18 河童の川流れは
- 1 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/29(日) 16:36
- 18 河童の川流れは、楽しそうに泳いでいる様ではありません
- 2 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/29(日) 16:40
- いじめ
ただ、順番が回ってきた。私にはそうとしか思えなかった。
それまで当たり前のように声をかけてきた友達たちが、声をかけなくなった。私が孤立するまでに一週間はかからなかった。それ
が単に凄惨化するイジメの入口だったことに気づくのは、もっとずっと後のことだった。
授業中に足を蹴られる、シャーペンの先で背中を刺される、ごみを投げつけられる。誰かの指示だったのだろう、最初は恐る恐る
やっていた子たちも、私が何一つ抵抗しないと見るや加速的にその手段をエスカレートさせていった。
集団心理は時に巨大な一つの生き物になる。そんなものに立ち向かおうとすること自体、愚かしいことだった。立ち向かう為のあ
らゆる手段は彼らを刺激し、喜ばせ、より一層状況は悪くなる。私の教科書の全てのページに「死ね」の文字が刻印される頃には、
何もかも諦めていた。数学Uの教科書が164ページ、164回も死ねと書いた人間の忍耐強さと有意義な時間の使い方を私は認
めざるを得なかった。
ある時などは後ろの席から髪の毛を炙られた。亀の甲羅焼き、そんな言葉がどこからか聞こえてきた。焦げた後ろ髪の毛先を揃え
ようと、席を立った。すぐに足をかけられ、転ばされる。転んだ先にはご丁寧に犬の糞が置いてあった。顔に広がる糞特有の据え
た臭い。どうせトイレにいくのだ、ついでに顔を洗えばいい。
無関心を通せば通すほど、イジメの指示を出したクラスメイトは苛立っていた。苛立ちの先はどこへいくのだろう。
- 3 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/29(日) 16:43
- 辱め
イジメの質が変わった、私にそう思わせるような出来事があった。
廊下を歩いているところへ、数人の女子が取り囲んだ。またか、そう思った私の顔に、女子の一人の平手が走る。
鼻の先が熱い。どうやら鼻血が出ているようだった。
それを合図に、複数の手が私の制服を掴みにかかる。亀井、お前生意気なんだよ。そう言いながら大柄な女子が
私の襟元に両手をかけ、そして力任せに制服を切り裂いた。周囲から甲高い笑い声が聞こえてくる。
突然の衝撃に思わず蹲る私を、二人の女子が無理やり立たせる。スカートをたくし上げ、上のほうで結ばれる。
私の視界は無になった。棒のようなもので、体のあちこちを叩かれた。体の痛みに気をとられている隙に、下着
を脱がされた。うわ、きったねえ。マンカスべっとりじゃねえかよ。きもい、死ね。眩暈がしそうだった。倒れ
こんだ私を、彼女たちが次々に足蹴にする。頭の中が真っ白だった。無関心を突き通した私への制裁なのかもし
れない。周りの声と体中の痛みが治まった頃に、私はスカートの巾着を解き、泣いた。
- 4 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/29(日) 16:44
- レイプ
私への攻撃は、クラスメイトの間でモンハン、と呼ばれているらしかった。休み時間中に今日モンハンやる?がイ
ジメの合図だった。捕まり、抵抗できなくさせられ、剥ぎ取られる。ゲーム感覚と言うには、あまりにもリアルで、
取り返しがつかなかった。私も、彼女たちも、全員が麻痺していた。
何度目かのモンハンの後、私はレイプされた。下着を剥ぎ取られた後に、別の男子グループに襲われたのだ。野太
い男たちの声に、今までなかった不安が押し寄せ、そして現実のものとなった。数人に圧し掛かられ身動きが取れ
なくなったところに、男子の一人が顔を股間に埋めてきた。その後に、今まで味わったことのない痛みが同じ場所
を襲う。ちくしょう、亀井のくせに気持ちいいじゃん。マジかよ、俺にもやらせろよ。代わる代わる私は男たちに
犯されていった。そこで意識がぷっつりと切れた。
気がついた時には、全てが終わった後だった。股間から流れ出ていたものはすっかり乾いて、張り付いていた。私
はもう笑うことしかできなかった。横隔膜を震わせ、ひたすらに笑った。笑い声が掠れてきた頃に、とこからか女
子が駆けつけてきて、私の腹を蹴った。うるさいんだよ、馬鹿。笑い声の代わりに、吐瀉物が出た。出したものの
飛沫が蹴った靴にかかり、ふざけんなよと言いながらまた私を蹴った。
- 5 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/29(日) 16:45
- 性病
その医者は顔色一つ変えずに言った。クラミジアですな。言葉には、大きく侮蔑が含まれていた。私のせいじゃな
いのに、そんなことを言えば更に嘲笑されるだけだ。私はただ、押し黙っていた。それがさらに医者を喜ばせた。
クラスメイトと一緒だな、そう思った。
男たちにレイプされてから、自らの異常に気づいたのは一週間たってからのことだった。焼けるように中が痒い。
インターネットで遠くの婦人科を探し、受診した。看護師はいたが、すぐに医者に人払いされた。医者は私の顔
をじろじろと見ながら、こんなにかわいいのにやることはやってるんだね、と呟いた。性病に顔が関係するのだ
ろうか。私は表情で抗議してみせたが医者には少しも伝わらなかった。
さあ、ここに座って。ドラマでよく見るような、中央に仕切りのあるベッドだった。言われるままに私は下半身
裸になり、仕切りの間に体を通した。仕切りの向こうには何も見えない。医者が私の両足を開き、陰部に顔を近
づける。ああ、これはひどいな。そう言いながら執拗に、太い指を中へと這わせてゆく。生ぬるい息がかかり、
それが不快でしょうがなかった。
- 6 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/29(日) 16:47
- 妊娠
それから数週間後、私の妊娠が発覚する。性病の完治と懐妊のお知らせがほぼ同時だった。こんなに喜ばしいこ
とはない、医者は手放しで喜んだ。学校はとっくの昔に休学していた。それでも私へのイジメは終わらなかった。
郵便ポストに蛙の死体が突っ込まれ、玄関には複数の野糞が放置されていた。昼夜を問わず窓ガラスに向かって
投石があり、それは度々ガラスを破壊した。最初のうちはガラスを貼りなおしていたが、一向に止まない投石に、
ついには障子紙で穴を塞ぐようになった。
ある日、すっかり汚物入れと化した家のポストに封筒が入れられていた。中を開けようとした私の指が、赤く染
まる。中に剃刀が仕込まれていた。封筒にはクラスの集合写真が入っていて、汚い字で「妊娠おめでとう クラ
ス一同」と書かれていた。私の顔は、煙草か何かで穴が空けられ、茶色く焦げていた。
- 7 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/29(日) 16:48
- 中絶
自分のおなかの中に新しい命を宿したと知った時から、結果は決まっていた。
性病の治療と妊娠の検査と堕胎手術。この病院は私という存在で三回も儲けたんだ。そのお金が医者の乗るベン
ツのガソリン代になって、医者の接待費になって、医者の愛人のお小遣いになる。そんな思いが、私の膣内で金
属の器具が暴れている最中、頭を過ぎった。
これが、あなたの赤ちゃんだったはずのものですよ。医者がご丁寧にも掻き出したあとのそれを見せてくれる。
安易な堕胎を戒める為のサービスだと言う。銀色の四角い皿の上に、ユッケに似た肉片が乗せられていた。こん
にちは亀井何某、そしてさようなら亀井何某。そう言ってから名前は男親のものになるのだから、亀井ではない
ことに気がついた。でも思い当たる親候補が両手で数える以上にいたので、何という名前で呼べばいいのかわか
らなかった。そんなことを考えている間に、かつて亀井何某だったそれは看護師の手によって病室の隅にあった
ゴミ箱へと捨てられていた。
- 8 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/29(日) 16:49
- 薬
病院を退院して間もなく、私の目の前に捨てられたはずの亀井何某が現れるようになった。いや、亀井何某では
ないか。岡崎何某かはたまた別の何某か。名前なんてどうでもいい。とにかくその何某が昼夜を問わず姿を見せ
るようになったのだ。教室で背中をコンパスの針で刺されている時、廊下でドロップキックを食らわされてる時、
放課後、ラグビー部の部室で汗臭い男どもに犯されている時。その何某はユッケの姿のままでふわふわと浮いて
いた。目玉だけが、ぎょろっと私のことを、睨めつけていた。
私には、それが何よりも恐ろしかった。毎日のように私を襲う悲惨な出来事よりも、強く。この世で理解される
ものより、理解されないもののほうがより恐ろしい。私はそのユッケから逃げたくて、ついに薬に手を出した。
飲むと幸せになれる薬、そう路上のイラン人に教えられた。確かに飲むと幸せな気分になれた。ユッケの何某も
どこかへ消えていった。クラスメイトに袋叩きにされている時ですら、グェヘヘヘという笑い声が洩れてきた。
クラスメイトは余計に気持ち悪がって私を殴る時に力を込めた。それで、一向に構わなかった。
- 9 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/29(日) 16:51
- 数度めの妊娠で監禁されての強要出産
最初にイラン人にもらった薬がだんだんと効かなくなっていって、効き目が薄れるたびに強い薬に手を出した。
そのうち経口よりも注射のほうがより効き目があると知った私は、注射器と薬を常備するようになった。ただ
薬と言っても安くはない。私は薬代を稼ぐ為に、ありとあらゆる手段を実行した。留守がちな親の財布から一
万円札を抜き取ることからはじまったが、そんなものはあっと言う間に尽きていった。程なくして援助交際の
道に私は走ることになる。
高校生で5万、それが今の市場の相場だった。多少のリスクはあったけれど、私は個人営業をとる事にした。
これ以上、誰かに搾取されたくない。そんな思いからだった。
18歳以下であることが、若い肉体を求める中年親父には何よりの魅力だったらしい。私の貧相な財布はあ
っという間に膨れていった。手に入れたお金は全て薬代に消えていった。
中年親父どもは皆優しかったが、避妊はしてくれなかった。容赦なく私の膣内に注ぎ込まれる疚しい液体。
私が再び妊娠するのに時間はかからなかった。亀井何某が生まれ、そしてまた亀井何某が消えていった。そ
れでもよかった。生きているという実感さえ感じることができた。生きているからこそ、妊娠し、堕胎する
ことができるのだから。
幸せな時間は、突如として終わりを告げる。懇意にしていた顧客の一人が激怒し、私をとある倉庫に監禁し
たのだ。顧客一人ひとりに、愛する人はあなただけと囁いていたのがよくなかったのかもしれない。ともか
く、私は全ての自由を奪われた。
運の悪いことに、私は何人目かの亀井何某を宿していた。何の処置を施されることもなく、私は自らの子を
強制出産させられた。
- 10 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/29(日) 16:52
- 乳飲み子を頭から噛み砕く
倉庫での生活は、凄惨と呼ぶに相応しかった。
生命がぎりぎり繋がるような食事量しか与えられず、私と私の子供は見る見るうちにやせ細っていった。私の
子供は私の乳から出る液体によって何とか飢えを凌ぐことができたけれど、私自身はとっくの昔に限界を超え
ていた。
焼肉が食べたい。心の底から渇望した。毎日、毎日。けれどその夢が叶うことはなかった。乳房からの乳の出
が悪くなり、赤子は力いっぱい乳首に吸い付き、からからに乾いていることを知るとひどく泣いた。
そんな日々が、終わることなく繰り返されてゆく。何をどうしたらこのループは終わりを告げるのだろう。誰
かに聞きたかったけれど、倉庫には私と赤子以外の誰もいなかった。仕方が無いので赤子にどうすればいいと
訪ねると、あうあうあという人間とも動物ともつかない泣き声を上げるのみだった。そうか動物か。動物なら、
私が食べても何の問題もない。まだ自由を謳歌していた頃、屠殺された牛から作られたハンバーガーや、絞殺
された鶏から作られたフライドチキンを喜んで食べていたのだから。
そう思った時には既に、私の乳に必死に吸いついていた乳飲み子を頭から噛み砕いていた。
- 11 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/29(日) 16:53
- 懺悔
私を監禁した時と同じように突然に、男は私を解放した。
新しい愛人ができたのだという。名前は田中れいなと言った。私よりも全然可愛くはなかったが、私よりひと
つ年下だった。たった1年が嗜好家にとっては重要なことらしい。あんたはもうおばさんやけんね。その子が
言った一言が忘れられない。
私を待ち受けていたのは現実だった。私のかつての家は取り壊され、更地になっていた。学校は既に退学処分
になっていた。もちろん、なっていなくてもあそこに戻るつもりはこれっぽっちもなかったけれど。私は更地
になった家の前で校歌を大声で歌った。逃した魚は大きいぞ、の部分で声が詰まり、嗚咽した。私の帰らぬ日
々は戻ってこない。
町外れの教会で、毎日のように懺悔した。それは私の仮の宿も兼ねていた。その教会は数年前に神父が婦女暴
行を起こし、主のいない状態になっていたのだった。
自分が身に受けてきたこと、自分のしてきたこと。その全てに、懺悔を捧げる。懺悔を捧げたところで、何の
意味もなかった。してしまったことは元には戻らないし、元に戻ったとしてもそれが本当に元に戻っているの
かどうかわからない。それでも、私は懺悔を続けた。
- 12 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/29(日) 16:54
- 宗教
私の住んでいた場所はもともと教会だったので、忘れた頃に人が尋ねてくることがあった。
彼らは、彼女たちは、多くの悩みを抱えていた。中には私をかつて悲惨な境遇に合わせたものもいた。私は、
迷えるものたちと話をした。彼らの抱えていることは、全て私にとっては些細なことでしかなかった。経験
に基づいて、彼らに指針を与えた。他愛もないことだったけれど、それが迷える心に道を示したらしい。そ
れぞれが、喜んで帰っていった。幸い、私のことを覚えているものはいなかった。幾多の困難が、私の容貌
を変えてしまったようだった。
私を頼りに協会を訪れるものが、日に日に増えてゆく。私の下の名前を知ると、人々はエリ様、エリ様と呼
んで涙を流した。彼らにとって、私の言葉だけが正しく、私の存在自体が真実だった。別にそう望んだわけ
ではない。いつの間にかそういう扱いになっていただけだった。そのことに対して無関心を通せば通すほど、
人々は熱狂し、私を祭り上げた。
結局何も変わらない。何も、変えられないんだ。
私はずっと、流されているだけだった。
- 13 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/29(日) 16:55
- 自傷、自殺未遂、病院送り
- 14 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/29(日) 16:55
- 狂人との共同生活
- 15 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/29(日) 16:55
- そこでもいじめ、辱め、レイプ・・・。
ログ一覧へ
Converted by dat2html.pl v0.2