05 十年桜
- 1 名前:- 投稿日:2010/12/09(木) 18:56
- 05 十年桜
- 2 名前:- 投稿日:2010/12/09(木) 18:56
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一秒で出来る事。
中澤さんを視界に収める事。
二秒で出来る事。
「中澤さん」
その名を呼ぶ事。
三秒で出来る事。
中澤さんを抱きしめる事。
わたしの腕の中、中澤さんが抵抗を諦めるまでは四秒。
五秒で出来る事。
「会いたかったです」
「…私も」
会いたかったのはわたしだけじゃないと知る事。
痩せた中澤さんは、少しだけ頼りなくなった気がする。
「むらっちゃんは相変わらずやなぁ」
「何がですか」
「べつに」
ふふ、と楽しそうな笑い声がして、まあいっかと思ってしまう。
中澤さんに甘いのなら相変わらずです。
ずっとわたし達を好きでいてくれて、ずっと応援してくれていて、結局一度も追い付くことは出来なかった背中。
こんな風にてのひらを置く日がくるなんて、出逢った頃には想像もしなかった。
「考え事?」
咎めるような口調じゃなかったから、首を振ろうとしてやめる。
「――中澤さんの事を」
「ここにおるのに」
五感も脳内も中澤さんで一杯にしてたんです。
あ、これ言ったらさすがに引かれちゃうかな。
「そう、ですよね」
「―――なあ」
「はい」
「三十んなった時に私より好きになれる人いてなかったら、もう私にしとき?」
「え、と」
「幸せにしてあげるとは言い切れんけど。
少なくとも私は、あんたとおれたら幸せでいれる。
今日までずっと、幸せやったし」
「…いいのでしょうか」
「駄目なん?」
「駄目じゃない、です」
恋の噂を聞く度、中澤さんはわたしから離れて行っちゃうんだろうなって思っていた。
誰かと恋をして結婚して子供を産んでって。
だけど、そうじゃなかった。
この十年で分かった事。中澤さんを好きだった十年は、中澤さんに愛された十年だった事。
おしまい
- 3 名前:- 投稿日:2010/12/09(木) 18:59
- 十
- 4 名前:- 投稿日:2010/12/09(木) 19:00
- 年
- 5 名前:- 投稿日:2010/12/09(木) 19:00
- 桜
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