インデックス / 過去ログ倉庫
13 当たり前のように
- 1 名前:13 当たり前のように 投稿日:2003年11月04日(火)23時13分28秒
- 当たり前のように
- 2 名前:13 当たり前のように 投稿日:2003年11月04日(火)23時18分23秒
- 足がガクガク震えている。
さっきトイレには行ったはずなのに、尿意が下っ腹のあたりに溜まっている。
風が吹いている。
小さく頼りないゴンドラは揺れる。
私の胸まである囲いから身を乗り出して、下を見た。
眩暈が襲ってきた。
それもそのはず。
私のいるこの場所は、ビルの30階分くらいの高さなのだ。
人は胡麻粒ほどの大きさで、たくさんの人が新宿の街を歩いているのが
まるで一つの黒く大きな生き物のように見えた。
手が急に汗ばんできた。
足が滑りそうな感覚に襲われる。
スケートみたいにつるっと滑って、手すりを乗り越えてまっさかさまに落下していく、
そんな想像が綿を押し込めた箱を開けたみたいに広がる。
- 3 名前:13 当たり前のように 投稿日:2003年11月04日(火)23時20分19秒
- ジェットコースターに乗ったときの、あの心臓が持ち上がるような恐怖が肌をあわ立たせる。
このゴンドラの取扱説明書には、何回も目を通した。
しかし絶対に事故が起きないとわかっていても拭い去ることのできない恐怖。
そしてそこには、快感が混じっているようだ。
その証拠に、私は下を見下ろすのを決して止めようとはしなかった。
怖いとは思いつつも、縦横無尽に駆け巡る悪い想像を止めようとはしなかった。
そういえば、人間は恐怖から来る興奮を性的興奮と取り違えることがあるそうだ。
もしもここに男がいれば、いや、もしかしたら女子、娘。の仲間にだって変な感情を抱きかねないだろう。
なぜか、さゆみの顔が浮かんだ。それから絵里の顔が浮かんだ。
そしてすぐに風に乗って消えて行った。
- 4 名前:13 当たり前のように 投稿日:2003年11月04日(火)23時21分54秒
- 粘っこい唾が口の中を満たし、恐怖は震えとともに顎までせりあがってくる。
頭の中までも震えて霞んでいくような気がする。
それでも、私は街を俯瞰するのをやめなかった。
自分でもなぜだかわからない。
いつしか恐怖が薄れていて、興奮が跳梁跋扈していた。
一種の麻薬みたいに私の体に取り付いて離れなかった。
下手したらそのうちオルガスムスに達してしまいそうだった。
いや、ずっとこうしていれば達するに違いない。
- 5 名前:13 当たり前のように 投稿日:2003年11月04日(火)23時23分00秒
- 不意にある考えが頭に浮かんだ。
フラッシュのような突然のひらめきだった。
ここから飛び降りてみる。
今の私ならできるかもしれない。
もちろん、飛び降りた結果は火を見るより明らかだ。
しかしこの心臓が23センチ吊り上がったような状態なら、できそうだ。
そうだ。後のことを考えてはだめだ。
説明書にも飛び降りるなとは書いてなかったはずだ。
身を乗り出すなとは書いてあったけど、
自主的に飛び降りることにはなんの注意もなかった。
10
私は目を閉じて数え始めた。
0まではするかしないかは決めないで、
なった瞬間のひらめきだけで行こうと思った。
- 6 名前:13 当たり前のように 投稿日:2003年11月04日(火)23時23分37秒
- 987654321
- 7 名前:13 当たり前のように 投稿日:2003年11月04日(火)23時24分20秒
- ―――当たり前のように 終
- 8 名前:13 当たり前のように 投稿日:2003年11月04日(火)23時25分59秒
-
- 9 名前:13 当たり前のように 投稿日:2003年11月04日(火)23時26分07秒
-
- 10 名前:13 当たり前のように 投稿日:2003年11月04日(火)23時26分14秒
-
Converted by dat2html.pl 1.0