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23 ほっぺの秘密
- 1 名前:23 ほっぺの秘密 投稿日:2003年03月13日(木)00時16分20秒
- 23 ほっぺの秘密
- 2 名前:23 ほっぺの秘密 投稿日:2003年03月13日(木)00時16分52秒
- 私は今までにやせようと思ったことが一度もない。
なぜなら・・・
私には大事な人がいるから。
- 3 名前:23 ほっぺの秘密 投稿日:2003年03月13日(木)00時17分24秒
- わたしの生まれた地域にはある伝説がある。
「数十年に一人、ほっぺの膨らんだ女の子が生まれてくる。」
「その子のほっぺは二十歳までやせるなどしてこけさせてはいけない。」
もしもそのほっぺがこけてしまったら、
「その人物の身近にいるものはみな、
まぬがれることのできないひどい苦しみに襲われる。」
らしいのだ。
- 4 名前:23 ほっぺの秘密 投稿日:2003年03月13日(木)00時17分59秒
- 普通なら迷信だと笑い飛ばせるけれども、
わたしは生まれてから周りに住む人から、
痩せぬよう痩せぬようにと手厚く食べさせられてきた。
- 5 名前:23 ほっぺの秘密 投稿日:2003年03月13日(木)00時18分40秒
- 伝説にはさらに続きがある。
「十五歳までには親元を離れなければいけない。」
つまり残りの五年間は自分でほっぺを守らなければいけないのだ。
モーニング娘。に入れたことは、
嬉しかったし、親元を離れるきっかけにもなった。
でも私はもちろん加入が決まる前からモー娘。が大好きだった。
加入によってモー娘。が「身近な存在」になってしまったことで、
私は大きなプレッシャーを背負った。
- 6 名前:23 ほっぺの秘密 投稿日:2003年03月13日(木)00時19分15秒
- 「もしもやせてしまったら」と不安を抱き続けるのは私だけで充分だ。
だからメンバーには何も話していない。
もちろんつんくさんにも。
だからみんなして遠慮なく食べすぎだ食べ過ぎだと言ってくる。
人の気も知らないで。
この間は里沙ちゃんに「あさ美ちゃん、そんなに食べてたら本当にフグになっちゃうよ。
そういえばフグって河の豚って書くんだよね。」と言われた。
もしも身近な人が里沙ちゃんだけだったらとっくに痩せてたかもしれない。
でも絶対に痩せるわけにはいかない。
- 7 名前:23 ほっぺの秘密 投稿日:2003年03月13日(木)00時20分09秒
- 「あさ美ちゃんの食べてる姿って見てるとなんかなごむんだよねえ。」
そう言ったのはまこっちゃんだ。
私の辛い使命を心のどこかで感じ取ってくれたのかなあ。
そう考えると運命的なものを感じる。それに・・・
そんな彼女の優しさに私は惹かれてしまう・・・
そんな彼女の目に私は惹かれてしまう・・・
そんな彼女の声に私は惹かれてしまう・・・
そんな彼女に私は惹かれてしまう・・・
私は絶対に痩せない。
彼女のために。
- 8 名前:23 ほっぺの秘密 投稿日:2003年03月13日(木)00時20分35秒
- とにかく痩せないために、私は常に完璧でいる。
特に食べ物は必ず携帯している。
いつ何がおきるか分からないから。
なのに今日は大変なことがおきた。
おやつがない・・・
いつどんなときでも私はおやつのチェックはするのに・・・
どうして・・・
朝はあったのに・・・
- 9 名前:23 ほっぺの秘密 投稿日:2003年03月13日(木)00時21分05秒
- 困り果てた私の所に、
辻さんが笑顔で、でもちょっと申し訳なさそうに近づいてきた。
まさか・・・
そのまさかだった。
北海道限定の初めて見るお菓子をつい食べてしまったらしい。
確かにこっちでは売っているのを見たことがない。
そしてあのパッケージは人の食欲を惑わすようで、
味も私のおすすめの一品だ。だけど、
辻さん、大変なことをしてくれましたね。
あなただって「身近な人」の一人なんですよ。
- 10 名前:23 ほっぺの秘密 投稿日:2003年03月13日(木)00時21分34秒
- でも、言えない。
これだけすまなそうにしている彼女に、
余計なことを言って、さらに不安にはさせられない。
結局今度なにかお菓子を買ってきてもらうことで承諾した。
(今日のはもう食べてしまったらしい)
- 11 名前:23 ほっぺの秘密 投稿日:2003年03月13日(木)00時21分54秒
- いつもより時間がかかったテレビの収録がやっと終わった。
私はそうとうおなかがすいたので急いで帰ろうとした。
早くなにか食べないと・・・
食べないと彼女が・・・
彼女が・・・
「あさ美ちゃん」
彼女が!!!
私に話し掛けてきた。
「帰るんでしょ、途中まで一緒にいこう。」
- 12 名前:23 ほっぺの秘密 投稿日:2003年03月13日(木)00時22分23秒
- こんな幸せって、
もっと長く続けばいいのに。
私たちは今小さな空間の中にふたりきり。
さっき里沙ちゃんが遠くから声をかけてきた。
「ねえあさ美ちゃん 今里沙ちゃん呼んでなかった?」
気のせいでしょって言って正解だった。
なぜなら、
ここは密室、エレベーターの中。
こんな幸せって、
- 13 名前:23 ほっぺの秘密 投稿日:2003年03月13日(木)00時22分42秒
- ガクン
プシュー・・・
幸せはもう少し長く続くかもしれない・・・
- 14 名前:23 ほっぺの秘密 投稿日:2003年03月13日(木)00時23分09秒
- エレベーターは一階になる寸前で止まってしまった。
彼女はずいぶん焦っているけれど、
私はひそかに笑みを浮かべた。
彼女が私を見た。
しかも少し悲しそうな目で、
「どうしよう・・・」
そんな目で見られたらこっちがどうしようだ。
不謹慎にも笑みがこぼれそうになって、
慌てて下を向いた。
- 15 名前:23 ほっぺの秘密 投稿日:2003年03月13日(木)00時23分42秒
- 私の携帯が鳴った。
もお〜誰だよ。
こんないいときに電話なんかかけてくる飯田圭織ってやつは、
ああ、飯田さんか。
「紺野!もしかして今エレベーターの中?やっぱり!
他に誰がいるの?小川?小川だけ?
さっき話聞いた話だとしばらく動かないらしいよ!
大丈夫?大丈夫?すぐ助けてもらうように言うから待ってて!」
大丈夫じゃなさそうなのは飯田さんのほうだ。
それに余計なことはしないでほしい。
私は大丈夫。
なぜなら私には彼女がいるから。
- 16 名前:23 ほっぺの秘密 投稿日:2003年03月13日(木)00時24分14秒
- 電話の内容を話すと、彼女は悲しそうな顔をして言った。
「なんでこんなことに・・・」
うつむいてしまった。
私は最高のアドリブを思いついてしまった。
「心配しないで、私がいるから。」
でも、
言葉より先に、
お腹の虫がグーッと派手に鳴いた。
これじゃNGだ。
クスッ
まこっちゃんに笑われた。
- 17 名前:23 ほっぺの秘密 投稿日:2003年03月13日(木)00時25分48秒
- お腹の虫はよりにもよってまずいことを思い出させた。
伝説を思い出して一抹の不安に私は襲われた。
このままここにい続けたら・・・
環境が悪すぎる。
どうしてもネガティブ方向に思考が進んでしまう。
私はやせこけた自分を想像した。
ところで「逃れることのできない苦しみ」って何なんだろう。
とりあえず、もがき苦しむまこっちゃんを想像して・・・
一気に青冷めた。
- 18 名前:23 ほっぺの秘密 投稿日:2003年03月13日(木)00時26分20秒
- 「心配しないで、私がいるから」
逆にまこっちゃんが私を励ました。
情けないなあ・・・
でもそれどころじゃない。
私がやせてしまったらまこっちゃんも苦しむのだ。
「でも私も食べるものないんだ ごめんね」
そう言われるといっそう私は不安になる。
体が震え出した。
- 19 名前:23 ほっぺの秘密 投稿日:2003年03月13日(木)00時28分19秒
- どれぐらい時間がたっているのかわからない。
もう半日ぐらい経っただろうか。
さっきからしばらく二人とも黙ったままだ。
とてもじゃないけど私は喋る気になれない。
相変わらず震えは止まらない。
まこっちゃんは気を利かせてくれたのか、また話し掛けてきた。
「あさ美ちゃん、まだ動かないねえ。」
「もう二十分は経ってるよ。」
「出られたら二人でなにか食べに行こうね。」
そして禁断の言葉をまこっちゃんは言った。
「あさ美ちゃん、このままだとやせちゃうね。
自慢のほっぺがしぼんじゃうかもね。」
ぎくっ!
- 20 名前:23 ほっぺの秘密 投稿日:2003年03月13日(木)00時28分44秒
- とてつもない不安が、
しかもまこっちゃんの口から。
私の想像の中のまこっちゃんの苦しみも、
最高潮に達した。
・・・そして私は気を失った・・・
- 21 名前:23 ほっぺの秘密 投稿日:2003年03月13日(木)00時29分14秒
- ・・・メンバー全員が私の顔を覗き込んでいる。
どうやら気を失った直後、エレベーターは復旧したらしい。
そうだ わたしのほっぺは!
鏡のあるほうを見る。
健在だ。
いや、確かに絶食の時間がいつもより長かったせいで、
ちょっとこけた感じもする。
ほっぺの持ち主ぐらいにしか分からないくらい。
ほんの少し。
よかったあ。
これくらいならきっと何も起こらない。
体の力がすべて抜けてしまいそうな気分になった。
- 22 名前:23 ほっぺの秘密 投稿日:2003年03月13日(木)00時29分52秒
- でもほっぺがこけていたのは事実だった。
身近な人は本当に苦しみに襲われたそうだ。
辻さんがアイスを落とした。
収録に使われたニワトリが突然暴走した。
地元では風邪が流行った。
伝説は確かに現実となった。
- 23 名前:23 ほっぺの秘密 投稿日:2003年03月13日(木)00時30分24秒
- あーあ、食べ物を完璧に用意さえしていれば、
あの密室状態を満喫できたのに・・・
・・・密室状態・・・満喫・・・
・・・密室・・・満喫・・・
・・・・・・満喫してやる。
- 24 名前:23 ほっぺの秘密 投稿日:2003年03月13日(木)00時31分00秒
- あの日から一週間がたった。
私は昨日あることをした。
みんなにはとても言えない秘密のあること。
何の変哲もないエレベーター。
先週とは何も違わない。
ボタンが一つ多い以外は。
収録が終わって、私は真っ先に彼女を呼んだ。
「そういえば先週は大変だったね」
現場を前にして彼女は言った。
ごめんね 今から先週と同じ事が起きるんだよ。
エレベーターを待つ間に私は深呼吸をして、
おやつの確認をして幸せな未来を想像して、
- 25 名前:23 ほっぺの秘密 投稿日:2003年03月13日(木)00時31分30秒
- 震える指で、まず一階のボタンを押した。
そしてばれないように、ないはずの階のボタンを、
禁断のボタンを、
目をつぶって押す。
そっと目をあけると扉が閉まってゆく。
作戦は上手くいった。
彼女のほうに振り返る。
ん・・・?
なんで?
何でこんな豆みたいな奴がいるの・・・
いつの間に・・・
そんなのいやだ・・・
いやだあああああ!!!
- 26 名前:23 ほっぺの秘密 投稿日:2003年03月13日(木)00時32分57秒
- ガクン
プシュー・・・
エレベーターが止まった。
突然の事態に一人大騒ぎする新垣里沙。
まこっちゃんは「またあ?」という顔をした。
私は頭をかかえた。
最悪の密室だ。
誰か早く助けて・・・
「助けて〜、誰か〜。」
新垣うるさい。
私の携帯がけたましく鳴り響いた。
「飯田圭織」
プチッ。
そこには無表情で電源を切る紺野がいた。
(みんな、苦しみを味わってしまえ・・・・・・ウフフフフフ・・・)
- 27 名前:23 ほっぺの秘密 投稿日:2003年03月13日(木)00時33分14秒
- お
- 28 名前:23 ほっぺの秘密 投稿日:2003年03月13日(木)00時33分23秒
- わ
- 29 名前:23 ほっぺの秘密 投稿日:2003年03月13日(木)00時33分51秒
- り
よ
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