16 大きな愛でもてなされても正直困る
- 1 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/10/19(日) 23:37
- 16 大きな愛でもてなされても正直困る
- 2 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/10/19(日) 23:38
- その日、佐紀は学校の宿題を終わらせるために机に向かっていた。
でもどうにもやる気が起きずノートを前にして頬杖をつくと、ペンを回しながら
時間だけが無駄に過ぎていく。
夕食を食べてすぐ始めて割にはまだ半分も終わっていない。
「はぁ・・・・何か気が乗らないなぁ」
と佐紀は目の前にある白いノートを見て溜め息混じりに呟く。
ドガァァァァァァァァァン!!
ど派手な音に佐紀は思わず椅子から転がり落ちてしまった。
それから様子を窺うようにゆっくりと立ち上がると、部屋の真ん中に大きな球体の
物体があった。
例えるなら夕方7時くらいに七つの玉がサイヤ人がとか言ってそうなアニメに出てくる、小型の救命ポットみたいな感じだった。
そしてどうやらそれは家の天井を突き破ってこの部屋に墜落してきたらしい。
見上げると天井に開いた穴から夜空に輝く星が見える。
突然の出来事に頭の処理能力が追いついていない佐紀だったが、このまま無視することも
できないので救命ポットもどきに近づいた。
するとそれはプシューと音を立てて二つに割れる、そして白いスモークが勢いよく
吐き出されて部屋はあっという間に霧に包まれた。
そして霧がようやく晴れると裸の女の子がいきなり抱きついてきた。
「ようやく見つけました、モモの王子様♪」
と色の白い女の子は嬉しそうに私の頬に顔を摺り寄せながら甲高い声で言った。
男の人だったら夢の展開かもしれないが、如何せん佐紀は普通の女の子だったので
迷惑だとしか思わなかった。
佐紀は話すのに邪魔なので抱きついてきた女の子を冷静に引き剥がすと、
「あの、あなたは一体・・・・。」
と突然の訪問者に事情を聞こうと声を掛けようとしたその瞬間
- 3 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/10/19(日) 23:39
- けたたましい音がしたかと思うと部屋の窓ガラスが跡形もなく割れた。
「その人はりーのだからあげないゆ!」
何事かと思い先が声のしたほうに顔をやると、窓の外に一人の女の子が浮かんでいた。
白いドレスのようなものを身に纏い背中には鷲のような真っ白な翼が生えている。
俗に言う天使ってやつなのかなと佐紀はぼんやりとした頭で思った。
ブゥォォォォォォォォォン!!
突然喧しい音が鳴り響くと吹っ飛ばされたドアの破片がこちらに飛んできた。
「悪いけどその人はウチが貰う。」
いつの間にか部屋の中に黒いボンテージのような服に身を包み、背中には蝙蝠のような
羽が生えている女の子が立っていた。
ボンテージって胸がない人が着ると切ない気持ちになるなと、佐紀は上手く回らない頭で
女の子を見ながら思った。
「ミヤ!」
「久しぶりだね、リシャコ。100年振りくらい?まぁとにかくその人は私が貰うから」
「ヤダ!あげないもん!」
と二人の女の子はどうやら顔見知りらしく、完全に佐紀を無視して勝手に睨みあっていた。
そして隙を見てまた裸の女の子が抱きついてきたので引き剥がした。
- 4 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/10/19(日) 23:39
-
ガッシャァァァァァァァン!!
今度は騒々しい音と部屋にある普通のベッドがいきなり二つに割れた。
「悪いけど獲物に手を出せると困るな」
またもや声がしてその姿を探すと割れたベッドの下から女の子が顔を覗かせる。
立ち上がると想像していたよりもかなりの長身で、黒ずくめの服を着た女の子を
佐紀は思わず見上げてしまう。
「あんたを殺す。悪く思わないでね、これも依頼だから」
と氷のような冷たい目をして長身の女の子はいきなり物騒なことを言ってくる。
「いや、それはちょっと困るんだけど・・・・」
さすがに殺されるのは嫌なので佐紀は両手を挙げて苦笑しながら抗議した。
- 5 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/10/19(日) 23:40
-
ピカァァァァァァァァァァ!!
突然机に置いてあったペンダントが光を放つ、それは徐々に強さを増し部屋全体が
包まれる。
けれど光は徐々に治まっていって部屋はまたさっきまでの明るさに戻る。
佐紀は眩しさで細めていた目を開けると、体格の良い女の子が目の前に立っていた。
「佐紀ちゃんは私が守るとゆいたい!」
中国の武将が着ていそうな鎧に身につけた女の子は殺し屋の女の子を睨む。
あのペンダントは死んだ祖父が「危険な目に遭ったときこいつが守ってくれるだろう」、
みたいなことを言って佐紀にくれたものだった。
その話は普通に聞き流して佐紀は祖父が好きだったので、形見として今まで大切に
机の上に飾っておいた。
でもまさかあのペンダントがこんなファンタジーな品物とは思ってみなかった。
- 6 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/10/19(日) 23:41
- 「あのぉ、悪いんですけど・・・・全然状況が飲み込めないので、一人ずつ簡単に
自己紹介してくれます?」
あまりに色んな事が起こり過ぎて訳が分からないので、無茶なお願いと思いつつも
佐紀は言わずにはいられなかった。
すると思いのほか素直に全員が言う事をきいてくれた。
「じゃモモからいくね。モモはね、この星から何万光年離れたところにある星の
お姫様なの。それでその星では17歳になると・・・・」
「それじゃ次の人どうぞ」
「ひどーい!まだモモの話終わってないのに」
「長くなりそうだから却下。はい、次の人いっていいよ。」
佐紀は長くなりそうなのを見通してモモという女の子の言葉を遮ると、露骨に不満そうな
顔をしていたけれど無視して話を進めた。
- 7 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/10/19(日) 23:42
- 私が手で合図すると天使らしき女の子は自分を指差してから首を傾げる、少し苛ついたけれど
大きく頷いてあげるとようやく口を開いた。
「スガエル・シリャコ。二級天使です」
あまりに簡潔な自己紹介だった。
そのあとに言葉が続くと思っていた私は肩透かしを食らわされてしまい、
部屋に微妙な沈黙が流れる。
「えっ、それだけ?」
「短くって言うから・・・・・」
「それでもいいっちゃいいんだけど、できればここに来た理由とかも簡単に話してくれると、
嬉しいんだけど」
「・・・・・えっと、神様に佐紀ちゃんを助けなさいって言われたから来ました」
そう言ってから天使の子は照れくさそうにはにかんだ。
ちょっと可愛いかもしれない、とか思ったけどそんな場合じゃないので次の人に話を振る。
- 8 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/10/19(日) 23:44
- 「それじゃ次の方どうぞ。」
「はいはーい!徳永千奈美、16歳。佐紀ちゃんの幼馴染です!何か面白そうなことに
なってるから隣から来ました」
「・・・・えっと、徳永千奈美。幼馴染ね、ってなんでちぃがここにいるの?!」
「今言ったじゃん、何か面白そうだからって。」
「悪いけど帰って?」
「それひどくない?長年連れ添った人に向かって言う言葉?」
「別に連れ添ってないし。っていうかちぃがいると絶対に話がややこしくなる」
というか既に話がややこしくなっているし、と佐紀は口に出さなかったけれど内心思った。
口に出さなかったのは言うと話が逸れると思ったから。
佐紀は深い溜め息を吐き出して自分を落ち着けると、改めて次の人に話を振ろうとした。
ドゴォォォォォォォォォン!!
佐紀が口を開こうとしたのを狙ったかのように騒がしい音と共に部屋が大きく揺れた。
そして土煙が充満して部屋の様子があっという間に分からなくなる。
佐紀は先程までのことがあったのですぐに落ち着きを取り戻し、少し咽ながら手で煙を
払って様子を窺う。
それから少ししていつもの景色に戻ると、殆ど崩れた壁の前に一人の女の子が立っていた。
- 9 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/10/19(日) 23:47
- 少々破れかかっているが白いドレスを主にして、手足と胸にヨーロッパの甲冑のような
ものを着ている。
でも佐紀の目に一番に入ってきたのは、女の子の背丈とそう変わらない大きな剣だった。
どうやら傷を負っているようでそれを杖代わりに何とか立っている。
佐紀が目の前に立つと女の子は小さく息を吐いてからゆっくりと口を開いた。
「私の名はマイミー。お願いだ、力を貸してほしい!私と契約してくれないか?」
切羽詰っているのか佐紀の手を痛いくらい強く握ってきて、かなり必死な顔つきで
お願いされた。
佐紀はにっこりと微笑んでから女の子の手に自分のものを重ねると、
「帰れ」
と低い声ではっきりと言った。
- 10 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/10/19(日) 23:47
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- 11 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/10/19(日) 23:47
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- 12 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/10/19(日) 23:47
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帰れ、帰れ
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