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07 ファミリー・アフェア
- 1 名前:07 ファミリー・アフェア 投稿日:2003年03月10日(月)01時37分36秒
- 「ファミリー・アフェア」
- 2 名前:07 ファミリー・アフェア 投稿日:2003年03月10日(月)01時38分38秒
- 「はいカット!OKです!」
あー、良かった。
「紺野さんは次のシーンまでしばらく時間空きます、休憩どうぞー!」
ふう・・・演技するのってやっぱりムズカシイな。
モーニングに入って一年、歌やダンスやトークにはようやく慣れてきたけれど。
休憩と言われても私はしばらく、手持ち無沙汰に立ち尽くしたままだった。
いつもとは違うスタッフさんばかりの現場では、やっぱり少し緊張してしまう。
特にヘタクソな演技の後では何となくハズカシイ。
マネージャーさんが、しばらくゆっくりしなよ?と言ってくれたので私は、ココで出来る限りの好きなコトをしようと思った。
- 3 名前:07 ファミリー・アフェア 投稿日:2003年03月10日(月)01時39分35秒
- 自分のバッグを漁って干し芋を取り出す。
こんな時でも私のココロの友、干し芋があるだけで落ち着くような気がしてくるから不思議だ。
行儀が悪いと怒られそうだけれどガマン出来ずに、干し芋を齧りながらロケバスに向かって歩き出した。
誰もいないロケバスに入って最後尾の座席にどっかりと腰を下ろす。
ふう。
良くないとわかっていてもまた、ため息が出てしまう。
ああ・・・どうして私が妹役なんだろう、重要なシーンも多いし覚えるセリフも当然多い。
嬉しいけれど、少しコワイ。
本当に私で、良かったのだろうか。
窓にもたれて外を見る。
吉澤さんはまだまだ出番が続くから、コートを羽織ったまま1人で台本のチェックを続けていた。
ドラマの、主役。
どんな気分なんだろう・・・プレッシャーに押しつぶされそうになったりしないのかな。
- 4 名前:07 ファミリー・アフェア 投稿日:2003年03月10日(月)01時40分25秒
- でも吉澤さんは1人じゃないし、と私は思う。
普段からそうだけれど特に今回のドラマの現場で私は、他人事ながら実感した。
吉澤さんには、石川さんがいる。
TVじゃないほうが仲が良い2人は、実は私の理想の友人像だったりする。
同期の仲間であり、ライバルであり、そして親友でもある2人。
今日みたいに石川さんがいない現場もたくさんあるけれど、常にお互いの存在が刺激になったり支えになったりしているのだろうと思う。
吉澤さんは学校のシーンとかたくさんあるし、石川さんと一緒のシーンが多くてイイな・・・。
私だってチョイ役でイイからあのクラスにいるシーンにいたかった。
そこまで考えて私は、こんなんじゃダメだ、とバッグの中からMDとプリ帳を取り出した。
ヘッドホンをつけて、手探りでリモコンのプレイボタンを押す。
すぐにお気に入りの曲が流れ出して、私は少しほっとした。
- 5 名前:07 ファミリー・アフェア 投稿日:2003年03月10日(月)01時41分03秒
- そう言えばこの間久しぶりに5期メン4人で撮ったプリクラ、まだ貼ってなかった。
サイフの中からあの時みんなで分けたプリクラを出して、丁寧にプリ帳に貼る。
みんなイイ笑顔してるよなあ・・・私は座席に寝転がってみんなの顔を眺めた。
ああ、和む・・・コレがないと私、生きていけないかも・・・。
気づくと私は、眠ってしまっていたようだ。
ぼんやりと目覚めた中でやっとそう認識出来たけれど、すぐに起き上がろうとは思わなかった。
こんなカンジもキモチイイ。
必死で覚えたセリフが時々断片的に浮かんで、頭の中で混ざってしまうのが少しおかしかった。
アレ?誰かいるのかな。
こそこそとしゃべってる声が聞こえたような気がした。
いや、ホントに誰かが小さい声でしゃべってるんだ。
だから私は目が覚めたのか。
あの声は吉澤さんかな?
- 6 名前:07 ファミリー・アフェア 投稿日:2003年03月10日(月)01時41分34秒
- イイや、もう一度寝よう・・・たぶんまだ大丈夫だよね・・・。
再び夢の世界に半分だけ入り込んでいた私の耳に届いたのは、なぜか石川さんの声だった。
・・・・・どうしてココに石川さんがいるんだろう?
私の意識はそれを考えようとしていたけれどすぐに、吉澤さんがいる現場に石川さんが遊びに来ても不思議じゃないなというコトに気づく。
再び私の脳みそはとろとろと眠りの世界に溶け始める。
けれどそれをジャマしたのはやっぱり、石川さんの声だった。
- 7 名前:07 ファミリー・アフェア 投稿日:2003年03月10日(月)01時42分08秒
- 「やーだ。ダメだよー」
「何で。だいじょぶだよちょっとくらい。やっと2人になれたんだよ?」
「もう、別に今、こんなトコでするコトないじゃない」
「今、こんなトコだからイイんだってば」
・・・何のハナシをしてるんだろう?石川さんと吉澤さんは。
ちゅっ。
えっ?今、何か音がしたよね?ね?
どう考えても今のは・・・って、あれ?ちょっと?
2人が本当に仲良いのは知ってるけど、キスしてるのなんて見たことないよ。
吉澤さんは他のメンバーとはふざけてキスとかするのだけれど。
何故か石川さんとはしないんだな、って普段から思ってたんだよね。
私の中で何か、警報みたいのが鳴り出した。
コレは・・・やばくないか?何か、いつもの2人と違う。
ちょっと甘えたような声でささやいてる吉澤さん。
石川さんなんて、キスの後にため息みたいな声を出したりなんかして。
- 8 名前:07 ファミリー・アフェア 投稿日:2003年03月10日(月)01時42分40秒
- おーい、ココに中学生がいますよー!気づいてくださーい!
「もう・・・ほんっとしょうがないねひとみちゃんは」
「へへ。もっかいイイ?」
「だーめ、紺野が起きちゃうよ?」
知っててやってんのかよ!
って今たしか石川さん、「ひとみちゃん」って呼んでたよね?ね?
初めて聞いたー!
呼んでるらしい、呼んでないらしいってハナシはよく見るけど。
生で聞けてちょっと嬉しいかも。
「イイよ、紺野なら黙っててくれるって」
「そういうモンダイじゃないでしょ」
ちゅっ。
またですか・・・。
っていうか、ホントに?ホントなのかなあ。
私、夢見てるんじゃないよね?
「あー、もう。ちょっとだけだからね」
「ん」
- 9 名前:07 ファミリー・アフェア 投稿日:2003年03月10日(月)01時43分12秒
- どこまでやるんだよーまったくもう。
ごそごそという音がかすかにきこえる。
私だんだん、胃と心臓が口からはみ出そうになってきたよ・・・。
結局2人はこの後そのまま、マネージャーさんが呼びに来るまでロケバスの中にいた。
そこで2人が何をやっていたかを私は、もちろん誰にも言えないままでいた。
- 10 名前:07 ファミリー・アフェア 投稿日:2003年03月10日(月)01時43分43秒
- 何日かたったハロモニの録りの日、久しぶりに全員が揃った。
年少組は何かそれだけでも嬉しくて、いつもよりはしゃいでしまったりする。
みんなはさっきまでモノマネ新ネタ大会で大爆笑していたけれど。
私はすぐに1人になって、年少組の楽屋にあるノートパソコンでおとなしくファンメールの返事を書いていた。
愛ちゃんとまこっちゃんが隅っこのほうでお菓子をつまみながら、何やらこそこそ笑っている。
それを横目に見ながら私は、ヒマだな、とつぶやいて、一旦閉じかけたノートパソコンをまた開いた。
事務所のヒトからはあんまり見ちゃいけないって言われてるけれど私は、私たちに関する非公式サイトや掲示板を見たりするのが好きだ。
だってオモシロイんだもん。
それに今、ヒマだし。
- 11 名前:07 ファミリー・アフェア 投稿日:2003年03月10日(月)01時44分44秒
- みんなにバレないようにこっそり、色んなサイトを見てまわる。
はは、こんなコト書かれてるよ私。
うわー何だコレ、すっごい予想してるけど、でも違うんだよねえ。
あ、ココ久しぶりに来たけどどうなってるかな・・・。
最初それを見た時私は、アタマを殴られたような衝撃を受けた。
ビックリして声も出なかった。
何度も何度も見直す。
ああ、でもコレは。
どうして。
気づくと私は立ち上がって、年長組の楽屋に飛び込んでいた。
入り口ですれ違った安倍さんに、どうしたー紺野?と笑われるのを適当に流して、部屋の隅っこの床に直接座っているヒトの前に駆け寄った。
- 12 名前:07 ファミリー・アフェア 投稿日:2003年03月10日(月)01時45分18秒
- 「お?珍しいねえ紺野」
あぐらをかいて不自然な姿勢になるのも気にしない様子でそのヒトは、床に直接置いたノートパソコンをイジっていた。
わかった、罰ゲームか何かでしょ?と私を見上げると、つき合ったげるからちょっと待ってね、とモニタに視線を戻した。
「あの、吉澤さん」
「んん?何されるんだろ、あたし。あたしが負けたんじゃないのにね」
笑いながら吉澤さんは、鼻歌混じりでフロッピーを取り出してジャケットのポケットにしまうと、マウスのコードも抜いて自分のバッグに投げ込んだ。
そのフロッピーに目が釘づけになっていた私は、吉澤さんのポケットを凝視してしまう。
吉澤さんは、へへ、マイマウス持ち歩いてんだよあたし、と私を見てその視線に気づくとポケットの上に手を置いて、見えちゃった?シール貼ってんの、と照れくさそうに笑った。
私は吉澤さんの顔を黙ってじっと見つめる。
- 13 名前:07 ファミリー・アフェア 投稿日:2003年03月10日(月)01時45分49秒
- パズルの欠片はちょっとしか落ちてなかったけれど、たった今、私にはわかってしまった。
絶対そうだという自信はないけれど、きっとそうだ、そうなんだろう。
さっきのアレは。
アレは。
「どしたー?おーい、紺野ー?戻ってこーい」
吉澤さんがひらひら、私の顔の前で手を振る。
「あの、吉澤さん」
私はもう一度言った。
さっきとは言いたいコトがすっかり変わっていた。
「はい?何でしょう?」
「えと、あの、私とですね」
「ふむ」
「私とまこっちゃんは、コレからどうなるんですか?」
- 14 名前:07 ファミリー・アフェア 投稿日:2003年03月10日(月)01時46分27秒
- 吉澤さんは私と目を合わせたまま、ん?とつぶやくと、表情を動かさずに言った。
「どうって?」
「あの、だから、吉澤さんと石川さんはあの時の事実のままじゃないですか。えっと、それで・・・私とまこっちゃんも出て来てたから、この後どーなるのかな、なんて・・」
しばらく黙っていた吉澤さんは、ニヤリ、と笑って、さすが紺野だね、とつぶやいた。
「やっぱあの時起きてたんだ?」
「はい、すみません」
「あやまるこたないけどさ・・・そっか、バレちゃったのか紺野には」
さっき私が見て声が出ないほど驚いたのは、私たちを主人公に書かれた小説だった。
何の気なしに読んだ吉澤さん主役の小説に、あの時の吉澤さんと石川さんの会話がそっくりそのまま再現されていたのだ。
私は最初それが、ロケバスに盗聴器か何かを仕掛けられていたんだと思って驚いたけれど、そうではなかった。
- 15 名前:07 ファミリー・アフェア 投稿日:2003年03月10日(月)01時47分00秒
- 「んー、そうだね、小川と紺野か・・・」
吉澤さんはニヤニヤ笑いを続けたまま、私に手招きをする。
私は素直に吉澤さんに近づいた。
「どうしたい?どうにでも出来るよ?小説なら」
吉澤さんのささやき声に私は、何も言えずに固まってしまった。
さっき吉澤さんが取り出したフロッピーには、石川さんのシールが貼られていて。
たったそれだけなのだけれど。
私の中でアレとソレとコレが一瞬でつながって、一つの答えを導き出した。
あの小説は、吉澤さん自身が書いていたのだ。
- 16 名前:07 ファミリー・アフェア 投稿日:2003年03月10日(月)01時47分34秒
- 「失礼しまーす!」
聞き慣れた元気な声が突然私の耳に飛び込んだ。
私は反射的に振り向く。
「アレ?あさ美ちゃんこっちにいたんだ。あ、飯田さーん、あのですねえ・・」
まこっちゃんは私にヒトコトだけ声をかけるとすぐに、飯田さんのほうに歩いて行ってしまった。
後ろから、くくく、と押し殺した笑いが聞こえた。
私はハズカシくなって吉澤さんのほうに向き直れないまま、目線をまこっちゃんと反対側に向けた。
テーブルの隅っこに座っている保田さんと矢口さんと目が合う。
矢口さんが一瞬廊下のほうにちらりと目を遣ると、悪戯っ子のような顔で私を見た。
- 17 名前:07 ファミリー・アフェア 投稿日:2003年03月10日(月)01時48分14秒
- 「やぐちぃー!」
突然、大声とともに入り口のドアが乱暴に開けられた。
両手を広げて室内をぱっと見回した中澤さんが、そのままずんずん入って来た。
「もう!やめろよバカ裕子!」
矢口さんは中澤さんに抱きしめられて、じたばたもがいている。
保田さんが私を見たまま、ニヤリと笑って親指を立てる。
声は聞こえないけれど唇のカタチはたしかに、グッドラック、そう言っていた。
それから保田さんは立ち上がると、石川さんのほうに歩いて行った。
「あの、えーっとですねえ、じゃあ・・・」
私はそうつぶやきながら、ゆっくりと吉澤さんのほうに振り返った。
- 18 名前:07 ファミリー・アフェア 投稿日:2003年03月10日(月)01時48分52秒
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- 19 名前:07 ファミリー・アフェア 投稿日:2003年03月10日(月)01時49分24秒
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- 20 名前:07 ファミリー・アフェア 投稿日:2003年03月10日(月)01時50分04秒
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