05 新しい門出を迎える君に
- 1 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/09/04(日) 20:37
- 05 新しい門出を迎える君に
- 2 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/09/04(日) 20:38
- ロマンスは我侭で疲れやすいから
- 3 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/09/04(日) 20:42
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夏、というには少しばかり盛りが過ぎていて。
遥か遠くの太陽の日差しは暑過ぎず、ちょうどよかった。
舟を漕ぎ出した最初のひと掻きは緊張したけれど、一旦舟が波と風に乗ってしまえば、
あとは陸を離れるためにオールを手繰るだけだった。
少女の乗る舟は、ゆっくりと、本当にゆっくりと陸から離れてゆく。
- 4 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/09/04(日) 20:48
- 急な話だと自分でも思ってはいた。
けれど、それを先延ばしにするにはあまりにも大きくなりすぎていた。
本当の自分って、なんなんだろう。
心にできた小さな綻びが、気がついたときには大きな穴に。
無視して穴を塞げばいい。
そう割り切るには少女はあまりにも幼かった。
風がさらりと、少女の髪をなでる。
穏やかな波、静かな海。
空を見上げればカモメだろうか、鳥が4羽、仲良く青いキャンパスを渡っていた。
- 5 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/09/04(日) 20:51
- どうしても思い出してしまう。
背にした、陸地のことを。
忘れたくても忘れられない、三人の少女の事を。
ふいに涙がこみ上げてくる。
少女が自らの意志を突き通すこと、それはすなわち彼女たちとの別れを意味していた。
潮風が涙を拭い去ればいいと思った。
波しぶきが、涙を薄まらせればいいと思った。
でもそれはまったくの他力本願なわけで。
- 6 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/09/04(日) 20:54
- 本当の自分って、どこにいるんだろう。
そう思えば思うほど、自分がここにいていい存在なのかどうか、わからなくなった。
本当の自分にバカやろうなんて言えるほど親しくないし、ましてやどこにもいない
からその身代わりを何か別のものに求めようとも思わなかった。
本当の自分なんていないなんて大人のように割り切ることもできなかった。
だから彼女は、陸を離れることにしたのだ。
- 7 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/09/04(日) 20:58
- けれど本当の自分探しは片道切符。
二度と陸には戻れない。
それくらいは、少女にもわかっていた。普通の女の子に戻りたい、その言葉が
どれだけの重みを持っているのか。
言葉の重みは、水を掻くオールの重みに成り代わり、彼女の腕に負荷を与えた。
楽しかった、陸地での日々。
けれど、振り返れない。振り返っては、いけない。
笑って最後を迎えたかったけれど、やっぱり、泣いてしまった。
だから涙は、その時で最後。
- 8 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/09/04(日) 21:11
- 明るく、元気に、マイペース。
その信条は、崩したくなかった。
だからオールを自分で、漕いでゆく。
誰かの流れに身を任せるのではなく、自分の力で前に進みたいから。
一度漕ぎ出した舟は、還ることはない。
それでもいいと、少女は思った。
自分が決めた、道だから。
- 9 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/09/04(日) 21:12
- 漕ぎ出した舟はもう
- 10 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/09/04(日) 21:12
- 還る事もなく
- 11 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/09/04(日) 21:12
- そして次の朝を待つ
- 12 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/09/04(日) 21:13
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- 13 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/09/04(日) 21:13
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- 14 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/09/04(日) 21:13
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