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06 チェリー

1 名前:06 チェリー 投稿日:2003年07月18日(金)15時25分32秒
06 チェリー
2 名前:06 チェリー 投稿日:2003年07月18日(金)15時26分09秒
「そんでさぁ、金網越しにじぃーっと見てるわけよ」
保田は茶色い紙袋に顔を突き入れて小粒の種をプッと噴き出した。
テーブルの上にティッシュを敷いて積み重ねられたさくらんぼの山は、矢口が手を出す前に既に半分はなくなっていた。
「でね、キッズはほら、小学生だからねー、同年代の男の子が見てるってだけで、そりゃもー、大騒ぎさ」
そう言って、再び赤く盛り上がった山に伸ばそうとした手を矢口はぴしゃりと叩いて告げた。
「圭ちゃん!それ、おいらに、ってキッズが届けてくれたんじゃなかったの?!」
「細かいこと言うなよ、やぐちぃー。オシエンジャーはストレス溜まるんだからさー。ったく、ストレス性胃炎になったら、矢口のせいだからね」
「その前に飲み過ぎで胃潰瘍になる方に3000ウォンだね」
「300円かよー、しけてんなぁ」
「あれ、ウォンのレートってそんなもんだっけ?」
「っつーか、突っ込むとこが違うでしょ?!ウォンなんか円ぺグの実質バスケット固定なんだから、10で割っときゃ問題ないのよ!あんたはもー、のんびりしてんだから…そのバカ高い給料の運用先くらいちゃんと考えときなさいよ!」
3 名前:06 チェリー 投稿日:2003年07月18日(金)15時26分44秒
そう言いながらも、やはり手がさくらんぼの山に伸びるあたり、保田も懲りない性分である。
矢口はこれ以上、保田と不毛な言い争いを続ける愚を悟って、名誉ある撤退をはかった。
「ああ、その前に食べ過ぎでまたおなかがポコるに5000ウォンだった」
「女優は体力勝負だから、舞台の前はちょっとくらい脂肪を蓄えた方がいいのよ」
「かぁーっ、やってらんね」
矢口は心底どうでもいい、と言う風に背中を向けてメイクに専念することにした。
保田と違って、とてもスッピンで街中を歩く勇気などない。
子供相手のユニットを率いているとはいえ、まだアイドルとしての矜持を捨てたわけではないのだ。
「いや、それでさ。話は戻るけど、毎日、来るのよ、その子」
「そのさくらんぼ持ってくるっていう男の子?」
「うん。でさ、あの子は一体、誰が好きなんだろう、って話題でもう盛り上がりまくりよ。うるさいったら、ありゃしない」
4 名前:06 チェリー 投稿日:2003年07月18日(金)15時27分15秒
「どうせ、圭ちゃんが一番盛り上がってんでしょ?」
「へっへー、ま、ちょっと可愛い男の子だったしね。あたしのファンという線も捨てがたいし」
「キャハハハハ、圭ちゃんもやっとギャグの真髄が――イテッ!なにすんだよ?種飛ばすのやめてよ!汚いなあ、もう!」「誰に口聞いてんのよ、アンタ?あたしはオシエンジャーなんだからね。なめんじゃないわよ」
「ハイハイ、オシエンジャーにはかないませんよ…」
今度こそ矢口は諦めて姿見に映る自分の顔に意識を集中した。
眉毛の角度が少し異なるだけで与える印象が一変する。
何事にも適当な保田の顔面がこういうときだけは羨ましかった。
「矢口ちょっと聞きなさいよ!その可愛い男の子が毎日来る理由、あんたは知りたくないの?」
「別にー」
丁度、角度が決まりかけたところだ。
できれば口を開きたくないが、黙っていると何をされるかわからない。
5 名前:06 チェリー 投稿日:2003年07月18日(金)15時28分02秒
まったくもって迷惑な同期を持ってしまったものだが、今となっては如何ともしがたい。
腐れ縁、とはよくいったもので、5年も寝かせて置いたお陰で本当に腐りかけて醗酵してしまったような保田だけに洒落にもならない。
矢口の内心の葛藤に毛ほども頓着せず、保田はキッズを見学に来ると言う紅顔の美少年について夢中で話す。
娘。を辞めればこうも自由気ままに人生を楽しめるのかと思うと卒業というのも悪いことばかりではないと思えてくるから不思議だ。
とにかく保田はしゃべる。
「でさぁ、どうもその少年が毎日持ってくるさくらんぼにこそ、その理由が隠されているのではないかと、こうあたしは考えたわけだ」
矢口はメイクの手を止めて振り返った。
「えぇっ、これ、キッズの誰かが持ってきたんじゃなくて、ファンの子からもらったやつ、そのまま持ってきたの?」
「そうよ」
いけしゃあしゃあと答える保田の顔は小面憎いほどのふてぶてしさを感じさせる。
それにしても、キッズには伝えておかなければ。
ファンにもらったものは何にしろ大事にしないといけない。
6 名前:06 チェリー 投稿日:2003年07月18日(金)15時29分21秒
自分自身、「ヲタクはキモい」と公言しつつも「ファン」は大事にしているつもりだけに、その気持ちを踏みにじるような行為は早めに注意したい。
今度、会うときにそれだけは伝えようと固く決意する矢口である。
「圭ちゃんもさぁ、あの子たち、まだわかってないんだから、贈り物をすぐ人にあげるような真似しちゃだめだよ、って言ってくれなきゃ」
「あら、っていうか、それキッズがもらったわけでなくて、矢口に、って渡されたのよ」
「へっ?」
矢口にはいよいよわけがわからなくなった。
ってことは…
「圭ちゃん!おいらへのプレゼント無断で手ぇつけてたのかよ!」
「細かい事気にしてると禿げるわよ」
そう言いながら、なおもさくらんぼの山に手を伸ばす保田はもはや神の領域に足を踏み込んだ勇者の風格さえ漂わせていた。
そして、風格というのは身体の横幅にほぼ比例して体得されていくらしい。
矢口は得るものに比例してまた失うものも大きいことに気付き、嘆息した。
「で、なんでその子はわざわざ、キッズの見学に来てまで、おいらにさくらんぼなんかくれたわけ?」
すでに投げやりなその態度を見逃す保田ではない。
7 名前:06 チェリー 投稿日:2003年07月18日(金)15時30分09秒
「ちょっと、何よ!そのどーでもよさげな態度は?人が親切にも話してやってるんだから、素直に聞きなさい!」
「ハイ、ハイ…おいらが悪うございました…」
「ああ、その態度むかつくぅ…ま、いいわ。大人のあたしが子供の矢口をいじめてるんじゃ洒落にならないもんね」
どっちが子供だ…と口に出かかるのを矢口は必死で抑えた。
「だから、なんでキッズのファンの男の子がおいらにさくらんぼなんかくれるのかって話だよ」
「『さくらんぼ』ってところで何か引っ掛からない?」
「いや、別にさくらんぼが特に好きなわけじゃないけど…もちろん嫌いでもないけどね」
「そうじゃなくてさ、最近、怪しげなニュースがあったでしょ」
「何…?あ、山形のさくらんぼ泥棒のこと?」
「そうそう。思ったんだけどさ。ハロモニのゲームで一回さ、高級さくらんぼが景品になったときあったでしょ?」
「それ、MUSIXじゃない?」
まったく、年を取るとこうも物覚えが悪くなるものか。
自分だけはこうはなるまいと心の中で誓いつつ保田の言葉に耳を傾ける。
8 名前:06 チェリー 投稿日:2003年07月18日(金)15時30分46秒
「そうだっけ?まぁ、どっちでもいいわよ。とにかく、TVで矢口さんはさくらんぼが好きなんだと思った少年は一度でいいからお腹いっぱいたべさせてあげたいと考えた。しかし、少年にはお金がない。しかたなく少年は最期の手段として…」
「ちょっと待ってよ…さっきも言ったけど、おいら、さくらんぼが特に好きだなんて言った覚えないし」
「だめか、ちくしょー」
「ちくしょーって…」
保田自身もわかっていない様子に矢口はなんだか微笑ましいものを感じた。
ようするに保田は少年の謎の行動を推理すること自体を楽しんでいるわけだ。
それならば、自分も楽しまなければ損ではないか。
矢口は今までのおかえしとばかりに、ニヤリと顔を歪ませて保田に告げた。
「おいらは今、ちょっと違うこと考えたよ」
「何よ?何よ、ちょっと教えなさいよ!」
「へ、へーっ、おしえなーい。圭ちゃん当てたら、そのさくらんぼ全部食べていいよ」
「なんか、あんまり得した気がしないわね」
「じゃあね、教えてあげるけどさ」
「あ、わかった!」
突然、保田が大声を上げた。
矢口はもう少し焦らしていたぶりたかっただけに心中穏やかでない。
9 名前:06 チェリー 投稿日:2003年07月18日(金)15時31分37秒
「何よ?」
得意の三白眼で保田をにらみつけるが、当の本人はケロッとしたもので、一向に堪えた様子はない。
「桜内元衆院議長が最近、亡くなられたわ…」
「はぁっ?」
矢口は保田が何を言い出したのか判じかねた。
大体「衆院議長」などという言葉が保田の口から出てくること自体、問題だ。
自分より物知りな保田など保田ではない。
「故鈴木善幸元総理のときの外務大臣でね。アメリカに着いた早々の挨拶で『チェリーと呼んでくれ』って」
「ああ…それでチェリーなわけね…」
矢口はどっと疲れが溜まるのを感じた。
「それなら、まだうる星やつらの錯乱坊に似てるとか――」
「それだっ!」
「どれだよ…」
矢口は頭痛が痛い…もとい。頭が痛くなってきた。
いけない。この女と話していると言語中枢まで侵されそうになる。
「あんたのその冷笑的な態度といいアイロニーに満ちた存在感、そしてなによりもちびでちょこまかとこうるさいけれどもどこか憎めないキャラクター。どこからどう見ても錯乱坊そのものだわ。あんた高橋留美子先生に訴訟起こされないように気をつけなさいよ!」
「なんでだよー…」
10 名前:06 チェリー 投稿日:2003年07月18日(金)15時32分12秒
「あんたのその存在は著作者の設定した著作人格権を著しく侵害しています」
「おいらがオリジナルだよ!」
「ふっ、甘いわね。うる星やつらの連載開始は1979年12号。そしてチェリーこと錯乱坊は第一話から主人公諸星あたるに受難の相ありと告げる重要な役回りで登場している。つまり、矢口真里の存在は明らかにうる星やつら作中の一キャラクター錯乱坊のコピー…」
「むがーっ!わかったよ、どーせ、おいらの存在なんて漫画の中の一キャラクター以下だよ。しかも、漫画の主人公の名前つけられた圭ちゃんに言われるなんてー!」
「ちょっと!何よ、それ!聞き捨てならないわね!翔んだカップルがうる星やつら以下だって言うの?あの名作を貶める行為は見逃さなくってよ!」
「っつーか、論点ずれてるし…」
矢口は毎度の事ながら自分の名前の由来に奇妙な誇りを抱いているらしいこの同期になんとも言えぬ不思議な感情を覚えた。
普通、漫画から名前取られたら怒るよなあ…
しかし、漫画からキャラクターを取るよりはましだと言われそうでそれは黙っておく事にした。
なにしろ、この人との会話は本当に疲れるのだ。
11 名前:06 チェリー 投稿日:2003年07月18日(金)15時32分47秒
「ところでさあ、そろそろそのさくらんぼの君のこと、教えてくれてもいいじゃん」
「『さくらんぼの君』とはまたえらく雅趣に富んだ言いまわしだわね。どーせなら『桜桃の君』くらいにしときゃ、王朝絵巻ものみたいでさらにいいわ」
「『桜桃』だと太宰じゃないの?どっちかっていうと…」
「そう、それよ。矢口ったら、落ち目の斜陽アイドルでおまけに人間失格のくせにそういうことだけは詳しいんだから…」
話させておくとどこまでもつけあがる。まったくこの女に付き合うのも楽ではない。
矢口はひとしきり喋らせておいて、保田の口が止まるタイミングを見計らい、告げた。
「いや…それはいいからさ。で、結局なんなの?」
保田はふぅーっ、と息を吐いて肩をすくめてみせた。
あんたもまだたまだね、と肩で会話のできるこの地球外生命体にまともな答えを期待しなければならない自分が哀れに思えてくる。
12 名前:06 チェリー 投稿日:2003年07月18日(金)15時33分27秒
「あんたも冷たいよね。自分でつけたニックネームまで忘れてるなんてさ」
「ん…?あっ!矢島かっ!矢島だ!そういえばチェリーってつけたよ!なぁんだ、そうかぁ。わかってみればどうってことないね」
「そう。結局、キッズの間でもそーいう結論に達したんだけどね」
「でも、なんでその男の子は私にさくらんぼよこしたわけ?矢島にあげれば済む話じゃない?」
「そりゃー他の子もいるわけだし、角が立つでしょ?その辺がうぶい男の子って感じ……」
保田は一瞬、考え込むようなそぶりを見せたが、すぐに慌てて言葉を拾った。
「いや、ほら、矢島さんをぜひよろしく、って意味なんじゃないの?」
急にそわそわと落ち着きのなくなった保田は適当に会話を切り上げると、腰を上げて去るそぶりを見せ始めた。
「ちょっと…どうしたの?」
「何よ!オシエンジャーは常にキッズの教育を考えてるからこんなとこで油を売ってる暇はないのよ!」
「油を売るって…」
13 名前:06 チェリー 投稿日:2003年07月18日(金)15時34分05秒
それにしては随分長いこと居座っていたように思えるが、あえてそんなことは口に出さないのが大人というものだろう。
とにかく、この口の減らない女が一刻も早くここを出ていってくれさえすれば得られるはずのひとときの安寧を思い、矢口はひたすら下手に出た。
「まーとにかく、圭ちゃんが以外にキッズの教育はまかせられないからね。ひとつよしなに頼んますよー、だんなー」
「ふっ、あんたも言葉じゃなくて態度でその感謝ってやつを現せればもう少し、大人になれるのにね」
その態度ってやつがいい男の紹介だとか、雪中梅とかいう新潟の高価な酒の差入れなのか、日によって異なるのだが、今日はどちらなのだろうと、矢口が考える間もなく、保田は慌てて別れを告げる。
「ま、いいわ。今日はこの辺で勘弁してあげる。じゃね」
14 名前:06 チェリー 投稿日:2003年07月18日(金)15時34分36秒
そう言って「圭」と大きく書かれたマントを翻し、跳ぶように駆けて行く保田の後ろ姿を見送りながら、矢口はどこか腑に落ちないものを感じていた。
それが何か説明できないところがまた出そうで出ないくしゃみのようで気持ち悪いのだが。
とにかく保田は去った。
今はこのひとときの安らぎを満喫しよう。
激務に小さな身体を酷使し続けてきた矢口はメイクを終えたばかりだというのに、束の間の惰眠を貪りたいとの内的要求に抗えない。
眠気に誘われるまま姿見の前に伏せると、そのまま深い眠りへと落ちていった。
15 名前:06 チェリー 投稿日:2003年07月18日(金)15時35分21秒

16 名前:06 チェリー 投稿日:2003年07月18日(金)15時35分51秒
数日後。
矢口はキッズとの新ユニットZYXの番組向け歌収録で5人のキッズに再会した。
キッズの6年生メンバー全員と村上愛の5人。
そして6年生のメンバーには矢島舞美がいる。
矢口は矢島の顔を見て、さくらんぼのことを思い出した。
結局、保田がほとんど食べてしまって自分には少ししか残らなかったのだが、なぜか矢島に悪い気がして謝らなければいけないように思えたのだ。
「あ、舞美ちゃん、こないだ圭ちゃんがさー、さくらんぼ持ってきてくれたんだけど」
「ああ、あの変な男の子がくれたやつですか?」
「えっ…?変って、どういうこと?圭ちゃんはなんか可愛い男の子だって、言ってたけど」
「なんか変でしたよ。みんなが『舞美のこと好きなんだよ』なんて囃し立てるから、わたし、その子が見てるとこに行かされたんですよ。そしたら…」
「そしたら?」
矢口は年甲斐もなく、胸がときめくのを感じた。なんというか、初恋の予感?チェリーという甘酸っぱい愛称を持つ美少女と少年の淡い初恋。考えただけで胸がいっぱいになりそうだった。人間、失ってしまったものへの郷愁ほど美しく感じるものはない。
17 名前:06 チェリー 投稿日:2003年07月18日(金)15時36分26秒
「んん…そいつ、すごい変なんですよ。『いつも見にきてくれてるね』って言ったんです、わたし」
「うん、それで?」「そいつ、いきなり『お前、してないだろ?』って」
「はぁ?」
「はぁ?ですよね!何言ってんの、こいつ?って感じで。『何が?』って聞いたんです。もう、なんかやだなぁ、って思ったんですけど」
「うんうん、それで?」
「そしたら、『お前、ブラしてないだろ』って、いきなり。いきなりですよ!」
矢島は昂奮いまだ冷め遣らないといった感じで、その「変なやつ」への呪詛を吐き続ける。
矢口はポカーンとしたまま、適切な言葉を返せないでいる。
とにかく、保田の話とえらく状況が違うことに頭の中が混乱して、うまく整理できないのだ。
「保田さんがまた変なんですよ」
「へっ?圭ちゃん?」
「はい。『あいつ、すっごい変ですよ!』って言ったんですけど、なんか、逆に喜んじゃって」
「はぁ?」
「子供にはわかんないわよね、フッ、って感じで。じゃあ、私が行くって」
「圭ちゃんがその男の子のとこに行ったの?」
「そうなんですよ!」
18 名前:06 チェリー 投稿日:2003年07月18日(金)15時37分02秒
矢口にはわけがわからなかった。
たしかに矢島の話だけを聞いていると、とてつもなく変な男の子のように思える。
そんな変なやつにさくらんぼを贈られた自分の立場はどうなんだという気がしないでもないが、それにしても保田の奇矯な行動は解せない。
「っていうか、保田さんも相当、謎ですよ。なんか『やっぱ慶応ボーイよかチェリーボーイよねって…』」
「な、なに?チェリーボーイ?!」
「えっ?ハ、ハイ…」
矢島は矢口の剣幕に驚いた様子だ。
そして、矢口はようやく、あの日、保田が急にそわそわして、自分の下を立ち去った理由に思い当たったのだ。
「ちっくしょお…圭ちゃんのやつ…」
「矢口さん…」
矢島が心配そうな顔で見つめている。
矢口はハッとして、慌ててその場を取り繕った。
19 名前:06 チェリー 投稿日:2003年07月18日(金)15時37分34秒
「い、いやっ…何でもないよ。で、圭ちゃん、他には何か言ってなかった?」
「えっと…これは、ついこないだなんですけど、矢口さんに会ったら伝えてくれって…」
「何て言ってた?」
「えっと…」
矢口はその一言を聞いてへにゃへにゃと体中の力が一気に抜け落ちるような深い脱力感に崩れ落ちそうになった。
だいじょうぶですか?やぐちさん?
矢島が声をかけてくれたような気がしたが、もはや矢口には聞こえていないも同然だった。
矢口の頭の中では、矢島が伝えた保田の言葉だけがいつまでも鳴り響いていた。
20 名前:06 チェリー 投稿日:2003年07月18日(金)15時38分06秒

さくらんぼ、おいしくいただきました。
ごちそうさま…

21 名前:06 チェリー 投稿日:2003年07月18日(金)15時38分36秒


―― チェリー 終 ――


22 名前:06 チェリー 投稿日:2003年07月18日(金)15時39分14秒
Z
23 名前:06 チェリー 投稿日:2003年07月18日(金)15時39分44秒
Y
24 名前:06 チェリー 投稿日:2003年07月18日(金)15時40分17秒
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