12 どくたぁ はぅす

1 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/23(月) 19:16
12 どくたぁ はぅす
2 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/23(月) 19:17
太陽が眩しい。岡井は多くの生徒と共に高跳びをしていた。
自分の順番を待つ間、岡井は同級生の鈴木と世間話をした。
しばらくして岡井の番になった。

「おい岡井。よそ見して飛ぶなよ」
「はーい先生。とぅっ。あ、あぐぅ」

岡井は飛びすぎてマットから外れた場所に落ちた。
左足に今まで感じた事のない激痛が走る。

「いたたたた」
「大丈夫か岡井。おい、お前ら準備室の担架持って来い」

たまたま授業の無かった数学の先生の菊川の車で
岡井は近くの病院にむかった。
3 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/23(月) 19:17
「吉澤先生、つぎの患者さんです。あ、またベーグル」

看護婦の石川に呼ばれた吉澤は軽く手を振った。
わかった。という合図だ。

「んん。口の中がいっぱいで喋れないからね石川君」
「喋れるなら早く来てください」

診療室に入ると患者はもう座って待っていた。
ジャージにTシャツのラフな格好だ。

「岡井君だね」
「はい」
「今日はどうしたんだい?」
4 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/23(月) 19:18
見た感じ顔色は悪くはない。悪くはないが浅黒い顔をしていた。
吉澤先生を見てキレイな顔だなと岡井は思った。顔を直視できない。
照れ隠しで岡井はじっと吉澤の右手を見た。

「食べるかい?」
「いいんですか?」

満面の笑みで吉澤のベーグルに手を伸ばす。
はぐはぐ。ふたりがベーグルを食べている間、
石川は岡井に書いてもらった問診票に目を通した。
中学1年生。近くの中学の生徒のようだ。
待っている間、暇だったのか所々に落書きがしてあった。
まるで小学生の男子のようだと思った。
5 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/23(月) 19:18
「ぱくぱく。美味しいです」
「むしゃむしゃ。岡井君もっと食べていいんだよ」
「じゃあもうひとついただきます」
「はははもっと食べなさい。育ちざかりだからね。もぐもぐ」

しびれを切らせた石川が吉澤の顔の前に問診票を突き出す。

「ふむふむ。左足首の捻挫。それと…胸の痛み?」

吉澤は岡井が捻挫している事は見ただけでわかっていた。
なぜならその足には包帯が巻かれていたからだ。

「学校で怪我してすぐ近くの病院に行ったそうなんですけど。
 まだ胸部に痛みが残ってるそうです」
「そうか…どんな感じで痛むんだい?」
「あの…ちょっとよくわからない感じで痛くて」
6 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/23(月) 19:19
高跳びでの着地失敗で捻挫するのは珍しい事ではない。
バーでどこかを打つことも珍しい事ではないが胸か…。
胸の痛みというが外傷などによる痛みなのか臓器等の
内科的な痛み方なのか『胸の痛み』という言葉だけでは判断できない。
もしかすると心的なものかも知れないのだ。
「先生、レントゲンの準備をしましょうか」
「いやまだいい。岡井君は恋をした事はあるかな?胸が苦しくなるような」
「えっと…幼馴染の舞ちゃんが好きです」
「そうかわかった。触診するから脱いでくれ」

岡井の顔色がかわった。その表情は明らかに吉澤を拒んでいた。

「変な事はしないから脱ぎなさい」
「いやです」
「じゃあ脱がなくていい。ちょっと触らせてくれないか」
「もっといやです」

やれやれ。吉澤は頭を掻いた。
7 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/23(月) 19:19
「石川君ならすぐ触らせてくれるのになあ」

吉澤はそう言いながら石川の尻を撫でた。

「ああん。先生やめてください。子供が見てるんですよ」
「じゃあ、岡井君が帰ったらね」
「もう。先生のバカバカ」

結局その日はそれで診察がおわった。
8 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/23(月) 19:20


「先生、まるで野生児みたいな子でしたね」

石川は今日のカルテを整理しながら言った。
吉澤はベーグルを咥えた。ベーグル中毒なのだ。
セカンドオピニオンでこの小さな町医者を訪ねてきたに違いないが
なぜわざわざこんな設備の無いところを選んだのか?

「胸の痛み…そうか。石川君。岡井君の病名がわかったよ」
「え、なんですか?」
「成長痛だ」
「…はい?」
「まああの子は夕方になれば来るよ」
9 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/23(月) 19:20
夕方。夏なのでまだ日は高かった。

「来ると思っていたよ。どんどん食べなさい」
「むしゃむしゃ美味しいですね。」
「待ってなさい。そのベーグルに合うお茶があるんだ」

吉澤は席を立って奥の部屋に入っていった。
岡井は机に置いてある猫の人形をもの珍しそうに見ながら
ごくりごくりと喉を鳴らして食べている。

「隙あり」

不意を突いた吉澤の両手が岡井の胸を掴む。

「あっ。んっ…」
「良い感度だ。やはり君は女の子だったんだね」
10 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/23(月) 19:20
「え、岡井君が女?だってここに『男の子だよ!』って落書きが」
「いいか石川君。問診票に真実は書いていない。書いてあるのはただの文字だ」

患者は嘘をつくと決まっているのだ。
だが岡井の外見は誰がどう見ても男の子だった。

「私も最初は騙されそうになった。しかし昨日石川君の尻に触れたとき
患者の股間はぴくりとも反応しなかった。その時あやしいと思ったんだ。
男子中学生が石川君のあえぎ声を聴いて無反応で居られるはずがないからね」
「先生あえいでません。声が出ちゃっただけですから」

「岡井君。君は自分がきょにゅうになりつつあるとわかっていた。
だが自分からそれを認めたくなかった。男の子で居たかった。そうだね」

岡井はこくりと首を縦に振った。
11 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/23(月) 19:21
「おそらく軽度の性同一性障害だ。まあ思春期にありがちだがね。
きっと自分が女であると認めてしまえば幼馴染の舞ちゃんと
イチャイチャ出来なくなる。それを心配してたんだね」

岡井は顔を赤くして目をそらした。

「だが安心したまえ。女同士でも愛し合う事はできる。
 そして胸の痛みは成長時に起きる症状でじきに治る」
「そうなんですか。前の病院で怖い事言われて心配だったんです」
「だろうと思った。おそらく最初の病院の先生が男性で
 恥ずかしくて胸の成長痛の疑いを自ら言えなかったし
 医者も君が男の子と思い込んで成長痛とは考えなかったんだろう」
「え、なぜそれなのに胸が痛いってその先生に言ったの?」
「えーだって痛いところがないかって聞くんだもん。つい」
12 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/23(月) 19:21
「よし。これで解決だ。石川君。何事も初期対応が肝心だ。
 この子に合うブラジャーをプレゼントしてあげなさい」
「え、なんで?大体サイズは先生のほうが近いはずですよ」
「先生はきょにゅうだよ」
「胸にベーグルを入れるのはやめてください」
「ちっ」

一件落着した吉澤たちはお茶を入れてベーグルパーティをした。
先生この病院に来てよかったです。という岡井に吉澤は
今度は舞ちゃんを連れてきなさい。色々教えてあげるから。
と言ってニヤリと笑った。
13 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/23(月) 19:21
おわり
14 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/23(月) 19:22
 
15 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/23(月) 19:22
 

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