13 君のために出来ること
- 1 名前:13 君のために出来ること 投稿日:2007/03/29(木) 23:54
- 13 君のために出来ること
- 2 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/03/29(木) 23:54
- 肌寒い冬のある日。
ハロモニのロケで、わたしは遊園地まで来ていた。
なにをやらされるのかは知らない。ていうか台本をもらっていない。
絶叫企画とかドッキリ的なのは嫌なんだけどな。
こう見えて意外にビビリなのだ、わたしは……とか思ってたら悪い予感が的中してしまった。
「ハロモニ苦手克服プログラム」とかなんとか。
わたし久住小春は、ここのお化け屋敷でビビリを克服しないといけないらしい。
数日前のアンケートでつい正直に書いてしまったのが運の尽きだった。
それでも、なぜかアンケートとは関係ないのに呼びつけられた田中さんのほうがずっと可哀想だと思ったけど……。
- 3 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/03/29(木) 23:54
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案の定、一回目のチャレンジは散々だった。
なにもしてないんだから当たり前だ。
リアルに心臓が破裂するかと思った。田中さんはもっとひどかったけど。
どうするのかと思ったら、催眠術をかけて恐怖を感じなくさせるんだとか。
正直、わたしは催眠術とか全然信じてなかった。
テレビの特番なんて全部演技に違いないって思ってたし。
そんなわけで、例によってインチキ臭いおじさんが来るのかと思ったら、意外にちゃんとした人っぽかった。
予想していたのとは違い、催眠にはかなり時間がかかるという。
なんでも、深層に働きかける準備段階が一番重要なんだとか。
- 4 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/03/29(木) 23:55
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始めは半信半疑、というよりほとんど疑の状態だったんだけど、だんだんと緊張がほぐれて、心に余裕が生まれて来るのが分かった。
テレビで見たとおり、おじさんはまず、懐からライターを取り出した。
ああやっぱり……と一度は落胆したけれど、炎の効果かおじさんの話術のお陰か、次第にわたしはその光に魅せられていた。
その柔らかなゆらめきが、心の奥底にあるなにかをマッサージしてくれている感じがしたというか。
あまりうまく表現は出来ないけど、それから次第に深く入り込んでいくうちに、わたしは完全に催眠にかかっていた。
それはとても心地よく、いつしかビビリの原因になっていたような弱さが、嘘のように消えて無くなっていた。
- 5 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/03/29(木) 23:55
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結局、オンエアされたのは最後の最後、催眠の仕上げ段階のところだけだった。
あれだけ見ると二人ともあっさりかかっちゃったように見えるけど、ずいぶんとその前に手間暇がかかっているのだ。
おじさんによると、この催眠は一旦は解けるけれど、深層に施された効果は段々と浸透して行くものらしい。
そのために自己暗示も効果的なんだとか。
ちょっとしたことで、ずっと精神的なプレッシャーが楽になる。
正直、わたしみたいなビビリだけじゃなくて、ハロプロのみんなもやればいいのに、と思ったりした。
- 6 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/03/29(木) 23:55
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それから何日か経った後のこと。
わたしが事務所でぼーっと待機していると、加護さんがお茶をくんできてくれた。
わたしは慌てて立ち上がって、いいですそんなことわたしがやりますとか言ったんだけど、加護さんはずいぶん疲れ切った様子で、ありがとうでも今はこれがうちの仕事だから、と言って微笑んだ。
加護さんが今どんな状況なのかは、いくら鈍感なわたしでも分かってる。
こないだちょっと週刊誌に取り上げられたとはいえ、まだ具体的に復帰の目処も立っていない。
加護さんがずっと雑用とかこなしながら頑張ってるのも知っている。
でも、わたしは、わたしの知っているあの元気な加護さんの姿が見られないのが、とても悲しかった。
- 7 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/03/29(木) 23:55
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ああ、そうだ。
加護さんのくたびれた背中を見ながら、わたしは思いついた。
今の加護さんに必要なのは、くじけない心の強さなんだ。
あんな風に、なにかにびくびくしてる加護さんなんて、らしくない。
わたしが催眠術を使えるわけではないけれど、少しでも助けになってあげたかった。
本当に、簡単なことだから。
- 8 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/03/29(木) 23:56
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3月27日。
みんな、あの話題で持ちきりだった。
意見は様々だった。結局加護さんが無責任だったとか、相手の男性も悪いとか。
わたしはショックで、とてもみんなの議論に参加する気力も起きなかった。
心が折れそうなとき。
わたしはポケットから小さなライターを取り出すと、ゆらめく炎を見つめた。
どうして、加護さんは負けてしまったのだろう。
「加護さん、わたしがあげたライター使わなかったのかなあ……」
わたしのつぶやきは、みんなの騒ぎ声に紛れて消えていった。
ゆらめく光は、くじけそうなわたしの心を強くしてくれる。……
- 9 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/03/29(木) 23:56
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- 10 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/03/29(木) 23:56
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- 11 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/03/29(木) 23:56
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