06 エンドロール
- 1 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/03/27(火) 21:30
- 06 エンドロール
- 2 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/03/27(火) 21:46
- ドアを叩く音が、部屋の中に響いた。
もぬけの殻なら、もっと乾いた音になるはず。だからまだ、あの子はここにいる。そう確信した。
「加護っ」
居留守か。それとも不在か。前者ならたちが悪い。
そう思いながらノブに手を掛けてみる。
「━━」
開いてる?
カチャッ━━キィィィ━━
まだ昼過ぎだって言うのに部屋の中は真っ暗で。重たい空気に包まれている。
靴を脱いで一歩踏み出す。
じめっとした感じが、靴下越しに伝わってくる。
「加護」
暗闇に慣れない目を凝らしながらその姿を探す。まさか、死んでる?いやいや、殺されても死なないって。
「━━」
視線の斜め下。
あの塊は紛れもなく。
輪郭しか分からなくたって見間違うわけない。
「加護」
確かめるように声を掛ける。
ぴくりとも動かない。
「━━」
肩に手を置くと、僅かに温もりを感じる。彼女の生命力はまだ、力尽きてはないらしい。
「何、してるのさ」
掴んだ肩を揺すると、力無く頭が前後に振られ、それが不愉快で手を止める。
「何やってんだよぉっ…」
まぶたが痙攣する。
グラスが揺れて中の水が零れるみたいにして、何かが滴り落ちた。
静かな、静かな部屋に、鼻を啜る音が響く。
私のじゃない。
- 3 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/03/27(火) 21:52
- 「やぐっさん…うち…もうあかんわ…」
久しぶりに呼ばれた名前は、あまりにも痛く心に刺さった。
「何も、駄目じゃないって」
駄目じゃない。
何か言えよ、加護っ。
「こ、こんなとこにいたら、心まで湿気っちゃうぞ」
たどたどしく窓へ急ぐ。鍵を開けて、窓を開けて、網戸を開けて、雨戸を開ける。
春と呼ぶには頼もしすぎる光が、部屋の中に射し込む。
「ね、加━━」
言葉にならなかった。
ほんとに、彼女は私の知ってる加護亜依なのか。
床に転がる錠剤の名前も、彼女の名前も、知りたくはないと思った。
- 4 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/03/27(火) 21:55
- 閉
- 5 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/03/27(火) 21:55
- 幕
- 6 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/03/27(火) 21:58
- 。
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