11 ガラスと罪とガラスと罰

1 名前:11 ガラスと罪とガラスと罰 投稿日:2004/06/20(日) 22:21
11 ガラスと罪とガラスと罰
2 名前:11 ガラスと罪とガラスと罰 投稿日:2004/06/20(日) 22:22
「今日は一番乗りか・・・。」
スタジオには誰もいなかった。

そういえばこの部屋は初めて入ったけど、ちょっと変わっている。
4つの壁のうち外に面している壁は、いわゆる曇りガラスだった。
さらに、部屋の真ん中には、私の胸くらいまでの台、

そしてその上にポツンと、人の顔くらいあるガラスの器があった。

「今日は風が強かったなぁ。」
私は、曇りガラスの向こうの街を見ていた。

3 名前:11 ガラスと罪とガラスと罰 投稿日:2004/06/20(日) 22:22
ガチャ・・・。
「おはようございます。」
「あっ、亀井ちゃん。おはよー。」
「おはようございます。あれ?紺野さん。このガラスの入れ物なんですか?」
「これ?う〜ん、私が来たときにはあったから。何なんだろうね。」
4 名前:11 ガラスと罪とガラスと罰 投稿日:2004/06/20(日) 22:22
亀井ちゃんに言われて、初めて意識して見た。
よく見ると結構複雑な凸凹があって花やらなんやらの模様が浮かんでいた。

「花瓶・・・ですかね。」
「花瓶かなあ。何かの優勝カップみたいな感じもするし。」

「これ・・・綺麗ですね。」
そういえば、部屋の照明がその器にあたると、光がいくつもの方向に反射して、
びっくりするくらい綺麗なのだ。
例えるなら、晴れた日に粉雪をさらに舞い上げたときの、まぶしい、天使の現れそうな・・・。

「とにかく・・・高そうだね。壊さないようにしないと。」
「でも、今からメンバーが何人も来るのに・・・大丈夫ですかね。」

5 名前:11 ガラスと罪とガラスと罰 投稿日:2004/06/20(日) 22:23
「みんな!おっはよ〜!」
今、一番来てはいけない人が来てしまった・・・。
「の、のんちゃんおはよ・・・。」
「おはよ・・・ございます・・・。」
「どおした〜二人とも!声が小さいぞ〜!」

こういっては失礼だが、亀井ちゃんが「でも、今からメンバーが何人も来るのに大丈夫ですかね。」と
言ったとき、私は真っ先にのんちゃんの顔を思い浮かべてしまった・・・。
い、いや、先輩を信じないでどうする!
でも・・・このガラスはきっとものすごい高い・・・。
大丈夫大丈夫!のんちゃんもそのくらい分かってる!

かなぁ・・・。
6 名前:11 ガラスと罪とガラスと罰 投稿日:2004/06/20(日) 22:23
「うわぁ!何これ!すっごいキレイ!」
しまった・・・私の中で葛藤がおきてる間に、のんちゃんは気づいてしまった。

無理もない、部屋のど真ん中で輝いてるんだから・・・。


「こ、これ、すごいよね。きらきら光ってて。」
「いいなぁ。こんなのほしいなぁ。毎日眺めてたいなぁ。」
「で、ですよね。」

私だけじゃなくて、亀井ちゃんも内心びくびくしてるのがわかる。


「きっとこれ・・・ものすごく高いよ。」
一応、釘を刺しておく。

ひとこと言っておけば、さすがののんちゃんも手は出さないと思った。

7 名前:11 ガラスと罪とガラスと罰 投稿日:2004/06/20(日) 22:24
が、それは私の予想に過ぎなかった。

「んっ・・・あれ、取れないな。よいしょ!」
「「!」」

おもむろに器に近づいていったのんちゃん、器に手を伸ばす。

これは一大事!
割ったりでもしたら目も当てられない!

「だ!だめぇ!のんちゃん!」


慌ててのんちゃんの手を払う



・・・それがいけなかった。

8 名前:11 ガラスと罪とガラスと罰 投稿日:2004/06/20(日) 22:25
グラッ・・・と不吉に揺れた器は、床へまっさかさま!


・・・人は死の直前、周りの景色がゆっくり、ゆっくり動いて見えるという・・・


・・・落ちてゆく器を受け止めようと亀井ちゃんが手を伸ばす・・・


・・・私はその行動に全てを託した・・・


・・・


ゴトン!


・・・


一瞬。
一瞬が私達の運命を分けた・・・。

重力に従ったガラスの器は、亀井ちゃんの手の先の方に当たり・・・

さらに方向を変えて・・・

9 名前:11 ガラスと罪とガラスと罰 投稿日:2004/06/20(日) 22:25





落ちたのである。
10 名前:11 ガラスと罪とガラスと罰 投稿日:2004/06/20(日) 22:26
割れたわけではない。

が、私たち三人の目には、親指の先ほどのガラスの破片が映ってしまった。

そして、あの光り輝いていた器本体は、眉毛のない美女のように、
美しさのバランスを失って床に横たわっていた。


・・・。

11 名前:11 ガラスと罪とガラスと罰 投稿日:2004/06/20(日) 22:26
数秒の沈黙の後、のんちゃんがその破片を器のかけた部分に合わせた。

カチャッ。

ポロッ・・・。

「無駄・・・だよ・・・。」
「無駄・・・ですよ・・・。」

のんちゃんが泣きそうな顔でこっちを向く。
「ど・・・ど・・・どど・・・ど・・・。」
「どうしようもないよ。」
「どうしようもないですよ。」
12 名前:11 ガラスと罪とガラスと罰 投稿日:2004/06/20(日) 22:27
「こ、紺野ちゃんがいけないんだよ!私の手を振り払うから!」
「ち、違うよ!私は止めようとしたんだよ!それに最後に触ったのは亀井ちゃんだよ!」
「ええっ!?私ですか!?さ、最初に手を出したのは辻さんじゃないですかぁ!」
「のんは気を付けて触るつもりだったもん!」



「・・・もうやめよう・・・誰の責任か言い合ったところで・・・元には戻らないし・・・。」

本当にどうしようもなかった。
全身の力が抜けていくのが分かる。


私たち三人は曇りガラスにもたれかかってしゃがみこんでしまった。


「やっぱり・・・高いんでしょうねぇ・・・。」
亀井ちゃんが口を開く。

「うん・・・多分ね・・・。」
私も力のない相槌を打つ。

「飯田さんに・・・また怒られちゃうなぁ・・・。」




「怒られる前に、逮捕ですよ。」

13 名前:11 ガラスと罪とガラスと罰 投稿日:2004/06/20(日) 22:28
「ええっ!?」
亀井ちゃんのそっけない言葉に、のんちゃんがものすごい反応をした。

「こ・・・ここ・・・紺野ちゃん・・・ほんと・・・?」
「え?あっ、・・・うん・・・一応、器物損壊ってのもあるし・・・。」


「つ・・・捕まったら、どうなっちゃうの!?」
「まず、娘。は強制卒業ですね。」

「えっ?・・・そうなの!?・・・紺野ちゃん・・・。」
「うん・・・だって捕まっちゃうから・・・。」


「・・・で・・・捕まったらどうなっちゃうの?牢屋?」
「牢屋です。」

「こ・・・紺ちゃん?」
「うん・・・だって捕まっちゃうから・・・。」
14 名前:11 ガラスと罪とガラスと罰 投稿日:2004/06/20(日) 22:29
「・・・そ、それで・・・どうなっちゃうの?牢屋の後は!?」
「死刑です。」

「・・・・・・・・・こ・・・。」
「日本は・・・たしか首つり・・・。」


「首つりって・・・息ができないんでしょ!!ヤダヤダヤダ!!
 のん1回溺れたことあるけどすっごい苦しかったから!!やだぁ!!!!!!!
 そうだ!こっそり三人で逃げちゃおうよ!ねっ!ねっ!」


「・・・あとでばれたら・・・余計罪が重くなりますよ・・・。」
「電気椅子とか・・・切腹とか・・・。」


・・・のんちゃんは泣き出した。

ウアアアアアアアン!
15 名前:11 ガラスと罪とガラスと罰 投稿日:2004/06/20(日) 22:30
・・・はっ! 誰かが来るっ!

「モゴッ!」
慌ててのんちゃんの口を手で抑えて、三人で部屋の隅に固まった。


ガチャッ

スタッフらしい男の人二人。
私たちはドアの死角に入ったため、偶然にもばれなかった。

片方の人がもう一人の人に話し掛けた。
「しかしすごいなぁ、このガラスのカップ。」
「ああ、『相楽・須太郎』って言えば世界でも有名なガラス工芸の第一人者だからな。」
「さすが大物は違うわ。」


聞いてはいけない言葉だった。
いよいよ私たちの罪は重くなった。

世界のガラスを壊してしまったのだから・・・。
16 名前:11 ガラスと罪とガラスと罰 投稿日:2004/06/20(日) 22:32
「しかも、これだけの物が失敗作なんだってなぁ。」
「それがさあ、カップの中に爪の先くらいの傷があるんだってさ。たったそれだけだぜ。」


「それにしても『世界のサガラ・スタロウ』があんなに気さくな人だとは思わなかったよ。
 『失敗作ならいくらでもできるから』だってよ。これでも充分な品だろ。」
「ほんと、うちに飾りたいぐらいだよ。コントで壊すのすらもったいないよな。」

「達人レベルだと、価値の無いものには執着しないのかあ。」
「へへっ、俺らとは住む世界が違うさ。」
17 名前:11 ガラスと罪とガラスと罰 投稿日:2004/06/20(日) 22:33
・・・。

「聞いた?」

「うん・・・聞いた。」


「亀井ちゃんも?」

「聞きました。」


スタッフ二人が出て行ったあと、お互いを確認した。
部屋の隅で息を殺していた私達の安堵の息は、部屋中に響いた気がした。

「「「よかったぁ・・・。」」」


気がつけば、三人とも、目から涙を流していた。

涙はどうして、不思議なタイミングで出てくる・・・。
18 名前:11 ガラスと罪とガラスと罰 投稿日:2004/06/20(日) 22:33
死の淵から蘇った真っ白な一時も束の間、のんちゃんの携帯が鳴り響いた。
「はい、つじのぞみでっす。はいはい、はいはい。わっかりましたぁ!」

ピッ。

「紺ちゃんに亀井ちゃん。今日のスタジオはここじゃなくて1階上だって。」
「「ええ!?」」

「飯田さんが激怒だから急いで来いだって。」
「激怒・・・。」
19 名前:11 ガラスと罪とガラスと罰 投稿日:2004/06/20(日) 22:35
「どこ行ってたの!!!」
ビクッ!!!

・・・飯田さんの声と迫力の分だけビビってしまった。


「あ、あのぉ・・・私がいけないんです!私が最初に間違えたから・・・。」
私さえ間違えなければ・・・。


「私も、いけないんです・・・。二番目に来たのに気づかなかったから・・・。」
亀井ちゃんも蚊の鳴くような声で言った。


「二人は悪くないです!のんは一番の先輩なのにぜんぜんダメのダメ先輩です!
 のんが怒られる代わりに二人は許してください!」

どうやら三人が三人同じことを考えてたみたいだ。
さっきまで切腹寸前だった私たちにしてみれば、ここで怒られるのくらい安いものだ。

言い訳なんかしないで、ちゃんと謝っておこう。
20 名前:11 ガラスと罪とガラスと罰 投稿日:2004/06/22(火) 00:17
コン!コン!コン!
飯田さんは私たち三人の頭に、かる〜い罰を与えた。
「もうっ、三人が三人「私を怒って」って言われたら、
 誰怒ればいいか分かんなくなっちゃったよ。
 ・・・でも、仲間を助け合ってこそ、われらがモー娘。だし・・・。

 分かった、今回は見逃してあげる。
 はぁあ・・・心配のタネは増える一方だわぁ・・・。
 それに・・・。」


ガチャッ!
ガタタタタ!
「痛ってぇ!あっ、おはようございます!遅くなりました!」
「矢口!!!あんたそれで新リーダーが務まると思ってんの!?」
「わあああ!ごめんなさい!」

よかった・・・、私たちよりはるかに重い罰を受ける人がいた・・・。

21 名前:11 ガラスと罪とガラスと罰 投稿日:2004/06/22(火) 00:19
「愛ちゃん。逃げるよ。」
「うん。」
タタタタタッ


フゥ。
これで今日のコントの、私の出番は終わり。

次は確か、お金持ちの格好したまこっちゃんが出てきて、
で、ガラスの置き物を落としそうになって、
里沙ちゃんがあわてて支えようとするシーン。


「あぁら新垣さん。これ、高そうですわねぇ。おっとこんなところにゴミが・・・。」
「あっ!危ない!」
グラッ・・・。



「カット!」

22 名前:11 ガラスと罪とガラスと罰 投稿日:2004/06/22(火) 00:19
「・・・何であさ美ちゃんが支えてるの・・・?」








「・・・さあ・・・。」
23 名前:11 ガラスと罪とガラスと罰 投稿日:2004/06/22(火) 00:20
24 名前:11 ガラスと罪とガラスと罰 投稿日:2004/06/22(火) 00:20
25 名前:11 ガラスと罪とガラスと罰 投稿日:2004/06/22(火) 00:21
26 名前:Max 投稿日:Over Max Thread
このスレッドは最大記事数を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。

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