15 笑王

1 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/12/28(水) 20:27
15 笑王
2 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/12/28(水) 20:28
人はみな、「自分」という国の王である。
鈴木香音も、「すーずき王国」という国の王である。

王たるもの、国民に施しを与えなければならぬ。
だがしかし、鈴木はまだお小遣いを貰っている身であるので、
国民に分け与えられるものは限られている。

最も低コストで、みなを喜ばせ、ついでに自分も楽しめるような施し。
鈴木にとって「笑顔」がそれであった。
3 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/12/28(水) 20:29
ところで、王はいま渋谷のど真ん中で鞘師里保に

「また話聞いとらんのじゃろ!」

とのツッコミを受けたところだ。

自分を放って譜久村聖と一緒に遊んだことをネチネチ言われたので、
こちらから頼み込んでおデートさせていただいていた。王なのに。


全ては国民の笑顔のため。


だが、笑顔を与えるのが仕事とはいえ、疲れてしまって
どうしてもスイッチが切れてしまう。
そこを指摘されたのだった。
4 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/12/28(水) 20:30
「あ、ごめん何だって?」
「何考えてんの」
「いや別に何も。で、でー、何だって?」

何も考えていないと言ったのが不満だったのか、
鞘師は、もういい、と口を尖らせて黙ってしまった。
考えていなかったのは本当なのだ。
常に人を笑わせるために頭を働かせているのだから。
だから、表情が無くなった位で腹を立てないで欲しい。

「そんなこと言うなって、何言ってたのか教えてよ」
「……うっせ」
5 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/12/28(水) 20:31
せっかく気を遣ったのに、更に機嫌を損ねるとは何事か。

しかし王は動じない。
自分も神に憧れるただの人間だ。
時にはしくじることもあり、ちょっぴり悲しい時もある。

「なんだよぉ里保ちゃん意地悪しないでよ」
「……聞いてないのが悪いんじゃん」
「ごめんごめん、実は神に呼ばれてたからアタシ」

あーそうですかと冷たくあしらいながら、鞘師がある一点を指さした。
思わずその指先の示す方向を見やる。
6 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/12/28(水) 20:32
「……ケバブの店」
「おお! 行こう!」

鈴木は自分のための笑顔を弾けさせた。
王にも施しは必要だ。
食べ物がなければ、こちらから与える元気も出ない。

「ありがとう見つけてくれて!」

王は側近鞘師に謝辞を述べながら強く彼女の腕を引き、
人ごみの中を駆け出した。
7 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/12/28(水) 20:33
おわり

ログ一覧へ


Converted by dat2html.pl v0.2