02 verlorenes Kind

1 名前:02 verlorenes Kind 投稿日:2007/03/25(日) 23:08
02 verlorenes Kind
2 名前:02 verlorenes Kind 投稿日:2007/03/25(日) 23:09
「辻さん辻さん」

と、のんの服を引っぱる桃子。
おそろいの作業服に黄色いヘルメット。
のんはケータイだけしか持ってないけど、
桃子はお菓子なんか持ってるぞ。

「なあに?」

「ライトなんて必要ないですよね」

番組の収録で富士山の風穴に入るんだけど、
照明さんがいるからハンドライトなんて演出。
外は寒いからのんと桃子はロケバスの中。
ロケバスなんて聞こえはいいけど、ただのワンボックス。
しかも業務用のロングタイプで乗り心地が悪い。
東京から定員ギリギリの10人で乗ってきた。

「演出だからしょうがねーだろう」

風穴に入るのは、ほかに照明さんカメラさん音声さん、
それからディレクターとマネージャーだけ。
予算不足かー。そんなもんかもね。
3 名前:02 verlorenes Kind 投稿日:2007/03/25(日) 23:09
「そろそろ時間です」

と、ADのお姉さん。
運転手兼ADとメイク兼マネージャー、
それからこのお姉さんが地上に残る。
のんがワンボックスから出ると桃子が腕に抱きつく。

「樹海かー。ここで自殺する人が多いんだよ」

「こわいよー!」

かわいいもんだな。中学生なんてさ。
もうカメラは回ってるけど桃子はまじに怖がってる。
夜だったらのんも怖いけど午後2時前じゃん。

「まだ昼間じゃねーか。怖がるんじゃねーよ」

ってな感じで前フリ完了。
4 名前:02 verlorenes Kind 投稿日:2007/03/25(日) 23:10
2人でパタパタと階段を下りる。
まっ黒な岩のカベ。なんか殺風景だなー。
こんなところでなにをするってんだろう。

「この穴を通ってくれる?」

「こんなに狭いのに?」

その穴はのんでもやっと通れるぐらい。
スタッフはムリだろうなー。
のんが通れれば桃子は楽勝かー。

「桃子ちゃん、カメラよろしく」

「えっ! 2人だけで?」

だからライトが必要だったのかー。
穴は3メートルぐらいの長さ。
そこを通るとのんが立てるぐらいの高さ。
まだ奥に入るのかなー。

「辻さん、まっすぐらしいですよ」

「まっすぐは岩じゃねーか!」

右のほうが広いけど番組を考えると左かなー。
また小さな穴。でものんと桃子なら通れる。
ズリズリと作業服が岩にこすれて痛かった。
5 名前:02 verlorenes Kind 投稿日:2007/03/25(日) 23:11
そこをぬけるとすごく広いところに。
でもまっすぐなんて道がないよ。
どこかに道があるのかなー。

「辻さん辻さん。あそこじゃないですか?」

「あそこの横穴?」

その横穴は5メートルぐらいの高さに。
こんなとこでフリークライミングするとは思わなかった。
でも岩はガサガサですべらないから上りやすい。
桃子を引き上げてやらないとなー。

「おちるんじゃねーぞ」

いくら番組的においしくてもさー。
おちれば「痛い」じゃすみそうにないじゃん。
うわ、こんどは長いなー。うーん、せまいよー。
こんな映画があったよな。
6 名前:02 verlorenes Kind 投稿日:2007/03/25(日) 23:11
「辻さん辻さん。まだ行くんですか?」

「知らねーよ。この先に出口があるってオチだよ」

「迷子になった気がするんですけど」

「そういった演出なんだよ。演出」

せまい穴をぬけると奥のほうが少し明るいじゃん。
こんな『ディセント』ごっこはおわりにしたいなー。
のんがライトで照らすと眩い反射があるじゃん。
きっとカガミでもあっておどかす演出だろうな。

「辻さん辻さん。なんか声がしますよ」

「スタッフもヒマこいて歌ってるんだよ」

のんと桃子は反射するほうに歩いて行く。
でもそこにいたのはスタッフなんかじゃなかった。
7 名前:02 verlorenes Kind 投稿日:2007/03/25(日) 23:12
「辻さん辻さん、お坊さんですよ」

「坊主頭が光ってたのかよー」

「にゃあ!」

「きゃー!」

なんだこの坊主。いきなりおどかしやがってよー。
こんなとこで托鉢してもムダってもんだろうに。
またおどかしたら即身仏にしてやるからなー。

「よっちいよっちい」

「もうヨッスィ〜は卒業だよ」

「ちねちね」

「なんだとー!」

こんな坊主にまけるのんじゃねーぞ。
すかさず腕拉逆十字をかけてやった。
どうだ。このままだと靭帯がきれるぞー。
8 名前:02 verlorenes Kind 投稿日:2007/03/25(日) 23:13
「えーん。いたいよー」

「だったら出口をおしえな」

「辻さん辻さん。ちょっと過激ですね」

いかれた坊主に出口をきくと素直におしえてくれた。
ダンボール寺院を右。その先の穴をぬけると出口かー。
あの坊主はスタッフなのかなー。

「辻さん辻さん。外の光みたいですよ」

「桃子。なんで連呼するんだよ。1回でわかるっての」

「よいしょっと」

のんが桃子を穴からひきずり出すと高いとこに出口があった。
でもあそこまでどうやって上ろうかなー。
スタッフもいないしここは別の出口かも。
それでもここから出ないとなー。
9 名前:02 verlorenes Kind 投稿日:2007/03/25(日) 23:14
「辻さん!」

「なんだよ」

「足もと!」

「げっ、骨じゃねーか!」

ここは骨で埋めつくされてるじゃねーか。
動物の墓場だって思いたいけどなー。
あの骨は人間の頭蓋骨っぽい。
もしかしてここが自殺場なのかなー。

「はやく出ましょうよ」

「そそそうだね」

のんたちが上れる足場をさがしてると音がきこえてきた。
その「シャ〜コ、シャ〜コ」ってのは刃物を磨ぐ音みたい。
のんと桃子が耳をすますと音がするのは出てきた穴から。

「時間との勝負だぞ」

「はい!」

のんと桃子は10メートルはある出口にむかって上りはじめた。
桃子を引きあげながら地上の光にむかって必死に上る。
もうちょっとで出口。桃子を先に上らせた。
そのときのんの足首をつかむやつがいた。
10 名前:02 verlorenes Kind 投稿日:2007/03/25(日) 23:15
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11 名前:02 verlorenes Kind 投稿日:2007/03/25(日) 23:15
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12 名前:02 verlorenes Kind 投稿日:2007/03/25(日) 23:16
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