16 太陽に伸ばす手
- 1 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/02(日) 20:06
- 16 太陽に伸ばす手
- 2 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/02(日) 20:07
- 四十分の通学路の間、約三十分を崖のようなこの道を漕ぐことになる。
ガードレールを突き抜けてしまえば、三十メートルくらい転落した挙句、海へとダイブ。
幼い頃は近寄らないように言われていた場所を、風と共に走り抜ける。
大人になったような気分、
もうそんな心配をしてくれないんだという切ない気持ちを織り交ぜながら、足に力を込める。
顔を上げたのは、車道を挟んだ向こう側から自転車が走ってくる気配がしたからだった。
ちょうど斜めに鏡を入れたように、私とその人は、すれ違う瞬間にお互いの顔をうかがい見るような仕草をする。
それは特別なことではなくて、
狭いこの町では制服姿だったら知り合いの可能性が高かったりするからで。
そう、まさにその予感が当たった。
背中からの太陽を受け、怪訝な顔をしているその女の子は、絶対に私の知っている人だった。
- 3 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/02(日) 20:10
- 一刻の四分の一、一時の時間をかけて薪集めには崖のようなこの道を通ることになる。
急な風でも吹けば、十丈くらい転落した挙句、海へとまっ逆さま。
幼い頃は近寄らないように言われていた場所を、難なく通り抜ける。
大人になったような気分、
もうそんな心配をしてくれないんだという切ない気持ちを織り交ぜながら、足に力を込める。
顔を上げたのは、向こう側から人が来る気配がしたからだった。
狭い道の少し広くなった場所で、
ちょうど斜めに鏡を入れたように、私とその人は、すれ違う瞬間にお互いの顔をうかがい見るような仕草をする。
どこの村もうちの村に行くにはここを通らなくてはいけない。
同じ年ぐらいのまったく知らない旅装束の女の子だった。
それなのに。
背中からの太陽を受け、怪訝な顔をしているその女の子は、絶対に私の知っている人だった。
- 4 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/02(日) 20:11
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- 5 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/02(日) 20:11
- 「あれー?」
ごっちんが唐突な声を出した。
「よっすぃ個人でさー、来世で出会う相手って決められたっけ?」
「いやー、基本的に出来ないはずだよ」
「っていうか何見てんの?」
やっていた仕事から目を離し、そちらの方を向く。
「あ、いやえーと」
それは基本的に許可がなければ使ってはいけないシステムで個人の魂の軌跡を追跡するものだった。
- 6 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/02(日) 20:12
- 「あはははは」
「ごまかし笑いはいいからさー。説明してよ」
「んー、じゃあここ見て」
ごっちんの指差す場所を覗き込んだ。
「あれ?この魂けっこう交差してない?こっちの魂と」
「そそ、そうなの。だからさーちょっと疑問に思ってさ」
「出会うかもしれない方向性は決められるからさー、だけど」
「これって両方がそういう方向に向かないとだめだよね」
- 7 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/02(日) 20:13
- たくさんの選択肢の中の枝の先の先。
ごっちんと覗き込む。
「あ、でも今回は近かったから割と早く出会えたみたいだね」
「そうだね」
少しずつ近づいていく軌跡。
小さな偶然を重なり合わせたそれは必然に見えた。
- 8 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/02(日) 20:13
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- 9 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/02(日) 20:13
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- 10 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/02(日) 20:13
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