2 誤解

1 名前:2 誤解 投稿日:2004/06/19(土) 01:16
ひびの入った硝子みたいに亀井の視界は割れている。瞬きすればするだけ割れ方も違う。亀井は思う。こんなに悲しいのはいつ以来だろうか。思い出せるはずもなく。頭を振る。亀井は何度もぶんぶんと頭を振る。誰かがいなくなるのはそれだけで寂しい。なかなか元気の出ない亀井を飯田と石川が慰めるように肩を叩く。人の気も知らないでと亀井は思う。人の気も知らないのは亀井以外の全員だと亀井は思っていてけれどそれは当たり前の話だ。ますますふてくされて座り込みそっぽを向く亀井にもはや誰も構ってくれない。横目で一人一人ちらちらと眺めながら亀井の視界はどんどんと割れていく。何もかもが恨めしい。何もかも壊してやりたい。壊してやるしかない。決意を固めた亀井はしかし誰から行こうかしばし迷うのだ。どっちにしろ細かいところが見えないから背中で判断するしかない。とりあえず一番大きい背中を見つけ亀井はぼんやりと立ち上がる。背中からバックドロップしてやるから、今。音も立てずに忍び寄る。そして後ろからしがみついたまま全く持ち上がらない。五秒経って亀井はついに自分の無力さに泣き出す。みんなそれを悲しげに見守る。亀井は思う。違うの。みんなは首を振る。違わないの?

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