03 小包

1 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/22(土) 03:31
03 小包
2 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/22(土) 03:31
父が脳梗塞で倒れて半年経った。
母は毎日のように病院に通って看護していたが
私は仕事が忙しくて見舞いにすら行けないような状況だった。
いや本当は行こうと思えばいつでも行けた。だが行かなかった。
理由はある。私は父が嫌いだった。憎んですら居た。
とはいえ特別大きな何かが私たちの間にあった訳じゃなく
それまでの人生で何度も心を擦り合わせた結果、互いに摩耗し
触れ合う事すらままならなくなったのだ。

3月も半ばとなって梅が咲き始めた頃だった。
母がふと私に手渡した。それは大きさにすると
CDくらいの大きさの小さな小包だった。
「何これ?」
「それ父さんに渡してくれる?」
何気なく母はそう言った。
私はわかったと言った。
その小包が何なのか私には分からなかったし興味も無かった。
だがその小包には何かあると私は直感的に思った。
毎日のように病院に通ってるのだからわざわざ私におつかいを
させる必要はない。母が直接渡したくないような物なのだろうか。
いや私が渡す事に意味がある物なのかも知れない。
カレンダーを見る。今日を逃せばしばらく見舞いには行けないだろう。
私は何かに導かれるようにリュックサックに小包を収めた。
3 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/22(土) 03:32
日は随分明るく高くなっていて春が近づいている事を実感させた。
まだ風は冷たかったがそんな事は気にならないくらいの陽気で
病院なんて行かないで散歩したいくらいだった。
「東雲君?」
呼びかけられて振り返ると高校の同級生が居た。石野田さん。
クラスでは目立たなかったけど性格が良く話しやすいので
男女共に嫌う人は居なかった。
「石野田さん久し振り」
私に向って微笑みかけるその笑顔は学生の頃と同じだった。
いやむしろ他の学生からの好奇の目が無い今の方がずっと自然に思えた。
私も自然に微笑んだつもりだったが彼女の眼にはどう映っただろうか?
「どこに行くの?」
「西さ。西のほうさ」
「そこに何が待ってるの?」
「さあね?僕も教えて欲しいくらいさ」

それから1時間後、私たちはラブホテルのベッドで寝ていた。
4 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/22(土) 03:32
私はラジオから流れる曲をBGMにして煙草を吸った。
曲は知らないけど寂しい気持ちになるようなインストナンバーだった。
「うぅん…」
「ごめん起しちゃった?」
「いいの。もう起きなきゃ」
「そう言えば今日君には何か用事があったのかな?」
「ないわ。あるとすれば貴方に用事を聞かれる事くらい」
そう言って石野田さんは笑った。
高校を卒業してからどのくらい時間が経っただろうか?
その時間の間に私は沢山の時間と友達を失った。
そもそも人間は毎日死ぬために生きているのだ。失うのが人生だ。
でもこうして素敵な出会いをする事もある。石野田さん。
いや他人行儀だな。石野田。
私は無意識の内に歌を口ずさんでいた。少し浮かれていたのかも知れない。
自分でもなんという歌か思い出せなかったがフレーズは自然と出てきた。
そしてサビが終わる頃にその歌のタイトルを思い出した。
「モーニングコーヒー飲もうよ。か」

思えば私はこの数年の間にコーヒーを好むようになっていた。
学生の頃は森永のコーヒー牛乳で精いっぱいだった自分が。
「ねえ、辻加護って覚えてる?」
5 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/22(土) 03:32
彼女の口からこぼれたその質問に私は答えなかった。
覚えていると言うのは簡単だ。だが言うのは憚られた。
彼女たちの人気が最高潮だった頃、彼女たちに興味があるような素振りを見せれば
たちまち嘲笑の的となった。
私はあれから何年も経っているのに心の中でまだ恐れていたのだ。
「ねえ、辻ちゃんが子供生んだの知ってる?」
私は知っていると答えた。出来ちゃった結婚だという事も知っている。
私は石野田さんの股間をシーツ越しに凝視した。
私は問題なく事を済ませたはずだ。だがもしもと言う事はある。

「石野田。もしも。本当にもしもだけど名前は何にしようか?」
私は○子という名前が好きだった。
最近の新生児の凝った名前はアニメに毒された日本人の所作だろう。
私はそういう潮流には呑み込まれない。
「そうね。女の子だったらさゆみがいいな」
私は石野田の顔をじっと見た。
これほど真剣に石野田の顔を見たのは初めてかも知れない。
「どうしたの?そんなに変な名前?」
クスクスと笑う彼女の肩を抱いて「信じる事にするわ」と言ってみた。
石野田は真顔で何を?と答えた。
6 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/22(土) 03:33
ホテルを出て私はリュックサックの底をさらった。
小包は家を出た時と同じ大きさだった。
私は病院の自動ドアを抜けて受付で父の名前を言った。
「あれ?もしかして…東雲君?」
見ると受付は高校の同級生の甘栗花子だった。
「甘栗…なんで?」
「やあねえ。こんなところで」
後がつかえていたのでいたので詳しい話は出来なかったが
彼女はデザイナーの夢は捨てたらしかった。
私は1時間後にここに行ってと部屋番号を書かれた紙を手渡された。
それがどういう事を示しているのかは彼女の赤く火照った頬を見ればわかった。

私は30分ほどロビーの新聞と雑誌で時間を潰し外に出て煙草を3本吸い
トイレで用を足して紙に書かれた部屋へと向かった。

「お前か」
「おやじ…」
それから私は何も言わないでしばらく立っていた。
父は穏やかな表情で窓の外を見ていた。
7 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/22(土) 03:33
「何か、用があるんじゃないのか」
そこで私は父が声を出しにくそうにしている事に気づいた。
脳梗塞の影響で声が出にくくなっているのかも知れない。
私はそそくさとリュックサックに手を突っ込んで小包を取り出した。
「母さんから」
父はそれを受け取ると震える手でその包みを開こうとした。
だけど私はその様子を直視出来なかった。
手が震え思うように動けない父を見てしまうと今の今まで抱いていた
父親への気持ちを変えなければいけなくなるような気がしたからだ。
父はゆっくり包装紙を細切れにしながら包みを開けた。
私はその中身を見て驚いた。3月12日発売の℃-uteのアルバム
3rd〜LOVE エスカレーション!〜だったからだ。

父はじっとアルバムのジャケットを見ていた。
「かわいいな」
誰が?誰がかわいいんだ?そう聞くより先に父は言った。まいまいと。
私の中にそこで何かが弾けるような扉が開き光が飛び込んでくるような
そう春が訪れた時のような感情が湧きあがった。
「好きなのか?まいまいが」
私の問いかけに父はうなずいた。
そこで母が私におつかいをさせた理由がわかった。
きっと母は許せなかったのだ。自分を差し置いてまいまいを思う父の気持ちが。
だがもし今の父に僅かでも力を与える事が出来るならば…
そう思い私にアルバムを託したのだ。
8 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/22(土) 03:34
「俺、ののたんを全否定したおやじをまだ許してないよ」
「…わかってる。だがあいぼんは…いやもういいこの話は」
父は本当に安らかな気持ちでアルバムのジャケットをいや違う、
正確に言うとまいまいを、いやそれも違うだろう。
まいまいとまいまいの素敵な仲間を穏やかな表情で見ていた。
「なあ俺、今ならあいぼんもありだったって思うんだよ」
「ふん。お前にはまだわからんよ」

父は震える手でケースを開けようとした。
歌詞を見ようとしているのだろう。
私はアルバムを父の手から奪い手早く歌詞カードを抜くと父に手渡した。
「…余計な事を…」
「そういう場合はありがとうって言うんだよ」
父は1ページずつ舐めるようにじっと見た。
岡井ちゃんには興味がないのかページを飛ばした。
私はその様子を苦々しく見ていたつもりだったが勝手に頬が緩んでいた。
「ソロはないのか」
「nkskとのデュエットだけだな」
父はあまり残念そうではなかった。
きっと父は信じているのだ。まいまいはきっとソロで活躍すると。
「おい、このアルバム聞きたいか?」
私はリュックサックからiPodを取り出した。
「いいのか?」
「馬鹿言え。仲間じゃないか」
苦笑しながら父はiPodを付けて音楽に、まいまいの声に浸った。
私はもう聞かなくてもいい。聞かなくても頭の中で響いているから。
9 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/22(土) 03:34
「なあ」
「なんだ?今LALALAか」
「よくわかったな」
「まあな。素人はそこで飽きるんだよ」
片方外したイヤホンからLALALA 幸せの歌が聞こえてくる気がした。
「まいまいはもう中学生だな」
「そうだな。小学卒業か。おやじはどう思ってるんだ?」


返事が無いので見ると3月12日発売 3rd〜LOVE エスカレーション!〜
に没頭しているようだった。
私はベッドの横の小さな机に置いてあったメモ帳に

今度初回を持ってくる。母さん安いからそっち買ったと思う。
DVDのまいまい見て萌え死ぬなよww

と書いて病室を出た。
父が死んだのはその2日後だった。
10 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/23(日) 18:34
白い蒲団が敷かれそこに息をしていない父が寝ていても
私にはまだ実感が湧かなかった。
仏壇に飾られた父の写真はほのかに微笑んでいた。
その笑みは誰に向けての物なのだろうか?
少なくとも私にではないはずだが。

「この度はご愁傷様で」
「おじさん、もう来てくれたんだ」
「えっと文子さんは?」
「母さん?今、奥で寝てる。ずっと泣いてたから疲れたんだね」
「そうか。ちょっと兄さんの顔を拝ませてくれ」
おじさんは父とは違って話のわかる男だった。
酒も煙草もアサヤンも私に教えてくれたのはおじさんだった。
「急な事で大変だったろ」
「うん。でも半年も入院してたからね」
おじさんは白い布を取り父の顔を拝んで泣いた。
「悔しいだろうな。これからって時に…まいまい」
まいまい?おじさんの言葉に反応して思わず声に出してしまった。
「あ、そうか。もう知っていたのかまいまいの事を」
「ええ。少し知るのが遅かったみたいですけど」
「何かあったのか?」
「初回のDVDを見れずに死にました」
「そうか。まあ仕方ないよ。それより小学校卒業だよ」
「ああ、おじさんはどう思いますか?おやじはまいまいが中…」
「おっと、その話は後だ。これを見てくれ」
おじさんは喪服の懐に手を入れ辞表と書いた白い封筒を取り出した。
「開けてみろ。兄さんからの預かり物だ」
11 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/23(日) 18:34
私は恐る恐る封を開け中身を取り出した。
それは写真だった。
ハロープロジェクトオフィシャルショップ上野店開店
3周年記念と書かれたまいまいの写真だった。
「これは?」
「兄さんから頼まれて預かっていた。どうせまいまいだろうと
予想していたが、まさか本当にまいまいだとは思わなかったよ」
そのまいまいの麗しい表情はまさしく天使だった。
父はきっとこの写真が一番好きだったのだろう。
だが家に置いておけば予期せぬ問題が起きるかも知れない。
そう思いおじさんに預けていたのだろう。
写真の裏を見ると何か書かれていた。7桁の数字の羅列だった。
「何だこれは?」
「電話番号…じゃないな。郵便番号?」
私は思い出してみた。父の書斎にあった金庫の桁数が7桁だった。
「行こうおじさん!そこに何かがあるはずだ!」

金庫の中はお宝が眠っていた。
「おい、銭湯の娘DVDボックスかよ」
「放送時のを録画したビデオっぽいのもあるね」
「何枚あるんだこれ?凄いな。露店のもかなりの数だ」
私は負けたと思った。資金力の差だけじゃない。
これだけ家族に隠れて集めるには相当な努力があったはずだ。
私にこれだけアイドルを、いや人を愛せるのだろうか?
「おやじ…」
私は今になって父の偉大さを知った。
どうして私は海のように深く海のように溢れんばかりで
海のように広い父の心に気付けなかったのだろうか。
「ねえ。これおやじの棺桶に」
「そうだな。天国で寂しい思いしないように」
12 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/23(日) 18:35
金庫の中の荷物をまとめていると女の叫び声がした。
「なんだ?」
「女の声だな」
「急ごう!」
取る物を取って慌てて部屋を出る。走り出す。
そして私たちの目に飛び込んできたのは髪を振り乱し
泣き叫ぶ母の姿だった。
「母さん!ゴキブリか!」
だがそうでは無いのは一目瞭然だった。
母の手にはまいまいの写真があったからだ。

「うわきぃぃぃぃ!あなたああああああ!」
母がまいまいの写真を破ろうと写真の上辺を両手の指先で摘み
左手を固定し右手を軽く捻りながら下に下げ引き千切ろうとした時だった。
私は素早く側にあった座布団の塔の一番上を掴み
フライングディスクのようにして母に投げつけた。
「ぐわあああああああああああああああ」
母は座布団を受けた衝撃で体制を崩し倒れた。
「まいまい!」
おじさんが素早く飛び出し母の手からまいまいの写真を奪い取る。
「母さんどうしたんだ?落ち着いてくれ」
「一体何があったんだ?」
13 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/23(日) 18:35
話は1分ほど前に遡る。
母は父の遺品を整頓していて何気に通勤カバンに入っていた
文庫本を開いた。そこに写真が一葉。まいまいだった。
しおりの代わりに使っていたのだろう。
母はその写真に写っていた幼女、いや女を敵だと認識した。
父の愛情を自分から奪い取っていた悪魔の存在に気づいたのだ。
父が時々寝言で発していた「まいまい」という謎の言葉。
それが自分の見知らぬ女の名前であり、父が病室に運ぶように頼んだ
アルバムのジャケットに写っていた女である事に母は
気づいてしまったのだ。その瞬間母は狂った。

話はそこから2分後。つまり最初の時間から見て1分後。
母はふらふらしながら立ちあがった。
そして私を見て「うふん」と言った。
母は状況を掴めない私の体を押し倒し接吻をしてきた。
あなた最近ごぶさたですわ。抱いてくださいませ。
母は私の下半身を弄りそこにあった肉棒をほおばった。
どうやら私は父と思っているのだ。
知らなかった。母は餓えていたのだ。父の愛に。
夜な夜なこうして父の逞しい抱かれる夢を見ていたのだ。
14 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/23(日) 18:36
私は母の頬を撫でて微笑んだ。
「抱いてやる。文子。いさや旧姓、舞鶴文子、通称まいまい」
私は母をいや文子の全身を優しく撫でまわした。
自然と文子の口から甘い声が漏れる。
「ああ、あの寝言は私の事だったのですねあなた」
良かった。母さんの旧姓が舞鶴で本当に良かった。
私は母のひたいに2Lサイズのまいまいの写真を貼った。
これは母さんじゃない。まいまいだ。
そして父の遺影で自分の顔を覆ってみた。
私は父さんだ。これで問題はない。

父と母はめしべとおしべで繋がった。
そして激しく愛し合った。
「あなたぁぁぁぁ!」
「ふみこぁっぁぁ!」
限界だ。私はもう限界だった。


A  「中でイクよ」文子の膣の中で出す
B  いややっぱりマズい。文子の顔にかける
15 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/23(日) 23:04
C それもマズイ。でも我慢出来ないから取りあえず出してみる

我に返って私は自分のした行為を恥じた。
迷いに迷って仏壇にかけてみたものの細工の細部にまで
入り込んだ精子を取り除くのは困難を極めた。
「おい、そろそろ他の親戚連中も来るぞ」
「兄さん急かすなよ。あんまり力を入れたら壊しちゃいそうだし」
「そうだな…おいお前、なんか良い尻してんな」
「ちょwwおじさんwwwwこんな時に」
「なあに壊しはしないよ。ゆっくり教えてやる」
「あ、駄目だ。おやじが見てるのに」
「見せつけてやろうぜ俺たちの仲をよお」
「あぁー」
16 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/23(日) 23:17


17 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/23(日) 23:23
早いもので父が死んで1ヵ月経った。
まいまいは中学生となり4月23日発売℃-ute5thシングル「涙の色」は
無事発売された。ちなみに5thシングルV「涙の色」は
5/14(水)発売ですので予約は早い目にしておいたほうがいい。
仏壇の前は4月23日発売5thシングル「涙の色」でいっぱいだった。
父と約束したのだ。℃-uteのイベントに行くと。
まいまいと握手してその感想を報告すると。
私は法事の余りの酒とおつまみを広げて飲み始めた。
まだ日は高かったし平日だったがちゃんと有休休暇をとったので大丈夫。
こんな事をしててももう怒ってくれる人が居ないのは少し悲しかった。
「叱られたって構わない…か」
母は父の葬儀の後も父が入院していた病院に毎日通い
ある日そのまま病院から戻ってこなくなった。
18 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/23(日) 23:58
19 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/23(日) 23:58
20 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/23(日) 23:58

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