) 01:14










25 名前:: 投稿日:2004/06/21(月) 01:14
初夏の夕暮れぼんそわーる
26 名前:Max 投稿日:Over Max Thread
このスレッドは最大記事数を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。

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