13 HAGEROU
- 1 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/12/15(水) 09:38
- 13 HAGEROU
- 2 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/12/15(水) 09:43
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都内某所。
発売すらされていないにも関わらず、予約だけで著書が43万部を超える大ヒット。
「前所属事務所と僕らの関係はあくまで良好です」でおなじみの斉藤智(仮名)は
既に次の戦略を立て、実行しようとしていた。
「そうだ、次は映画化しよう。オーディションだ」
- 3 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/12/16(木) 00:28
- 驚異のイケメン作者が書いた、ベストセラーの映画化。
であるからして、多くの出演希望者が斉藤の事務所へ駆け込んだ。
かつて国民的アイドルを擁したあの事務所のタレントたちもまた、例外では
なかった。
午前三時。
冬の寒さが肌を刺す頃。
紅白にソロで出演したのも遠い昔の思い出、藤本美貴は身を震わせながら、
長蛇の列に加わっていた。
寒い。寒すぎる。
いくら北海道の強烈な寒気に慣れているとはいえ、この寒さは並大抵のもの
ではない。いや、寒いのは気温だけではない。心が寒いのだ。
すっかり落ちぶれてしまった美貴には、今回開かれるというオーディション
はまさに蜘蛛の糸のような好機であった。ただ、そんなものに縋らなければ
生きていけない現状に、心がぶるぶると震えたのだった。
- 4 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/12/19(日) 00:26
- 美貴は寒さを紛らわすために、もう一度御大の著書を読んでみた。
えっ、これがコッポラ何とか大賞? 大賞が安いの? それとも
あふぉにはわからない話なの?
そう自分に問いかけてはみたものの、答えは出なかった。
鬱のおっさんが臓器売買のドナーになり、そこでかけがえのない
女性と出会うという、どう見ても陳腐な内容だったがそんなこと
はどうでもいい。
美貴はかけがえのない女性になるんだ。
もう既に庄司のかけがえのない女性ではあるのだが、それはそれ
これはこれ。
既に「三日月」をそらで歌えるくらいには、なっていた。
- 5 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/12/19(日) 00:33
- それにしても、長い。
待たされている時間もさることながら、その行列の長さには辟易
してしまう。お前らどんだけおこぼれに預かりたいんだよ、この
乞食どもが。
美貴は自らのことを棚に上げ、列を作るオーディション参加者の
群集を罵った。
ふと目の前を見ると、小汚い中年男が、美貴と同じように著書を
読みながら小刻みに寒さに震えていた。頭に残ったわずかな頭髪
が、風にそよいでぴろぴろと揺れている。
そこで美貴は初めて自分の相手役が、41歳の中年男の役柄だと
いうことを思い出した。
うわ、信じられない。
41歳と言えば著書ではないが、バカボンのパパの年齢だ。一方
美貴は花も恥らう20代。後半だけどやっぱり20代。
どうしよう、キスシーンとかあったら。歯槽膿漏ビーム直撃じゃん。
それともポリデントの匂いだろうか。とっさに「触んなよおるぁ!」
と言ってしまうかもしれない。
- 6 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/12/19(日) 00:39
- 時間は刻々と過ぎてゆく。
さっきまで長い、とヨモギダ君にかつて言い放ったくらいに長く
感じられた時間も、急速に短く感じられていた。
それもそのはず、目の前の男と濡れ場を演じなければならない可
能性がある以上、それこそ美貴自身も役になりきって目の前の男
を愛さなければならないのだから。
それこそ、昨日までえりりんきゃわわとか言っているヲタを明日
からフレッシュレモンになりたいのーと言わせなければならない
くらい、難しい。昨今ではさほど難しくないかもしれないが。
とにかく、身も心も禿中年の嫁にならなければならない。
美貴の女優魂に、火がついた。
とは言っても彼女の女優歴など、誰が見ても似合わないヅラをつけ
た時代劇の時のものくらいしかないわけだが。
- 7 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/12/19(日) 00:44
- まずは、単純に美貴は前の中年とそのままハングリーアングリー
する想像をしてみた。
無理だった。
中年に胸をもまれ「やっぱり小さいんだね」と耳元でささやかれ
た瞬間に、男の顔にアイアンクローが炸裂していた。やっぱり美
貴は庄司以外の男に体を許すことができなかった。
そこでアプローチを変えて、中年ハゲオヤジを庄司だと思って
絡みを想像してみた。だが、そのたるんだぶよぶよの体が庄司の
ギリシャ彫刻のような体とまったく一致しない。
やはりこれも無理だった。
- 8 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/12/19(日) 00:52
- 列の終わりは刻一刻と迫ってきている。
あのゲートを過ぎてしまったら、もう後には引き返せない。
それまでに何としても中年木っ端ハゲに抱かれる覚悟を作ってお
かなければ。
しかし焦れば焦るほど、時間は早く進んでゆく。
まるで美貴の転落人生をあざ笑うかのように。時間とかけて、ちん
ちんと解く。その心は、はらはらするごとに長くなる。整い前田ー、
とある意味現実逃避しようとしたその時だった。
「えりりん……」
男が突然、そう呟いたのだった。
てめえ、上等じゃねーか。この美貴様を差し置いて、あんなラー
メンマンの名前を呼ぶなんて。その頭を毟り取ってヒャークマーミ
ピートゥーパーにしてやる。美貴は本気だった。
- 9 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/12/19(日) 00:56
- しかし、今にも男の頭に襲い掛かろうとした美貴の脳裏に浮かんだ
のも、亀井絵里の顔だった。
亀ちゃん。美貴が戯れにパンツを食い込ませても、グェヘヘヘ…っ
て笑ってたっけ。亀ちゃんはすごいなあ。
そう。
美貴に足りないもの。それは胸の大きさと髪の毛と、心の器の大き
さだった。大女優はそこに立っているだけで存在感をあらわすとい
う。自然であること、あるがままであることこそ、彼女にとっても
っとも欠けていることだったのだ。
列は建物の入り口に差し掛かっていた。
入り口に審査員がいるなんて珍しい。もしかしたら、そこで第一次
審査が行われていて、不合格者はそこで返されるのかもしれない。
- 10 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/12/19(日) 01:03
- 気がつけば美貴の出番。
さっきの中年男はすでに建物の中に入ろうとしているところだった。
合格したのか。確かに41歳の冴えないおっさんという役柄にはぴ
ったりの人物だったかもしれない。
でも、美貴だって負けられない。
美貴は突然、歌いだす。ろーまぁんてぃっく、こ・い・の花咲く浮
かれも・ぉ・どぉー。美貴の魅力を審査員に見せ付けるにはこれし
かないような気がした。
「……せて」
「はぁ?」
「見せて」
見せてって、何を?
まさか……中年男と裸組体操する前にまず俺とやれってこと?
- 11 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/12/19(日) 01:08
- しかし審査員らしき男は「見せて」と繰り返す。
「だから美貴の何を見たいんだよお前は! ソロとしての実力か
えぐれた胸か庄司専用のおまんまんか、はっきりしろよ!!!」
しかし審査員は美貴のことを頭のおかしい女でも見るかのような
目つきでこう言うのだった。
「荷物、見せて」
きょとんとしてしまう美貴。
周りを見渡せば、同じようにリュックやらかばんの中身を見せて
ゲートを通過する行列。美貴は思わず建物の外壁を見た。
YOKOHAMA ARENA
はるか向こうの建物にも行列。オーディション会場は向こうのほう
で、美貴はいつの間にモー娘。卒コンの行列に並んでいたのだった。
- 12 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/12/19(日) 01:09
-
悔しいので、美貴は荷物を見せる代わりに、その場でしゃがみこ
んでうんこをした。行列と同じくらいの、長い一本糞だった。す
っきりした。
- 13 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/12/19(日) 01:10
- U
- 14 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/12/19(日) 01:10
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- 15 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/12/19(日) 01:10
- U
- 16 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/12/19(日) 01:10
- U
- 17 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/12/19(日) 01:10
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- 18 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/12/19(日) 01:10
- CO
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