26 耳なし

1 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/04/01(日) 23:47
26 耳なし
2 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/04/01(日) 23:48
夜の屋上なんて怖いところ絶対に行きたくないし、足が動くとは思えない。
白い服を着たがきさんはまるで幽霊のよう。
足なんてないようにすーっと歩いて行く。
3 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/04/01(日) 23:48
モーニング娘。の初めての中国公演へ向けての飛行機が成田から飛び立った時、
私とがきさんだけその飛行機に乗らなかった。
私は大好きだった親戚の叔母さんのお葬式にどうしても出たくて
お願いして別の日の飛行機にしてもらった。
がきさんの理由は、そう、がきさんにはありえないことだが寝坊で遅刻。
その日に限ってがきさんのお母さまも時間を勘違いされていたそうで。
4 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/04/01(日) 23:48
私と遅刻したがきさんの抜けたモーニング娘。
乗った飛行機は海に落ちた。
5 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/04/01(日) 23:48


6 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/04/01(日) 23:49
モーニング娘。はハロプロの永久欠番。

とはならず、この機に乗じてあざといオーディション、更なる外国人アーティストの追加。
図らずも全世界に知られたモーニング娘。を売っていこうと事務所は加速する。
7 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/04/01(日) 23:49
残ったがきさんと私道重さゆみがリーダーと副リーダーを任される事となった。
しかし、私はがきさんと飛行機が落ちてからは会っていない。
飛行機が落ちた次の日事務所に駆けつけた私は、がきさんも当然そこにいるものだと思っていた。
でもがきさんはこなかった。
どんどん決まっていく事務所の計画と絶え間ないインタビュー。
でもがきさんは出てこなかった。
事務所は体調が悪いからとそう言っていた。
8 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/04/01(日) 23:49
事務所の人に様子を見に行ってくれないかと頼まれた。
がきさんは一人暮らし。
家族の人は心配して実家に帰るよう何度も言ったけれどがきさんは帰らない。
一人にしてほしいと閉じこもっている。
そのような状況で出てくるように事務所も無理強いは出来ず、困り果てた末の選択のようだった。
励まして何とかしてくれないかと、
励ませば何とかなると思っているのか事務所に言われた。

そんなことを言う割にわざわざ時間を事務所が作ってくれるはずもなく、
がきさんのマンションに着いたのは深夜になった。
9 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/04/01(日) 23:50
家族の人に連絡してもらって貸してもらった合鍵でマンションのオートロックを開ける。
深夜になることはあらかじめ伝えておいてもらった。
10 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/04/01(日) 23:50
がきさんの部屋の階に着き、エレベータホールを出るとがきさんの部屋の向こう側に
白い何かが見えた。
素足と。
11 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/04/01(日) 23:50
えっえっ何?と思ったけど怖いのでがきさんの部屋に行った。
鍵は開いていてやっぱり中にがきさんはいなかった。
12 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/04/01(日) 23:50
本当はわかっていたんだけど、怖かったから違うことにした。
あれはがきさんだった。
すーっと壁の向こう側に消えていく白いワンピースと素足。
喪服ばかり見ていた私にはとても儚く軽やかにみえた。
13 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/04/01(日) 23:51
どうしよう。
少し考えたけれどがきさんの部屋の鍵を閉め、
私はとりあえずがきさんがどこに向かったか確かめることにした。

がきさんが消えた辺りに行くとそこは階段で、
どっちにいったんだろう見回すと上の方で音がした。
屋上のドアが開く音みたいだった。
14 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/04/01(日) 23:51
階段は明るい。
でも屋上は暗い。きっと。
絶対にそんなところ行きたくない。
無理。絶対無理。
15 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/04/01(日) 23:51
どうしよう。

帰ることも出来るよね。

あ、部屋の鍵閉めちゃった。

と言う事はがきさんが締め出されるってことだよね。
多分あの様子だと鍵は持ってなさそう。

がきさんが締め出されるなんてそんなことは出来ない。

明るい階段のところからがきさんを呼べばいいかな。
上まであがることは出来るよね。
そこまではやってみよう。
16 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/04/01(日) 23:52
階段に自分の足音が響く。
五階分階段を上った。
17 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/04/01(日) 23:52
屋上のドア。
外が暗いのがドアの窓から透けて見える。

息を整えて、意を決してドアを開けた。
18 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/04/01(日) 23:52


19 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/04/01(日) 23:52
わぁ。

思わず声が出た。
屋上は綺麗だった。
夜景の光が瞬き、夜空には月。

月光に照らされて、白い服を着た、がきさんが座っていた。

こっちには気づいていない様子でぼんやり月を眺めている。
20 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/04/01(日) 23:53
そっと後ろ手でドアを閉め、がきさんのそばに歩いていく。
暗い中顔が見えるくらい近付いてもがきさんは気付かないみたいだった。

細い手足、白い服。少し背を丸めて体育座りで。
泣いていないけど泣いているみたい。
そっと背中から抱きしめた。


がきさん体が少し揺れたように感じた。
しばらくそうしていると体温がうつってくる。
がきさんの声ががきさんの背中から聞こえた。

「かめはもういないんだよね」
21 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/04/01(日) 23:54
絵里。

絵里絵里絵里。

絵里はもういない。

溢れだした涙ががきさんの背中を濡らす。

「愛ちゃんも」

「なんか実感わかないや。ほんと。なんか」

「実感わかないんだけど実感わかないんだけど、なんかずっとさ」

「何であの時遅刻しちゃったんだろうって」

「一緒に行きたかったなって」

「そんなことばっかりで何にも出来ない」
22 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/04/01(日) 23:54
ぽつぽつと話す、がきさんは泣いていなかった。


「しげさんにも迷惑かけたよね」

「なんかここにいると皆の近くにいるような気がしてさ」

「まあそれはそんなことないんだろうけど」

「毎日つい来ちゃうんだよね」
23 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/04/01(日) 23:55
毎日のように夜になると屋上に向かうがきさん。
月光に照らされながら。
まるで呼ばれているかのよう。
24 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/04/01(日) 23:55
ふとした連想で、
皆の魂の火の玉に囲まれるがきさん。
そんなイメージが頭に浮かぶ。
小さな頃に聞いた昔話。

「あの」
涙声であまりうまくしゃべれない。
「あたし、あたし」
呼吸を整える。
25 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/04/01(日) 23:56
「見ました。なんか火の玉に囲まれてました」
「え?」
不思議そうな、がきさんの声。
「ここでがきさんを見たとき火の玉に囲まれてました」


「きっときっとみんなそばにいますよ」
「だから」
「だから、大丈夫です」
26 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/04/01(日) 23:56
「一緒に行かなくても大丈夫です」

そう言ってぎゅっとした。



がきさんの体が少し揺れた気がした。
27 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/04/01(日) 23:56
 
28 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/04/01(日) 23:56
 
29 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/04/01(日) 23:57
 
30 名前:Max 投稿日:Over Max Thread
このスレッドは最大記事数を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。

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