13 トレーディング娘。

1 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/23(日) 23:58
13 トレーディング娘。
2 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/23(日) 23:59
画面の中のつんくさんは、いつもと変わらず妙なハイテンションだった。
事務所のとある会議室に集められた私たちモーニング娘。一同は
大きな液晶TVを見つめながら、それぞれ複雑な表情を浮かべていた。

『今日はみなさんに素敵なお知らせがあります』

ちょっと気持ち悪い笑みを浮かべて、画面の中のつんくさんが言った。
私の脳裏には、自然と、安倍さんの卒業発表のVTRがよみがえってくる。
何がイエイッ、や。笑わせんな。面と向かってはつんくさんに絶対言えない
台詞で、私はこっそりと悪態をつく。

『春といえば、みなさんは何を思い浮かべるでしょうか。桜が綺麗な季節です。
プロ野球も開幕します。タケノコも旬です。春は色んなできごとがある、季節です』

春といえば。私は、昨年のさいたまスーパーアリーナでのライブを思い出す。
それは、前リーダー吉澤さんの、モーニング娘。としてのラストステージだった。
吉澤さんは背中に白い羽根をつけ、大きな空へと旅立って行った。

その、吉澤さんの卒業を思い出すたび、私の右の足首は痛む。とっくの昔に
完治したはずなのに、全部終わったはずなのに、吉澤さんのことを想うと、
私の胸には悔しさが溢れてくる。こんなに後まで引きずる卒業は、他にないかもしれない。

ある意味で、昨年の春は特別だった。でも、誰の卒業のときだって、特別だ。
だから、次に来るだろうそのときも、必ず特別なものになる。TV画面の中のつんくさんの
笑顔を見つめて、私は拳をぎゅっと握り締めた。
3 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/23(日) 23:59
『春。それは、出会いと別れの季節です。仲間との辛い別れもあれば、新しい仲間との
素晴らしい出会いもあります』

周りのメンバーの顔を窺ってみる。ガキさんも、6期の3人も、小春も、黙っているけれど
私と同じ覚悟を決めているだろう(誰が主役かまだわからないから、そういうことにしておく)。
光井やジュンジュンリンリンは、どうだかわからない。特に留学生2人は、今から起こる
出来事なんか、想像もしていないかもしれない。

『今年2008年の春は、みなさんに、出会いも別れも同時に経験してもらおうと思います。
題して、第1回ワンダフルハーツ三角トレード大会!イエイッ!』

つんくさんが、よりいっそう笑顔を輝かせて、一人で拍手をし始めた。
画面には、『第1回ワンダフルハーツ三角トレード大会開催決定』という大きな文字が出てくる。

三角トレード大会。いったい、何をおっぱじめようとしているのだろう。このオッサンは。
てっきり、誰かの卒業発表をするもんだと思っていたのに、ちょっと拍子抜け。
それはみんな同じだったようで、安心したようなたくさんのため息が部屋に充満した。

しかし、その大会で何が起こるのかは、私たちはまだ何も知らされていなかった。
安心している場合じゃなかったことに気づくのは、それから数日経った後だった。
4 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/23(日) 23:59



5 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/23(日) 23:59
「三角トレード大会、ですか?」

一度聞いたことはある程度理解できる頭を持ってはいる、と自負している私でも、
なかなかそのフレーズは意味不明だった。それは周りのメンバーも同じみたいで、
頭の上でたくさんのハテナマークをくるくると回していた。特に梨沙子なんかは、
いつもより3割増しくらい、アホっぽい顔をしていた。

つんくさんのありがたいVTRを見終わった後、とりあえず私はマネージャーさんに尋ねた。
その、意味不明なイベントの内容を、もっと詳しく教えてもらうために。

「いやだから、モーニング娘。と、Berryz(ベリーズ)工房と、℃-ute(キュート)の3組、
ワンダフルハーツで、三角トレード」

マネージャーさんは、真顔でそう説明した。すると、真っ先に熊井ちゃんが突っかかっていった。
それでストッパーが外れた私たちは、一気に責め立てる。意味不明だ。ちゃんと説明しろ。
ギャアギャア叫ぶようにマネージャーさんに言う。聖徳太子じゃない彼は、両手を大きく挙げて、
「わかったから一人ずつ話せ」と叫んだ。

一瞬、沈黙する私たち。自然と、みんなの視線は私に集まって、私は姿勢を正した。

「ええと、モーニング娘。さんと、Berryzと、℃-uteの3組で、三角トレード大会なんですよね」
「ああ。そうだ」
「その大会で、私たちは、何をするんですか」
「読んで字のごとく。三角トレードだ」

説明になってない。辺りを見回すと、みんなポカーンとした顔で、さっきよりもたくさんの
ハテナマークを浮かべていた。マネージャーさんは、そんな私たちを見て大きなため息をついた。

6 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/23(日) 23:59



7 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/24(月) 00:00
「どうする?どうするどうする?」

一応、私はリーダーだ。しっかりしなきゃいけない、と頭では思っている。でも、それよりも
パニック状態になるのが早かったみたいで、メンバーたちの前で、私はとても焦っていた。

事務所に集合をかけられて、行ったらメンバー全員が揃っていて、嫌な予感はしていたんだ。
また誰かの写真が撮られちゃったのか。とりあえず、自分に関することじゃないことだけは確かだった。
でも、まさかこんなことになるだなんて、検討もつかなかった。

つんくさんは、あのVTRの中で『ワンダフルハーツで三角トレード大会をします!イエイッ!』と言った。
いや、『三角トレード選手権をします!イエイッ!』だったかな。どっちでもいいか。

とにかく、私たち℃-uteと、Berryz工房、そしてモーニング娘。さんとでそういうことをすることに
なったらしい。そういうことがどういうことなのか、ことの重大さもまだ曖昧だった。

「来週までに、絶対、決めなきゃいけないんですよね」

マネージャーさんは「もちろん」と言ってうなずいた。私は、その大会のルールが書かれた紙に視線を
落とす。決まりごとは、10個くらいあった。トレードのやり方の例も書いてあった。

「つんくさんも、ホント、いきなりだよね」

呆れたようにチッサーが言った。私も、みんなも、深くうなずいて同意した。

「とりあえず決めなきゃ、今日帰れないよ」

落ち着いた声で、エリが言う。

「でも、まだ時間はあるよ。1週間くらい」

私はそう返して、その紙を見た。

「あるけど、早いほうが良くない?」
「そうだね。早いほうが良いかも」

ナッキーが口を開いた。優柔不断な私は、すぐに反応できない。

「トレードしたいメンバー、か」

私は呟く。この三角トレード大会は、簡単に言えば、モーニング娘。さんとBerryzと
℃-uteでメンバーを交換する大会だ。人数が増えたり減ったりの制限は無い。
何人出して、何人希望するかは、それぞれのグループ次第らしい。

「ねえ、モーニング娘。だと、誰が欲しい?」

試しにみんなの意見を聞いてみる。

高橋さん。田中さん。田中さん。田中さん。高橋さん。小春ちゃん。なるほど。みんな素直だ。

「舞美ちゃんは?」
「私?私、ジュンジュン」

みんないっせいに噴き出した。何がおかしいんだ。

「ほら、℃-uteもそろそろグローバル化しなきゃいけない時期だと思うんだよ」
「ジュンジュンかあ」
「ジュンジュンねえ」

なぜか、部屋がシーンとなる。

「でも、ジュンジュンと、この中の誰かをトレードしなきゃいけないんだよね」

愛理がそう言ったことで、私たちに長い沈黙が訪れた。この大会が、とんでもない大会
なんだと気づくまでには、そう時間はかからなかった。
8 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/24(月) 00:00



9 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/24(月) 00:00
9人もメンバーがいれば、全員の意見をすぐにひとつにすることはとても難しかった。
でも、やると決まったからには、ひとつにしなきゃいけない。早いうちに私は覚悟を決めて、
みんなにメールを回した。モーニング娘。は民主主義です、と。

要するに多数決だ。みんなの意見のうちで一番多かった意見を取り入れる。そういうこと。
Berryz工房と℃-uteのメンバーで、誰が欲しいのか。全員の希望を聞いて、私が集計する。
それくらいの足し算はできる。携帯電話にも、電卓が付いてるし、怖いものは無い。

私の希望は、熊井ちゃんと梅田えりかちゃん。理由は、背が高いから。ただそれだけ。リーダーを
取っちゃうのも悪いし、かと言って中心のメンバーを取るのも気が引ける。そういう点で、2人は
ちょうど良かった。身長も大で、インパクト大、だし。

片手に携帯電話、片手にペンを握り、私はメモをとる。他のメンバーの希望を書き出してみる。

みんなそれぞれ、思惑はあるだろう。あんまり人気メンバーが入ってきちゃったら、
自分のポジションが危うくなるんだから。

きっと絵里はもう寝ていて、今夜中に返事がないだろうから、とりあえず7人分、まとめておく。
意外や意外、Berryz工房は桃子ちゃんがダントツトップだった。ええ、熊井ちゃんがいいのに。
自分で民主主義と言っておいて、不満を漏らす私。でも、誰も聞いてないから気にしない。

「桃子ちゃんかあ」

確かに、欲しい。私は熊井ちゃん希望だけど、桃子ちゃんを希望するメンバーの気持ちもわかる。
今の娘。にはいないタイプだ。たとえるなら、梨華殿や、保田のケメコさんみたいな。イジられてナンボの。

「面白い」

なんだか笑いがこみ上げてきて、私はひとりでニヤニヤした。すると突然、携帯電話が鳴った。
絵里からのメールだった。「嘘や」思わず呟く。ちょっと信じられなかったけど、それを開く。

なんと、絵里の希望も、Berryz工房は桃子ちゃんだった。こっちは、これで決まりか。
私は、静かにペンを置いて、頬杖をつく。

問題は℃-uteだ。矢島舞美ちゃんと鈴木愛理ちゃんで、意見は真っ二つに分かれている。
つまり、私のせいで決まらない。私は、梅田えりかちゃん希望なのだから。

チッ。舌打ちをする。どうせ誰も見ていない。私は悪い顔をする。そして考える。
舞美ちゃんか、愛理ちゃん。どっちを取ろう。民主主義に則って、どう話をまとめよう。

結局、その晩は、一睡もできなかった。

10 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/24(月) 00:00



11 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/24(月) 00:00
仕事の合間に、私たちは集まって話し合っていた。こんなに真剣な会議は、いつ以来だろうってくらい。
いつもふざけるミヤとかチーとかも、真面目に悩んでいる。もちろん私も考え込んでいた。

「じゃあ、みんな一人ずつ言っていこう。℃-uteで、誰が欲しいか」

輪になっているので、私から時計回りで進むことにする。その前に、ミヤが言う。

「理由は?いる?」
「それは、言いたい人だけで」
「オッケイ」
「私は、梅田えりかちゃん」

言ってしまったらなんだかスッキリする。隣のマーが、ちょっと時間を置いて言う。

「舞ちゃん。萩原舞ちゃん」
「私は矢島舞美ちゃん」

マーの隣のモモが間髪入れず言った。本気だった。舞美ちゃんを選んだっていうことも、
モモ自身の声も表情も、本気だった。

「うちは愛理。Buono!(ボーノ)が揃うから」

続いてミヤはさらっと言った。その次の梨沙子が、俯きながら黙っている。

「次は、梨沙子だよ」
「私は千聖がいい。理由は、プロレスごっこできるから」

こみ上げてくる笑いをこらえて、真面目に私はチーに振る。チーは人差し指であごを触りながら言う。

「私は、中島早貴ちゃんかなあ」

最後は熊井ちゃん。うーん、と最初にうなってから言う。

「有原栞菜ちゃん」

絶対わざとだ。私たちの意見は、綺麗に7つに分かれてしまった。

「どうしよう。収拾がつきません」
「この際、7人全員とか」

ぼそっとマーが呟いた。突拍子も無い提案に、私は黙り込むしかできなかった。

12 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/24(月) 00:01



13 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/24(月) 00:01
℃-uteは、モーニング娘。とトレードしなきゃいけないし、Berryz工房ともしなきゃいけない。
だから、Berryzのことも考えなきゃいけなかった。

「どうしよう」

この言葉、あのVTRを見てから何度言っただろう。それでも私は呟いてしまう。

「ホント、どうしよう」
「とりあえずさ、みんなの意見をまとめないと」
「そうだよね。モーニング娘。さんは、田中さんでいいとして、Berryzの方を決めよう」

ちょうど全員が揃っている時だったから、私たちはひとつの部屋に集まって話し合う。

「やっぱり、田中さんを入れるんなら、雅がいい」

愛理が微笑みながら言った。「あぁ!だからさ。あぁ!」

あぁ。無意識に私は言う。おっとっと。慌てて口をおさえる。

「でも、もしモーニング娘。さんかBerryzが、愛理を要求してきたら、どうするの?」

ナッキーが言った。確かにそうだ。

「そのときは、そのときだよ。別に、あぁ!にならなくちゃいけないってわけじゃないし」
「それもそうだ」

賢い愛理に感心する。まったく頼りにならないリーダーだこと。
よし。ここはスパッと決めようじゃないか!

「じゃあ、雅にしよう」
「モモも入れたら、Buono!にもなるよ」
「おお。それはダブルでビンゴだね」
「それならZYX(ジックス)もビンゴしちゃう?」

エリが楽しそうに言った。いいね。私も笑顔になる。

「ていうか、何人でもいいんだよね」
「人数制限は無いんでしょ?」
「そっか。何人でもいいんだ」

三角トレード大会は、もう目前に迫っていた。
14 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/24(月) 00:01



15 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/24(月) 00:01
つんくさんのこだわりなんだか知らないけれど、三角トレード大会の会場は、
とある高級ホテルの”なんとかの間”だった。すでに、準備は整っている様子で、
かしこまった衣装を着せられた私たちモーニング娘。は、同じくきちんとした
格好をしているBerryz工房と℃-uteが待つ三角形のテーブルの席についた。

「ただいまより、第1回ワンダフルハーツ三角トレード大会を開会いたします」

司会は、なぜか保田さんだった。場違いなくらい派手な、振袖を着ていた。

「それでは早速、モーニング娘。からトレードを希望するメンバーを発表していただきます」

本当に早速、だ。懐からメモを取り出して、私は目の前にあったマイクに顔を近づける。

「Berryz工房、嗣永桃子ちゃん」

モーニング娘。から向かって右側、横一列になって座っているBerryz工房のメンバーたちが
一瞬だけ動揺を見せる。桃子ちゃん本人は、オーディションに合格した人みたいな反応。
さすが抜かりが無いな。心の中で、こっそり引き笑いをしながら、ふたたび私はメモを見る。

「℃-ute、矢島舞美ちゃん」

同じように左側の℃-uteも静かに騒ぐ。私はひと呼吸置いて、

「と、鈴木愛理ちゃん」

℃-ute側がざわざわする。保田さんがやけに真剣な顔で注意する。

「名前を呼ばれた3人は、モーニング娘。のテーブルに移ってください」

モーニング娘。が3人増えて、12人になる。それくらいの足し算、私だってできる。

「次に、Berryz工房と℃-uteからトレードを希望するモーニング娘。メンバーを発表していただきます」

まず先に、清水佐紀ちゃんが言う。

「田中れいなさん」

なぜかモーニング娘。よりも、℃-ute側がざわつく。そして、梅田えりかちゃんも言う。

「田中れいなさん」

嘘やろ。信じられなくてれいなを見ると、妙にうれしそうな顔をしていた。
れいなのあんな表情、この何年かで初めて見たかもしれん。

「希望するメンバーが重なった場合は、くじによる抽選になります。Berryz工房と℃-uteの
代表者は前に出てきてください」

がんばってキャプテン。がんばってねえりかちゃん。それぞれのメンバーが、勇気付けている。
そっか。舞美ちゃんはモーニング娘。のメンバーなんだ。自分で取っておいて、もう忘れてた。

くじ引きが行われる。佐紀ちゃんとえりかちゃんが、箱の中に手を入れて、せーので挙げる。

16 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/24(月) 00:02

「え?」

2人が持っていたのは、よくあるゴムのカラーボールだった。佐紀ちゃんは黄色で、えりかちゃん
はピンク色だった。なぜか2人はそれを見つめて、首をひねっていた。保田さんが進行する。

「順番に、ボールに書かれてある名前を読み上げてください」
「新垣里沙」
「矢島舞美」

うええええええええええええええええ?ガキさんの大きな叫び声が、静かな会場に響き渡った。
ガキさんは、目玉が飛び出てしまいそうなくらい、目を見開いていた。もちろん私も驚いたが、
自分の名前じゃなかったので人ごとのようだった。

ガキさんが私のマイクを奪って叫ぶ。

「ちょっと保田さん!」
「どうかされましたか?」
「なんで私の名前が呼ばれるんですかあ!」
「言い忘れていましたが、その箱の中には、ここにいるメンバー全員の名前が書かれたボールが
入っています」
「そんなメチャクチャなあ!」

なんとなんと、たった今、ガキさんのBerryz工房入りが大決定しました。そして舞美ちゃんは
℃-uteに逆戻り。なあんだ。つまんないような、これもこれで面白いような。

Berryz工房のテーブルに移ったガキさん。戻ってきた佐紀ちゃんから謝られて、ちょっと不貞腐れている。
周りのメンバーも戸惑っている。Berryz工房にガキさん。ありえない光景だった。

「それでは、Berryz工房からトレードを希望する℃-uteのメンバーを発表していただきます」

佐紀ちゃんが、ガキさんの方をチラチラ気にしながら言う。

「岡井千聖ちゃん」

少しだけ℃-ute側が騒がしくなる。保田さんは淡々と続ける。

「℃-uteからトレードを希望するBerryz工房のメンバーを発表していただきます」

舞美ちゃんが言う。

「夏焼雅ちゃん」

名前を呼ばれた2人が、それぞれBerryz工房と℃-uteに移る。モーニング娘。のテーブルには、
愛理ちゃんと桃子ちゃんがいて、ガキさんがいなかった。ガキさんはBerryz工房になったから。

Berryz工房のテーブルを見ると、やっぱりガキさんがいた。たった今から、Berryz工房のガキさんが。
明らかに一人、浮いている。ガキさんもまだまだガキんちょだと思っていたけれど、いつの間にか
オトナになっていたみたい。腕を組んで、イライラしてそうな表情を見て、まるで女王様やと思う。
美貴ちゃんみたいや。ほら。遠くから見たら、髪形も似てるし。美貴ちゃんや。美貴ちゃんや!
17 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/24(月) 00:02
「ちょっと、愛ちゃん」

隣の席の道重さゆみが囁いてきた。「ガキさん、本当にBerryzに行っちゃうの?」

「行っちゃうっていうか、行っちゃった」
「本当に?卒業コンサートもナシで?」

卒業コンサートもナシで?

そうや。美貴ちゃんもそうやった。卒業コンサートもしないまま、モーニング娘。を辞めてしまった。
実は私はそれが頭に引っかかってたりする。あんな結末になったこと、今でも悔やんでる。
でも、私の力ではどうしようもできなかった。というか、できるわけなかったし。

この三角トレード大会だって、すでに決まったことだった。私たちはいつもそう。決まったことを
伝えられるだけ。全部、受け入れるだけの人間なんだ。

「これは、卒業じゃなくてトレードだから」

私が言うと、さゆが目をくりくりさせながら見つめてくる。

「つんくさんも言ってたじゃん。第1回、だって。だから、第2回もあるよ」

たぶん、という言葉はぐいっと飲み込む。さゆは納得したのかしてないのか、唇を尖らせた。
私も真似してタコみたいに唇を突き出す。すると、さゆが迫ってきた。慌てて避ける。
こいつは、隙あらばキスしようとする。ムキー、とわざと怒った顔をする。

2回目は、絶対にある。私は信じてる。だって、ガキさんはモーニング娘。なんだもん。
今はBerryz工房かもしれないけれど、私が絶対取り返してみせる。

次は必ずガキさんをトレードしよう。桃子ちゃんを手放して、ガキさんとトレードしてもらおう。
いや、熊井ちゃん。いやいや、ガキさん。私は葛藤する。って、葛藤するまでもない。

モーニング娘。は卒業するものだ。脱退したりもあるけれど、卒業してゆくものなんだ。
ガキさんにはちゃんと卒業してもらわなきゃいけない。さいたまスーパーアリーナで、
白い羽根を生やして、大きな空へ飛び立ってもらわなきゃ。

あれ。それは誰かさんの卒業ライブだったか。ガキさんの卒業ライブは、どんな風になるのかな―――

18 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/24(月) 00:02

おし舞美
19 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/24(月) 00:03


20 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/24(月) 00:03




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