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「紺野人形」

1 名前:03 「紺野人形」 投稿日:2003年11月01日(土)01時11分39秒
03 「紺野人形」
2 名前:03 「紺野人形」 投稿日:2003年11月01日(土)01時12分25秒
「よっすぃ〜?真剣な顔して何考えてるの?」
「え?ああ、梨華ちゃんか。いや、何で4期も6期も4人ずつなのに
 5期メンバーだけ高橋、小川、新垣の三人なのかなあって思って・・・。」
「う〜ん・・・、
 でもさあ、もし4期メンバーも3人だけだったら
 私とよっすぃ〜のどっちかがここにいなかったかもしれないんだよ。」
「そっかあ・・・、確かにそうだ・・・。
 じゃあもし5期が四人だったら、あと一人ってどんな感じだったんだろう。」
「・・・どうしたの?変なよっすぃ〜?」

梨華ちゃんが誰かのところへ行った後も、
私は、色々な追加メンバーを想像していた。
3 名前:03 「紺野人形」 投稿日:2003年11月01日(土)01時12分50秒
「で、そのモニターを私たちの中の何人かにやって欲しいと。」
「はい、できれば最低4、5個くらいは感想が欲しいんです。」

飯田さんと背広を着た男の人が、何かを話している。
そのマネージャーの脇には、変?なぬいぐるみみたいなのがあって。

そして、メンバー全員が呼び集められた。
4 名前:03 「紺野人形」 投稿日:2003年11月01日(土)01時13分17秒
「ええ!?本当に食べたりするんですか?」
「好きな食べ物とかもあるの?どうやって探せば・・・。」
「あ、でもビーズクッションみたいで柔らかい。」
「ほんとだ!フニフニしてて気持ちいい!」

みんながわいわい騒ぐ中で、私も一言口を開いた。
「何で、名前が『紺野人形』なんですか?」
「さあ、それは上の人たちが決めたらしいけれど、詳しいことはちょっと・・・。」

(ふ〜ん。でも、面白そう。『紺野人形』か・・・。)
いつのまにか、私はその、たった30cmくらいの2頭身の人形に興味を持ってしまった。
(たんすの上にでも座らせておこうかな。
 パンチングマシンとかにも使えるかも・・・。)
5 名前:03 「紺野人形」 投稿日:2003年11月01日(土)01時13分48秒
「じゃあ、誰かこれ持って返ってもいい人いる?」
すかさず挙手。
(早い者勝ちだもんね。)
・・・
大人気かと思いきや、予想に反して意外と人気は無かった。
4人のモニターはあっさり決定。
(やっぱり「のの」か。ちゃんと面倒見れんのかな・・・。)
(「おがわ」・・・、お前そうとう気に入ったみたいだな、人形にいたずらするなよ。)
(「道重」!?まさかお前まで手を挙げるとは・・・。)

こうして、吉澤、辻、小川、道重に「紺野人形」と、取扱説明書が手渡された。
6 名前:03 「紺野人形」 投稿日:2003年11月01日(土)01時14分18秒
・「紺野人形」は次世代型育成人形です。

・「紺野人形」の背中のふたを開けると、ストーマック・ボックスが入っています。
 その中に、食べ物を入れてください。

・危険ですからあまり食べ物をつめないでください。
 故障の原因となります。

・「紺野人形」には好き嫌いがあります。
 好きな食べ物を入れていくと、次第に声や動きに反応するようになります。

材質 セルプ80% ラスティック化合物20%

「要は、これに毎日餌をやればいいんでしょ・・・。」
とつぶやいたら、突然小川に怒られた。
「何言ってるんですか吉澤さん!餌じゃないです!
 ちゃんとご飯って言ってください!彼女は・・・人間じゃないけど・・・。」
7 名前:03 「紺野人形」 投稿日:2003年11月01日(土)01時14分46秒
「なんだよ小川、いきなり、ハハ〜ン、小川お前、この人形好きになっちゃったとか?
 この変態。」
「な、何言ってるんですか!これは『人形』ですよ!
 す、好きになったりなんか・・・。」
「でも、この人形よく出来てるよね。
 ちゃんとスカートはいてるし、どれどれ中は・・・。」
「ちょっと!何やってるんですか!この変態オヤジ!
 吉澤さん、家帰って変なことしないでくださいよ。」
「何だよ、変なことって。
 分かってるよ、餌与えればいいんだろ。」
「だ・か・ら・ご飯って言ってるでしょ!」

と、打ち合わせ抜きの漫才をやって、
・・・帰ろうと思ったけれど、これ結構大きいから大変だなあ。
8 名前:03 「紺野人形」 投稿日:2003年11月01日(土)01時15分39秒
「本当にその人形持って帰るの?」
「うん、面白そうだったからね。」

少しの沈黙の後、梨華ちゃんが聞いてきた。
「ねえよっすぃ〜、もし『梨華人形』があったらどうする・・・?」
「気味が悪いから即捨てる。」
「え〜〜〜〜っ!?」
ああ、もう、うざいなあ・・・。

さっそく家で、餌を食べるのか試してみた。
へえ、本当に無くなってるよ、入れた食べものが。
すっごいねえ。
売り出したら売れるはず、うん、私が保証する。
9 名前:03 「紺野人形」 投稿日:2003年11月01日(土)01時16分00秒
「受信メール 小川麻琴」

「吉澤さん?まさかいたずらしてないですよね。
 カボチャを入れたら、声に少し反応するようになりましたよ。
 今日は「紺ちゃん」を抱いてねま〜す!
 
 画像添付」

そこには、「紺野人形」をしっかり抱いた小川の写メール。
すっかりはまったか・・・。

私はそこまではしない。
床の上に放って置いておやすみなさい・・・。

天井を見上げていたら、
ふと、今ごろほかの二人がどうなってるか気になった。
(ののは壊してないかな。
 ・・・道重は・・・大丈夫かなあ。)
10 名前:03 「紺野人形」 投稿日:2003年11月01日(土)01時16分21秒
次の日、私の「紺野人形」は注目の的だった。
辻、道重は家においてきたし。

小川も、持ってきたには持ってきたけれども、
肌身離さず抱かれていた小川の「紺野人形」には、
気味悪がって誰も触ろうとはしていなかった。

私の「紺野人形」には、いろんなものが詰め込まれた。
調子が悪いのか、どうも、消化に時間がかかるみたい。
なかなか食べ終わんないんだよね。
確実に全部食べきるけれど・・・。

私の「紺野人形」は
「返事に反応する」「うなずく」「ほほえむ」まで覚えた。
賢いぞ。
なんてったって私が育ててるんだから。
11 名前:03 「紺野人形」 投稿日:2003年11月01日(土)01時16分42秒
でも、急激に熱したブームは、急激に冷めていった。
「紺野人形」の変化もあまりなくなったし、
実際私が飽きっぽいから。

3日後にはメンバーから「紺野人形」という言葉は出なくなっていた。
すでにブームは別のところに行っていて、
ただ、小川の手元にだけその姿が残っていた。

4日後あたりから、餌をやることも忘れていた。
それからずっと、たんすの上に放置してあった。
12 名前:03 「紺野人形」 投稿日:2003年11月01日(土)01時17分11秒
まあ、小川は一人で楽しんでるからいいか。
とりあえずこういうのは私には向かないね。
しばらく餌もあげてないし、しかも最近は前に覚えた反応もほとんどしなくなったし。

そんなこんなでオフの日がやってきた。
オフの日にしたって人形にかまってるつもりはない。
今日は出かける予定だってあるし。

ク〜ッ・・・爽快な朝!
日本の朝はいいねえ。
お、紺野人形、朝からすっとぼけたような顔して。
「くらえ!」
ボコッ!ボカッ!ボカッ!

結局最初の予定通り、パンチングマシン扱いして外出。
13 名前:03 「紺野人形」 投稿日:2003年11月01日(土)01時17分31秒


・・・そのパンチは、


    機械の中枢を完全にとらえていた。・・・
14 名前:03 「紺野人形」 投稿日:2003年11月01日(土)01時18分14秒
帰りは夜だった。

でも、夕方ぐらいから妙な胸騒ぎがしていた。
あれも、これもみんなあの人形のせいだ。
はあ・・・。
ちっとも楽しめなかったよ。

ガチャ

・・・いつもと変わらないはずなのに、部屋は妙に暗く感じた。

電気をつけようと、スイッチに手を伸ばそうとしたとき、
・・・ふと、奥のほうでガサゴソガサゴソと物音が。
(ど、泥棒!?)

ばれたら命の保障は出来ない。
抜き足、差し足、忍び足・・・。

音は、台所の横にある冷蔵庫からだった。
15 名前:03 「紺野人形」 投稿日:2003年11月01日(土)01時18分32秒
冷蔵庫の前だけがスポットライトを当てられたように光り、
その前に、「あるもの」が座り込んでいる。
(・・・食料泥棒!?)

大き目の食器を抱え込んで、中のものをガツガツ食べている。
(・・・。)

ポイッ!
その食器を傍らに捨てて、再び冷蔵庫の奥のほうに手を伸ばす、
そいつこそ、わたしが朝殴った「紺野人形」だった。

デザートの缶詰を数本取り出して、さあ開けて食べようとしたところで・・・、

「このヤローッ!」
ビクッ!!!!!
16 名前:03 「紺野人形」 投稿日:2003年11月01日(土)01時18分51秒
あわててこっちを向く、「紺野人形」。
そして、なんとも言えない笑みを浮かべた・・・と思ったら・・・

ドンッ!スタタタタタッ!

私の膝元をすり抜けて脱兎のごとく飛び出していった・・・。

ああっ!あいつ缶詰持っていきやがった!

ちきしょう!とか、考えつつも、私も悪いことしたかなあと思った。
しばらく餌あげてなかったし、朝のあれも、めちゃ問題ありだし。

たぶん、こういうのが全部重なってああいう機能が急に作動しちゃったんだなあ。
もともと声とかに反応したりできるわけだからね。
あ〜あ、もっと大事にすりゃあ良かった・・・。

ピロピロピロピロ〜!
17 名前:03 「紺野人形」 投稿日:2003年11月01日(土)01時19分06秒
「受信メール 辻希美」

「よっすぃ〜?大変大変大変だあ!
 紺野人形が、ののの今月のおやつ全部持って
 どこかに家出しちゃった!
 明日から、お菓子がないよお〜。ウルウル・・・。」


「受信メール 道重さゆみ」

「大変です!
 紺野人形にいろんなもの入れたら
 大泣きして出て行っちゃいました。
 吉澤さんのところには行ってないですよね。
 辻さんのところにもいないみたいですけど。」
18 名前:03 「紺野人形」 投稿日:2003年11月01日(土)01時19分28秒
大変だ!
あの「紺野人形」、今となっては立派な不良品が大暴走してる!
しかも、私のだけじゃない。
いつ、どこで、誰に迷惑がかかるかわかんない。

そうだ、小川は?小川のはどうなってんだ?
携帯!ダメだ通じない。
こうなったら直接行くしかない。
「紺野人形」最年長保持者として、小川の家にダッシュ!

ドンドンドン!
「小川〜!開けろ〜!いるのは分かってるんだ!は・や・く・開けろ!」

しばらくして、ドアが少し開いた。
中にいるやつがそ〜っとこっちを見ようとした瞬間。
すばやくこの足をドアの隙間に入れてやった。
19 名前:03 「紺野人形」 投稿日:2003年11月01日(土)01時20分26秒
こうなったら私のもんだ。
思い切って開けたら
・・・そこにいたのは

・・・小川じゃない。
私の身長よりも少し小さめの「紺野人形」。
でも私の家にあったのよりも大きい、6頭身くらいある。

あっ!後ろにいる小さい影、あれこそまさに家にあったもの。
あのやろ〜、私の顔を見るなり奥に引っ込みやがった!

・・・待てよ
・・・何で家にあった「紺野人形」がここにいるんだ?

私を出迎えた大きいほうの「紺野人形」は奥のほうの部屋に進む。
ついて行こう。
まだよく状況が飲み込めないし。
20 名前:03 「紺野人形」 投稿日:2003年11月01日(土)01時20分52秒
・・・
なっ、なっ、なっ、なんじゃこりゃ〜!!!

私が育てた2頭身「紺野人形」。
私を出迎えた6頭身「紺野人形」。
それより少し小さい、5頭身で一番ふっくらした「紺野人形」。

そして・・・部屋の半分を占めた、「大ボス紺野人形」!

あと、それに抱かれてうっとりした顔の「小川麻琴」。

思わず立ち尽くしてしまった。
足元には、さっきかっぱらわれた缶詰の空き缶・・・。
21 名前:03 「紺野人形」 投稿日:2003年11月01日(土)01時22分26秒
翌日。

「やっぱり殴ったのがまずかったですね。
 ちゃんと感情もプログラムされてますから。」
「はあ・・・すいません。」

「お菓子を見せびらかしながら食べるのもまずいですよ。
 視覚機能もありますし、
 しかも何日も食べさせないから、それが変な反応を呼んだんです。」
「ごめんなさい・・・。」

「あと・・・さすがに地方の郷土料理となると・・・。
 機械の処理能力を越えてしまったのではないかと・・・。」
「・・・じゃあ、わたしは悪くない・・・。」

私たち3人は私たちが育てた「紺野人形」を前に、
製造者側の人にお説教されていた。

はあ・・・、育てなければ良かった。
22 名前:03 「紺野人形」 投稿日:2003年11月01日(土)01時23分41秒
「それから、問題は・・・これですね。
 実は大きくなるのは実は予想外でして・・・。」

「紺野人形」は「人形」である。
「紺野人形」はただ食べるだけで、外には出さない。
つまりひたすら蓄積されるし、素材が柔らかいから簡単に大きくなってしまう。
ようするに、ゴムのズボンばっかりはいているようなもんだ。

その1番の証拠が、小川の育てた「紺野人形」だった。
「愛情が強すぎたんでしょうね。
 しかも食べ物も毎日そうとう多く入れたとか・・・。」

小川は、相変わらず「巨大紺野人形」に抱えられて座っていた。
23 名前:03 「紺野人形」 投稿日:2003年11月01日(土)01時24分55秒
「しかし、全責任は私たちにあります。
 今回のは失敗作というよりも、完全な不良品でした。
 皆様、本当にご迷惑おかけしました。
 紺野人形は私どもですべて処分させていただきます。」

処分?

「処分って・・・。」
小川の顔がドンドン青ざめていった。

「いや!いや!絶対渡さない。これは私の。私のだもん!」
子供が、何かから引き裂かれるのを必死で拒むように、
小川も「オリジナル紺野人形」にしがみついていた。

でも、全ては空しい抵抗だった。
愛すべきものに引き裂かれた少女。
その頬を伝う小さな川は、その流れを絶やすことはなかった。
24 名前:03 「紺野人形」 投稿日:2003年11月01日(土)01時25分27秒
「しかし、全責任は私たちにあります。
 今回のは失敗作というよりも、完全な不良品でした。
 皆様、本当にご迷惑おかけしました。
 紺野人形は私どもですべて処分させていただきます。」

処分?

「処分って・・・。」
小川の顔がドンドン青ざめていった。

「いや!いや!絶対渡さない。これは私の。私のだもん!」
子供が、何かから引き裂かれるのを必死で拒むように、
小川も「オリジナル紺野人形」にしがみついていた。

でも、全ては空しい抵抗だった。
愛すべきものに引き裂かれた少女。
その頬を伝う小さな川は、その流れを絶やすことはなかった。
25 名前:03 「紺野人形」 投稿日:2003年11月01日(土)01時25分36秒
飯田さんが、その製造者側の人に話し掛けた。
「その人形、1つ置いていってもらえないんですか?
 もちろんその機能抜きで。」

「しかし・・・機能を抜くだけというのはちょっと。」
「でも、あのままだと、小川がどうしようもないんです。
 何とかしてください。」
「・・・何とかといわれても・・・」

「心の支えを失って、小川に今までどおり活動しろなんて無理です!」

沈黙が走った。
やっぱり飯田さんは、ここぞというとき頼りになるなあ。

「あの・・・実は、この紺野人形は
 会長のお孫さんをモデルに作ったものなんです。
 もしどうしてもというのなら、小川さんに紹介するという形では。
 丁度同じくらいの年齢でしたし、
 この形で責任を取らせてもらえないでしょうか・・・。」
26 名前:03 「紺野人形」 投稿日:2003年11月01日(土)01時25分52秒
全員がこの要求をのんだ。

数日後、小川待望の人物がやってきた。

「始めまして!
 急遽新メンバーとして加入した、
 『紺野あさ美』です!
 よろしくお願いします!」

彼女達は、15人になった!
27 名前:03 「紺野人形」 投稿日:2003年11月01日(土)01時26分29秒
>>>完<<<
28 名前:03 「紺野人形」 投稿日:2003年11月01日(土)01時26分45秒
>>>完<<<
29 名前:03 「紺野人形」 投稿日:2003年11月01日(土)01時26分58秒
>>>娘。<<<

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