08 騒霊

1 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/10/17(金) 22:07
08 騒霊
2 名前:08 騒霊 投稿日:2008/10/17(金) 22:08
※※※※※※※

最初は、愛理だった。
武道館近くの田安門で愛理の靴だけが残され、当の本人は行方知れずとなった。
下着やスカートが切り裂かれ、その一部が堀に浮いていたため、
警察は堀をくまなく捜索したが、死体は見つからなかった。

次は栞菜だった。
水元公園の沼の中で水死体になって見つかった。
口の中に睡蓮が、喉の奥まで差し込まれていた。
犯人はまだ見つかっていない。

横浜中華街の怪しげな占い師の店で、えりかがナイフを突き立てられて殺された。
その占い師はインド人で、降霊術を得意とするらしい。
もちろん占い師は重要参考人として警察に連行されたが、容疑を認めていないらしい。
3 名前:08 騒霊 投稿日:2008/10/17(金) 22:14
どう?となっきぃがいかにも自慢げに携帯の中身を見せるので、私は
憮然とした態度を取らざるを得なかった。
て言うかなんで下着やスカートを切り裂かれて死ななきゃいけないん
だろう。もっとましな死に方なんて世の中にいくらでもあるだろうに。

「ちょっとひどいよねこれ。意味わかんないし」
「今度の舞台って女子高生が主役なんでしょ?こんなおじさん臭い文章
書くわけないよ」
「何で千聖が犯人なわけ?何て言うんだろ、アホじゃないの?」
「ぜんぜんおしゃれじゃない。今のケータイ小説のトレンドはねー」
「ぶっちゃけ、つまんないよね」

他の5人も散々な言い様。
なっきぃはキュフ…と情けない鳴き声を上げて意気消沈してしまった。
4 名前:08 騒霊 投稿日:2008/10/17(金) 22:19
「てかこれ、なっきぃが書いたの?」

素朴な疑問を投げかけると、なっきぃは舞美ちゃんに柿の種を詰められる前の
ような顔になったあと、間テクスト性がどうのこうのとか言うわけのわからな
い話をはじめた。
きっとどこからかコピペしてきたに違いない。

「にしてもさー」

えりかちゃんがけだるそうに口を開く。

「いくら今度の舞台が携帯小説家だからって、実際うちらが小説書くとか面倒
じゃない?そんなのスタッフさんがちょちょいって書いちゃえばいいのに」
「だよねえ」

確かにその通りだ。
私たちは小説なんて書いたこともない素人。いきなりはい書いてねって言われ
てさらさらと書けるもんじゃない。実際試しにみんなが書いてきた話はそれは
もうひどいものばかりだった。舞ちゃんに至っては、文章ですらなかった。
5 名前:08 騒霊 投稿日:2008/10/17(金) 22:25
そこでさっきのなっきぃの胡散臭い文章が登場する。
おそらくここで手柄を立ててサブリーダーとしての地位を形づくろう
とか考えていたのだろうけど、そんな狡賢いブースカの浅知恵など、
この名探偵アイリーンにはまるっとお見通しなのだ。

「それはそれとして、どうしよう…」
「もうすぐ舞台だし…何とか考えないと」
「大丈夫大丈夫、なんとかなるって」

舞美ちゃんがいつもの能天気さでそんなことを言う。
いつもは心丈夫なその言葉も今回ばかりは少し殺意が…ううん、℃
-uteはいつもアットホームな家族みたいな集団だから、私はちっと
もそんな気持ちにはならない。端役をあてがわれて精神的に参っち
ゃったどこかの親方とは違うんだ。
6 名前:08 騒霊 投稿日:2008/10/17(金) 22:32
でもそこはこの鈴木愛理、伊達に亨の血は引いていない。
この日のために、携帯画面で471.4ページにも及ぶ大長編を書いていた
のだ。さすがあいりん、あったまいい!と無邪気な子供のように喜ぶ千聖
の顔が目に浮かぶようだ。

内容はとある可憐な少女が一匹の河童と運命の出会いを遂げるというもの。
その少女と、6人の仲間たちが繰り広げる感動的なストーリー。
ややもすると本編が霞んでしまいそうなくらいにいい話だけど、その時は
マックにだって、スカイラークにだって働けるんだよ?と愛らしいポーズ
を取ったりパンをチラッとさせればいい。ヲタはそういう焼き直しとか色
仕掛けに弱いのは、私がティンティンタウンで舞ちゃんのおまけみたいな
出演をしてた頃から知っていたことだった。
7 名前:08 騒霊 投稿日:2008/10/17(金) 22:40
さてさて。
河童の役について。
これはもう話を思いついた段階から目星はつけていた。

嗣永桃子。

どうみても河童。まりっきり河童。なんとなく、河童。
桃以外に河童が似合う少女は私くらいのものだ。でも、私は愛くるしい
ルックスの持ち主なので、その役は彼女に譲るしかなかった。
桃に話したところ、二つ返事で快諾してくれた。ギャラ2倍で友情出演・
妖怪顎入道とか妖怪黒手足長とか妖怪電信柱とか妖怪汗童子とか出すよ
って言われたけどそれは丁重に断っておいた。
8 名前:08 騒霊 投稿日:2008/10/17(金) 22:44
そろそろみんなが私に助けを求めてくる頃合だ。
いつもは控えめで受け身な私だけど、たまには自分から提案してみよう。
そう思った矢先の出来事だった。

ガタガタガタガタガタ…

何かがゆれる音。
地震かな?

ガタガタガタガタ・・・ドン、ピシャン!

「ちょ、何これ!」
「地震じゃないよこれ!!」

もしかして、霊現象?
そんなことを思いながら、辺りを見回す。
9 名前:08 騒霊 投稿日:2008/10/17(金) 22:49
そんな私が窓の外から見たものは。

ノーメイクでも猫娘役ができそうなあの子の姿だった。

そんな、いまさらどうして?
もしかして彼女をはぶったから?でもそれは私の横で震えている栞
菜の専売特許なはずだ。はぶったはぶらない以前に、あの子はもう
℃-uteじゃない。えりか舞美早貴愛理千聖舞栞菜7人揃ってはじけ
るぞいなんだ。舞美ちゃんとなっきぃの名前の間に、もうあの名前
を挟む余地なんて、ない。

愛理、後でおしおきだからね!

思わず私はひぃぃ!と声をあげてしまう。
心は完全にあの子が怖くて媚び媚びしていた頃に戻っていた。
10 名前:08 騒霊 投稿日:2008/10/17(金) 22:53
地震でもないのに、私は机の下に隠れて、がたがた震えていた。
周りの騒霊現象に負けないくらいに、強く。
私は念仏のように、今度の舞台で意味もなくアドリブで彼女を
偲ばせる単語を連呼するから許して、そうつぶやき続けた。

相合傘、相合傘、相合傘。

それがいけなかったのかもしれない。
騒霊現象はこの後2時間以上、続いたのだった。
11 名前:08 騒霊 投稿日:2008/10/17(金) 22:56
リ|*‘ヮ‘)| 決めたよ ほら
12 名前:08 騒霊 投稿日:2008/10/17(金) 22:57
リ|*‘ヮ‘)|災いを起こして
13 名前:08 騒霊 投稿日:2008/10/17(金) 22:57
リ|*‘ヮ‘)| 取り憑いてあげる

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