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18 マンション
- 1 名前:18 マンション 投稿日:2003年03月12日(水)01時19分31秒
マンション
- 2 名前:18 マンション 投稿日:2003年03月12日(水)01時20分10秒
- 私は今、マンションの屋上にいる。
小さな頃からいつかは昇ってみたいと思っていた場所だ。
吹き抜ける風が心地よく、手すりに写った自分の顔に、私は一人笑う。
なんだか、見下ろす景色が写真か風景画のように見えた。
- 3 名前:18 マンション 投稿日:2003年03月12日(水)01時20分45秒
- 10階――――
二人を始めて見たのは、中学の入学式の日だった。
小学校からの友達とことごとく別れて凹んでいた私に
真っ先に声をかけてくれたのが、愛ちゃんとまこっちゃんだった。
中学校に限らず、女子は一ヶ月もするとグループがはっきりしてくる。
私は二人の間におさまり、孤立は免れたけど、
私には愛ちゃんみたいな華やかさも、まこっちゃんのような
人を引き付ける魅力もなく、僅かなコンプレックスを感じるようになった。
まあ、別にそんなこといつも考えているわけではなく、
たまに一人でいる時に、心の隙間に音もなく滑り込んでくるだけだ。
普段はとても仲がよかった。誰かの家に泊まりに行ったりもした。
- 4 名前:18 マンション 投稿日:2003年03月12日(水)01時21分27秒
- 9階――――
事の始まりも、たしかまこっちゃんの家に泊まった時だったと思う。
なんとも女の子らしい部屋で少し可笑しかったのを覚えている。
その日も、十一時までテレビを見た後、恒例の暴露大会が始まった。
私は何を話したんだったか。たぶん、誰それが誰それを嫌ってるとか、
しょうもない内容だっただろう。
問題は、愛ちゃんの暴露だった。
「私ね、好きな人ができた」
それは、暴露と言っても恋愛とは無関係だったそのおしゃべりからすれば、かなり衝撃的だった。
まだ人を好きになったことのなかった私は、おそらく同じであろうまこっちゃんと
興奮していろいろ聞き出したものだった。
愛ちゃんも、照れながらも嫌がる様子もなくつらつらと話してくれた。
- 5 名前:18 マンション 投稿日:2003年03月12日(水)01時22分02秒
- 8階――――
相手は隣のクラスの、学年一と噂されるほどの容姿の持ち主だった。
勉強もスポーツも出来て、何をしても目立つ人だった。
愛ちゃんは積極的に行動し始めた。
それがまた私の劣等感を突っついたりもしたけど、
その当時はそれほど気にしていなかったと思う。
たぶん、無意識のうちに、愛ちゃんが彼と付き合えるわけないと思っていたからだろう。
いくら過去何度か告白を受けたことがあると言っても、相手は雲の上のような存在だ。
そう思っていた。
- 6 名前:18 マンション 投稿日:2003年03月12日(水)01時22分32秒
- 7階――――
愛ちゃんの告白は成功し、二人は付き合い始めた。
少女漫画のような、純粋で確かな恋愛だった。私にはそう見えた。
この頃から、私はよく頭に霧がかかるのを感じた。
時々それが露になって頬を濡らした。
最初は正体がわからず、なぜこんなに気持ちが暗くなるんだろうと
思ったこともあったけれど、愛ちゃんと彼が付き合っていることを認識させられる度、
霧は少しずつ形を作っていた。
それは、愛ちゃんを憎む感情だった。
そして同時に、私も彼が好きなんだということを自覚した。
- 7 名前:18 マンション 投稿日:2003年03月12日(水)01時23分16秒
- 6階――――
けれど、その感情はどこへも吐き出すことが出来ない。
愛ちゃんと笑顔で話さなければいけない日々は、
私の心を圧迫し、私に一つの嘘をつかせた。
「ねえ愛ちゃん、ちょっといい?」
「どうしたの、深刻な顔して」
「実はさ、昨日愛ちゃんの彼氏が髪の長い女の子と歩いてる所見たの…」
「…」
「二人で腕くんで駅に入ってった…」
言い訳するつもりはないけど、この時、私の頭は大部分が例の霧で麻痺していた。
何も考える事ができなかった。
- 8 名前:18 マンション 投稿日:2003年03月12日(水)01時23分55秒
- 5階――――
ちょうど二週間前、彼女は、愛ちゃんは死んだ。
このマンションから飛び降りた。
私が嘘をついてから三日後だ。
だからと言って私の嘘が原因なわけない。
確かに恋人に裏切られたら自殺しかねないと思ったことは何度かある。
だがどこの世界にそんな見間違いかも知れない証言だけで
自分の命まで捨ててしまう人間がいるのだ!
ましてあの愛ちゃんが、そんなにもろい人であるはずはなかった。
- 9 名前:18 マンション 投稿日:2003年03月12日(水)01時24分41秒
- 4階――――
それから十日ほど経ってからだ。
まこっちゃんからある『秘密』を聞かされた。
「あのさ、愛ちゃんの自殺…、ちょっと心当たりがあるの…」
「え…、何?愛ちゃんなんかあったの?」
「多分愛ちゃんが自殺する五日前だった。
わたし、実は愛ちゃんの彼氏のこと好きで、別れて欲しいと思って
『昨日女の人と駅から出てくるの見た』って嘘ついたの…」
そうか。確かに私一人が言っただけなら信用しないだろうけど、
まこっちゃんとのキレイに息の合った嘘が、愛ちゃんを信じさせ、追い込んだのだろう。
二人が見間違いをしたことよりは、相手の裏切りを信じるほうが簡単のように思える。
やはり、私のせいだったのか。
- 10 名前:18 マンション 投稿日:2003年03月12日(水)01時25分16秒
- 3階――――
私は、それらの事が顔に出ないように努めて、まこっちゃんを励ますように言った。
「そんなことで自殺するほど愛ちゃんは弱くないよ。
きっと、もっと別の理由が…あったんだよ」
「…そう、かな」
「そうだよ、気にしないほうがいいよ」
まこっちゃんに打ち明けることはできなかった。
こんな絶望的な思いは私の胸の中に留めておこう。
- 11 名前:18 マンション 投稿日:2003年03月12日(水)01時26分15秒
- 2階――――
- 12 名前:18 マンション 投稿日:2003年03月12日(水)01時26分47秒
- 1階――――
- 13 名前:18 マンション 投稿日:2003年03月12日(水)01時27分26秒
次の瞬間、私の命は飛び散った。
- 14 名前:18 マンション 投稿日:2003年03月12日(水)01時27分56秒
- オ
- 15 名前:18 マンション 投稿日:2003年03月12日(水)01時28分29秒
- ワ
- 16 名前:18 マンション 投稿日:2003年03月12日(水)01時29分17秒
- リ
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