12 恋愛ライダー
- 1 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/23(日) 23:57
- 12 恋愛ライダー
- 2 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/23(日) 23:58
- 「私、タンデムシートに乗るのが夢なんだぁ」
なんの前触れもなく、雅がそんなことを言い出した。
バイクなんて興味ない私は、ふ〜んそうなんだと相槌を打って、
なかなか来ないバスを探して車道に目をやった。
もう五分も遅れてる。まあ、いつものことなんだけどね。
「みやさぁ、恋してる?」
愛理がニヤニヤしながら雅の顔を覗き込む。
「えっ、そうなの!?」
私は驚いて雅の顔を見た。みや、なんだか目が泳いでるみたい。
「なに、その展開。べ、別にそんなんじゃないよ」
「だってねぇ、ちょっと前まではスノボーがしたいって言ってたでしょ」
「それはだって、夢じゃなくって願望だし。それに冬、終わっちゃったから……」
「スノボーはぁ、清水くんが趣味だって言ってたからだよね」
そうなのだ。愛理のいうとおり雅はクラスの副委員長、清水のことが好きで、
趣味がスノボーだとわかると、自分も始めるとか言って、ウェア買いに行くのに
私たち二人も付き合わされた。結局、買わなかったんだけど。
去年の夏はサーフィンだった。隣のクラスの徳永が真っ黒に日焼けした顔で
「海サイコー! やっぱ夏はサーフィンだね!!」
と言っていたからだ。雅は好きな子ができると、その人の趣味に合わせようとする。
とってもわかりやすい。まあ、いつも気づくのは私じゃなくて愛理なんだけど。
- 3 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/23(日) 23:58
- 「今度はタンデムシート。ってことはぁ」
「えっ、バイクの免許って何歳から取れるんだっけ? 十六歳?」
「そうだよ、十六歳」
「ってことは……高校生!?」
高校生って大人じゃん。まあ、私たちもこの春から高校生になるんだけど。
「なに二人で盛り上がってんの、そんなんじゃないってば!」
必死に否定してるけど雅の顔、耳まで真っ赤。
とその時、三台の自転車が私たちの前で停まった。
私たちのクラスにもその名を轟かせるC組の三バカトリオ、矢島と岡井と萩原だ。
「よぉ! 鈴木」
「よっ!」
そっか、矢島と愛理は幼馴染なんだったっけ。
「あれ、矢島くんバスじゃなくってチャリ?」
「おう、お前らも縮こまってないで体動かせよ!」
そう言って、なんの意味があるのかXサインをこっちに向けてくる。
早く行こうぜと岡井に促され、じゃあなと言って去ってった。
三人ぶつかりそうになりながら、道幅一杯に蛇行する。
まったく子供なんだから。私は大人だから、あんなことは絶対しないな、うん。
案の定、後から来た自動車にクラクションを鳴らされる。
あっ、岡井と萩原がぶつかった! 心配そうに矢島が見てる。
矢島くん、よそ見してるとぶつかるよ。あちゃ〜、予想した通り、電信柱に激突。
……やっぱりバカだ、アイツら。
- 4 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/23(日) 23:58
- 「どうしたの、みや」
愛理の言葉に、私も雅を見る。彼女は立ち上がって遠くを見ていた。
バスが来たのかな、と視線の先に顔を向けると、
三バカトリオが自転車を起こしてる最中だ。
雅に顔を戻す。よかったと小さく呟いて腰を下ろすところだった。
愛理がヘラヘラしながら、雅の顔を指差す。
「もしかして、みやの好きな人って、矢島くん?」
「えーっ、そうなの!?」
私が大声を上げると、愛理はヘラヘラ顔を引っ込め、真顔で大きく頷いた。
「いっつも言ってるよ、十六歳になったらソッコーで免許取るって」
「そうなんだ」
「うん。小学校の卒業文集にね、書いてあったんだよ、バイクのレーサーになりたいって」
「へー、凄いね」
私たち二人が喋ってる間、雅はずっと黙ったまま下を向いている。
どんな顔をしてるんだろうと覗き込もうとすると、ぷいと顔を背ける。
「もぉ〜、そんなんじゃないって!!」
私は愛理と顔を見合わせ、ウフフって笑った。
もう、みやってわかりやすいんだから。モモと違って、まだまだ子供だね!
- 5 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/23(日) 23:59
- 「でもさぁ、矢島くんって、どこの高校行くんだろ?」
バスに揺られながら私が言うと、愛理が首を傾げた。
「うーん、どこだろうね」
幼馴染でも、そこまでは知らないらしい。
家が自動車の修理工場をやってるから、工業高校なんじゃないかと続ける。
なんでも矢島は一人っ子で、家族で前々から継ぐかどうかの話し合いをしていたそうな。
「でも、レーサーになるのが夢なんでしょ?」
「それはだって、小学校の時の話だから」
現実はそんなに甘くないんだよと、困ったような顔で手をヒラヒラ振る。
何も愛理が困ることはないと思うんですけど。
まあ、愛理はいつでも困ったような顔をしてるっちゃぁ、してるんだけどね。
「……高校、行かないんだって」
ポツリと呟くように雅が言う。
「えっ、それってやっぱりバカだから?」
「なに言ってんの、違うよ!!」
カンパツ入れずに言い返される。あっ「パツ」じゃなくて「ハツ」だって
国語の先生、言ってたっけ。──間髪を容れず、ね。
ももんチのパソコンじゃ「カンパツ」じゃないと変換できないけど。
- 6 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/23(日) 23:59
- 「……なんかね、工場がアブナイんだって」
遠くを見つめながら深刻な表情で雅が呟く。
おやおや、これは余計なことを考えている場合ではなさそうだぞ。
「セーフがケーキ良くなってきたっていったって、それは一部の大キギョーの話で、
矢島くんトコみたいなチューショーは、まだまだキビシーんだって。
だから矢島くん、進学諦めて工場手伝うって、岡井くんたちに言ってた」
矢島たちが話してるのを、雅が偶然聞いてしまったらしい。
言ってる意味は良くわかんないんだけど──たぶん、みや自身も理解してない──
矢島が高校行かないで家業を継ぐことだけはわかった。
「矢島くんのトコが大変なのは……」愛理の困ったような顔が、本当の困り顔になった。
「パパとママが話してんの聞いて、なんとなくは知ってたけど。高校にも通えないほど
厳しいとは思ってなかったよ」
中学校を卒業したら、みんな当たり前に高校へ行くもんだと、今の今まで思い込んでいた。
親が学費を出すのは、当然だと思っていた。ううん、そんなこと、考えたこともなかった。
でも全然、当たり前でも当然でもなかった。
進学せずに就職する人がいることは知ってるけど、それは夢ややりたい事があるからで。
お金のことで、進学諦めるなんてことがあるなんて、それも知っている人が……
なんかショック。
家に帰ったら、パパとママに「高校行かせてくれて、ありがとう。もも、感激!」
なんて言ったら、どんな顔するだろう。
なんか色んなコトが、頭ん中を駆け巡って、変になりそう。
- 7 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/24(月) 00:00
- 「そうだ! 明日からさ、自転車で通学しない?」
もう愛理ったら、私が難しいこと懸命に考えてるときに、なに言い出すかと思えば……
えっ!? ちょっと待って!
「ムリムリ! 愛理んチはまだいいけど、ももやみやんトコは遠いんだよ?
てか、ももんチが一番遠いし」
自転車で通うとなると、今より三十分は早く家を出ないといけなくなる。
髪の毛にアイロン当てないといけないし、テレビの星占いも気になる。
女の子の朝は、なにかと忙しいのだ。
「それに定期ムダになっちゃうし。ヤだよぉ。ねえ、みやもイヤだよねぇ……」
雅の肩を叩こうとしたら、愛理に腕をつかまれガッって思いっきり引っ張られた。
「痛い、愛理、痛いよ」
「もう、わかってないなぁ」
愛理が耳元で囁くように言う。自転車で通うのがどれだけ大変か、ちゃんとわかってるよ。
「そうじゃないよ、みやのため」
「みやの?」
「そう。自転車だったら矢島くんたちと一緒に帰れるでしょ」
「…………ああ、なるほど。そっか」
クラスが違うから話す機会なんてほとんどないし、
卒業間近ってことで休み時間はクラスのみんなと過ごすことが多い。
そうなると残されたチャンスは帰り道。
本来なら雅と矢島とは帰る方向が微妙に違うんだけど、
愛理に付き合って遠回りしてるんだと言えば不自然じゃない。
- 8 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/24(月) 00:00
- 「なんの話してんの」
雅がそう言ってぼんやりとした視線を私たちに向けた。
今までの話を聞いてなかったらしい。
「明日からは健康的に自転車で学校行こうって話してたのさ!」
愛理が軽快なリズムで雅の肩をポンポンと二度叩く。
いいよねと私が念を押すと
「うん、いいよ」
と答えて窓の外に顔を向けた。
私には雅の「いいよ」が、どうでもいいよの「いいよ」に聞こえた。
せっかくみやのために愛理と二人で考えたのに、
明日から卒業式の日までの間、長い道のりを自転車で通うことを決めたのに、
なんだか素っ気ない態度に、ほんのちょっとだけど腹が立った。
私が頬を膨らせていると、愛理が風船を割るみたいにして、
その膨らんだ頬を突っついてきた。
「いいんだよ。だって矢島くんと帰るためだって言ったら、
みや意地っ張りだし絶対ヤだって言うもん」
──確かに。しょうがない、ここは大人のももがガマンするしかないか。
この日、雅はずっと窓の外をぼんやりと眺めたまま、一言も喋らなかった。
矢島のことを考えているのだろうか。人って、恋するとこんな風になるのかな。
雅を眺めながら、私はそんなことを考えていた。
- 9 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/24(月) 00:00
- 次の日から、私たちの自転車通学が始まった。──正直に言うと、
初日は朝、起きれなくって私だけバスで学校行ったんだけど。
一緒に帰れなかったので、その日の夜どうだったか気になって愛理に電話したんだけど、
「それは明日、放課後のお楽しみ」って笑うだけで教えてくれなかった。
でも、放課後まで待つまでなかった。
だって雅、一日中ずーっと上機嫌で、六時間目の数学の授業中なんか、
もうソワソワしてるんだもん。わかりやすすぎ。
授業が終わると私たちは駐輪所に直行。すぐに自転車にまたがり走り出す。
あれ? 矢島たちは?
「ちょっと愛理、待たなくっていいの」
併走しながら小声で聞くと、愛理は大丈夫だからと片目をつむった。
それはあれですか、ウインクできないももへの当てつけですか。
「よっ!」
シャーっていう自転車の後輪が空転する音と共に声がした。
振り返ると矢島たち三バカトリオの姿が。
なるほど、ゆっくり走ってれば、追いついてくるってことね。
「おお、今日は寝坊スケ嗣さんも一緒なんだ」
「えっ! ち、違う……」
反論しようとしたけど、ムダだった。みんなしてニヤニヤ笑ってる。
きっと愛理が喋ったんだな。ももが、お寝坊キャラになるじゃんか!
その後、六人でくだらない話で盛り上がりながら帰った。
いつもはお喋りな雅が、なんだか無口だったけど、
それでも楽しそうな顔をしていたのが印象的だった。
- 10 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/24(月) 00:01
- 一緒に帰るようになってから、昼休みも六人で過ごすようになった。
最近は愛理が岡井や萩原とつるむことが多くなって、
今も「キューティーなんちゃら」とか言いながらプロレスごっこをしてる。
もう、小学生じゃないんだから。なんだかんだいって、愛理もまだまだ子供だね。
「ももぉ! こっちおいで。一緒にカッパダンスしよ!」
三人並んで、手の平を頭の上にかざしながら、足を上げて変な踊りを踊ってる。
なんでも、愛理考案の前衛ダンスだそうな。
当事者の愛理はノリノリなんだけど、付き合わされている二人はビミョーな表情。
仲間にされてはたまらないと、私は頬の肉が揺れるぐらい激しく首を振った。
傍らに座る雅に顔を向ける。
「ヤだよねぇ、あんな恥ずかしいダンス」
そうだよねと、雅は顔をしかめた。目の前の鉄棒に腰掛けた矢島がハハハと笑う。
「アイツら、ガキンチョだからな」
いやいや、愛理たちも「ヒコーキ飛び!」とか叫びながら
鉄棒から降りるアンタに言われたくないと思うよ。
「もう、ももおいで!」
「いやいや、ももはいいから!」
必死で拒否る私の手を、愛理は強引にひっぱった。
大人なももは、そんなお遊戯みたいなことしないんだってば!
「ちょっともも、気ぃ利かせなよ」
「えっ」
愛理に手を引かれ、よろけながら私は振り返った。
私たちを指差しながらバカ笑いする矢島と、
それをくすぐったそうな笑みを浮かべながら見つめる雅の姿があった。
- 11 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/24(月) 00:01
- 卒業式の朝、いつもの待ち合わせ場所で1人で待っていると
いつものように坂の上から愛理が現れた。
「ももぉー、行くよぉー!」
ノンブレーキで目の前を通り過ぎる。
あれ? みやは? 愛理、なんで待たないの?
混乱した頭のまま、私は慌てて自転車にまたがり追いかけた。
「ちょっとぉ、みやがまだ来てないじゃん!」
下り坂でかなりスピードのついた愛理に、私は立ち漕ぎで必死に追いすがる。
「今日はバスゥー」
「な、なんで? 今日が最後じゃん!」
「みやの夢、憶えてないのぉー」
「ゆ、夢? なにそれ?」
「タンデムシートォー」
大通りの信号が赤に変わり、そこでようやく愛理に追いついた。
「な、なんだって?」
「だからほら、タンデムシート。みや言ってたじゃん」
「な、なんの、話?」
「もも、話きいてた?」
ハアハアゼイゼイ息を切らす私に
愛理はなんでそんなに疲れてんのと涼しい視線を向ける。
そりゃ、アンタはいっこも漕いでないけどさ、こっちは必死なんだよ!
- 12 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/24(月) 00:01
- 今日で学校生活も終わり。矢島たちと一緒にいられるのも最後だ。
私と愛理は、雅に告白することを勧めた。
恥ずかしいとか、フラれたらどうしようとか言って、
最後の最後まで踏ん切りがつかない様子だったんだけど、
昨日の夜、それだったらと愛理が電話で提案したらしい。
「最後に、後ろ乗っけて家まで送ってって、頼めばって」
「自転車で?」
「そう。みやタンデムシートに乗りたいって言ってたでしょ、だから」
それってタンデムシートっていうのかな。どっちかっていうと自転車の荷台?
「でも、それってコクってるのおんなじじゃないの」
「そうだよ。でも普通に『好きです』とかより言いやすいでしょ」
うーむ。確かにその方がハードルは低いかも。
愛理って、どっからこんなアイデアが浮かんでくるんだろう。
私、ダメだなぁ。なんも考えてないや。
ん? 待てよ。ってことは、私たちも自転車で来る必要なかったんじゃ……。
「ダメダメ。それだったらオマエら三人でバス乗って帰れって
言われるかもしれないじゃん」
……なるほど。愛理殿、桃子完敗であります。
- 13 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/24(月) 00:02
- そして三年分の思い出を涙し、仲の良かった友だち抱き合い別れを惜しみ、
大好きだった先生も、そうでもなかった先生も一つひとつご尊顔を
脳みその皺の隙間に刻み込んで、無事卒業式を終えた。
私たちは急いで駐輪場に向かった。
矢島たちが自転車にまたがってるところだった。
良かった、ギリギリセーフ。先に帰られたんでは、元も子もない。
雅が矢島の前に立つ。矢島は、自転車から降りて正面を向いた。
「あの、話があるんだけど……」
うつむき加減で雅が切り出す。岡井や萩原がいると、言いにくいだろうな。
私と愛理は二人を連れ出そうと声を掛けた、その時……
「待ってたんだよ、実はさ、言いたいことがあって」
おっ! こ、これって、まさかの展開! 矢島からの告白!?
「ああ、オマエらも聞いてくれよ」
えっ、ももたちも? どういうこと!?
愛理の顔を見ると、彼女も訳がわかんないらしく、困り顔で首を傾げてる。
「春からさ、愛知に行くことになった」
淡々とした口調で言う。雅が真剣な表情で顔を上げた。
二人の顔を見比べ、愛理が大声を出した。
「愛知ってどういうこと? お父さんの工場手伝うんじゃなかったの?」
- 14 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/24(月) 00:02
- 矢島が寂しそうな笑みを浮かべた。
「仕事が減ってて大変なのにさ、半人前の自分が手伝ったってしょうがないよ。
それより、食い扶ちを減らさなきゃ」
なんでも、愛知にお父さんが昔から昵懇にしている修理工場があるらしい。
向こうは東京に比べるとまだ景気がいい方で、矢島のお父さんが相談すると
快く引き受けてくれた。
「向こうで修行してさ、腕のいい修理工になって帰ってくる。
んで、ウチの工場、立て直すんだ」
それが今の矢島の夢。バイクのレーサーとか子供っぽい夢じゃなく、
本当の、大人としての夢。
「でもさ……」愛理が唇を突き出し、拗ねたように言う。
「なんで、今まで言ってくれなかったのさ。なんで黙ってたの」
すると矢島は腕を組んで身体をのけぞらせ、顔をしかめた。
「ほらぁ、言うとさぁ、そういう顔するだろ、オマエら。
なんか、湿っぽいの苦手なんだよねぇ」
学生生活の最後ぐらい、バカみたいに楽しく過ごしたかった。
そう言うと矢島はバカみたいに笑った。
「……ガンバって、ね」
雅が手を差し出した。矢島が握り、おうと答える。
私には雅が「待ってるから」という言葉を呑み込んだような気がした。
- 15 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/24(月) 00:02
- 帰り道、自転車を押しながら三人並んでトボトボ歩く。
「でもさぁ、なんで送ってって言わなかったの?」
私が言うと、愛理もそうだよねと頷いた。
「いいの。たぶん、気持ちは伝わったと思うし」
そうなのかな、と愛理を見る。彼女もわからないらしく、
困り顔で微笑んで首を振った。
「よし!」
私は気合を入れると自転車にまたがった。
「そこのお嬢さぁ〜ん、俺のタンデムシートに乗らないかぁ〜い」
そう言って荷台を叩く。雅は一瞬、戸惑ったような顔をしたけど、笑顔になると
駆け寄って、私の自転車のタンデムシートに腰掛けた。
「よし、飛ばすぜー。しっかりつかまってるんだよ!」
私はペダルを踏む足に力をこめた。
「ももぉ、ふらついてるよ!」
笑いながら愛理が言う。雅が危ないと声を上げた。
私はスピードを上げながら、聞き覚えのあるメロディーを口ずさんだ。
走り続けろ、ヘナチョコライダー。
青春の荒野を、走れ。
- 16 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/24(月) 00:02
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- 17 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/24(月) 00:03
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- 18 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/24(月) 00:03
- 間に合わなかった…orz
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