04 scene17

1 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/22(土) 14:10
04 scene17
2 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/22(土) 14:10
卒業生はもうほとんど帰ってしまった。
部活をしていた卒業生は玄関付近で在校生と別れを惜しむように写真を撮ったり話をしたりしていた。
今日は目が眩むほどの快晴で窓際に立っていると日差しが暖かい。
風はまだひんやりしているだろうけど太陽の力は大きくおそらく外に出ても寒くはないはずだろう。
田中は玄関あたりにいる生徒の小さな頭を上から見下ろしていた。
部活をしていたわけでもない、ただ校内では可愛い部類に入っていたから普通の生徒よりは少し目立つくらいの生徒だと自覚していた。
幼なじみの亀井も、同じく。
違うのは告白された時の対応だった。
田中は面倒だからそういうの今興味がないとばっさり切り捨て、亀井は柔らかい対応をした。
その差が今日、田中が一人で教室に残っている理由となった。
一緒に卒業した幼なじみは今隣か隣の隣のクラスで告白されているだろう。
ふられても気まずくならないだとか、今日の機会を逃すとその想いをしまいこんだままにしてしまわなければならないとか、まったく小心な自己中心的な理由で告白する人間を田中は鼻で笑いたかった。
言い逃げと何が違うのだろう。当たったらもうけものみたいな、ばかばかしい。
窓から見える太陽は眩しかった。
亀井はどのように断るのだろう。その現場に立ち会ったことがない。
幼なじみだからこそ余計にそういうことが聞けなくて気になってしまう。
窓にもたれかかり頭を窓に預けた。
天井を見上げていたら、亀井が控えめにドアを開けて教室に帰ってきた。
「告白?」
「まあ、そんな感じ。」
3 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/22(土) 14:10

亀井は苦く笑った。照れくさそうでもあった。こういうことは何度もあったのに今でも慣れないらしい。
「誰?何組?」
どうせ顔もろくに知らない男子だろうなと予測した。そしてそれは高い確率でいつも当たり、今回も当たっていた。
「4組の、名前わかんないや。」
亀井は困ったように笑い、だって名前言わないんだもん、と言い訳した。
田中は亀井らしいと笑った。
「なんて断ったん?」
亀井はてくてくと歩いて田中の横に立ち真似るように窓に寄りかかった。
「他に好きな人がいるから、って。」
この答えは田中の予想から外れていた。田中の知る限り亀井はこういう嘘はついたことがない。
そういう気持ちがないのに付き合えない、が王道パターン。
だから田中は驚いた。
「そんなの初耳。」
「うん、初めて言った。」
田中は左手に無意識に力を入れていた。反射的に目が熱くなりそうになって気を取り戻す。
亀井は窺うように田中の表情を見ていた。
温かな空気が温度をなくして張り詰める。
「え、誰。」
食い入るように田中は亀井の目を見た。その目は動揺を含んでふらふらさまよってしまいそうでもあった。
興味よりはいくらか恐れているように、亀井には見えた。
それがどれくらい確かかは亀井が測れるわけもない。
「ちょっと言えない。」
視線から逃げるように下を向いて、自分の靴の先を見た。
3年間履き続けてよれよれになっている。
亀井はぼんやりと足もとを目に映した。
4 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/22(土) 14:11

「そっか。」
田中は亀井と同じように足元を見て肩の力を抜いた。
「れいなは、本当に好きな人いないの?」
背中に陽が当たる。柔らかい光が教室を照らす。
外で騒ぐ声が窓を閉めていても届く。
校舎にはおそらく生徒はもう二人しか残っていないだろう。
静まり返りきってしまうわけでもないこの独特の空気を二人はもう味わうことはできないだろう。
「いる。」
亀井は驚いて田中を見た。田中は気づいていながら亀井の方をなかなか見ようとしなかった。
髪の影は表情を暗く見せた。
「え、嘘、誰、誰?」
亀井は田中より動揺したようで田中の肩をつかんだ。
細い肩は力に負けて押され自然と亀井の方を見る形となる。
田中は視線を上げて亀井をとらえ正対した。
その目が何を言いたいか亀井が理解するとき、田中はもう亀井を逃さない距離までつめていた。
触れるだけのキスは、一瞬でいて長く。
田中が離れて、一度視線を下げて、もう一度亀井に向いた。
亀井はほとんど泣きだしそうな顔をしていた。

5 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/22(土) 14:11



「はーい、カットぉ。お疲れ様でした。今日の撮影は以上でーす。」


6 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/22(土) 14:11
監督の軽い声が響き緊張が一気にほぐれる。
亀井はすたすたと教室からでてスタッフにお疲れさまでした、ありがとうございました、と笑顔で言った。
田中はその背中を追いかけた。
「あの、亀井さん、これから空いてませんか?」
緊張した面持ちでそう尋ねると亀井はいつもの笑顔を見せた。
「ごめんなさい、今日は先約があるから。」
いそいそと歩きだし携帯を取り出す。
「あ、さゆ、今終わったー。待った?ごめんごめん。いつもより撮影長引いちゃって。うん、そうそう、あのドラマの。今日女の子とキスシーンだったんだけど相手さゆだったらよかったのになー。」
遠ざかって声が小さくなる。
田中は遠くなる背中を見ながら立ちつくしていた。
「田中さんお疲れ様です、これからどうです?」
下卑た笑いで一人の男性スタッフが近づいてきた。
くい、と手首だけで飲みに誘う。
その薄汚い顔も、自分も、亀井のことも、すべてばからしくなって、田中は疲れ果てた顔で誘いを断った。
7 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/22(土) 14:13

ノノ*^ー^)<だって
8 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/22(土) 14:13

ノノ*^ー^)<亀井
9 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/22(土) 21:05

ノノ*^ー^)<だもの

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