15 最後の幻想V 〜そして蜜柑色へ
- 1 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/24(火) 17:45
- 15 最後の幻想V 〜そして蜜柑色へ
- 2 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/24(火) 17:46
- レイナが目を覚ますと当然のように朝だった。
ちなみに寝たのも朝だ。この世界には夜は来ないのだ。
横には誰も居ない。
なんとなく不機嫌な気分でテントから抜け出ると太陽が眩しかった。
いい天気だ。今日も冒険日和だ。
伸びをすると自然とあくびが出た。寝すぎた。
なにせ3日連続で仕事もしないで寝ていたのだから。
テントではあまり体力が回復しない。
宿屋に泊まる金はあったが、パーティメンバーに断られた。
レイナと一緒の部屋には寝たくない、という理由からだった。
- 3 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/24(火) 17:46
- 横のテントの中ではまだ、エリとサユが寝ていた。
本来4人パーティで寝られるテントなのだ。
それなのにやっぱりレイナとは一緒に寝たくないという理由で
仕方なく一晩で2張りのテントを使っている。完全に無駄使い。
育まれない友情。回復しない体力。絶望的なありさま。
とりあえずレイナはいつものように、精霊を呼び出した。
レイナの話を聞いてくれるのは精霊だけ。
はたからみると独り言を呟いてる怪しい人にしか見えなかった。
- 4 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/24(火) 17:47
- 「おはようれいな。また一人遊び?」
「あはは、きもーい」
朝からサユとエリの心無い一言。
本当はレイナも二人と話したかった。けど二人はレイナには少しの
興味も持っていなかった。
ただルイーダの酒場で紹介されたから連れて来ただけだと言う。
それでもレイナは二人についていった。友達がいないから。
「そういえば」
エリが思い出したようにレイナの顔を見つめる。はじめてのことだった。
レイナは誰にも知られないように胸をときめかせた。
「次の町についたら、レイナとはお別れね。新しい子とパーティ組むから」
「レイナはもういらない子なの」
「え、いらない子……」
- 5 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/24(火) 17:47
- 「いらない子って?」
サユの言う意味がよく分からず、重ねて尋ねる。サユは懐からおとなしく
座っているチワワの写真を見せると、
「すっごく可愛くて欲しくなっちゃったから、ペットショップで予約しちゃった」
「え」
レイナは自分がチワワ以下の存在だとは認めたくなかった。
「エサ代も今よりかからないし、レイナと違ってかわいいの」
「レイナなんてどこに目つけてるかわからないしヤンキー装備しかできないし
こっちの子のほうがいいよね」
無理だった。目の前の現実にレイナは口を閉ざさざるを得ない。
楽しそうに先をゆく二人に、レイナは足取りも重く着いていった。
- 6 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/24(火) 17:48
- ◆
「きゃあああ!」
楽しそうな鼻歌が悲鳴に変わる。敵だ。サユが不意打ちを受けたようだ。
音程の合わない歌が魔物を呼んだのかもしれない。
声を聞いてレイナも戦闘態勢に入る。
相手はミミック。人食い箱と呼ばれるものだ。
サユはその身体の半分をミミックに食べられそうになっていた。エリがサユを
助けようと攻撃を加えるが、開放する様子はない。
- 7 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/24(火) 17:50
- ここでもしレイナがサユを助けたら。
二人はレイナのことを見直してくれるかもしれない。別れる必要もなくなるかも。
レイナは渾身の力を込めてミミックに一撃を加えた。
かいしんのいちげき、と画面に表示される。画面って何だ。
ミミックは火で炙った貝のように、口を大きく広げて動かなくなった。
「サユ!」
「エリ!」
二人は無事を確かめ抱き合った。その輪の中にレイナはいない。またこのパターンか。
レイナが諦めかけたその時だった。
「レイナ、ありがとう」
「レイナがいなかったら、エリたち死んでたかも」
耳を疑った。頬をつねってみた。夢ではないようだ。
- 8 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/24(火) 17:51
- 「感謝なんていらない。レイナは二人が生きてさえいれば」
突然、レイナの頭上が暗くなる。力尽きたミミックの蓋が完全に閉じた。巻き込まれた
レイナは箱の中。
「ちょっと、なにこれ、空かない」
目を離した隙に、レイナが箱の中でもごもご言っている。サユとエリにはそう見えた。
「ねえちょっと手伝」
レイナがそう言った後、楽しげな声が遠ざかっていくのが聞こえた。
「あいつら……」
「はやく町にいこ」
「チワワ楽しみなの」
逡巡もしていないようだった。レイナは目を閉じ、現実逃避する。
- 9 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/24(火) 17:52
- 瞼の上にはなぜか、夕暮れの風景が浮かんでいた。
蜜柑色の夕暮れは、とてもキレイだった。
- 10 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/24(火) 18:08
- 蜜柑色の夕暮れは
- 11 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/24(火) 18:08
- いつ見ても物哀しく
- 12 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/24(火) 18:08
- わたしを誘っているように
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