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17 未来の花

1 名前:17 未来の花 投稿日:2003年03月11日(火)21時21分06秒
「未来の花」
2 名前:17 未来の花 投稿日:2003年03月11日(火)21時21分46秒
紺野には誰にも言えない秘密があった。幼い頃からずっと抱えてきた悩み。
親に言っては信じてもらえず、友人に話せば変人扱いされた。
紺野の秘密、それは、死神が見える事だった。

物心ついた頃から、その能力は覚醒していた。すれ違う人々の何十人に一人、
死神がついていた。幼かった紺野は、誰にでも見える事だと思っていた。

だから6歳の頃、祖母の家に行った時、親戚が見守るなか当たり前のように
「おばあちゃんに死神がついてるね」と言ったのだ。
その時、両親は「縁起でもない」と紺野を叱ったが、何で叱られてるのかは分からなかった。

そしてその日の夜、祖母は死んだ。それまで元気だった祖母が、
急に発作を起こしたのだ。あっという間だった。

それ以来、親戚の紺野を見る目が変わった。人の死を当てたと噂し、気味悪がった。
中には、紺野が死神を運んできたと言う者もいた。
3 名前:17 未来の花 投稿日:2003年03月11日(火)21時22分26秒
初めは親もただの偶然だと思い、紺野を庇っていた。
だが道行く人や知り合いの人、近所の老人たちの死も「死神がついてる」
と言い当てた時から、両親の態度が変わった。
気づけば、親との間にも大きな溝ができていた。

紺野が人間不信になり、人との関わりに恐れ、誰からも距離を置くようになったのはそれからだ。

自分にだけ、何でこんな能力がついてるのかは分からない。
だが街中で楽しそうにはしゃいでる若いカップルや、
仕事に命をかけて家族を大事にしてそうなサラリーマン、
まだ小さい子供にまで死神が見える度、紺野はこの能力を呪った。
学校が終わればなるべく早く家に帰り、誰も見ないよう、誰にも関わらないようにした。

そんな紺野が唯一、心を開けるものがあった。花だった。
家の庭には小さな花壇がある。小学校の頃、友達を作らずずっと家にいた紺野は、
毎日のように花壇を手入れした。気付けば花や植物が唯一の友達になり、
話し相手になっていた。
4 名前:17 未来の花 投稿日:2003年03月11日(火)21時22分58秒
中学に入り、紺野は園芸部に入った。校舎にある花壇は家のものより数倍広い。
紺野はその花壇を自分の庭のように扱った。
元々部員は少なく、いつも一人で花に話しかける紺野に、深く関わろうとする者もいなかった。

中学二年になったある日の夏。
その日は台風が上陸してるせいもあってか、大雨だった。
警報で学校も休みになり、その日は一日中家にいた。
だが紺野は窓の外を見る度に心配になった。
家の花壇はビニールの屋根を作って何とか雨風を防げたが、
こんな状態では誰も学校の花壇には気を使ってないだろう。

夜になっても、雨は止まなかった。
紺野は学校の花壇の事が頭から離れず、とうとう道具を持って家を飛び出した。
親には気付かれないように、そっと出た。

普段は十五分かかる道を、七分ほどで駆け抜けた。
レインコートを羽織っていたが、全身はびしょびしょだった。

容赦なく降り注ぐ雨や吹き返してくる風など、もはや気にならなかった。
紺野は花壇を目掛けてただひたすら走った。

目的の場所に着いた時、紺野は悲鳴をあげそうになった。
そこには想像していた荒れ果てた花壇ではなく、人がいた。
5 名前:17 未来の花 投稿日:2003年03月11日(火)21時23分29秒
紺野の気配に気付いてか、花壇の前にしゃがんでいる人物が振り返る。
その顔に見覚えがあり、紺野は再び息をのんだ。

同じ中学の生徒だった。だが紺野より学年が一つ上のはずだ。
よく全校集会とかで前に立っていろいろ発表している、結構有名な人だ。
そんな人が、なぜここに…。

「あ、これ、あなたの花壇?」
何もしないで突っ立っていると、その人から話しかけてきた。
紺野はまだ混乱を隠せないまま、何とか頷いた。その人は立ち上がって、
「へぇ〜。よく手入れされてるね。でもあと一足遅かったら、
せっかくきれいにされてた花たちが、めちゃくちゃになってたよ」
紺野の顔を見て、それから花壇の方を見た。

紺野はその人の後ろを見て「あっ」と声をあげた。
花壇の周りには家のと同じように、ビニールが張ってあった。
足元に、釘を打つための金槌やスコップといった物も置かれてある。
そしてその人の手には軍手がしてあって、全身は土まみれのレインコートで包まれていた。
6 名前:17 未来の花 投稿日:2003年03月11日(火)21時24分17秒
紺野は思わず頭を下げた。
「あ、ありがとうございます」
「んあ?何言ってんの。礼なんていらないって。困った時はお互い様。
というより、この花たちがあまりにもかわいそうだったから来ちゃっただけなんだけどね」
「あ、あの…あなたは…。」
「え?名前?後藤はね、後藤真希って言うんだよ。この学校の、三年D組。あなたは?」
「こ、紺野あさ美…二年B組です…」
「紺野さんかぁ。園芸部?」
「はい」
「そっか。こんな台風の日にまでこんなとこ来て、よっぽど花が好きなんだね」
後藤の軽い雰囲気に、紺野は思わず無言になってしまう。

 後藤真希。思い出した。成績優秀に運動神経抜群。
文化祭や体育祭では常にリーダー的存在となり、明るく、常に沢山の友達がいる。
二年の紺野のクラスにまで、後藤の活躍ぶりは伝わっている。
そんな後藤に憧れを抱かない後輩は少なくなく、追っかけのような者もいる。
自分とはまるで正反対。そんな後藤は、紺野にとって苦手なタイプだった。
7 名前:17 未来の花 投稿日:2003年03月11日(火)21時24分57秒
「ねぇ紺野さん。お願いがあるんだけど」
暫しの沈黙の後、何を思ったか、後藤が近づいてきた。紺野は無意識に身構える。

「これから後藤もさ、一緒に花壇の世話をしていい?」
「え?」
「ほら、後藤さ、既にバスケ部の部長やってるからさ、今更園芸部には入れないんだよね。
でも、誰にも言った事なかったんだけど、実は園芸とか凄い興味あったんだ。
というか昔から土触るのは好きなんだよね。ここの事もずっと気になってたしさ。
だからお願いなんだけど、これから後藤も、一緒にここ世話していい?」
そう言って、へらへらと笑った。
紺野はあまりにも唐突な質問に、頭がついていかなかった。

ただ、後藤の無防備な表情を見ていると、先ほどまで感じてなかった雨が冷たく沁みた。
人と、ただの他人同士から知り合いになるという一線を越えるのに恐怖を感じた。
答えるのに戸惑い、紺野は何も言わずにその場を立ち去った。
8 名前:17 未来の花 投稿日:2003年03月11日(火)21時25分27秒
だから次の日、何食わぬ顔をして花壇に現れた後藤を見て、驚いた。
もう部活は終わり、放課後一人で残ってた時だった。

「へ〜え。そんな風にするんだぁ」
紺野の動作にいちいち感嘆の声をあげ、「ねぇ、これはどうするの?」と何度も訊ねてきた。

いくら無視をしても、後藤はしつこく紺野に話しかけてきた。次の日、そしてまた次の日も。

そうしていくうちに、紺野の心は段々と開いていった。
初めは恐かったが、少しずつ、自分の好きな花の事などを話していくうちに、
喋るのが楽しくなった。後藤も、紺野の長々とした花に関する専門的な話を聞かされても、
一度も飽きたような素振りを見せなかった。
紺野は日に日に、後藤といるのが楽しくなっていた。

***
9 名前:17 未来の花 投稿日:2003年03月11日(火)21時26分18秒
ある日、後藤がこんな事を言っていた。
週末にまで花壇の様子を見に来た、その帰り道。夕暮れ時の事だ。

「実は後藤、こうやって学校の花壇に来て、あさ美と会ってる事、誰にも言ってないんだよね」
後藤の話はいつも唐突に始まる。紺野はいつも通り耳を傾けた。
「あさ美は?誰かに言ってる?」
「ううん。後藤さんと会ってる事は、言ってない」
「…そっか。後藤ね、ずっと思ってたんだけど、これさぁ、二人だけの秘密にしようよ」
「秘密?」
「うん。誰にも知られずに、二人だけで花壇をどんどんきれいにしていくの。
今は学校のだけど、いつか後藤たちが大人になって離れ離れになった時も、
またどっかで、二人だけの秘密の花壇みたいなのをつくりたいな〜って」

秘密といっても、後藤と紺野が二人で花壇にいる所は何人かの生徒に目撃されている。
紺野は相変わらず、わけ分からない事を言うなと思いながらも、
将来後藤と二人で秘密の花壇をつくってるのを想像して、「そうだね」と思わず笑った。
10 名前:17 未来の花 投稿日:2003年03月11日(火)21時26分48秒

こんな日がずっと続けばいい――。
後藤との距離が縮まっていくとともに、紺野はそう思った。
だがそんな紺野の想いを断ち切るかのようにまた突然、アレがやってきた。

それはまるで、紺野を嘲笑っているかのようだった。
朝学校へ行き、校舎内で後藤を見かけた時、それがいた。

死神だった。ここ最近、身近にいる人間には見えなかった。
紺野は息を呑んで、何度も目をこすった。
だが後藤の背中から生える黒い影は、何度見ても消えなかった。

紺野は必死で考えた。このままでは一日以内に、
世界で一番死んでほしくない人が死んでしまう。
だが自分に一体何ができる?
今まで人の死を言い当てても、それを助けた事はなかった。
普通に人が死んでいくのを見てただけだ。
今回もそうなるのか。分かってて、後藤を見殺しにする事しかできないのか。

そんなのは嫌だった。後藤を失いたくない。何としてでも助けたかった。

紺野はそう思い、授業が終わるや否や、三年D組の教室まで走っていた。
11 名前:17 未来の花 投稿日:2003年03月11日(火)21時27分42秒
始めて見る、三年の廊下。終礼が終わった後なので、沢山の生徒が行き交っている。
紺野はD組の教室の前に立ち、中を覗いた。
後藤、もとい死神を背負った人間はいなかった。
ロッカーの方にいるのかと、体を引っ込めた時、横の階段から聞きなれた声がした。
「きゃはは。そんなの嘘だって〜」
後藤だ。紺野は内心安堵しながら階下を覗いた。
後藤は二人の生徒に囲まれて階段を上ってきている。
だが囲んでるその二人を見て、紺野の体は凍りついた。

「本当?何人も目撃者がいるんだよー。
真希があの子と一緒に花壇なんかいじってるって〜」
「そうそう。それ聞いた時びっくりしちゃった。
だって、あの子ってほら、こないだ私らがアレした…あの子でしょ?」
「そうそう、あの子あの子。顔のわりに結構持ってるんだよね〜。案外お嬢様だったりして」
「だよね〜。で、真希もどうせからかってるんでしょ?
真希があんな地味な子相手にするはずないもんねー。しかも園芸って、超だっさいし。」
「うん、まぁね」

後藤の声がした。
12 名前:17 未来の花 投稿日:2003年03月11日(火)21時28分41秒
「からかってるだけだよ。ってか興味あってさ。
いっつも暗い顔して一人で花に話しかけてんでしょ?
どんな思いで人生いきてんのかなぁって」
「きゃはは。何それ。それ聞くためだけに近寄ったの?」
「うん」
「うっわー。かわいそ〜」

紺野は動けなかった。三人の足音が、すぐそこまで来ている。
なのに紺野は、動けなかった。
「あ…」
後藤と、二人の生徒が前に立った。見覚えがる。
この二人には以前何度か、かつあげをされた。

紺野は目の前で微笑む死神を見ながら、自分の心が急速に冷えていくのを感じた。
自分は、何をしてたんだろう。人と関わりを持ち、信用し、
いつの間にか命を助けたいとまで思う人をつくっていたなんて。
そんな無意味な事はしないって、あんなに言い聞かせてたのに。

「あ、えと…これは…」
戸惑う後藤を横目に、紺野は何も言わずに走り去った。
13 名前:17 未来の花 投稿日:2003年03月11日(火)21時29分27秒
家に帰って、部屋に閉じこもった。服も着替えず、ベッドに入る。
別に、悲しくなんかなかった。こういうのは慣れてる。
小学校の頃から、いろんな人にからかわれ、人を信用しては裏切られてきた。

いつも間違いは犯してから気付く。
いつか、自分の死神が見えるという秘密を共有できるような友達と出会えるなんて、
そんな時は一生訪れない。なのにどこか期待している。
今回も、どこか後藤に期待していた。
彼女なら、こんな自分も受け入れてくれるかもしれない、と。
だがその考え自体、あまかった。

いつの間にか、八時になっていた。
精神的ショックも加え、体も疲れていたせいか、寝てしまったようだ。
紺野は既に真っ暗な外を眺め、ぼんやりと後藤の事を考えた。
急に、胸が苦しくなる。抑えていた熱い感情が込み上げてくる。
それはやがて目に集まり、液体となって零れ落ちた。
14 名前:17 未来の花 投稿日:2003年03月11日(火)21時30分20秒
「はは…なに、泣いてんだろ…」
涙を止める事はできなかった。同時に、大きな不安が胸をよぎる。

死神を見たのは、今朝だった。もしかして、昨晩からついてたかもしれない。
そうだとすると、もうすぐで一日が経ってしまう。

紺野は、今まで後藤と話した事、一緒に花の手入れをした事、
そしてあの笑顔を思い浮かべた。あれは全部、演技だったのかもしれない。
自分をからかう為に嘘をついてただけなのかもしれない。
だが例えそうだとしても、あの雨の日、学校の花壇を助けてくれたのは、後藤だった。

そう思った瞬間、紺野は家を飛び出していた。


行き先はただ一つ。後藤と初めて会った場所。
そして紺野に、人生の希望を教えてくれた場所。

15 名前:17 未来の花 投稿日:2003年03月11日(火)21時31分02秒
***

花壇に咲いてる花は、月明かりに照らされて、真っ暗な夜の中でも輝いていた。
紺野がそこに着いた時、あの雨の日と同じように、後藤がしゃがんでいた。

その姿を認め、ほっと安堵する。だが頭の上には、まだ死神がいた。

「初めは、確かに興味本位だったんだ」
紺野が口を開く前に、振り向かないまま後藤が言った。

「変わってるなぁって。一人で花に話しかけて、友達はいないみたいだし、
何が楽しくて生きてるんだろうって。後藤は友達といるのが凄く楽しかったんだ。
みんなで馬鹿騒ぎして、はしゃいで。人と喋る為に、学校に来てた。
だからあの二人から、変わった子がいるって聞かされて、
いいカモだって言われたんだけど、後藤はそういうの興味無くて。
逆に、そんな風にして生きてる事の方が気になってさ」

後藤は花壇に咲いてる花に手を添えて、
16 名前:17 未来の花 投稿日:2003年03月11日(火)21時31分38秒
「暫くあさ美の事観察してた。後藤、そういうの好きだから。
そしたら何か、あさ美の花に対する熱心さがこっちにまで伝わってきて。
あの雨の日、何でか知らないけど、勝手に体が動いて、この花壇をまもってたんだよね」
そして立ち上がって、こちらを見た。

「本当の事、秘密にしてて、ごめんね」

再び、熱いものが込み上げてきた。理由は分からない。
ただ目の前で微笑む後藤があまりにも優しかったから。
人の感情に、心から触れた気がしたから。紺野は目の前が涙で霞むのに気付いた。

「こら!そこで何してる」
突然、声が響いた。見ると、警備員が懐中電灯を掲げ、怪訝そうな顔をしている。

「やっば。あさ美、逃げよう!」
そう言って手を掴まれ、一緒に走った。後藤の手は温かかった。
温もりが心まで伝わってくる。
他人と接するのがこんなに簡単で、安らぐものだとは思わなかった。
17 名前:17 未来の花 投稿日:2003年03月11日(火)21時32分29秒
だがそれを嘲笑するかのように、死神が笑っていた。
そうだ、後藤には死神がついている。そう気付いた瞬間だった。

校門から出た途端、目の前に光があった。
それが何だと認識する前に、紺野の体は壁にぶつかっていた。
そして急ブレーキをかけるような凄い音。
いつの間にか、握られていた手も空っぽだった。
不思議がちに目を開けると、目の前で後藤が頭から血を流して倒れていた。
車も、壁に激突していた。

遠くの方から近づいてくるサイレンの音に耳を傾けながら、
最後に聞いた彼女の言葉をぼんやりと思い出していた。「あさ美、逃げて!」

***
18 名前:17 未来の花 投稿日:2003年03月11日(火)21時33分13秒
黒い喪服に身を包んで、後藤の家に来ていた。
何を持って来ていいのか分からず、取り合えず鞄の中には数珠を入れてある。
周りにはクラスメイトや、中三の生徒、そして教師などがいた。
みんな、生前の後藤の事を話しながら泣いている。
後藤と話した事など無かったはずのクラスメイトまで、大泣きしていた。

紺野は無言で席に着いた。灰色の写真の中で笑っている後藤を、じっと見る。

後藤は結局助からなかった。学校の警備員がすぐに救急車を呼んだが、手遅れだった。

後藤の葬式が行われるまでの二日間、紺野は一度も学校の花壇へ行っていない。
家の花壇にも手をつけていない。
食べ物も喉を通らず、学校も休み、ずっとベッドの中にいた。

紺野は、後藤が死んだのは自分のせいだと悔やんでいた。
後藤は自分を突き飛ばして車に跳ねられた。
その前に、あの時間に学校にいたから、後藤は事故にあったのだ。
紺野と出会わなければ、後藤はあんな時間に学校の花壇に行くこともなかったはずだ。
19 名前:17 未来の花 投稿日:2003年03月11日(火)21時34分10秒
一通りの儀式が終わり、皆が帰路に着き始めた頃、
後藤の母親だという人物が声をかけてきた。
「あなたが、紺野さんですか?」どうやら担任の先生に訊いたらしい。

奥へ通され、人気が無い部屋へ来た。紺野はそこで少し待たされた。
初めて入る、後藤の家。

暫くして、奥から後藤の母親が、手にノートのような物を持って現れた。
「これ、真希の日記なんだけど…あなたの事が沢山書かれてたから、
きっと一番仲の良い友達だったのね。できれば、これを読んでほしいの。
真希が生きてる頃、一番最後まで一緒にいてくれたんでしょ。
…きっと真希も、あなたに読んでほしいと思ってるに違いないわ」

言われるままに、紺野はノートを開いた。
そこには後藤の毎日の日記が書いてあった。
紺野を観察し始めた頃の事、ずっと紺野に話しかけたかったがきっかけが中々無かった事、
あの雨の日の事、紺野と将来秘密の花壇を作ると約束した事、
紺野との思い出が全て事細かく、そこには記されていた。
20 名前:17 未来の花 投稿日:2003年03月11日(火)21時35分00秒
紺野は黙ってページをめくった。白紙になっても、めくっていた。
まだ書かれてない、後藤の書く予定だった、未来の日記を想像しながら。
ただ黙って、ページをめくり続けた。

暫くして、終わりに近いページに、何かが書かれているのを発見した。
真っ白いそのページの右下には小さく、「あさ美のこと、好きになっちゃった」と書かれてあった。
紺野は目頭が熱くなるのを感じ、それを閉じた。


その帰り道、紺野は学校の花壇に寄った。
後藤が特に手がけていた花を見て、一人呟く。


明日から何も隠さず、心を開いて生きていこう。
後藤が教えてくれた、人と関わる事の温もりを、大事にしよう。


明日学校で、誰にも言えなかった秘密を、大声で叫ぼうと思った。

21 名前:17 未来の花 投稿日:2003年03月11日(火)21時35分34秒
K
22 名前:17 未来の花 投稿日:2003年03月11日(火)21時36分12秒
A
23 名前:17 未来の花 投稿日:2003年03月11日(火)21時37分03秒
G

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